iatrosの壺
分枝鎖アミノ酸製剤とQOL
塩田 哲也
1
1国民健康保険福渡病院内科
pp.122
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905478
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分枝鎖アミノ酸を中心とした特殊組成アミノ酸経口製剤が市場に出て既に8年が経過した.慢性肝不全に対する分枝鎖アミノ酸療法では,肝性脳症急性期に用いる輸液製剤に対して,脳症発現の予防や肝硬変の栄養状態改善の面で経口製剤の意義があるものと考えられる.アミノレバンEN®の臨床治験は1980年代初めに開始されたが,かなり早い時期から本製剤が投与されていた肝硬変の患者に最近再会できたので紹介したい.
症例は現在72歳女性.1970年代後半から既に肝障害を指摘されており,のちに組織学的に肝硬変と診断された.1981年に肝性脳症発現のため大学病院に入院.当時,血中アンモニア211μg/dl,フィッシャー比0.85,KICG0.046であった.初回脳症から3カ月後にアミノレバンEN®の治験が開始されたが,投与2週間でフィッシャー比,窒素バランス,脳波,同年代の健常人より遅延していた反応時間などが改善した.その後も,脳症悪化で輸液製剤が使用された期間を除いてほぼ継続してアミノレバンEN®が投与されている.この患者は分枝鎖アミノ酸製剤が有効であった代表例として長く筆者の記憶に残っていたが,当地に赴任することで偶然再会することができた.最近はアミノレバンEN®2パック/dayの処方でフィッシャー比1.4,血清アルブミン3.49g/dl,総コレステロール224mg/dl程度である.
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