iatrosの壺
薬剤性肝障害の一例/針に御用心
濱戸 教行
1
,
黄 正一
1
,
木下 栄治
2
1大和高田市立病院内科
2木下クリニック
pp.59
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905425
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症例は49歳男性.主訴は,発熱と全身倦怠感.既往歴,家族歴,特になし.現病歴は,4日前からの発熱にて,近医受診し,肝酵素の上昇を認め,紹介入院となる.総ビリルビン2.3,GOT2,586,GPT3,581と著明に上昇.白血球は9,200と軽度上昇し,異型リンパ球を22%認めた.急性ウイルス性肝炎を疑い,対症療法で経過観察予定であったが,入院翌日に全身に多形滲出性紅斑出現.もう一度病歴を詳しく聞いてみると,最近カルバマゼピンを服用開始していることが判明.薬剤を中止するとともに,ステロイドの投与を開始.翌日には解熱し,順調に肝酵素も低下し,異型リンパ球も消失し,発疹も消失した.以上より,カルバマゼピンによる薬剤性肝炎と診断.
カルバマゼピンによる肝障害と発疹は比較的多いが,本症例のように肝酵素が2,000〜3,000以上と著明に上昇することは少ない.急性ウイルス肝炎様の肝酵素の上昇を認めても,薬剤性肝炎を念頭に置き,また,病歴,薬剤歴を十分聴取する必要があることを改めて考えさせられた症例である.なお,IgMHA抗体,HBs抗原,HCV抗体は経過中陰性であった.
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