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ヒト血清中の蛋白成分は100種類以上から構成されており,その機能や性状はそれぞれの成分によって異なる.
日常の血清蛋白測定では,まずその総量である血清総蛋白量が測定される.一般的に血清総蛋白量の変動には,量的に多いアルブミンや免疫グロブリンの増減が大きく影響し,他の各成分が影響を及ぼすことは少ない.
検査の目的・意義
免疫電気泳動とは,ゲル内沈降反応の一つの様式であって,抗原抗体反応にあずかる反応因子(抗原または抗体,その両方)が電気泳動法によって分離される過程とゲル内沈降反応とが組み合わされた分析方法を総称している.一般的には,免疫電気泳動法という場合Grabar-Williamsの方法を指す.
蛋白成分の質的な変化,特に免疫グロブリンが均一な成分として血中に増量した場合のM-蛋白の同定,型判定,尿中Bence Jones蛋白の有無やその型を判定する上で重要な検査法である.また未知の蛋白の同定やその電気的易動度などを知る上でも有力な手段として用いることができる1).
肝は血清蛋白の主たる合成の場であり,肝での蛋白合成能の指標として,従来より血清アルブミン濃度が用いられてきている.しかし,血清アルブミンの血中半減期は2〜3週間と比較的長く,またその血中濃度の維持には生体のホメオスターシスが強く働くために,必ずしも肝での蛋白合成能を鋭敏に反映しているとはいえない.
プレアルブミンはそのほとんど(99%)が肝で合成され,かつ血中半減期が1.9日と極めて短い,いわゆるrapid turn over serum proteinであり,血清プレアルブミン濃度は肝の病変の有無とその程度によって大きく左右される.したがって,病因には関係なく,諸種の肝疾患における病態解析に利用される.急性肝炎では,初診時での重症度判定および回復期での肝機能の改善判定に用いられる.慢性肝障害では,肝硬変の機能的診断に有用である.また,術前や術後あるいは癌治療患者の栄養状態の評価指標として用いられている.
α1-マイクログロブリン(α1-M)は,protein HCとも呼ばれる分子量3万,糖含量約20%の低分子糖蛋白質である1,2).正常血中では,本来の低分子型α1-mと,単量体IgAと1:1モル比に結合した高分子型α1-mとがほぼ同一の比率で存在する.尿から精製した低分子型α1-mを標準物質とした現在の測定法は,厳密には両者を合わせた総量として“定量”していることになる3).これはレチノール結合蛋白,血清アミロイドA,リポ蛋白などと同様である.
α2-マクログロブリン(α2-M)は,分子量約80万ダルトン,糖含量6〜7%の蛋白質で,肝細胞,単球-マクロファージ系細胞,星状グリア細胞など 全身の種々の細胞で産生されている.α2-Mの機能はトリプシン,アンチキモトリプシン,エラスターゼ,トロンビンなどの蛋白分解酵素と結合して複合体を形成し,血中から短時間のうちに除去することにより酵素機能の不活性化に作用する.また,ホルモン,インターロイキン-6などとも結合,その機能を調節する役割も担う(図1).α2-Mはラットなどの動物種では急性相反応物質で,組織の破壊,感染症などでは短時間に濃度の増加がみられるが,このような変化はヒトではほとんど認められない.
β2-マイクログロブリン(β2-microglobulin;以下,β2-mと略す)は,1968年にBerggard1)らによって尿細管障害性蛋白尿患者の尿中から分離された,沈降係数1.6S,分子量11,800の低分子蛋白である.リンパ球をはじめとするほとんどの有核細胞で産生され,その表面に存在して主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子のL鎖の構成成分となっている.
β2-mは低分子であるため,健常人では腎臓の糸球体基底膜を容易に通過し,尿細管において大部分が再吸収,異化される.しかし,糸球体濾過値や腎血流量低下に伴い血清β2-m値は上昇するので,腎糸球体障害の指標としての意義を有している.なお,尿細管障害の際には,その再吸収,異化が障害されるため,尿中への排泄が増加する.したがって,尿中β2-mの測定は尿細管,とりわけ近位尿細管障害の指標として重要である(「尿中β2-マイクログロブリンとα1-マイクログロブリン」の項を参照).
