iatrosの壺
アミノレバン®使用中に起こった代謝性アシドーシス
田中 江里
1
1湘南鎌倉総合病院内科
pp.124
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905480
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患者は,慢性B型肝炎の女性で,肝性脳症を伴う肝不全をきたしてきたので,アミノレバン®1日1,000mlの点滴を開始した.もともと慢性腎不全があり,CRNNが3.0mg/dlであった.徐々にBUNが上昇し,CRNNとの乖離を示した.著明な脱水,消化管出血,尿量減少はなく,そのまま輸液を続けたところ,15日目に突然の頻呼吸となった.この時,BUNは208mg/dl,CRNNは3.6mg/dl,血液ガスは,pH7.064,PCO28.8torr,HCO32.5mEq/lで,代謝性アシドーシスを示した.また,血中アンモニア値も205μg/dlと高値であったが,意識障害,羽ばたき振戦はなかった.アミノレバン®長期投与による副作用と考え,直ちにアミノレバン®を中止し,重炭酸ナトリウム(メイロン®)でアシドーシスを補正したところ,翌日には呼吸状態は改善し,1週間後にはBUN1.9mg/dl,CRNN22.3mg/dl,3週間後にはBUN17.2mg/dl,CRNN1.8mg/dlと改善した.
肝性脳症を伴う肝不全の時のアミノレバン®投与は,脳症の改善1)と安全な栄養補給2)が得られる.しかし,残存する窒素処理能力を上回ってアミノ酸が投与されると,血中アンモニア値が上昇して脳症が悪化したり,腎機能低下による酸排泄の低下から代謝性アシドーシスが進行することもある.アミノレバン®使用中にBUNの上昇が進行する場合には,これらを考え,早めの対処が必要である.
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