iatrosの壺
頭痛とバンコマイシン
塚田 哲也
1
1小山田記念温泉病院内科
pp.481
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905737
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患者さんは82歳女性.急性胆管炎の治療後にMRSAによる気管支炎を発症した.高齢のため,バンコマイシン0.5g×2/dayに減量して治療を行った.投与10日目より軽度の頭痛を訴え始めた.投与7日目のバンコマイシン血中濃度がトラフ値21.3μg/mlと高濃度であったことが,投与11日目に判明した.感冒症状なく,頭部CT検査は治療前と同様で,バンコマイシン投与中のBUN,Crはほぼ正常であった.気管支炎の治療を優先して,バンコマイシンを14日間投与した.頭痛はバンコマイシン投与終了後も9日間持続し,この間,患者さんの頭痛の訴えを聞くたびに肩身の狭い思いをした.
バンコマイシンの添付文書には副作用として頭痛は指摘されていない.頭痛がバンコマイシンの副作用であったかどうかは,チャレンジテストでもしないかぎりわからないであろう.ただ言えることは,トラフ値の安定する投与開始後3ないし4日目に血中濃度を測定し,バンコマイシンを減量すれば頭痛の持続期間はもっと短かったかもしれないということであろうか.
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