iatrosの壺
病気は1つだけとは限らない
山崎 忠男
1
1亀有病院内科
pp.307
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905611
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黄疸,腹痛,発熱を主訴に99歳の女性が入院してきた.この方は九州なまりがあり,たいへん小柄な方で愛敬もあり,可愛いおばあちゃんという印象であった.腹部エコー,腹部CT検査や臨床検査などから胆嚢結石,総胆管結石と診断された.高齢でもあり,身体所見からも手術的治療は困難と考えられ,胆管炎治療として抗生剤とともに内視鏡的乳頭切開術を施行し,総胆管結石の排石を行った.数回の施行で総胆管結石は除去され,胆管炎も治癒した.退院の時も大変感謝された.胆嚢結石については外来で経過観察していく方針であったが,その後は来院されず,忘れかけていた頃(6〜7カ月経過していたか),食欲不振で再び来院した.黄疸が再び出現し,衰弱と脱水もあり,即日入院した.再び胆石による症状と考えられ腹部エコー検査を病室で施行したところ,胆嚢結石だけでなく肝内に高エコー腫瘤が多発し,肝門部に胆管癌を思わせる腫瘍像と肝内胆管の拡張像を認めた.このときは一瞬目を疑った.わずか数カ月で全く異なるエコー像を示していた.経皮経肝胆道ドレナージ術を施行しようとしたが本人と家族の反対にあい施行できず,わずか数週間で死亡した.ERCPの写真を見直してみると,結石だけで満足していた感がありやや不十分であった.
たいへん反省すべき症例であり,恥を忍んで紹介したが,皆さんもこういうことのないよう,必ずしも病気は1つだけとは限らないことを肝に(胆に?)銘じておきましょう.
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