iatrosの壺
シクロスポリンによる難治性潰瘍性大腸炎の治療例
川村 修司
1
,
関 孝一
1
1兵庫県立西宮病院内科
pp.102
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905461
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潰瘍性大腸炎(UC)は原因不明の炎症性腸疾患であるが,中等症以上の活動性を抑えるためには副腎皮質ホルモン薬が主力となる.近年,強力な免疫抑制薬として臓器移植分野で広く使用されているシクロスポリン(CsA)は,UC症例においても試され,その有用性が報告されている.われわれも治療に難渋したUC症例にCsAを投与し,一定の効果を得た.
症例は39歳女性.1992年12月から2回/dayの下血があり,翌年3月来院,注腸透視,内視鏡検査(CF)などから直腸炎型のUCと診断.サラゾスルファピリジン(SASP)を投与し,改善した.1994年5月から頻回の粘血便,腹痛が出現し,注腸透視にて全大腸炎型のUC.IVH,SASP,プレドニゾロン(PSL)60mg/day静注にてもUCをコントロールできず,強い腹痛と10回/day以上の下血,発熱が続き,貧血(Hb 7.3g/dl)と低蛋白血症(Alb 1.8g/dl)が進んだ.8月20日からCsA内服を開始し,血中トラフレベルを100ng/ml以上に保つようCsAを漸増した(5 mg/kg/day).8月22日から腹痛軽減傾向を示し,9月末には下血消失,1回/dayの普通便となった.9月30日のCFでは,多発潰瘍は消失し,炎症性ポリポージスを認めた.1995年4月のCFでは,寛解期であった.その後にPSLを7.5mg/dayのまま,CsAを2.5mg/kg/dayに減じたところ,便回数が増え,下血が出没した.
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