iatrosの壺
抗狭心症薬の休薬により急性冠動脈閉塞を生じた不安定狭心症の一例
齋藤 誠
1
1西尾市民病院内科
pp.63
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905429
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症例は,58歳男性.一過性脳虚血発作と糖尿病の既往がある.喫煙歴なし.これまでに狭心症の既往はない.平成7年2月24日午前3時,15分間持続する前胸部圧迫感を2度自覚した.午前3時55分,当院救急外来を受診.来院時,前胸部圧迫感は消失し,心電図所見は正常であった.不安定狭心症として入院を勧めたが,多忙のため拒否された.以後,1日量ニコランジル20mg,ジルチアゼム120mg,アスピリン81 mgおよびニトログリセリンテープ剤2枚の処方にて,狭心症発作は完全に消失した.3月9日のトレッドミル運動負荷検査では,心筋虚血は誘発されなかった.
3月20日,アセチルコリン負荷を含めた冠動脈造影検査のため入院した.同日よりジルチアゼムを中止したが,胸痛は認めなかった.3月22日,検査当日,朝よりニコランジルを中止,午前11時,テープ剤を剥がした.午後1時,一時的ペースメーカー挿入後,対照としての右冠動脈造影を施行したところ,dominantな右冠動脈3番にhazinessを伴う80%の長い狭窄を認めた.複雑狭窄病変と判断し,直ちにニトログリセリン0.5mgを右冠動脈内に注入し,以後の検査を施行した.左冠動脈造影では回旋枝13番に60%の狭窄を認め,左室造影は正常であった.直後にジルチアゼム60mgを内服し,他の薬剤も再開した.
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