iatrosの壺
午後の頭痛
木下 栄治
1
1木下クリニック
pp.14
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905385
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数年前になるが,外来に頭重感を訴える52歳の男性患者が来院した.来院時の血圧は190/110mmHgでアラセプリル50 mgを分2,ニフェジピン30 mgを分3で投与して,経過を観察していた.4週間後には外来随時血圧が142/84mmHgまで低下し,降圧効果が得られたにもかかわらず,頭重感が午後に出現するとのことであった.その後の通院で外来随時血圧はさらに低下し,正常血圧になったにもかかわらず,午後になると頭重感を訴えているため,鎮痛薬を投与しながら経過を観察していた.
ある日ふとしたことで職業の話になり,その患者が「先生,私はこの年齢で孫にも恵まれ,悠々自適の生活だが,昔は理髪店をやっていて,子供に譲った.だけど午後から忙しくて午後だけ手伝っている」と話した.このため,一度ホルター血圧計を装着して1日の血圧日内変動を調べたところ,ちょうど,理髪店を手伝う時間に一致して血圧の上昇が認められた.昼のニフェジピンの服用時間を少しずらしたところ,頭重感は完全に消失し,血圧日内変動でも異常な血圧上昇は認められなかった.後で聞いてみると,やはり長年やってきた仕事でも緊張するとのことであった.
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