iatrosの壺
3種の悪性腫瘍治療を可能にしたのは?
中村 昇
1
1京都第一赤十字病院呼吸器科
pp.376
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905656
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先日,70歳の男性患者の剖検に立ち会った.20年前に非B型慢性肝炎・特発性血小板減少性紫斑病と診断され,脾摘を受け,HCV肝硬変から肝癌に進展し,エタノール注入や肝動脈塞栓術・抗癌剤動注を繰り返し,無効となり亡くなられた.
62歳の時,呼吸器科に紹介され,副鼻腔炎・気管支拡張症・緑膿菌肺炎で入院し,在宅酸素療法下に退院となった.通院中,背部の皮下結節に気づかれ,生検の結果皮膚T細胞性リンパ腫(HTLV—I陽性)と診断されたのは,翌年だった.血液内科に転科し,化学療法が行われ寛解となったが,緑膿菌肺炎がコントロールできなくなり,化学療法の継続は断念された.翌年に肝癌が診断され,治療が始められた.呼吸器科ではエリスロマイシン少量持続療法が奏効し,在宅酸素療法を離脱した.66歳になり,右上葉に空洞を伴う腫瘤が出現したため,気管支鏡を行ったが確診にいたらず,経皮穿刺生検目的で入院の際,リンパ腫の再発を発見した.血液内科と再協議の結果,再度化学療法を行うこととし,感染はなんとかコントロールし再び寛解となったが,半年後肺腫瘤は増大した.2度目の気管支鏡検査で扁平上皮癌と診断され,血液・肝・呼吸器の主治医が集まり,患者さんを含め相談となった.低肺機能・術後感染のリスクと,合併している他の疾病の予後を考え,放射線療法が選択され,60Gyの照射で寛解を得,再び外来通院可能となった.
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