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骨髄腫はもともと高齢者に多く,異常γ-グロブリンによる高蛋白血症,貧血,病的骨折,腎不全,易感染性など多彩な症状を呈する.現在では種々の補助手段が開発され,強力な化学療法やインターフェロン療法があるが,いずれも副作用の面から高齢者には不適な場合が多い.Retrospectiveにみると,無治療経過観察のほうが余命が長いと推定される症例もしばしばあるが,骨髄像で骨髄腫細胞が多く貧血も強いときや,他の症状があってマイルドな治療を試みたい症例に,時に遭遇する.このようなときにはプレドニン®20mg/day,メルファラン4mg/dayを3日間投与,11日休薬(あるいは4投10休)の外来治療が奨められる.血小板数,白血球数を指標として減少傾向となればメルファランを休薬し,貧血が進めば時に輸血を行う.教科書には少量持続と間歇大量投与法が載っているが,本法は少量間歇投与療法である.本法と他の治療法の比較検討はなされていないので正確な有効率は不明だが,腎不全や重篤な感染症を起こさなければ,これで数年間比較的良好なQOLが得られる症例をしばしば経験する.さらに併用療法として,中等度の腎不全を合併した場合はクレメジン®1日を12〜30カプセル分3と,緩下剤を併用する.高γ-グロブリンを呈する症例は二重膜濾過血漿交換法(double filtration plasmapheresis:DFPP)を1〜2回併用すると効果的である.慢性血液透析の内シャント穿刺に用いる19G側孔付きハッピーキャスで大腿静脈あるいは内頸静脈を穿刺し脱血,同じく19G側孔なしハッピーキャスで太めの皮静脈を穿刺し返血すれば,太いショルドンカテーテルを留置しなくてよいし,短時間の圧迫で止血できる.DFPPには血流量は80〜100ml/min採れれば十分で,高齢者の場合,開始時は50〜60ml/minぐらいから徐々に増やしていくことと,事前に十分輸液して脱水のないようにしておくことが重要である.
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