medicina 33巻12号 (1996年11月)

増刊号 Common Drugs 350の投与戦略

循環器疾患治療薬 ジギタリス(強心薬)

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 血管拡張薬,特にACE阻害薬の短期的ならびに長期的有効性が示されてからは,うっ血性心不全治療薬としてのジギタリスの地位は低下している.さらに,ジギタリスには中毒という問題が常につきまとい,使用しづらい薬剤という印象が強い.しかし,ジギタリスの薬物動態を理解して使用すれば,ジギタリスは現在でもうっ血性心不全に対して有用な薬剤である.これまで種々のジギタリス製剤が用いられてきたが,その薬物動態が明らかになるにつれ,現在では主としてジゴキシン(ジゴキシン®,ジゴシン®)とメチルジゴキシン(ラニラピッド®)が使用され,ジギトキシンやデスラノシドなどはあまり用いられなくなってきている.

循環器疾患治療薬 カテコールアミン系(強心薬)

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●カテコールアミンに共通する強心作用機序

 カテコールアミンは,心筋細胞膜上のβ1受容体に結合し,細胞膜のアデニレートシクラーゼを活性化させる.この活性化によりATPよりcAMPが産生され,cAMPdependent protein kinase(Aキナーゼ)が活性化する.Aキナーゼは細胞膜のCaチャネルを開口し,細胞質内にCaが流入,筋小胞体からもCaが放出され,細胞質内で増加したCaが収縮蛋白と結合して心筋収縮が起こる.また,Aキナーゼは筋小胞体のphospholambanに作用し,細胞質内のCaを筋小胞体に取り込み,次の放出にそなえる(図).

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臨床薬理

●作用機序:ドブタミン(ドブトレックス®)は合成カテコールアミンで,強力なβ1受容体刺激作用をもち,心筋細胞のβ1受容体に作用して心筋収縮力を増加させる.また,弱いβ2受容体刺激作用とα受容体刺激作用をもつとされている(表1,15ページ)が,筆者らの検討によれば,末梢血管に対して治療濃度域においてα遮断作用を示すことが判明した1).したがって,β2受容体刺激作用とα受容体遮断作用により末梢血管を拡張させるため,血圧上昇作用は弱く,左室拡張末期圧と肺動脈圧を低下させる.交感神経末端からのノルエピネフリン遊離作用は認めない.

●血中濃度モニタリング:半減期が短く必要ない.血行動態のモニタリングから投与量を決定する.

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臨床薬理

●作用機序:ノルエピネフリン(ノルアドレナリン®)は内因性カテコールアミンで,強力なα受容体刺激作用とβ1受容体刺激作用をもっている.心筋細胞のβ1受容体に作用して心筋収縮力を増加させ,末梢血管のα受容体に作用して強力な血管収縮作用を示す.本剤はイノバン®,ドブトレックス®がもつβ2受容体刺激作用をもたないため,血圧の上昇作用は強力である(表1,15ページ)が,心筋酸素消費量を増加させる.

●血中濃度モニタリング:半減期が短く必要ない.血圧,心拍数の変動に注意して投与量を決定する.

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臨床薬理

●作用機序:エピネフリン(ボスミン®)は内因性のカテコールアミンで,ノルアドレナリン®同様強力なα受容体刺激作用とβ1受容体刺激作用をもっている.ノルアドレナリン®と異なる点は,β2受容体刺激作用をもつことである(表1,15ページ).ノルアドレナリン®同様,心筋細胞のβ1受容体に作用して心筋収縮力を増加させるが,末梢血管のα受容体を介して血管を収縮させるため,血圧を上昇させ,心筋酸素消費量を増加させる.

●血中濃度モニタリング:半減期が短く必要ない.血圧,心拍数の変動に注意して投与量を決定する.

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臨床薬理

●作用機序:デノパミン(カルグート®)はその化学構造にカテコール核をもたないため,カテコールアミンには分類されないが,β1受容体刺激薬という点で他のカテコールアミンと共通である.ただし,β1受容体の部分活性薬であるため心拍数増加が起こりにくく,β受容体のdown regulationを起こしにくいという利点がある.本剤は,心筋細胞のβ1受容体に作用して心筋収縮力を増加させ,冠動脈に対してはβ1受容体刺激作用,末梢血管に対してはα受容体遮断作用により血管拡張作用を示す1)ため,心不全治療においては理にかなった薬剤で,国内で開発されたものである.

●血中濃度モニタリング:ジギタリスと異なり治療濃度域が広いため,血中濃度の測定は必要ない.

循環器疾患治療薬 ホスホジエステラーゼ阻害薬(強心薬)

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臨床薬理

●作用機序:アムリノンは,cAMPの分解酵素であるホスホジエステラーゼIIIを阻害して,細胞質内のcAMP濃度を増加させることによりAキナーゼを活性化して,細胞質内のCa濃度を増加させ心筋収縮力を増加させる.心筋細胞におけるcAMP以降の細胞内情報伝達系はカテコールアミンと同様であるが,β1受容体を介さないため,心筋細胞のβ受容体のdown regulationは起こらない(図,15ページ).また,血管平滑筋細胞のホスホジエステラーゼIIIを阻害して,cAMPの増加により血管拡張作用を示す.●血中濃度モニタリング:治療血中濃度域は1.0〜4.0μg/mlであるが,5〜15μg/kg/minの維持量投与でこの血中濃度域に入るため,重篤な肝腎障害を伴わないかぎり血中濃度の測定は必要ない.血圧,心拍出量など血行動態のモニタリングから投与量を決定する.

循環器疾患治療薬 硝酸薬(狭心症治療薬・心不全治療薬)

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 臨床薬理

 ●作用機序:硝酸薬は血管を弛緩させる.その機序として,分子構造中のNO2基が血管平滑筋細胞内でNO(EDRF)となり,guanylate cyclaseを活性化し,cyclic GMPを増加させ,G kinaseの活性化をもたらして細胞内Ca濃度を低下させる経路が想定されている.静脈系を拡張し,静脈還流量を減少させ,100μm以上の比較的太い冠動脈を拡張させることで抗狭心症作用をもたらす.また,うっ血性心不全の状態においては静脈還流を減少させ,心室充満圧を低下させるが,心迫出量はむしろ増加し,肺うっ血を寛解するなど抗心不全作用を示す.

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臨床薬理

●作用機序:ニトロールR®の項を参照.

●吸収・分布・代謝・排泄:舌下投与されたニトログリセリンは粘膜から吸収され,1分後から血漿中に出現する.舌下粘膜からの吸収であるため,肝での初回通過効果を受けない.代謝は主に肝臓で行われ,代謝産物は尿中,呼気中に排泄される.最高血漿中濃度到達時間(Tmax)は3.4分,消失半減期は2.7分であるが,作用持続時間は噴霧後約30分である.

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臨床薬理

●作用機序:ニトロールR®の項を参照.

●吸収・分布・代謝・排泄:舌下投与されたニトログリセリンは,粘膜から吸収され全身循環に入り,1分後から血漿中に出現する.舌下粘膜からの吸収であるため,肝での初回通過効果を受けない.代謝は主に肝臓で行われ,代謝産物は尿中,呼気中に排泄される.最高血漿中濃度到達時間(Tmax)は4分,消失半減期は3.8分,作用持続時間は舌下後約1時間である.

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臨床薬理

●作用機序:ニトロールR®の項を参照.

●吸収・分布・代謝・排泄:本剤はニトログリセリン25mgを含有する貼付剤で,ヒトの皮膚に24時間貼付したとき,約5mgを放出する.放出制御膜によって,皮膚の損傷など透過性が高い場合にも,吸収速度が一定となるように設計されている.皮膚から吸収されたニトログリセリンは,肝臓での初回通過効果を受けず全身循環に入り,貼付1時間後から24時間後に除去するまで安定した血中濃度を保つ.除去後はほぼ1時間以内に血中から消失する.

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臨床薬理

●作用機序:ニトログリセリンの作用機序については,同じ硝酸薬のISDN(ニトロールR®)の項を参照.

●吸収・分布・代謝・排泄:代謝は主に肝臓で速やかに行われ,蓄積性はない(半減期は約5分).代謝産物はほぼ24時間以内に尿中,呼気中に排泄される.点滴静注に伴い,速やかに(5分後に定常状態に達する)作用がみられる.

循環器疾患治療薬 カルシウム拮抗薬(狭心症治療薬・降圧薬・不整脈治療薬・心不全治療薬)

アダラート(バイエル) 高沢 謙二
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 本剤は降圧作用にすぐれ,血管攣縮性狭心症にも確実な効果を発揮する.しかしながら,急激な効果が反射性の交感神経緊張を引き起こし虚血性心疾患に不利に働くこともあり,緊急性と副作用の発現に十分配慮して使用する必要がある.

ペルジピン(山之内) 高沢 謙二
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 本剤はアダラート®と同じジヒドロピリジン誘導体であるが,マイルドな降圧を示し,脳血流増加作用もあることより,高齢者の治療薬として有用である.

ワソラン(エーザイ) 高沢 謙二
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 本剤は,海外では降圧薬としても使用されているが日本での適応はない.降圧作用はニフェジピンに比べて弱いが,心筋収縮および刺激伝導系抑制効果は強い.

ヘルベツサー(田辺) 高沢 謙二
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 本剤の降圧作用は比較的緩徐であり,アダラート®に比べ反射性交感神経緊張を起こすことも少ないが,徐脈や房室ブロックをきたしやすい.β遮断薬との併用は注意が必要であり,併用するときには内因性交感神経刺激作用(ISA)を有するβ遮断薬を選択すべきである.

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 本剤は第三世代のCa拮抗薬と呼ばれ,血管拡張性の副作用をなくし服薬コンプライアンスの向上を目指して開発されたものである.ニフェジピンに比べ,動悸,顔面紅潮などの血管拡張性の副作用が少なく,投与後の血中濃度の上昇が緩やかで長時間安定した薬物濃度を維持する.一方,不安定狭心症のように速やかな効果発現を期待するときには用いられないことを銘記しておく必要がある.

