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喘息に対するステロイド吸入療法は喘息のコントロール上大変有用である一方,稀ではあるが,局所における免疫抑制により細菌性気管支炎を合併することがある.この場合,気道の炎症を制御しながらステロイドからの離脱を図ることは非常に難しい.他方,抗炎症薬であるインタール®(クロモグリク酸ナトリウム)には感染症の増悪を招くような免疫抑制作用は認められていない.細菌性肺炎の合併を契期に,BDP(プロピオン酸ベクロメタゾン)吸入からインタール®吸入へ移行可能であった患者について報告する.
症例は18歳女性.6カ月前より喘息を発症し,前医で治療を開始されていた.喘息は非アトピー性であり,6カ月間BDP1日800μg(200μgずつ1日4回吸入)使用し,これまでコントロール良好であったが,38℃の発熱と咳嗽・膿性痰を訴えて当院を受診した.胸部X線・CTスキャンから右肺下葉に約1cmの小肺炎像が認められ,喀痰培養でStreptococcusを検出したため,FMOX(フロモキセフナトリウム)1gを1日2回点滴静注で投与開始した.同時にインタール®吸入を1回2mg,1日4回で開始し,定期的に動脈血酸素分圧を測定し(酸素吸入も併用しPaO2>80torrを維持),アミノフィリン持続点滴静注と間歇的β2-アゴニスト吸入を併用しつつ,BDPを5日ごとに200μgずつ減量した.2週間後に肺炎像は消失し,3週間後にはBDPから離脱しインタール®吸入のみで呼吸機能を維持できるようになった.この間,全身的なステロイド投与(静注・内服)は行っていない.退院後,ときどき外来においてアミノフィリン静注およびβ2-アゴニスト吸入を行うことにより小発作をコントロールできた.2カ月目には発作で夜間外来を訪れることがなくなり,現在は定期的に外来受診しながら通学している.
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