フェリチンは球状の鉄結合蛋白質で,組織中,特に肝臓や脾臓の中に存在し,鉄を貯蔵する機能をもつ.また,フェリチンは血中にも微量ながら存在し,組織内の貯蔵鉄量を反映して増減することから,その血中レベルより間接的に組織の鉄量を知ることができる.
しかし,悪性腫瘍患者では組織中の鉄量に関係なく血清フェリチンは増加するため,腫瘍マーカーの一つとして診断や治療のモニタリングに用いられている1).また,肝炎,膵炎などでも組織障害を反映して上昇するので,病勢を知る指標ともなり得る.
ヒトの血清中(血漿中)に含まれる銅は,その大部分はセルロプラスミン中に含まれており,残りのほとんどはdissociable bondをもってアルブミンとゆるく結合した銅が占めている.さらに残りのわずかな部分は低分子の物質と結合しているものであり,その中にはアミノ酸とcomplexをつくっているものがあると考えられる.
セルロプラスミンは1分子中に6~8個の銅分子を有するsky blueの蛋白である.この蛋白はacute phase protein1)であり,外傷や敗血症のほか,悪性腫瘍でも上昇する.しかし,上昇する場合よりも低下する場合のほうが臨床的意義は大きく,Wilson病やMenkes症候群の診断に不可欠である.
フィブロネクチン(fibronectin:FN)は,血漿,羊水,体液,ほとんどすべての器官の細胞表面に存在する糖蛋白で,分子量は約46万である.主な産生細胞は肝細胞,血管内皮細胞,血液単球を含む網内系細胞と考えられている.その機能は,細胞と細胞の接着,細胞と基質との接着,細胞の移動,オプソニン作用,細胞の分化,損傷組織の修復などのほかに,最近では,癌転移の抑制作用,免疫・炎症反応におけるサイトカインとの協同作用なども報告されている.
一般に臨床検査として,FNの測定が特定の疾患の診断に直接結びつくことは少なく,上記の多彩なFNの機能が何らかの形で関与するような,免疫・炎症反応の病態を反映する一つの指標としての意義を持つ.
CRP(C-reactive protein)は,急性相反応物質(acute-phase reactants),あるいは急性期蛋白(acute-phase proteins)と呼ばれる物質の一種である.
感染症,手術,外傷,組織の炎症と壊死,免疫複合体の沈着,組織への自己抗体などにより,急性期蛋白が肝臓にて合成される.CRPは他の急性期蛋白に比較して,正常値の1,000倍にも増加するので,指標としやすい.
シアル酸はノイラミン酸の誘導体であり,糖蛋白,糖脂質の糖鎖成分の一部として生体に広く分布している.
赤沈は赤血球沈降速度(erythrocyte sedimentation rate:ESR)の略で,CRPなどの急性相反応物質と同様に急性・慢性の炎症,腫瘍などによる組織破壊,あるいは血漿蛋白の異常を反映する非特異反応である.したがって,赤沈の亢進・遅延はこれらの病態の存在とその経過を知るうえに有用な指標となる.
赤沈の本態は,今日なお不明な点があるが,赤血球の凝集(連銭形成)を促進する因子が重要視され,凝集が早く,大きいほど赤沈は亢進する.赤血球膜は陰性荷電であるので,陽性荷電のグロブリン,フィブリノゲンの増加は血球凝集を促進する.
α1-アンチトリプシン(α1-antitrypsin:α1-AT)は血清蛋白分画上α1-グロブリンに移動度を有する糖蛋白の一種である.α1-ATは血中に存在する蛋白分解酵素のなかでも主要なインヒビターとして知られる.トリプシン,キモトリプシン,カテプシン,トロンビン,エラスターゼ,カリクレイン,ウロキナーゼ,レニン,プラスミン,コラゲナーゼなど種々のセリンプロテアーゼ活性を阻害する.プロテアーゼによりα1-ATの活性部位であるMet358-Ser359間が切断され,同時に1対1の安定な複合体を形成することにより,プロテアーゼ,α1-ATとも活性を失う.白血球や,マクロファージのカテプシン,エラスターゼに対し高い親和性を有し,α1-ATの生理的機能として重要と考えられている.なお,パパイン,ペプシン,プロナーゼなどは抑制しない.