循環器疾患治療薬 β遮断薬(降圧薬・狭心症治療薬・不整脈治療薬)

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 現在β受容体はβ1,β2,β3の3つのサブタイプに分類されており,β1受容体の刺激は心機能促進,腸平滑筋弛緩,脂質分解促進,レニン分泌促進に働き,β2受容体の刺激は気管支・血管平滑筋の弛緩,骨格筋収縮促進,インスリン分泌促進に働く.また,シナプス前β2受容体の刺激はシナプスからのノルエピネフィリン分泌を促進させる.ただ,これらのサブタイプの局在は臓器特異的なものではなく,心臓にもβ2受容体が存在しており,効果器への作用の違いはβ1,β2受容体の分布率の差に基づいている.従来よりβ遮断薬の分類としてPrichardの分類1)がよく用いられている.すなわち,β1,β2受容体の両者を非選択的に遮断するものをⅠ類,β1選択性のものをⅡ類,α遮断作用を併せもつものをⅢ類とし,これら3類を内因性交感神経系刺激作用(ISA)と膜安定化作用(MSA)の有無により1群(ISA・MSA),2群(ISA・MSA),3群(ISA・MSA),4群(ISA・MSA)とする分類である.

ミケラン(大塚) 横田 慶之
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 β遮断薬には,単にβ受容体に結合してβ受容体を遮断するだけではなく,β受容体の効果発現部位に刺激を与えて交感神経刺激作用を示す,すなわち内因性交感神経刺激作用(ISA)を有するものがある.ISAを有するβ遮断薬はβ遮断作用による過度な心機能抑制を起こしにくく,末梢循環障害や気管支喘息の誘発,代謝への影響が少ない.

 ミケラン®(塩酸カルテオロール)は本邦にて開発された,ISAを有し,膜安化作用のない非選択性β遮断薬であり,Prichard分類1)のI類,第3群に属する.

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 非選択性のβ遮断薬はβ1受容体のみではなくβ2受容体も遮断する結果,気管支平滑筋や血管平滑筋の収縮や糖・脂質代謝障害などの悪影響をもたらす可能性がある.このため,末梢のβ2受容体に影響を与えないβ遮断薬が望ましいと考えられてきた.β1選択性β遮断薬はβ2受容体遮断の程度に比しβ1受容体の遮断が強いため,β2受容体遮断に伴う副作用が少ないものと考えられる.

 ロプレソール®(酒石酸メトプロロール)は,内因性交感神経刺激作用や膜安定化作用のないβ1選択性の強いβ遮断薬であり,Prichard分類1)のII類,4群に属する.

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 テノーミン®(アテノロール)は内因性交感神経賦活作用と膜安定化作用のいずれも有さないβ1選択性β遮断薬であり,ロプレソール®(チバガイギー),セロケン®(藤沢)と同じくPrichad分類1)のII類,4群に属する.本剤は,ロプレソール®,セロケン®とは異なり極めて親水性の高いβ遮断薬であり,血中濃度半減期が長く,血液—脳関門の移行が少ない.このことは本剤投与にても,β2遮断作用と中枢神経抑制作用による副作用がともに少なく,しかも比較的低用量での1日1回投与が可能であることを意味している.

アルマール(住友) 横田 慶之
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 β遮断薬投与時には代償性にα作用が亢進し,降圧作用を減弱させたり,狭心症状の増悪などの副作用をきたすことがある.ゆえにβ遮断薬の循環調節作用にα遮断作用が加われば,その有用性はさらに増すものと期待される.また,α遮断作用は代謝系,特にβ遮断薬による脂質代謝の悪影響を相殺するメリットも期待できる.

 アルマール®(塩酸アロチノロール)は本邦で開発された,α1遮断作用を有し,内因性交感神経遮断作用と膜安定化作用のない非選択性β遮断薬であり,Prichard分類1)III類,4群に属する.

循環器疾患治療薬 その他(狭心症治療薬)

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臨床薬理

●作用機序:ニコランジルは,硝酸基を有するニコチン酸アミド誘導体であり,硝酸薬としての作用機序に加えてKチャネル開口薬の機序をもつ.本剤は血管平滑筋細胞膜のATP感受性Kチャネルを開き,膜電位を過分極にして電位依存性Caチャネルを閉じることで細胞内Ca濃度が低下し,血管が弛緩する.前者の作用は主として心外膜側の太い冠動脈を拡張させ,後者の作用は細い冠動脈を拡張させると考えられている.

●吸収・分布・代謝・排泄:ラット経口投与では血漿中濃度は30分後に最高となり,半減期は1.35時間.代謝物は24時間までに尿中に68%,胆汁中に11%,呼気中に7%排泄される.

循環器疾患治療薬 α遮断薬(降圧薬・心不全治療薬)

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臨床薬理

●作用機序:末梢血管に存在するα1受容体(シナプス後α受容体)を選択的に遮断することにより,末梢血管を拡張させ,総末梢血管抵抗を低下させる結果として降圧作用を示す.

●血中濃度モニタリング:不要.

循環器疾患治療薬 不整脈治療薬

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臨床薬理

●作用機序:Vaughan Williams分類のクラスIa群のNaチャネルブロッカーである.I群抗不整脈薬は,Naチャネルを遮断することにより心筋内の興奮伝導を抑制する.薬剤とチャネルとの結合解離速度はチャネルの状態により修飾される(modulated channel theory).プロカインアミドはチャネルとの解離速度が遅く,拡張期にチャネルから十分に解離しない.したがって,薬物と結合するチャネルの数は興奮回数に依存して増えるため,ブロックの程度も増加する(use-dependentblock).つまり,活動電位第0相の立ち上がり(Vmax)をuse-dependentに遅延させる.心房,心室,副伝導路の活動電位持続時間の延長作用も有し,不応期を延長する.自動能の抑制作用も有する.プロカインアミドは,同じIa群のキニジンやジソピラミドに比較して抗コリン作用が弱く,QT延長の程度も少ない.交感神経抑制作用を有するがその機序は不明である.体表面心電図ではPR,QRS,QTともに延長する.

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臨床薬理

●作用機序:前述したプロカインアミドと同様にIa群に含まれる.INaをブロックし,心房と心室の伝導を抑制する.活性化Naチャネルとの親和性が高くuse-dependencyを示す.INaブロックに加えてIk,IK1,Ito,ICaなどのブロックにより活動電位持続時間が延長すると考えられている.心拍数は洞機能不全のある症例では減少する.器質的心疾患のない症例では,抗コリン作用のためかえって心拍数が増加することもある.副伝導路に対しては順伝導の不応期を延長するが,逆伝導にはあまり影響のないことが多い.顕性WPW症候群(Wolff-Parkinsom-White symdrome)では本剤を内服するとデルタ波が消失するが,順行性房室回帰性頻拍(房室結節を順行性に伝導し,副伝導路を逆行性に伝導する)では無効のこともある.

 心臓のM2レセプターを介する抗コリン作用により,房室結節の伝導が亢進したり心拍数の増加を認めることがある.また,心外の腸管平滑筋のM4(便秘),唾液腺のM3レセプター(口渇)などを介する副作用も認める.

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臨床薬理

●作用機序:Ib群はINaをブロックし,プルキンエ系,心室のVmaxを抑制する.正常組織よりも異常組織内の伝導を抑制する.また不活性化Naチャネルと結合するとされているが,その解離速度が早くAPDを短縮し,またuse-depen—dent blockを呈する.したがって,洞調律時には伝導抑制はほとんどなく,頻脈時にのみ作用を有するという好都合な特徴がある.

●吸収・分布・代謝・排泄:2〜4時間が血中濃度のピークである.吸収率はほぼ100%で,肝臓で約10%が代謝される(first pass effect).急性心筋梗塞では吸収が不完全で血中濃度のピークは4〜6時間である.肝臓で代謝される.クリアランスは肝硬変では著明に低下するが,心不全,腎不全ではほとんど正常である.また,血液透析にても除去されない.催奇形性は動物においては認めないがヒトのデータはない.乳汁中に分泌される.

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 静注専用の抗不整脈薬で,1950年以前は局所麻酔薬として使われていた.一般に,心室性不整脈に対する緊急治療の第一選択薬である.したがって,集中治療室,術中などに使用されることが多い.

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 Ic群抗不整脈薬の催不整脈作用は,CAST(car-diac arrhythmia suppression trial)により知られるようになった1).このスタディは心筋梗塞後の患者の予後は心室性不整脈の抑制により減少するという仮説のもとに,220人の心筋梗塞後の症例を対象に行われたランダマイズドスタディである.その結果Ic群のフレカイニドあるいはエンカイニド内服群では,プラセボに比較して有意に突然死が増加した(9.5%vs3.6%).心室性不整脈が抑制されても生存率改善には結びつかず,かえって死亡率を悪化させることが明らかとなった.陰性変力作用による左室機能不全からの不整脈が生じやすくなった可能性が考えられる.この結果すっかり悪者になったIc群であるが,器質的心疾患のない症例に対してはその限りではない.また,発作性心房細動や上室性不整脈に対して使用された場合,催不整脈作用はほとんど認めないといわれている.

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臨床薬理

●作用機序:冠動脈拡張薬としてヨーロッパで開発された.アミオダロンはⅢ群作用に加えてINa阻害作用(Ⅰ群),β阻害作用(Ⅱ群),ICa阻害作用をも併せもつ.またthyroxineの心臓への作用を予防する.INa阻害は不活性化チャネルに特異的なため,活動電位持続時間の長い組織,脱分極している組織,心拍数の早いときに最も強く現れる.アミオダロンはIksを主にブロックする.これは他のⅢ群薬にはみられない特徴で,活動電位持続時間の延長を早い心拍数時にも備えていることはこのことによる可能性がある.

●吸収・分布・代謝・排泄:13〜103日と非常に長い半減期をもつ.血中濃度が上がるまでに数週間かかり,薬効評価には時間を要する.

循環器疾患治療薬 利尿薬

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臨床薬理

●作用機序:本剤は標準的なサイアザイド系利尿薬である.腎尿細管の主にヘンレ係蹄上行脚皮質部および遠位尿細管の近位部におけるNa・C1の再吸収を抑制することによってNa・C1を排泄し,これに伴い水の排泄も増加させて利尿作用が生ずる.本剤による利尿作用の結果,初期には循環血液量の減少により,長期には末梢血管拡張と昇圧物質に対する末梢血管反応性低下などにより,降圧作用が生ずると考えられる.すなわち,初期には心拍出量が減少し,長期には全末梢血管抵抗が低下して降圧する.

●血中濃度モニタリング:不要.

