iatrosの壺
吸入ステロイド療法の効果は?—やってみせて,真似てみさせて,褒めてやらねば
横山 泰規
1
1吉田内科クリニック
pp.252
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905573
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気管支喘息のステロイド(beclometasone dipropionate:BDP)吸入療法には,今やゆるぎない評価がある.しかし,これも吸入手技の確実な伝授が前提のうえである.
中等症で通年性の喘息発作を示す19歳男性の大学受験生がやってきたのは夏休み前.小児喘息のときから,徐放性テオフィリン薬と吸入・経口β2刺激薬で治療していたという.その日はピークフロー(PEF)で45%の発作の治療を行った.1週間ほどして,ピークフローメーターによる測定に興味を持ったことを確かめて,BDP吸入療法に踏み切った.身振り手振りで,1日400μgの吸入を教えた.ところが,秋風が立つ頃になってもいっこうに発作が減らず,普段もPEFが60%程度.来院の際,たまたま診察室でBDP吸入をさせてみた.彼は十分に息も吐かず,いきなり定量噴霧式吸入器(MDDを口元で噴霧した途端,驚いたように息を止めてしまった.これまでの謎が一気に氷解した.空中へ向けてMDIを噴霧してみると,確かに一瞬,びっくりするほどの音で薬剤が飛び出すので,彼の戸惑いも理解できた.
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