増刊号 Common Drugs 350の投与戦略
感染症治療薬
その他の殺菌性抗生物質
塩酸バンコマイシン(塩野義)
長谷川 廣文
1
1近畿大学医学部第3内科
pp.479-481
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905736
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臨床薬理
●作用機序:塩酸バンコマイシン(VCM)は,Streptomyces orientalisから分離された分子量1,486のグリコペプチド系抗生物質である.VCMの作用機序は,細胞壁合成の初期過程においてムレインのD-alanil-D—alanineに水素結合して,ムレイン架橋酵素と基質との結合を阻害する1).したがって,VCMの抗菌スペクトラムは,メチシリン耐性ブドウ球菌(methicillin-resistant Sta-phylococcus aureus;MRSA)も含めたブドウ球菌属,連鎖球菌属,腸球菌属,クロストリジウム属などの好気性および嫌気性のグラム陽性菌に抗菌力を示すが,D-alanil-D—alanineの部位が外膜に覆われているグラム陰性桿菌にはほとんど抗菌力を示さない2).VCMに対する耐性菌は,黄色ブドウ球菌では報告がみられていないが,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌や腸球菌属では欧米を中心に報告がみられており,今後本邦でも注意が必要である.
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