増刊号 Common Drugs 350の投与戦略
代謝・栄養障害治療薬
糖尿病合併症治療薬
キネダック(小野)
堀田 饒
1
1名古屋大学医学部第3内科
pp.327-328
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905625
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臨床薬理
●作用機序:糖尿病性合併症の発症メカニズムは複雑多岐で,いまだ一定した見解はない.しかし,高血糖とそれに関連した代謝異常を中心として糖尿病性合併症が発症することに異論はなく,ポリオール代謝経路の活性亢進はその代表といえる.本代謝経路は,NADPH→NADp NAD→NADH
グルコース→ソルビトール→フルクトースのわずか2つのステップからなり,最初のステップの律速酵素がアルドース還元酵素(aldose reductase;AR)である.発症メカニズムの詳細は別にして,本代謝経路の活性亢進で糖尿病性合併症が発症・進展するならば,その代謝経路を調節している律速酵素ARの活性抑制で合併症の発症・進展の阻止・遅延が理論的には可能となる.このような仮説に基づき開発されてきた薬剤がAR阻害薬エパルレスタット(キネダック®)である.
高血糖状態で本代謝経路の活性が亢進され,合併症と関連した組織の細胞内ソルビトール産生増と蓄積が合併症を惹起する作用機序には,①浸透圧の上昇,②ミオイノシトール減少とNa+/K+-ATPase活性の低下,③NADH/NAD+比の上昇,④プロテインキナーゼC活性の異常,が想定されている.
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