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臨床薬理

●作用機序:本剤の利尿作用はサイアザイド系利尿薬に類似することから,サイアザイド類似利尿薬と分類されることがある.ただし,本剤は腎遠位尿細管におけるNa・水の再吸収抑制による利尿作用(サイアザイド系利尿薬に共通する)に加えて,血管平滑筋の収縮抑制作用を有するとされる.前者による循環血液量の減少と,後者による末梢血管抵抗の低下作用によって降圧作用が生ずると考えられる.

●血中濃度モニタリング:不要.

循環器疾患治療薬 中枢性交感神経抑制薬(降圧薬)

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臨床薬理

●作用機序:本剤の代謝産物であるα-メチルノルエピネフリンが主として延髄孤束核のα2受容体を刺激するため,末梢交感神経系活性が低下する.この結果として,主に総末梢血管抵抗が減少して血圧低下が生ずる.心拍出量も軽度低下するが,これは心拍数の減少傾向と静脈系の拡張による前負荷軽減による.脳血流量および腎血流量は維持される.

●血中濃度モニタリング:不要.

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臨床薬理

●作用機序:本剤は主として延髄孤束核のα2受容体を刺激して,末梢交感神経の活性低下と迷走神経の緊張亢進を生ずる.この結果,血行動態が変化して血圧低下が生ずると考えられる.投与初期には,心拍数低下傾向により心拍出量が低下して末梢血管抵抗は不変あるいは軽度の増加をきたすが,長期投与時には,心拍出量は前値に回復し末梢血管抵抗は次第に低下する.また,レニン,アルドステロンの分泌低下も降圧作用に一部関与すると考えられる.

●血中濃度モニタリング:不要.

循環器疾患治療薬 ACE阻害薬(降圧薬・心不全治療薬)

レニベース(萬有) 濱田 希臣
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臨床薬理

●作用機序:レニン—アンジオテンシン—アルドステロン(RAA)系は,腎臓と内分泌系の血圧調節因子のなかで最も重要なものであり,本系の活性物質であるアンジオテンシンIIの作用を介して,血圧と体液量・電解質の調節を行っている.ACE阻害薬は図1に示すように,アンジオテンシンII生成の抑制,ブラジキニンの増加により,血圧の下降,心不全の改善をもたらしている.さらに,腎外組織におけるRAA系もオートクリン,パラクリンとして,循環調節系の重要な役割をになっている.心臓組織内RA系の亢進は,冠動脈には収縮と血管構成細胞などの増殖を,心筋細胞に対しては収縮力の増強作用を,また間質系細胞の著しい増殖をもたらすことが知られている.したがって,この系の持続的な亢進は心筋の線維化と心筋障害をもたらし,心臓ポンプ機能を減弱させるとともに,不整脈の発生を増加させる.ACE阻害薬はこれらの異常を抑制することが知られている.

●血中濃度モニタリング:本剤10mg1回経口投与によるTmaxは,腎機能の正常な高血圧患者では4時間,慢性腎不全高血圧患者では9時間であり,しかも血中濃度曲線下面積の著しい増大が認められる.腎機能障害患者での使用には注意が必要である.

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臨床薬理

●作用機序:本剤は世界で初めてのACE阻害薬であり,本邦では1983年2月より発売されている.作用機序はレニベース®と同様である.

●血中濃度モニタリング:本剤は,活性体にSH基をもつ,プロドラッグではないACE阻害薬である.カプトリル錠とカプトリル-Rの健康成人のTmaxは1.13時間と1.25時間であり,レニベース®10mg内服時のTmax4.0時間に比し,著しく短い.

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臨床薬理

●作用機序:両剤はACE阻害活性を有するイミダプリラートのエチルエステル体であり,経口投与後にイミダプリラートとなり作用を発現するプロドラッグである.作用機序は基本的にはレニベース®と同様である.

●血中濃度モニタリング:健康成人に本剤10mgを経口単回投与した後のイミダプリラートのTmaxは7.3時間である.

循環器疾患治療薬 血管拡張薬

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臨床薬理

●作用機序:血管平滑筋,血小板でのアデニレートシクラーゼ(AC)活性刺激によるcyclicAMP上昇により,血管平滑筋での弛緩,血小板での凝集抑制作用を発揮するPGE1製剤である.このうちリプル®は,PGE1を脂肪乳剤化したことにより病巣部に薬剤を高濃度に集中でき,副作用が他のPGE1製剤よりも軽減されている.臨床的には,慢性動脈閉塞症に伴う阻血性潰瘍での疼痛や冷感などの改善が認められている.

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臨床薬理

●作用機序:経口投与が可能なPGE1誘導体である.作用機序は,前項の「注射用プロスタンディン=リプル」と同様である.経口投与のため,外来でのコントロールに適している.

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臨床薬理

●作用機序:PGI2はもともとは血管内皮細胞から産生されている.本剤は血管平滑筋,血小板でアデニレートシクラーゼ活性を刺激し,細胞内cyclic AMP上昇,Ca2+流入抑制などにより血流量増加作用,抗血小板作用を発現する経口可能なPGI2製剤である.血管内皮細胞保護作用も示す.臨床的には慢性動脈閉塞症に伴う阻血性潰瘍での疼痛や冷感などの改善が認められている.

適応疾患と剤形・用量・用法

●適応疾患:慢性動脈閉塞症(閉塞性血栓血管炎〔バージャー病〕,閉塞性動脈硬化症)に伴う潰瘍,疼痛および冷感の改善.

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臨床薬理

●作用機序:ドイツバイエル社が開発した動物膵から抽出精製された組織カリクレインで,酵素作用により血液中α2—グロブリン分画に属するキニノゲンを分解し,低分子の活性ペプチドであるキニン(ブラジキニン,カリジン)を遊離する.キニンは末梢血管拡張ならびに微小循環速度の亢進によって血流増加作用(マイルドな抗圧作用)があり,組織代謝を改善する.主な作用部位は脳や四肢の末梢血管で,特に脳の血管床に選択性が強い.

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臨床薬理

●作用機序:血小板内ホスポジエステラーゼ(PDE)III分画の特異的な阻害作用により,cyclicAMPを増加させ,血小板凝集阻害作用を発揮する.また,血管平滑筋でも,PDE IIIの特異的な阻害作用によって血管拡張を引き起こす.血小板の二次凝集のみならず一次凝集をも抑制し,アスピリン,チクロピジン,PGE1,PGI2よりも血小板凝集抑制は強い.

循環器疾患治療薬 昇圧薬

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臨床薬理

●作用機序:ノルエピネフリン前駆物質として,体内でアミノ酸脱炭酸酵素によりノルエピネフリンに変換されて作用を発現する.血液—脳関門を通過しやすく,低下した脳内ノルエピネフリンを回復させる.臨床的には,パーキンソン病の治療において,本剤はノルエピネリン系を活性化してすくみ足を改善させる.また,中枢性神経疾患に伴う起立性低血圧に効果を認めている.

循環器疾患治療薬 抗凝固薬

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 1920年頃,アメリカで牛が出血して死亡する病気が蔓延し,その原因として牧草であるスイートクローバの中からdicoumarolが抽出され,その誘導体としてワルファリン(ワーファリン®)が合成された.ワルファリンは初め殺鼠剤として使用されていたが,次第に抗凝血薬として臨床応用されるにいたった.

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 本剤は豚の腸粘膜から抽出されたもので,ワルファリンと並んで代表的な抗凝血薬である.ワルファリンは経口投与で緩徐に作用するのに対し,本剤は静注投与が主体で,速効性がある.ヘパリン製剤としては,ヘパリンナトリウムとヘパリンカルシウムがある.

循環器疾患治療薬 抗血小板薬

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 アスピリンは抗炎症作用,鎮痛解熱作用とともにすぐれた抗血小板作用をもち,血栓症の予防薬として最も古くから詳しく検討され,その効果が確認されている.

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 本剤は,虚血性心疾患に対して冠血栓形成防止,冠動脈拡張を目的に,各種閉塞性動脈疾患や弁置換術後の症例に対して血栓・塞栓の予防に,ネフローゼ症候群では尿蛋白減少を目的に用いられている.

パナルジン(第一) 石川 欽司
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 本剤は1973年,フランスで合成された経口抗血小板薬であり,アスピリン,シロスタゾールと並んで広く使用されている.

循環器疾患治療薬 血栓溶解薬

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 組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:t-PA)はヒト組織に広く分布し,強力な血栓溶解作用を有している.1981年,Collenらがヒトt-PAの精製に成功し,1982年,米国Genentech社が遺伝子組換え法により,純度の高いヒトrecombinant tissue-type plasminogen activator(rt-PA:alteplase)の量産に成功した.本薬剤の急性心筋梗塞に対する血栓溶解療法の有用性は全世界で証明され,1987年ニュージーランド,ドイツ,フランス,アメリカをはじめ欧米各国で臨床応用が認可され,日本でも1991年5月薬価基準に収載された.一方,ヒト正常細胞の細胞培養によるt-PA製剤(tisokinase)として,ハパーゼ®,プラスベータ®が1991年3月に薬価基準に収載されている.

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 本剤は,血栓溶解薬として脳・末梢・肺・冠動脈などの血栓塞栓症に用いられている.健康人の尿より抽出したものと,ヒト正常腎細胞より組織培養したものがある.

消化器疾患治療薬 H2受容体拮抗薬(消化性潰瘍・胃炎治療薬)

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臨床薬理

●作用機序:本剤はヒスタミンの基本骨格であるイミダゾール環を有する薬剤で,胃酸を産生・分泌する胃壁細胞基底膜上にあるH2受容体に可逆的に結合し,胃粘膜局所の肥満細胞やエンテロクロマフィン様細胞で合成されたヒスタミンと競合することにより,ヒスタミン刺激を遮断することで酸分泌抑制効果を示す.その他,胃粘膜の血流増加作用,内因性プロスタグランジン・粘液糖蛋白の維持作用など効果は多岐にわたる.

●血中濃度モニタリング:高齢者腎不全症例ではモニタリングすることが望ましい.

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 タガメット®,ザンタック®と同様に,H2受容体拮抗薬として代表的な薬剤である.その特徴を中心に述べる.

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 タガメット®の項を参照されたい.本項では,本剤の特徴および他剤との差異を中心に述べる.