α1-アンチキモトリプシン(α1-antichymotrypsin:α1-ACT)は7種類知られている血漿の蛋白分解酵素阻害因子蛋白の一つである.α1-ACT以外にはα2-マクログロブリン,別項のα1-アンチトリプシン,α2-プラスミンインヒビター,アンチトロンビンIII,そしてC1-アクチベーター,インター-α-トリプシンインヒビターなどが知られている.α1-ACTは1962年に,キモトリプシンによるフィブリン分解を阻害し,α1-グロブリン分画に存在する血清糖蛋白として発見されたものである.以前,α1X-グリコプロテインとよばれていたものと同一である.現在は全アミノ酸配列が決定されており,433個のアミノ酸からなる蛋白としてまず肝で合成される.ヒト血中には433個から25個のアミノ酸のシングルペプチド部分がはずれた408アミノ酸からなる蛋白が主として分泌され,これが血中のα1-ACTの90%を占めることになる.このアミノ酸のN末よりさらに15個のアミノ酸がとれた393個のminorα1-ACTも存在する.
ハプトグロビン(haptoglobin:Hp)分子の先天的異常を除外すれば,臨床上認められるHpの異常は,後述するHpの量的変動および遺伝型別の疾病によるもので,Hpの異常の出現頻度の把握が病態診断の指標となる.
MRSA(methicillin-resistant Stmphylococcus aureus)の出現によって,細菌感染症は新しい局面を迎えたように思われる.細菌感染症の対策は,いたずらにパニックに陥ることなく,基本に返ることが大切であろう.確実な無菌操作,患者への確実な環境の整備がなされれば,基本的に,ヒトを介したすべての感染症への対策は成り立つといえる.
基本に返ることで,医師に最も要求され,他の医療従事者には求めることのできないものに抗生物質の適切な投与がある.安心のためにしばしば行われる不必要に広域に有効な抗生剤の投与や不必要な長時間の投与は,菌交代を招き,本来弱毒菌である耐性菌による重症感染症の誘因となる.
顆粒球アズール顆粒に局在する顆粒球エラスターゼ(granulocyte elastase:GEL)は非特異的中性蛋白分解酵素であり,多くの生体構成成分を分解する.そのため,正常生体の血液・組織液中にはGEL作用を抑制する大量のα1-プロテアーゼインヒビター(以下α1-PI)とα2-マクログロブリン(以下α2-MG)が存在し,活性型GELの90%にα1-PIが,10%にα2-MGが結合してGELを不活性化し,生体を保護している(図1).
GELは,生体が何らかの侵襲を受けたときに補体,サイトカイン,エンドトキシン,抗原抗体複合物などの刺激によって顆粒球より放出されるため,血中や体液中のGEL量を測定することにより,顆粒球の活性化の程度や活性化の原因となった何らかの侵襲の程度を評価できる1).
ヒトICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)遺伝子にコードされるcDNAは約2.5kbpであり,類推されるアミノ酸配列の解析により,ICAM-1分子は27アミノ酸残基のシグナルペプチド,453残基の細胞外領域,24残基の細胞内領域より構成される(図1).
ICAM-1分子のドメイン構造は5個のC2ドメインを有し,そのリガンドであるLFA-1との結合部位も明らかにされている.
Serum amyloid A(SAA)蛋白は,アミロイド線維の生化学的研究の過程で,新しい蛋白として見いだされた.アミロイド構成蛋白としては,最初に免疫グロブリンのL鎖が同定されていたが,続発性アミロイドーシスの患者のアミロイド蛋白はこれとは別のものであり,アミロイドA(AA蛋白)といわれた.その後,血中にこれと同一の抗原性を持つ蛋白が見いだされ,SAAと呼ばれるようになった1).
