iatrosの壺
患者の訴え
河瀬 吉雄
1
1和泉市立病院内科
pp.425
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905692
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1987年7月下旬,50歳の男性が一月にわたる夜間の発熱を主訴に来院した.リンパ節腫脹はなく,やや頻呼吸だが肺野にラ音は聴取せず,皮疹,浮腫は認めなかった.心尖拍動は二峰性に触知し,胸骨左縁で拡張期灌水様雑音を聴取した.血液検査では,血液化学に異常なく,白血球12,900/mm3,CRP21.8mg/dl,血沈145mm/hrと高度な炎症所見を認めた.新米医者であった私はこの時点で感染性心内膜炎(IE)による大動脈弁閉鎖不全症と確信し,心エコーで,大動脈弁逆流と弁に疣贅らしき構造物を認めると,小踊りするように上司に報告した.初診時に診断できた喜びでいっぱいで,熱が出ると両側下腿が痛むという訴えには注意を払わなかった.
その日より抗生物質による治療を開始したが,一向に解熱せず,むしろ弁逆流が増強し心不全症状が悪化した.薬剤を変更しても無効で,血液培養の結果は陰性であった.全身を検索しても他に病巣は見当たらず,入院10日後に心臓外科医の手に委ねた.内科的にコントロール困難なIE,下肢血栓性静脈炎を合併,という診断のもと.
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