消化器疾患治療薬 プロトンポンプ阻害薬

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臨床薬理

●作用機序:胃酸分泌の作用機序は,胃底腺の壁細胞に存在するガストリン受容体(CCK-B/Ga),ヒスタミン受容体(H2),ムスカリン受容体(M3)にそれぞれガストリン,ヒスタミン,アセチルコリンなどの酸分泌刺激物質が結合すると,細胞内の複雑な生化学反応が活性化される.これに引き続き,胃酸分泌機構の最終的段階でプロトンポンプとして働く酵素H,K—ATPaseが活性化され,その結果,細胞内の水素イオンと細胞外のカリウムイオンが交換されることにより胃内に酸(HCl)が分泌される.本剤は,血液中から壁細胞に取り込まれた後,酸性条件下で活性体(スルフェナミド)に変換する.活性体は胃酸分泌機構の最終的段階であるH,K—ATPaseのSH基と結合して,その酵素を阻害し酸分泌を抑制する.このため,プロトンポンプ阻害薬とも呼ばれ,その酸分泌抑制作用は他剤ではみられないほど強力である.

●血中濃度モニタリング:一般的には行われておらず,臨床的には必要はない.薬物の相互作用を考えるときは,一般的に対象薬の血中濃度測定を行う.

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臨床薬理

●作用機序:本剤はオメプラール®と同様に,胃酸分泌機構の最終的段階であるH,K—ATPaseの阻害作用を有するプロトンポンプ阻害薬である.詳細は前項(オメプラール®)を参照されたい.

●血中濃度モニタリング:一般的には行われていない.

消化器疾患治療薬 酸中和薬(消化性潰瘍・胃炎治療薬)

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臨床薬理

●作用機序:本剤の懸濁内服用(顆粒タイプ)1g中の成分・分量は,乾燥水酸化アルミニウムゲル448mg(酸化アルミニウムとして224mg含有)と水酸化マグネシウム400mgである.その作用機序はアルミニウムとマグネシウムの含有から理解できるが,一つは胃内の中和・制酸作用である.服用後3分でpHは6.3前後に中和され,その持続時間が100分と報告されている.さらに,ラット実験潰瘍モデルにおいて用量依存的に胃粘膜損傷を抑制する.本剤投与後の内視鏡の観察では薬剤が胃粘膜に付着している.

●血中濃度モニタリング:一般臨床的には必要ではない.長期大量投与されている場合,血中マグネシウム,リン酸値を測定する.

消化器疾患治療薬 潰瘍病巣保護薬(消化性潰瘍・胃炎治療薬)

アルサルミン(中外) 宮原 透
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臨床薬理

●作用機序:スクラルファートは,胃または十二指腸病変部を選択的に被覆保護することによって,結果的に粘膜抵抗性を高め,他方ではペプシンの基質蛋白と結合し,酸・ペプシンの攻撃を防ぐことによって,病変部の自然治癒を促進するものと考えられている.最近ではプロスタグランジン生成促進作用,EGF(epidermal growth factor,表皮細胞成長因子),FGF(fibroblast growth fac-tor,線維芽細胞成長因子)の効果増強作用などの報告もみられ,新たな作用も見いだされている.

●血中濃度モニタリング:臨床的には不要.

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 臨床薬理

 ●作用機序:本剤は5%アルギン酸ナトリウム液剤であり,アルギン酸は昆布などに含まれる高分子電解質であり,このアルカリ塩はコロイド的性格をもち種々の薬理作用を有する.そのうち粘膜保護作用と止血作用は次の機序が確認されている.【粘膜保護作用】①粘膜被覆,②PD減少の抑制,③粘膜血流の増加,④胃粘膜ヘキソサミン量増加作用.【止血作用】①圧迫止血・血液拡散抑制,②血小板凝集・粘着,③フィブリン形成促進,④赤血球凝集,⑤線溶抑制.

 ●血中濃度モニタリング:アルギン酸ナトリウムは高分子で,吸収されないため必要はない.

消化器疾患治療薬 その他の消化性潰瘍・胃炎治療薬

コランチル(塩野義) 早川 滉
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臨床薬理

●作用機序:【鎮痙作用】塩酸ジシクロベリンは,消化管の副交感神経末梢を遮断して平滑筋を弛緩させるアトロピン様作用と,平滑筋に直接に作用して弛緩させるパパベリン様作用との二重の鎮痙作用を有する.【制酸作用】酸化マグネシウムの制酸作用は速やかであり,他方,乾燥水酸化アルミニウムゲルの制酸作用は持続時間が長い.FUCHSの変法(in vitro)による制酸力試験で,本剤は0.1Nの塩酸溶液中で速やかに反応し,pH7.0〜8.0の高いpHまで急速に上昇する.以後は下降し,pH4付近を持続する.

●血中濃度モニタリング:本剤中の塩酸ジシクロベリンは,経口投与後速やかに吸収され,投与1〜2時間後に平均最高濃度を示す.主として尿中に排泄され,7日間連続経口投与時(健常成人)の尿中排泄率は79.5%である.

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臨床薬理

●抗潰瘍作用:各種実験潰瘍(寒冷拘束ストレス,インドメタシン,アスピリン,レセルピン,酢酸,焼灼),各種実験胃粘膜病変(塩酸—アスピリン,エタノール,放射線)で,それぞれに強い抗潰瘍作用,胃粘膜病変改善作用が確認されている.さらに,活性酸素が関与していると考えられるCompound48/80,血小板活性化因子による胃粘膜障害を抑制する.

●作用機序:①胃粘液増加作用,②胃粘膜プロスタグランジン増加作用,③胃粘膜血流増加作用・改善作用,④胃粘膜保護作用,⑤胃粘膜増殖帯細胞の恒常性維持作用,⑥脂質過酸化抑制作用.

ムコスタ(大塚) 早川 滉
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臨床薬理

●抗潰瘍作用:各種実験潰瘍(水浸拘束ストレス,アスピリン,インドメタシン,ヒスタミン,セロトニン,幽門結紮,活性酸素が関与)および各種胃炎(タウロコール酸)に対して強い抗潰瘍作用を有し,実験胃炎の発生を抑制する.

●作用機序:①胃粘膜プロスタグランジン増加作用,②胃粘膜保護作用,③胃粘液増加作用,④胃粘膜血流量増加作用,⑤胃粘膜関門に対する作用,⑥胃アルカリ分泌亢進作用,⑦胃粘膜細胞回転賦活作用,⑧活性酸素に対する作用.

ドグマチール(藤沢) 早川 滉
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臨床薬理

●作用機序:胃・十二指腸潰瘍の場合,①焼灼潰瘍および酢酸潰瘍の実験で潰瘍を縮小させ,治癒促進効果を示す.②胃・十二指腸における血流を増加させる.また,視床下部後部電気刺激による胃粘膜血流の停滞ないし部分的虚血現象を抑制する.③胃および小腸の運動を亢進し,内容物の排出および通過を促進する.

 その他,強力な抗ドパミン作用,イミプラミン類似作用を有している.クロルプロマジンやハロペリドールが示す強い麻酔遷延作用は全く示さず,眠気・脱力感はない.精神分裂病,うつ病,うつ状態での適応も認められている.

消化器疾患治療薬 消化管運動亢進薬・調律薬・鎮痙薬

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臨床薬理

●作用機序:抗ドパミン作用を有する薬剤であり,血液—脳関門を通過する.延髄の第4脳室底に存在するchemoreceptor trigger zone(CTZ)に作用して,悪心・嘔吐を強く抑制する.また,消化管の迷走神経末端部に関与するドパミンレセプターを阻害し,アセチルコリン遊離促進作用を発現することから,下部食道括約筋(LES)圧の上昇,胃排出促進などを惹起する.

●血中濃度モニタリング:特に臨床上必要となることはない.

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臨床薬理

●作用機序:抗ドパミン作用を有するが,プリンペラン®と異なり血液—脳関門を通過しにくい.延髄の第4脳室底に存在するchemoreceptortrigger zone(CTZ)に選択的に作用して制吐作用を示す.末梢では,消化管の迷走神経末端部に関与するドパミンレセプターを阻害することで,アセチルコリンの遊離を増加させ,胃運動を亢進させる.また,胃前庭部—十二指腸協調運動を著明に促進し,胃排出遅延例では胃排出を促進し正常化させる.さらに,下部食道括約筋(LES)圧を上昇させることで,胃—食道逆流を防止する作用も有する.

●血中濃度モニタリング:特に臨床上必要となることはない.

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臨床薬理

●作用機序:消化管の輪状筋層と縦走筋層間に存在するアウエルバッハ神経叢の神経末端部に選択的に作用し,アセチルコリンの遊離を促進させる.その結果,上部消化管から下部消化管までの消化管運動を亢進させ,胃・十二指腸協調運動亢進作用,胃排出促進作用,下部食道括約筋(LES)圧上昇作用,腸内容物の輸送促進作用を示す.

●血中濃度モニタリング:特に臨床上必要となることはない.

セレキノン(田辺) 上野 文昭
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臨床薬理

●作用機序:中枢を介さず,消化管平滑筋の受容体に直接作用し,食道から大腸にいたるまで広範囲の消化管運動の異常を,正常方向に調律すると考えられている.すなわち,亢進した消化管運動を抑制する一方,運動低下がみられれば逆に促進させるとされている.

●血中濃度モニタリング:臨床では行われない.

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臨床薬理

●作用機序:消化管をはじめとした腹部臓器の副交感神経節に働き,消化管運動の抑制,胃液分泌抑制,胆嚢収縮抑制などの作用を呈する.

●血中濃度モニタリング:臨床では不必要.

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 本薬剤は内分泌疾患の診断や,肝代謝機能の評価などにも用いられるが,本号の趣旨から,以下の適応に限定し述べることとする.

消化器疾患治療薬 緩下剤

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 本剤は,糞便の“かさ(bulk)”を増加させる,いわゆる膨張性下剤であり,自然の排便に近く,腸管粘膜に炎症を起こさず,習慣性もないことから,慢性便秘症の治療に用いられる.

プルゼニド(サンド) 永井 孝三
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 最も多用されている下剤の一つだが,大腸刺激性下剤に属し,作用は強力だが習慣性を有し,大量投与により腸管粘膜に炎症を惹起し得るとされており,長期連用は避けるべきである.

アローゼン(科薬) 永井 孝三
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 センナ葉,センナ実および微量植物乾燥エキスを加えた生薬で,大腸刺激性下剤の一つである.

