iatrosの壺
HMG-CoA還元酵素阻害薬とCPK
田中 謙二
1
1国家公務員等共済組合連合会浜の町病院内科
pp.290
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905600
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退職された先生から引き継いだ患者さんは66歳,145cm,66kgと,小太りの元気のいい女性でした.高コレステロール血症の診断で,プラバスタチン10mg/dayが投与されていましたが,コレテロールは259mg/dlと高値でした.その時,CPKが411IU/lと高値であることに気づきました.以前のデータをみると徐々に上昇してきているようです.HMG-CoA還元酵素阻害薬によるCPK上昇,横紋筋融解ととっさにひらめきました.とりあえず,シンバスタチン5mg/dayへ変更し,様子をみることにしましたが,その後も613IU/lとCPKの改善はみられません.そこで,ある可能性を考えて,検査をしてみました.結果は,賢明な読者はおわかりでしょうが,T30.62ng/ml,T41.06μg/dl,TSH152.4μIU/mlと立派な甲状腺機能低下症でした.臨床症状がなく,コレステロールとCPK以外に異常がみられないため見逃されていたようです.CPKの上昇を薬の副作用と思ったばかりに診断に時間がかかってしまいました.甲状腺ホルモンの補充を開始し,コレステロールとCPKは正常化しました.少し体調がよくなったのではないかと期待する私に,「少し体は締ったごとありますが,体重は減らんし,何も変わりません」とその患者は言うのでした.
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