SAAは分子量約12,000の糖を含まない蛋白質で,血清中ではアポリポ蛋白の一つとしてHDL(high density lipoprotein),特にHDL3に大部分が存在している.また,荷電の差から3〜6種のポリモルフィズムが存在し,アミノ酸一次構造上も何種かの異なるものが報告されている.遺伝子レベルでは,少なくとも3種のgeneが存在するといわれている2).
尿素は,アミノ酸の脱アミノによって生じたアンモニアとCO2から,主として肝臓において尿素サイクルによって合成される.血中尿素窒素(blood urea nitrogen:BUN)は,腎糸球体から濾過され,一部尿細管で再吸収されたのち,尿中に排泄される.BUN(または血清尿素窒素SUN:BUNよりやや高値を示す)の測定は,血清クレアチニン(s-Cr)の測定と同様に腎機能を反映する検査として用いられている.しかし,BUNは腎からの排泄に関係する腎性因子のみならず,腎前性因子(食事中の蛋白量,胃腸管出血,組織の崩壊など)や循環血液量の異常(脱水,浮腫,下痢など)によっても変動するので注意が必要である.
尿酸は体細胞核の核蛋白プリン体の最終代謝産物として体内で合成された後,腎糸球体におけるfiltration,近位尿細管でのreabsorption,secretion,そしてpost-secretion reabsorptionの4つのcomponentを経て,結局,約1.0gの1日尿酸合成量の中の65±10%に当たる約500〜800mgの尿酸が尿に排泄される.血漿中に尿酸は尿酸塩として存在し,体温37℃,pH7.4のときの尿酸塩の溶解度は約7.0mg/dl,尿酸にして6.4mg/dlである.そしてその溶解度を越えるとき,物理化学的に過飽和状態にあり,腎髄質,耳介や関節腔への尿酸の沈着と結晶の析出を招くことになる.尿pHの酸性化や循環血液量の低下は間質および尿細管への尿酸沈着の原因になる.体内プールの約0.01%の尿酸は唾液や汗などに,また少量は胆汁中に排泄されており,腸内の細菌により分解されて生じたNH3は吸収されて尿素へと合成される.約20%の尿酸は体内で化学的分解により異化されると考えられている.
そのようにして,血清尿酸値の測定はプリン体代謝異常や腎機能障害の発見に有用となる.
血中アンモニア濃度測定の意義
アンモニアは蛋白質およびアミノ酸の終末代謝産物として産生し,また摂取食物中の蛋白質およびアミノ酸の腸内細菌による分解にて産生し,門脈経由にて肝臓に運ばれ,尿素サイクルにより最終的に尿素として処理されている.したがって,肝臓機能の低下による尿素サイクル活性の低下,腸内におけるアンモニア産生の増加および門脈副血行枝による門脈血の大循環系への流入がある場合には,血中アンモニア濃度が高値となる.
アンモニアは中枢神経系に強く作用する有害物質であり,肝臓機能の低下に伴い挙動や情動の変化および傾眠などの肝性脳症を呈する場合や,近年その有用性が認められ広く利用されている高カロリー輸液施行中の患者管理においても,定期的な血中アンモニア値の測定が必須である.
クレアチニン(Cr)は,肝で合成され,骨格筋に含まれるクレアチンの代謝最終産物で,その血中濃度は血中尿素窒素(BUN)と並ぶ腎排泄機能の代表的指標である.腎機能が正常な場合,1日尿中Cr排泄量は蓄尿が正確に行われたか否かの良い目安になる.血清Cr値はBUNと異なり,蛋白異化の亢進や消化管出血の影響をほとんど受けないが,糸球体濾過量(GFR)低下とともに尿細管でのCr分泌が亢進するとされており,また測定値の変動幅が小さく,さらに性差や加齢変化があるので,微細なまたは急性の腎障害の早期診断には有用でない.