ラキソベロン(帝人) 小林 清典
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臨床薬理

●作用機序:本剤の主薬であるピコスルファートナトリウムは,胃・小腸では分解されず,大腸においてはじめて,大腸細菌叢由来の酵素(アリルスルファターゼ)の働きにより加水分解されて,活性型ジフェノール体となる.活性型ジフェノール体は,大腸の蠕動運動亢進作用および水分吸収阻害作用を示し,下剤としての作用を発揮する.

●体内動態と血中濃度モニタリング:経口的に投与された本剤は,大腸で活性型ジフェノール体となり,大部分は糞便とともに排泄される.また,一部は吸収され,肝臓でグルクロン酸抱合を受け,尿中または胆汁中に排泄される.なお,本剤の通常使用量(5〜15mg)での血中濃度は,いずれも測定限界値(0.5μg/ml)以下であり,検出することができないとされている.本剤は蓄積性もないことより,血中濃度をモニタリングする必要はない.

マグコロールP(堀井) 小林 清典
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臨床薬理

●作用機序:本剤は,マグネシウムの薬理作用にもとつく塩類下剤であり,体液に比べ高張である.マグネシウムは胃腸管よりの吸収が困難であるため,腸壁は半透膜として作用し,この塩類の内容物が体液と等張になるまで,水分は循環器系から腸管内に移行する.その結果,腸管内の水分量が著しく増加し,腸内容物が水溶化され容積が増大し,大腸運動を促進して排便にいたる.

●血中濃度モニタリング:本剤は血中にほとんど吸収されないので,血中濃度のモニタリングは特に必要としない.

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臨床薬理

●作用機序:本剤は,1個(2.6g)中に炭酸水素ナトリウム0.5g,無水リン酸二水素ナトリウム0.68gを含有し,添加物として軽質無水ケイ酸,大豆レシチンおよびハードファットを含む.本剤を肛門より直腸内に挿入することにより,直腸内で徐々に溶解し,微細球状態のCO2を発生する.このCO2により直腸粘膜が刺激され,また直腸が拡張することにより排便反射が誘発される.また,直腸の拡張刺激がS状結腸にも伝わり,大腸の蠕動運動が誘発されることにより,生理的に排便作用を発揮するように開発された便秘治療薬である.

●体内動態と血中濃度モニタリング:腸内に常在する無害な炭酸ガスを主体としており,人体に対して悪影響は少ない.血中濃度のモニタリングも必要ない.

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臨床薬理

●作用機序:本剤は,Davisら1)が考案したマクロゴール4000と各種電解質を含む特殊組成電解質液である.本剤は,経口摂取された後も腸管でほとんど吸収や分泌をうけない.大腸内視鏡検査や大腸手術時の前処置に本剤を用いることで,従来の前処置法と比較して,短時間にかつ確実に腸管内容物を排除することができる.実験動物(ラット,イヌ)を用いた基礎的検討でも,本剤の反復経口投与により水様便を排泄し,腸管内容物が有意に減少,排液も透明になることが観察され,明らかな腸管内洗浄効果が確認されている.

●体内動態と血中濃度モニタリング:本剤をラットに経口投与すると,主成分であるマクロゴール4000の大部分は吸収されず,糞中に排泄される.なお,一部は体内に取り込まれ,分解されず尿中に排泄される.ラットに本剤を経口投与した際のマクロゴール4000の血中濃度は,投与後2時間で最高値を示し,以後速やかに減少し,8時間後には測定限界以下になった.また本剤投与により,血清電解質バランスも大きく崩れなかった.ヒトへの投与においても,血清電解質バランスに大きな変動は認められず,マクロゴール4000の血中濃度も,大多数の症例で測定限界以下であった2).よって,血中濃度をモニタリングする必要性はない.

消化器疾患治療薬 止痢薬・整腸薬

ロペミン(大日本) 桜井 幸弘
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臨床薬理

●作用機序:歴史的にも麻薬は強い止痢作用が知られており,その薬理作用の研究が進み,内因性オピオイドレセプターが明らかになった.オピオイドレセプターには少なくとも3つあることが確かめられている.塩酸ロペラミドはこのレセプターの1つに作用し,腸管運動の抑制を選択的に行い,かつ水分電解質の分泌を抑制し,吸収を促進し,強い止痢作用を現すとされている.コデインと同様でモルヒネとは異なり,中枢への取り込みはなく,多倖症をきたさない.また,消化管での作用は麻薬のような耐性がなく,いつまでも同じ量で有効である.消化管からの吸収は悪く,投与後4時間ほどで血中濃度はピークに達するという.また腸肝循環をするとされている.

●血中濃度モニタリング:血中濃度を測定する意義は少ない.

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臨床薬理

●作用機序:大腸細菌叢を安定化することにより,細菌叢の乱れによる下痢・腹痛・腹満を軽減させる.in vitroでは乳酸菌は緑膿菌・ブドウ球菌などの増殖を乳酸などの産生により抑制するとされている.抗生物質投与による大腸細菌叢の変化は,糞便内の総細菌数は抗生物質投与後に109〜1010から104程度まで低下する.Streptococcus,Bacteroides,Lactobaccilusがその減少の原因である.当然ながら,抗生物質に耐性のこれらの細菌を投与すれば細菌叢の保持ができる.耐性乳酸菌と称するものは乳酸を生合成する菌類で,抗生物質に対する耐性を継代培養で獲得しており,必ずしもLactobaccilusではない.また,耐性は他の細菌に伝達されないことが確かめられている.

消化器疾患治療薬 炎症性腸疾患治療薬

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臨床薬理

●作用機序1):サラゾスルファピリン(以下,SASP)は,スルファピリジン(以下,SP)と5—アミノサリチル酸(以下,5—ASA)のアゾ化合物である.経口投与法で約1/3は上部小腸から吸収され,残りは大腸内で腸内細菌によってSPと5—ASAに,分子量比で0.63:0.38の割合で分解される.SPは容易に吸収され,ほとんど肝臓でアセチル化(以下,Ac-SP)と水酸化,さらにグルクロン酸抱合を受けて尿中に排泄される.一方,5—ASAの大部分は便中に排泄されるが,約1/3は吸収されアセチル化を経て尿中に排泄される.SASPの有効成分は,潰瘍性大腸炎に対するSASP,SP,5—ASAの単独注腸法による比較試験の成績から5—ASAと考えられている.作用機序はまだ不明の点が多いが,①アラキドン酸代謝系の主にリポオキシゲナーゼ系代謝産物であるLTB4などの産生抑制,②活性酸素・フリーラジカルの産生抑制と消去,③サイトカイン(IL−1,IL−6,IL−8,TNF—αなど)の産生抑制,などが主な作用起点と考えられる2)

消化器疾患治療薬 潰瘍性腸疾患治療薬

ペンタサ(日清製粉) 日比 紀文
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 潰瘍性大腸炎およびクローン病の薬物療法としてステロイドやサラゾスルファピリジン(SASP)が主として用いられている.しかし,SASPは,メサラジン(5-ASA)とキャリアであるスルファピリジン(SP)がアゾ結合した構造を有しており,服用後,大腸で腸内細菌のアゾリダクターゼによって5-ASAとSPに分かれる1).SASPの副作用は,SPが主な原因といわれている2)

 1977年,Azad Khanらにより5-ASAがSASPの活性本体であることが示された3)が,5-ASAを経口投与すると小腸上部で速やかに吸収され,病変部に有効量が到達しない.そこで,5-ASAをエチルセルロースで被膜した顆粒に,賦形剤を加え錠剤化し,小腸での吸収を抑え,かつ5-ASAの形で小腸および大腸に放出されるように工夫した経口放出調節製剤がペンタサ錠®である.

消化器疾患治療薬 痔治療薬

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臨床薬理

●作用機序:局所感染防御作用,肉芽形成促進作用を有する大腸菌死菌浮遊液と,抗炎症作用を有するヒドロコルチゾンを含む.

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臨床薬理

●作用機序:消炎作用,毛細血管透過性抑制作用を有するパラフレボン(イオウを含む高分子ポリペプチド混合物)に,3種類の緩下剤(センナ,イオウ,酒石酸水素カリウム)を配合している.

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臨床薬理

●作用機序:抗炎症作用のあるヒドロコルチゾン,抗生物質として硫酸フラジオマイシン,局所麻酔薬として塩酸ジブカイン,血管壁を強化するビタミンP様物質エスクロシドを含む.

消化器疾患治療薬 膵疾患治療薬

フオイパン(小野) 河原 弘規
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臨床薬理

●作用機序:本剤はトリプシン,カリクレイン,プラスミン,トロンビン,エステラーゼに対して強い阻害作用を有する蛋白分解酵素阻害薬である.膵炎は,膵実質が膵酵素によって自己消化されて,壊死・脱落を起こすことによって発症する.本剤は,トリプシンの酵素活性を抑制することによって慢性膵炎の疼痛や炎症症状ならびにアミラーゼ値を改善する.

●血中濃度モニタリング:経口投与で速やかに吸収,代謝,排泄されるので,血中濃度モニタリングは不要である.

ミラクリッド(持田) 河原 弘規
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臨床薬理

●作用機序:急性膵炎の病態に関与する種々の膵酵素を広範囲に阻害し,これらの病態の重症化因子といわれている炎症性サイトカインの産生や,好中球エラスターゼの遊離,活性酸素の産生を抑制する.

●血中濃度モニタリング:投与後,最高血中濃度を示したのち速やかに排泄されるので,血中濃度モニタリングは不要である.

消化器疾患治療薬 肝疾患治療薬

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臨床薬理

●作用機序:強力ネオミノファーゲンシー®(Stronger Neo Minophagen C;SNMC)は,本邦で生薬として広く用いられる甘草の成分の一つであるグリチルリチンを主成分としている.グリチルリチンとは,トリペルエノイド系サポニンの一種であるグリチルリチン酸と二分子のグルクロン酸の抱合体である.SNMCを慢性肝炎患者に投与すると,ほぼ用量依存性にトランスアミナーゼを低下させることが広く認められている.その作用メカニズムは,βグルクロニダーゼにより生成されるグリチルリチン酸がステロイド代謝酵素と拮抗し,内因性のステロイドの作用を増強して抗炎症作用を増強するものと考えられてきたが,静脈内投与されたSNMCは,腸肝循環しながら肝に取り込まれ,その一部がグリチルレチン酸となるに過ぎない.今日考えられているSNMCのトランスアミナーゼを低下させる機序は,活性化マクロファージにおけるプロスタグランジンE2産生抑制やホスホリパーゼA2の作用阻害により,炎症性のケミカルメディエーターの産生を抑制することによる抗炎症作用と考えられている.

