iatrosの壺
エリスロマイシンの力
山下 秀一
1
1宮崎市郡医師会病院内科
pp.489
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905745
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発熱,咳嗽,胸部X線上の異常陰影で69歳の男性が紹介入院となった.理学所見上は右下肺野でcoarse cracklesを聴取した.胸部X線では右下肺野に小範囲の浸潤影を認めた.血液生化学上CPKが3,000mg/dl程度で横紋筋融解症の合併が示唆された.喀痰の塗抹では有意な細菌な認めなかった.とりあえず一般抗生剤にて治療を開始したが,発熱,呼吸苦ともに増悪し,X線上の陰影もわずか3日で一気に悪化した.酸素投与量を増量し,喀痰塗抹,培養を再検したがやはり有意な細菌を検出できず,抗生剤を広域なものに変更した.その翌日に,異常行動を中心とした脳症が出現した.呼吸数は30回,酸素もマスクで大量に投与してはいるものの,血液ガスは一応正常範囲で,脳症の原因が呼吸不全とは考えにくかった.髄液,頭部CTともに正常であった.この時点で,症状・経過よりレジオネラ肺炎を強く疑い,気管内挿管,ICU管理下にエリスロマイシンを開始した.効果は劇的で,悪化の一途をたどっていた肺炎は徐々に改善傾向を示した.途中腎不全が悪化し一時的に血液透析を必要としたが,約3カ月の経過で患者さんは治癒し元気な状態となった.レジオネラの抗体価はワンポイントであるが,1,024倍と有意な上昇を示し確診に至った.
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