iatrosの壺
副腎皮質ホルモン内服中の外来患者
川嶋 乃里子
1
1市立札幌病院神経内科
pp.378
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905658
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臨床医ならば,副腎皮質ホルモン投与中の患者の血糖や感染症に留意するのは当然だが,ちょっとした油断からこんな結果にもなる.
患者は54歳の男性.IgA腎症で肉眼的血尿が続き,プレドニゾロン20mg/day内服中だった.6日前よりの右頸部から右上肢への放散痛と右上肢の脱力を主訴に外来受診し,内科から整形外科へ,さらに神経内科に紹介されてきたのは夕方だった.発熱なく1カ月に約7kgの体重減少があり,軽度の意識障害(JCS1)と,右第7頸髄神経根症によると考えられる脱力と感覚障害あり,腱反射は右上腕三頭筋で消失,左上肢・両下肢で亢進しており,当初は硬膜外腫瘍(つまり転移性腫瘍)で脳転移を伴っているのかと思われた.早速頭頸部CTを撮り,第6・7頸椎と第1胸椎の骨破壊と椎体周囲に広がる腫瘤,さらに硬膜外腫瘤を認め,後二者は造影剤で増強され,脊髄は左側へ圧排されていた.放射線診断部からも転移性腫瘍とのレポートが戻ってきた.では入院して……と,血液検査の結果をみると,血糖576mg/dlである.あわててレギュラーインスリンの点滴を開始し,翌朝意識清明となったところで,もう一度患者にたずねてみると,約1カ月前に発熱・咽頭痛があり,内科よりレボフロキサシン300mg/dayを投与され軽快したが,軽い頸部痛が続いており,1週間前より著しい口渇がありペットボトルのジュースを大量に飲用したということだった.
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