 SNMCのもっているもう一つの薬理作用は,内因性のインターフェロンγの産生を誘起することと,NK活性を増強して免疫応答を増強する免疫応答調節作用(biological responsemodifier;BRM)である.

モニラック(中外) 井上 和明
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臨床薬理

●作用機序:ラクツロース(モニラック®)は,ガラクトースとフルクトースがエーテル結合することにより,人工的に合成された二糖類である.人の消化管にはラクツロースを単糖類に分解する酵素が存在しないために,経口的に投与された本剤は消化や吸収を受けずに結腸へ到達する.本剤の作用機序は以下の3つに大別される.①水溶性であるので,結腸において水に溶けることにより浸透圧性緩下作用を発揮する.②結腸において一部が腸内細菌により分解を受けて,酢酸,プロピオン酸,酪酸,乳酸などの有機酸が産生されることにより,腸内のpHを低下させてアンモニアの腸管から血中への吸収を抑制する.実際に患者に本剤を投与すると,血中のpHは変化しないが便中のpHは低下する.こうしてできた血中と腸管との間のpHの勾配は,血中から腸管へのアンモニアの移行を促進し,同時に腸管中のアンモニアは非吸収性のNH4イオンに変化して腸管中にとどまり,血中に吸収されない.このようなアンモニアの移行は酸透析と呼ばれ,結腸はアンモニアの主要な産生臓器であるとともに主要排泄器官ともなり得る.さらに,本剤はアンモニア以外の毒性物質の腸管からの吸収も抑制するとの報告もある.③また,本剤の分解により産生されたこれらの有機酸は,腸管の蠕動運動を促進してアンモニアの排泄を促進する.

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臨床薬理

●作用機序:本剤は白血球由来のインターフェロン(IFN)αの遺伝子組み換え型(α2b型)であり,抗腫瘍,抗ウイルス作用を目的として1981年に米国で開発された.肝疾患ではもっぱら抗ウイルス,免疫賦活作用が期待され,わが国では1989年にB型慢性肝炎,1992年にはC型慢性肝炎が効能追加されている.IFNはウイルスを直接不活化するのではなく,細胞の抗ウイルス作用を誘導しウイルス増殖を抑制する.IFNが受容体に結合すると,細胞内に2’−5’オリゴアデニールシンテターゼ(2-5AS),プロテインキナーゼ,ホスホジエステラーゼの3種類の酵素系が誘導される.2-5ASはウイルスのmRNAを分解し,ホスホ」ジエステラーゼは細胞内の2-5ASの濃度調節と同時にt-RNAの機能を失わせる.プロテインキナーゼは,ウイルス二重鎖RNAの存在下でウイルス蛋白の翻訳を抑制する.

●血中濃度モニタリング:抗ウイルス活性の指標としては,IFNの血中濃度よりも血中2-5 AS活性ないしウイルス量(HBV DNA,HCV RNAなど)が測定され,一般的には血中濃度測定の必要性はない.

消化器疾患治療薬 胆石溶解薬

ウルソ(東京田辺) 松崎 靖司
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 ウルソデオキシコール酸(UDCA)は,本邦においては古くから“熊の胆”として癪の痛みに使用されてきた.つまり,胆石発作の治療薬として親しまれてきた.また,明治時代に本邦にてUDCAの構造決定がなされ,現在は胆石溶解療法や,胆汁うっ滞の治療薬として世界中で使用されている.UDCAとケノデオキシコール酸(CDCA)は,7位の水酸基部分の立体異性体である.

消化器疾患治療薬 5—HT3受容体拮抗型制吐薬

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臨床薬理

●作用機序:抗悪性腫瘍薬治療で最も苦痛のある副作用は,吐気・嘔吐である.本剤が臨床に応用されたのは1992年頃からであるが,本剤が使用できるようになる前までは,大量の制吐薬を使用しても吐気・嘔吐を抑えるのは困難なことが多かった.本剤の出現によって,抗悪性腫瘍薬治療時の吐気・嘔吐はほとんど完全にコントロールできるようになってきた.

 吐気・嘔吐は,多くの場合,主にchemorece-ptor trigger zone(CTZ)に存在するドパミン受容体に対する刺激によって起こるが,抗悪性腫瘍薬を使用して起こる吐気・嘔吐は,このメカニズムとは異なっている.抗悪性腫瘍薬の投与により,主に小腸粘膜に存在する腸クロム親和性細胞が刺激されてセロトニンが放出される.放出されたセロトニンは,求心性腹部迷走神経末端にあるセロトニン受容体に結合し,その刺激が直接,あるいはCTZを介して嘔吐中枢に伝達され,吐気・嘔吐が起こる.

神経・筋疾患治療薬 抗めまい薬

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臨床薬理

●作用機序:本剤は,微小循環系,特に内耳の毛細血管前括約筋を弛緩し,内耳血管系の血流を増加するほか,内耳毛細血管の透過性を調整することにより,内リンパ水腫を除去する.また,内頸動脈の血液量を増加し,脳循環をも改善して,めまい,めまい感を消退させる.

●血中濃度モニタリング:不要.

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臨床薬理

●作用機序:本剤は迷路機能の亢進を抑制してめまい症状を軽快させるほか,嘔吐中枢にも抑制作用を示し,悪心・嘔吐を鎮める.

●血中濃度モニタリング:不要.

神経・筋疾患治療薬 抗てんかん薬

デパケン(協和醗酵) 伊藤 直樹
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臨床薬理

●作用機序:まだ十分解明されていないが,バルプロ酸ナトリウム(VPA)は脳内の抑制系であるGABAニューロンの活動性を高め(脳内GABAの量も増加させる),また,フェニトインおよびカルバマゼピンと同様,Naイオンチャンネルの不活性化を延長させる(Naイオンに対する膜透過性の抑制)といわれている.

●吸収・分布・代謝・排泄:腸管からの吸収は迅速で,約1時間でピークに達し,生体内半減期は7〜10時間なので,1日2〜3回の投与が必要である.血清蛋白との結合率は93%と高く,血中濃度が75μg/mlで蛋白への結合は飽和する.通常の測定での血中濃度は蛋白と結合したものにfreeのものを加えた値であり,したがって75μg/ml以上では,freeのVPAの濃度が著明に増加するので注意が必要である(中枢性の効果および副作用はfreeのものによる).効果の判定および増量は定常状態に達してから行うが,その期間は2〜4日なので,3日ごとに増量できる.徐放剤は定常状態に達するまでの期間が7〜10日と長く,ゆっくり増量しなければならないが,1日2回の服薬でよく,血中濃度の変動が少ない.

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臨床薬理

●作用機序:不明な点が多いが,フェニトインと同様,Naイオンチャンネルの不活性化を延長させ,また,シナプス膜へのCaイオンの流入を抑制するといわれている.代謝産物であるcarba-mazepine epoxideも抗てんかん作用を有する.

●吸収・分布・代謝・排泄:腸管からの吸収は遅く不定で,個人差があり,4〜8時間でピークに達する.血清蛋白との結合率は75%.半減期は服薬開始時には24時間と長いが,2〜3週後,自己酵素誘導が起こり,10〜20時間となる.定常状態に達するのに4〜6日かかる.

アレビアチン(大日本) 伊藤 直樹
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臨床薬理

●作用機序:治療量ではカルバマゼピンと同様,Naイオンチャンネルの不活性化を延長させる(Naイオンに対する膜透過性の抑制)が,GABA系には作用しないといわれている.

●吸収・分布・代謝・排泄:腸管からの吸収は遅く不定で,個人差があり,3〜12時間でピークに達する.半減期は20〜24時間と長いので,1日1〜2回の服用でよい.定常状態に達するには5〜15日かかる.治療血中濃度は10〜20μg/ml.血清蛋白との結合率は90%で,95%は肝臓で代謝される.代謝産物には抗てんかん作用はない.

神経・筋疾患治療薬 痙縮・筋緊張治療薬

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臨床薬理

●作用機序:脊髄のγ運動ニューロン系に作用し,筋紡錘の求心性発射を抑制する1)とともに,脊髄での多シナプス反射を抑制することで筋緊張を緩和させる.また血管に対する作用も知られており,血管平滑筋への直接作用や筋交感神経抑制作用2)で血管を拡張し筋血流量を増加させるほか,脳底動脈拡張作用,椎骨動脈血流量の増加作用があるといわれている.

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臨床薬理

●作用機序:中枢神経系に作用せず,筋そのものに作用する末梢性の筋弛緩薬である.骨格筋の収縮は,末梢神経からの刺激伝達で筋細胞膜の電気的興奮が筋線維内に誘導され,筋小胞体からCa2+が遊離し,troponinと結合することで発現する.ダントリウムは筋肉内の興奮—収縮連関における筋小胞体からのCa2+の遊離を抑制することで筋弛緩作用を呈する.一方,悪性症候群や悪性高熱に対しては末梢性の筋弛緩作用だけでなく,中枢神経系の細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制することにより,神経伝達物質の遊離亢進を抑制すると考えられている1,2)

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臨床薬理

●作用機序:催眠薬のメタクァロンの関連化合物で,中枢性筋弛緩作用が強い薬物として選び出された.脊髄から上位の中枢(脳幹レベルでも)にかけて作用するといわれる.単シナプス反射より多シナプス反射を強く抑制する.催眠薬の誘導体ではあるが,中枢の抑制作用は強くない.

神経・筋疾患治療薬 レボドパ(パーキンソン病・パーキンソン症候群治療薬)

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臨床薬理

●作用機序:L-dopaによる治療は,パーキンソン病の線条体で欠乏しているドパミン(DA)をその前駆物質であるL-dopaの投与により補充するもので,本症治療の基本である.DAは脳—血液関門を通過できないため,その前駆物質であるL-dopaを投与する.L-dopaは脳内に入り黒質線条体DAニューロンに取り込まれ,ドーパ脱炭酸酵素によりDAになり治療効果を現す.

