iatrosの壺
フロセミド投与にて誘発されたtorsades de pointesによる意識消失発作/漢方薬の服用方法について
天野 利男
1
,
溝部 宏毅
2
1市立池田病院内科
2みぞべ内科循環器内科
pp.65
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905431
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症例は90歳男性.1994年7月上旬より四肢の浮腫出現.7月23日より近医でフロセミド40mg,エナラプリル2.5mg,グルコン酸カリウム1mEq相当を処方され,浮腫は急速に消失.8月2日,転倒による左眼瞼外傷にて当院外科受診.縫合直前,突然意識消失.呼吸停止にいたるも,ほどなく意識回復.心電図では多源性心室性期外収縮,完全房室ブロックを呈し,血液検査ではK2.7mEq/lと低値を示した.入院後,再び意識消失.torsades de pointes(TdP)より心室細動に移行,直流除細動にて洞調律に復帰.このため,カリウムの補給を行いつつ永久ペースメーカー埋め込み術施行.以後,意識消失はみられなくなった.近医における心電図経過をみると,1991年の心電図では1度房室ブロック,完全右脚ブロック,左軸偏位,1993年には2度房室ブロック(Wenckebach)と房室ブロックの進展が認められており,今回完全房室ブロックによる徐脈性心不全を背景に,利尿薬内服による低K血症がTdPを誘発したと考えられた.
フロセミドなどのカリウム排泄性利尿薬を使用するにあたっては,徐脈の有無をチェックし,代謝異常をきたしやすい高齢者では,薬剤初期量の減量や副作用のモニターを頻回に行うなどの注意が重要であると思われた.
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