iatrosの壺
立場変われば訴えも変わる
木下 栄治
1
1木下クリニック
pp.72
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905437
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今年5月に開業して約2カ月経った.病院勤務時代と異なり,様々なことに遭遇する毎日である.そのような診療生活のなかで,患者さんの訴えで考えさせられたことがあった.
空咳はACE阻害薬の副作用の一つとして有名だが,筆者が病院に勤務していた頃はこの副作用を訴える患者さんは多くなかったので,新たなACE阻害薬の宣伝に来るMRの方が咳の副作用が少ないことを強調されても新薬に飛びつく気にはなれず,MRの方が困惑していた.ACE阻害薬については,1〜2剤を投与回数別に漫然と使用していたのである.しかし,勤務していた病院の近くに開業したため,病院時代に診察していた患者さんも来院してきて,ACE阻害薬の咳についての訴えが多くなった.また,新たな高血圧の患者さんにACE阻害薬を投与すると,病院時代と異なり明らかに空咳の訴えが多い.別に,開業したからといって私の態度が全く異なるわけではない.病院勤務時代も十分に副作用について聞いていたつもりであった.
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