iatrosの壺
ビタミンB12とチラーヂンS®併用投与で改善した悪性貧血の一例
前田 貞則
1
1大和市立病院内科
pp.280
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905595
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61歳女性.10月初旬より易疲労感あり,近医受診し,立ちくらみと味覚障害も認められたため,同医紹介で11月9日当科受診となる.顕著な貧血と顔面・四肢に浮腫を認め,即日入院となった.
入院時の末梢血は白血球数1,300/μl,血色素4.8g/dl,血小板数15.8×104/μl,MCVは132flで大球性貧血と汎血球減少を呈し,赤芽球の出現がみられた.生化学検査でLDHは5,630IU/lと著明な上昇を認めた.骨髄穿刺検査で巨赤芽球を認め,さらに血清ビタミンB12は67pg/mlと低値で抗内因子抗体も陽性であった.内視鏡検査でも萎縮性胃炎を認め悪性貧血に合致したため,ビタミンB12を1000γ筋注で開始するも,反応悪く,開始1週間後の末梢血は白血球数2,500/μl,血色素4.9g/dl,血小板数11.8×104/μlで改善せず.汎血球減少をきたす疾患として,甲状腺疾患,SLEなどの有無も入院時に検査を実施.SLEについては抗核抗体および抗DNA抗体は陰性であった.甲状腺腫大はみられなかったが,T3は26ng/dl,T4は2.5μg/dlと低値で,TSHは54.3μU/mlと高値を呈し,サイロイドテストとマイクロゾームテストがおのおの1,600倍と陽性であり,橋本病の合併を認めた.チラーヂンS®併用を行ったところ,開始後数日で血色素の上昇をきたし(開始約10日後の血色素7.4g/dl),顔面・四肢の浮腫,全身倦怠感も次第に消失した.
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