増刊号 Common Drugs 350の投与戦略
消化器疾患治療薬
肝疾患治療薬
モニラック(中外)
井上 和明
1
1昭和大学藤が丘病院消化器内科
pp.153-154
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905499
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臨床薬理
●作用機序:ラクツロース(モニラック®)は,ガラクトースとフルクトースがエーテル結合することにより,人工的に合成された二糖類である.人の消化管にはラクツロースを単糖類に分解する酵素が存在しないために,経口的に投与された本剤は消化や吸収を受けずに結腸へ到達する.本剤の作用機序は以下の3つに大別される.①水溶性であるので,結腸において水に溶けることにより浸透圧性緩下作用を発揮する.②結腸において一部が腸内細菌により分解を受けて,酢酸,プロピオン酸,酪酸,乳酸などの有機酸が産生されることにより,腸内のpHを低下させてアンモニアの腸管から血中への吸収を抑制する.実際に患者に本剤を投与すると,血中のpHは変化しないが便中のpHは低下する.こうしてできた血中と腸管との間のpHの勾配は,血中から腸管へのアンモニアの移行を促進し,同時に腸管中のアンモニアは非吸収性のNH4+イオンに変化して腸管中にとどまり,血中に吸収されない.このようなアンモニアの移行は酸透析と呼ばれ,結腸はアンモニアの主要な産生臓器であるとともに主要排泄器官ともなり得る.さらに,本剤はアンモニア以外の毒性物質の腸管からの吸収も抑制するとの報告もある.③また,本剤の分解により産生されたこれらの有機酸は,腸管の蠕動運動を促進してアンモニアの排泄を促進する.
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