iatrosの壺
甘草(licorice)による偽性アルドステロン症
石野 貴子
1
1秋田労災病院内科
pp.400
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905674
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症例は69歳男性.4年前より両下肢のしびれあり,頸椎症と診断されたが手術を拒否し,6カ月前より近医にて八味地黄丸,桂枝加芍薬湯,荷薬甘草湯を処方されていた.1週間前より口喝,4日前より全身脱力感が進行し歩行不能となり,当院整形外科初診.血清K1.4mEq/lと低K血症を認め内科紹介入院.CPK10,445IU/l,ミオグロビン5,410.0ng/ml,尿中β2MG8,000μg/l以上.
漢方薬に含まれる甘草の主成分であるglycyrrhizinの鉱質コルチコイド作用により尿中K排泄が増加し,低K血症が起こることはよく知られている.低K血症は横紋筋融解症を起こすため血中ミオグロビンが増加し,腎尿細管再吸収障害のため多尿となり脱水をまねく.また低K血症は心室性不整脈など致死的不整脈の原因となる.低K血症は多彩な致死的症状に発展するが,症状は徐々に進行するので患者は漢方薬の副作用とは疑わず,他科を受診する場合もあり,注意が必要である.
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