●血中濃度モニタリング:L-dopa血中濃度は投与量と相関するが,長期治療での血中濃度は臨床症状の改善度とは必ずしも相関せず,一般治療での血中濃度モニタリングは必要でない.

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臨床薬理

●作用機序:L-dopaによる治療は,パーキンソン病の線条体で欠乏しているドパミン(DA)をその前駆物質であるL-dopaの投与により補充するもので,本症治療の基本である.L-dopaは脳内に入り,黒質線条体DAニューロンに取り込まれDAとなり,治療効果を現す.しかし,L-dopaの95%以上が末梢組織のドーパ脱炭酸酵素でDAに変化してしまい,これによる高率の副作用の出現が問題となる.ドーパ脱炭酸酵素阻害薬(DIC)であるカルビドパ,ベンセラジドは脳内に移行せず,選択的に末梢のドーパ脱炭酸酵素を阻害する.DICの併用には,①L-dopaの内服量を1/5量に減量し得る,②効果の発現が早い,③血中濃度が安定維持できる,④消化器・循環器系副作用が少ない,などの利点がある1).なお,カルビドパとベンセラジドでは効果に本質的な差異はみられない5)

神経・筋疾患治療薬 抗コリン作動薬(パーキンソン病・パーキンソン症候群治療薬)

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臨床薬理

●作用機序:アトロピン類似の抗コリン作用を示す.黒質線条体のドパミン作動ニューロンの障害による相対的コリン作動性ニューロンの機能亢進を抑制し,パーキンソン病の振戦・筋固縮を改善する.

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臨床薬理

●作用機序:アトロピン類似の抗コリン作用を示し,抗振戦薬,抗固縮薬,抗カタレプシー薬として用いられる.

●血中濃度モニタリング:臨床的に不要.

神経・筋疾患治療薬 塩酸アマンタジン(パーキンソン病・パーキンソン症候群治療薬)

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臨床薬理

●作用機序:黒質線条体ドパミン(DA)作動神経終末からのDA放出促進作用,再取り込み抑制作用,合成促進作用および線条体でのNMDA受容体拮抗作用などにより,パーキンソン症状を改善すると推定されている.

●血中濃度モニタリング:通常の診療では行われていない.

神経・筋疾患治療薬 ノルアドレナリン作動薬(パーキンソン病・パーキンソン症候群治療薬)

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 ドロキシドパは天然型1—ノルエピネフリンの前駆体である.

神経・筋疾患治療薬 ドパミンアゴニスト(パーキンソン病・パーキンソン症候群治療薬)

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 本邦で市販供与されているドパミンアゴニストは,麦角アルカロイドの誘導体であるメシル酸プロモクリプチン(パーロデル®)とメシル酸ペルゴリド(ペルマックス®),および非麦角アルカロイド・アゼピン誘導体であるtalipexole hydrochloride(ドミン®)の3製剤である.

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臨床薬理

●作用機序:線条体のドパミンD2受容体のみならず,D1受容体に対しても親和性を有し,シナプス後ドパミンD1およびD2両受容体を刺激し,ドパミン作動作用を示す.

●血中濃度モニタリング:臨床的に必要ない.

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脳循環代謝改善薬とは

 脳梗塞,脳出血の後遺症として,片麻痺などの神経脱落症状のほか,意欲低下,自発性の低下,抑うつ,情緒障害などの精神症候がみられたり,頭重感,めまい,痺れ感などの自覚症状がみられることが多い.脳循環代謝改善薬は主に,こういった症状のある脳梗塞や脳出血の慢性期に投与される.脳循環代謝改善薬は脳循環改善薬と脳代謝改善薬に大別される.前者は脳血管拡張作用を有し,それにより脳血流量を増加させる.後者は脳のエネルギー代謝や神経伝達物質の調整によって脳の機能を改善する.後者では脳の代謝の改善により脳血流の改善もみられる.また,前者は脳血流の改善により脳の代謝を改善させるので,両者を明確に分類するのは困難なことが多く,両者の作用を併せもった薬剤も多い.

 脳循環改善薬が主としてめまいや頭重感などの自覚症状に有効であるとされるのに対して,脳代謝改善薬は自発性の低下や抑うつ状態などの精神症候に効果がある.投与方法は,脳循環改善薬1種類に脳代謝改善薬1種類を併用するか,脳代謝改善薬のうちから作用機序の異なるものを2種類選択することが多い.

神経・筋疾患治療薬 脳代謝改善薬

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臨床薬理

●作用機序:脳内アセチルコリン,ノルアドレナリン,セロトニン系などの神経伝達機能を改善する.また,アセチルコリンレセプター結合能低下,脳内エネルギー代謝障害,脳波異常,脳血流低下などを改善する.

●血中濃度モニタリング:特に必要なし.

ドラガノン(ロシュ) 小川 紀雄
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 臨床薬理

 ●作用機序:中枢アセチルコリン神経系,グルタミン酸神経系の賦活作用により,脳梗塞後遺症の精神症状に効果を示すと考えられる.

 ●血中濃度モニタリング:血中濃度上昇に起因すると考えられる重篤な副作用は報告されていないことから,モニタリングは不要である.

神経・筋疾患治療薬 脳圧降下薬

グリセオール(中外) 棚橋 紀夫
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臨床薬理

●作用機序:本剤は10%グリセリン,5%フルクトース加生理食塩液である.高浸透圧で,血液—脳関門を通りにくいため,静脈内に投与すると血液の浸透圧が上昇するに伴い,血液と脳組織浸透圧差が大きくなり,脳組織内の水が血中に移行することにより脳浮腫が軽減し,頭蓋内圧が下降する.また,グリセリンが代謝され,エネルギーとして利用されるとともに,脳内代謝過程に入り代謝改善を促すという間接作用を併せもつ.

●血中濃度モニタリング:臨床的には不要.

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臨床薬理

●作用機序:本剤はD—マンニトールの20%溶液で,浸透圧利尿作用を有する.静注された本剤は,ほとんど代謝を受けずに尿中に排泄される.しかも,本剤は腎糸球体から濾過された後,尿細管から吸収されないので利尿をもたらす.

●血中濃度モニタリング:臨床的には不要.

神経・筋疾患治療薬 抗血小板薬

アスピリン(各社) 内山 真一郎
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臨床薬理

●作用機序:本剤は血小板において,アラキドン酸(AA)カスケードのうちのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することにより,強力な血小板凝集作用を有するトロンボキサン(TX)A2の産生を抑制して,不可逆的に血小板凝集を抑制する.

●血中濃度モニタリング:日常臨床上,必要となることはない.

パナルジン(第一) 内山 真一郎
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臨床薬理

●作用機序:血小板膜ADP受容体を阻害することにより,ADP受容体・Gi蛋白複合体によるアデニル酸シクラーゼのダウンレギュレーションを阻害し,cyclic AMPを高値に保つことによりGPII b/IIIaへのフィブリノゲンの結合を阻害して,ADP依存性の血小板凝集に対する特異的な抑制作用を発揮する.

●血中濃度モニタリング:日常臨床上,必要になることはない.

神経・筋疾患治療薬 抗凝血薬

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臨床薬理

●作用機序:ビタミンK依存性血液凝固因子(II,VII,IX,X)の肝臓内生合成を抑制する.

●血中濃度モニタリング:不要.

神経・筋疾患治療薬 不随意運動治療薬

リボトリール(ロシュ) 間野 忠明
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臨床薬理

●作用機序:中枢神経系,特に大脳基底核や辺縁系に存在する抑制性のGABA作動ニューロンのシナプス後膜に位置するベンゾジアゼピン受容体にGABAのアゴニストとして高い親和性で結合して,GABAニューロンの抑制作用を特異的に増強する.脊髄運動ニューロンの活動性を中枢性に抑制し,強い筋弛緩作用,抗痙攣作用などを示す.

●血中濃度モニタリング:0.5mg錠2錠を経口投与した場合,最大血中濃度に達する時間は約2時間,半減期は約27時間とされている.有効血中濃度は0.01〜0.06μg/mgである.血中濃度が定常状態に達するまでに4〜6日を要する.

神経・筋疾患治療薬 片頭痛治療薬

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臨床薬理

 主たる作用は,酒石酸エルゴタミンによる頭部血管収縮あるいは拡張抑制による.片頭痛発作中の頭部血管の脈波を測定したWolffらの観察によると,酒石酸エルゴタミン静注により頭部血管の脈波の振幅は低下し,それとともに頭痛も軽減している.酒石酸エルゴタミンによる血管収縮が血管壁への直接作用なのか,あるいは脳血管を支配する三叉神経終末部に作用し,血管作動物質の放出をコントロールするのかについては未解決である.

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薬理作用

●作用機序:血管収縮作用が主たる薬理作用である.脳血管をはじめ他の末梢血管にも作用するが,動脈系より静脈系に対する作用が強いとされている.最近,片頭痛治療薬として注目されているスマトリプタン(本邦未発売)同様,本剤は脳血管のセロトニン受容体の一つである5HTを刺激する.頭部血管拡張および血管周囲の炎症を抑制することにより片頭痛発作に有効と考えられている.

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臨床薬理

●作用機序:塩酸フルナリジンは片頭痛発作の予防薬として使用される.血管作動物質が脳血管を収縮する際,最終的には細胞外Ca2+を細胞内に取り込むことにより血管平滑筋の収縮能を上昇させる.片頭痛の病態の引き金と考えられている脳血管収縮あるいは脳ハイポキシアの改善作用により,片頭痛の発症を予防する.

呼吸器疾患治療薬 鎮咳薬

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臨床薬理

●作用機序:本剤は,中枢性鎮咳薬として位置づけられており,延髄の咳中枢(延髄孤束核,疑核,脳幹網様体,VII,IX-XII脳神経核)の感受性閾値を高めることで,その働きを抑制する.

●血中濃度モニタリング:血漿から測定することは可能であるが1),日常臨床上は行われていない.

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臨床薬理

●作用機序:本剤は鎮痛薬Orthonの誘導体より発見された非麻薬性鎮咳薬である.延髄の咳中枢を抑制し鎮咳作用を発揮すると同時に,気管支腺分泌および気道粘膜線毛運動を亢進させ去痰作用を示す.鎮痛効果はない.また,常用量では中枢神経を興奮させる1)

●血中濃度モニタリング:本剤は安全域が広く,長年の使用経験から必要ないと考えられている.

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臨床薬理

●作用機序:中枢性鎮咳薬であり,デキストロメトルファンに類似の構造と作用をもつ.延髄の咳中枢の感受性閾値を高め,その働きを抑制する.ヒスタミン遊離作用がある1)

●血中濃度モニタリング:血漿から測定することは可能であるが2),本剤は安全域が広いため,日常臨床上は行われていない.健常成人では,服用1〜2時間で最大濃度に達することに留意するとよい3)

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臨床薬理

●作用機序:中枢性鎮咳薬で,延髄の咳中枢の感受性閾値を高め,その働きを抑制する.Mor-phinan系化合物の一つであるが,鎮痛および麻薬としての作用をもたない.

●血中濃度モニタリング:測定可能だが,日常臨床上は行われていない.健常成人では,服用4〜5時間で最高値をとる1)

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臨床薬理

●作用機序:オオバコ(車前草)の花期の全草から抽出したplantagineが有効成分である.鎮咳作用のほか消炎・利尿・止瀉作用をもつ.末梢性の鎮咳薬として分類され,気管支粘液の分泌促進,喀痰粘稠度低下作用があるとされているが,その機序の詳細については不明.呼吸鎮静作用を併せもつ1)

●血中濃度モニタリング:成分分析は可能だが通常は行われない.

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臨床薬理

●作用機序:山桜または吉野桜などのPrunus属植物の樹皮中のニトリル配糖体が主成分1)である.末梢性鎮咳作用をもち,気管支上皮の線毛運動促進作用,気道粘液の分泌亢進,喀痰溶解作用を有する.

●血中濃度モニタリング:通常行われない.

呼吸器疾患治療薬 去痰薬

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臨床薬理

●作用機序:気管線毛運動を亢進する作用のみならず,気管支粘膜および粘膜下気管腺の分泌を活性化し,漿液分泌を増加させる.さらに,気道粘膜の杯細胞および気管腺において,粘液を溶解させる.

●吸収・分布・代謝・排泄:健康成人に塩酸ブロムヘキシン8mgを経口投与した場合,1時間で最高血中濃度に達し,半減期は約1.7時間である.肝臓で主に代謝され,健康成人に経口投与した場合,120時間後までに88%が尿中に,4%が糞中に排泄される1)

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臨床薬理

●作用機序:肺表面活性物質(サーファクタント)の分泌促進により,線毛のない肺胞・細気管支領域のクリアランスを亢進する1)とともに,気道液のゲル層の厚みを調節することで線毛の運動を円滑にさせ2),痰のクリアランスを促進する.加えて,気道液の分泌も促進し,痰の気道粘膜に対する粘着性を低下させ,痰の喀出を容易にする3)

●吸収・分布・代謝・排泄:健常成人に本剤30mg単回経口投与後の血漿中未変化体濃度は投与後2〜4時間でピークに達する.半減期は約5時間で,その後比較的速やかに減少する4).肝臓で代謝され,投与後72時間までに,未変化体およびその抱合体が50〜70%尿中へ排泄される5)

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臨床薬理

●作用機序:痰の性状を線毛によって輸送されやすい生理的気道液の性状に近づける作用と,気道粘膜における線毛運動を促進し,傷害された線毛を修復する作用を有する1,2)

●吸収・分布・代謝・排泄:健康成人にカルボシステインとして500mg単回経口投与したとき,1.6〜2時間後に最高血中濃度に達し,半減期は約1.5時間である.カルボシステイン1gの単回経口投与では,2〜4時間後の尿中への排泄は未変化体がほとんどであり,72時間後までに95%以上が尿中に排泄される.

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臨床薬理

●作用機序:気管粘膜線毛運動を亢進させる1).また,その界面活性作用により,エアゾル吸入療法の基剤として広く用いられており,均一な粒子のエアゾルを形成し,その蒸発を抑制するので,エアゾル状態を持続して,ネブライザー吸入療法を有効なものとする2)

●吸収・分布・代謝・排泄:消化管からはほとんど吸収されない3)

呼吸器疾患治療薬 第一世代交感神経刺激薬(気管支拡張薬)

ボスミン(第一) 赤柴 恒人
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交感神経刺激薬とは

 交感神経刺激薬は,気管支喘息発作に対する気管支拡張薬として第一選択の薬剤である.投与方法には,吸入,経口,注射の3通りがあるが,多くは吸入で用いられる.最近では,ほとんどが携帯に便利なハンドネブライザー(MDI:metered-dose inhaler)用に作られている.気管支平滑筋は交感神経の興奮により弛緩し拡張する.交感神経刺激薬は,αとβの両方の受容体を刺激するが,気管支の拡張はβ受容体の興奮により起こる.気管支に分布している大部分の受容体はβ2受容体であり,したがつて,β受容体の刺激作用をもち,かつβ2受容体のみに選択性をもつ薬剤が最も有用である.最初に開発された交感神経刺激薬は第一世代(ボスミン®,メジヘラー・イソ®,ストメリンD®,アロテック®)と呼ばれ,α・β受容体あるいはβ1・β2受容体刺激作用を有していたため,気管支拡張作用と同時に循環系への副作用が問題であった.その後開発された第二世代(サルタノール®,ベネトリン®)はβ2選択性にすぐれ,循環系への影響が少なくなつており,現在でも治療の主役となっている.近年開発されている第三世代(メプチン®,ベロテック®)は,さらにβ2選択性にすぐれていると同時に作用持続時間が長くなっており(long-acting),1日2回投与ですむように改良されている.

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臨床薬理

 硫酸イソプロテレノールとして,交感神経β受容体に作用することにより気管支拡張効果を発現するが,β1受容体をも刺激するため,循環系への影響が強い.

ストメリンD(藤沢) 赤柴 恒人
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臨床薬理

 硫酸イソプロテレノールにステロイド(デキサメサゾン)を加えた製剤で,イソプロテレノールの気管支拡張作用とステロイドによる抗炎症作用により,気管支収縮を軽減する.基本的にはメジヘラー・イソ®と同様に,β受容体刺激による気管支拡張が主な作用である.

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臨床薬理

 本剤は硫酸オルシプレナリンで,第一世代に属する薬剤であるが,イソプロテレノールに比し,β2選択性を有し,β2刺激作用はやや強く,β1刺激作用は弱い.

呼吸器疾患治療薬 第二世代交感神経刺激薬(気管支拡張薬)

サルタノール(グラクソ) 赤柴 恒人
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臨床薬理

 気道平滑筋に存在するβ受容体のほとんどはβ2受容体であるため,このβ2受容体を選択的に刺激すれば,気管支平滑筋の弛緩,気道粘膜,粘膜下の分泌亢進,透過性浮腫の軽減などの効果が発現される.本剤は硫酸サルブタモールであり,β2受容体だけを刺激してβ1受容体への作用を弱めた代表的なβ2刺激薬である.

ベネトリン(三共) 赤柴 恒人
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臨床薬理

 硫酸サルブタモールであり,サルタノール®と同様である.

呼吸器疾患治療薬 第三世代交感神経刺激薬(気管支拡張薬)

メプチン(大塚) 赤柴 恒人
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臨床薬理

 塩酸プロカテロールとしてβ2受容体刺激作用を有するが,第二世代の薬剤よりさらにβ2選択性が高く,かつ作用の持続時間が長い(10〜12時間).したがって,投与回数が1日1〜2回でよく,治療のコンプライアンスの向上が図れる.

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臨床薬理

 臭化水素酸フェノテロールとして,β2選択性が第二世代の薬剤より増強され,気管支平滑筋に対する作用は,イソプロテレノール,サルブタモールより強く,心血管系に対する作用は両剤より弱い.作用持続時間は両剤より長く,8時間以上持続する.

呼吸器疾患治療薬 キサンチン系製剤(気管支拡張薬)

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 テオドール®,テオロング®,ユニフィル®はテオフィリン製剤で,ネオフィリン®(アミノフィリン)はテオフィリン(約85%)とエチレンジアミン(約15%)の合剤である.テオフィリンの薬理作用は呼吸器系,中枢神経系,心血管系,腎,消化器系,代謝に及ぶ(図1).本項では,気管支拡張作用など呼吸器系への作用を中心に解説する.

呼吸器疾患治療薬 抗コリン薬(気管支拡張薬)

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 抗コリン薬は,主に副交感神経のムスカリン様作用を抑制することにより,気道収縮を予防する作用を有するとされる.気管支平滑筋収縮の予防として用いられる薬剤の投与経路は吸入が主体であり,現在テルシガン®(臭化オキシトロピウム),アトロベント®(臭化イプラトロピウム),フルプロン®(臭化フルトロピウム)が使用される.本剤は薬理作用としてアトロピン様作用を有するため,脳神経系,心血管系,消化器系,眼,前立腺など多岐にわたる標的臓器をもつが,先に述べたように本剤は吸入で用いられるため,これらの臓器への影響は少なく,本項では主に気道平滑筋と気道分泌の観点から解説する.

呼吸器疾患治療薬 抗アレルギー薬

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臨床薬理

●作用機序:肥満細胞の膜の安定化に直接的にも間接的にも働き,脱顆粒やヒスタミン遊離を抑制する.また,局所において好酸球・好中球の集積と活性化の抑制,Tリンパ球の集積抑制,マクロファージの活性化抑制,血小板の活性化抑制,知覚神経C-fiberの活性抑制,接着分子ICAM−1,VCAM−1,ELAM−1の発現抑制,IgE産生抑制などをもたらす.

●血中濃度モニタリング:必要なし.

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臨床薬理

●作用機序:肥満細胞や好塩基球などからのIgE抗体を介したヒスタミン,ロイコトリエン,血小板活性化因子(PAF)などの遊離を抑制する.また,アレルゲンによる好酸球の病巣部浸潤抑制作用,好酸球活性化の指標である血清ECP値の低下をもたらす.

●血中濃度モニタリング:必要なし.

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臨床薬理

●作用機序:従来よりSRS-Aと呼ばれていたアラキドン代謝産物であるロイコトリエン(LT)C4,LTD4,LTE4の受容体拮抗薬であり,LTの生理作用である気管支収縮,気道の粘液分泌亢進および血管透過性亢進に対して抑制的な効果を有する.また,好酸球の浸潤を抑制することや,気道過敏性の亢進を抑制することも報告されている.

●血中濃度モニタリング:必要なし.

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