Crは腎糸球体から排泄され尿細管からあまり再吸収・分泌されないため,クレアチニンクリアランス(Ccr)はGFRの近似値と考えてよい.高蛋白食は一過性にGFRを亢進させるとされており,Ccrは1日量で評価するべきで,旧来のml/分という単位にはあまり意味がない.また,Ccr比較のための体表面積Sでの補正式(Ccr×K/S)の係数Kについては,本邦では1949年頃から1.48が用いられてきたが,欧米では1.73であり,日本人の体格の向上により新たな係数が必要となっている.しかし,実用上,成人ではこの補正を行わない値が用いられることも多い.
血中(血漿)および尿中遊離アミノ酸の測定は,酵素異常に起因する先天性アミノ酸代謝異常の診断に有用である.尿細管のアミノ酸輸送機構の障害では,尿中アミノ酸のみが増加する.
後天性疾患においても,肝疾患・腎疾患などに伴うアミノ酸代謝異常が知られており,その病態診断や治療方針の決定に有用である.
クレアチンキナーゼ(creatine kinase:CK)は測定が迅速・簡便であり,しかもアイソザイムの分析により心筋と骨格筋障害を鑑別することができる.しかし,CK(活性)値は種々の生理的および医原性因子によって異常値を生じることがあるので,このような場合にはデータの解釈に注意が必要である(表1).
LDH(lactate dehydrogenase,乳酸脱水素酵素)は解糖系の重要な酵素であることから,広く体内の各臓器の可溶性分画に存在する.したがって,どのような臓器でもその臓器に損傷が加われば,LDHの上昇が血中で観察される.臓器特異性はなく,非特異性であるが,一般的にどこかに病変がないかという観点で検索される.
その血中濃度を測定することにより,肝臓・胆道系疾患,心筋・筋肉疾患,溶血性疾患の有無と細胞障害の程度を把握する.
トロポニンTは,横紋筋の薄いフィラメント上でトロポニンI,Cとともにトロポニン複合体を形成し,筋収縮の調整に関与している蛋白(分子量:39kD)である.平滑筋には存在せず,しかも構造が心筋と骨格筋とで異なるため両者を明確に識別することが可能となり,“心筋トロポニンT(TnT)”は現在最も特異的な心筋傷害のマーカーと考えられている.また,TnTは心筋ミオシン軽鎖I(MLC I)同様,心筋の構造蛋白であるが,一部が細胞質にも存在するため,心筋梗塞発症早期(3〜6時間後)から2〜3週後まで有意の上昇が持続する(diagnostic windowが極めて長い).
再灌流に成功した急性心筋梗塞患者での血清TnTの経時的変化を図1に示す.TnTはクレアチンキナーゼ(CK)とほぼ同時相(ミオグロビン(Mb)よりやや遅く,MLCIより明らかに早期)にピークを示すが,CKが低下した後もTnTは高値を持続し,MLCI同様3〜7日後に第2のピークを認める(CKとMLCIを合わせたような二峰性の濃度時間曲線を描く).
ミオグロビン(Mb)は,分子量17,500 daltonsの赤褐色のヘム蛋白で,筋肉組織中に存在する.Mbの主な生理作用は,血色素(Hb)によって運搬されてきた酸素を筋組織で受け取り,これを筋組織中で運搬・貯蔵し,必要に応じてエネルギー産生系に供給することである.
Mbは,ヒトでは主として骨格筋(5mg/g wetweight),心筋(3mg/g wet weight)に存在する.筋細胞の崩壊時に細胞外に逸脱して血中に流出し,尿中に排泄される.すなわち,筋障害を引き起こす可能性のある広範な疾患に対し異常値をきたし得るわけで,この点,非特異的で,いわゆる診断に対する有用性は高いものではない.
虚血性心疾患は,病歴,理学所見,生理機能検査,画像,生化学的検査などの総合的な結果に基づいて診断が下される.生化学的検査は壊死心筋から血中に流出する逸脱物質を,酵素学的あるいは免疫学的方法によって検出するもので,心筋壊死の有無と壊死量の推定に有用である.ミオシン軽鎖は心筋の構造蛋白で,急性心筋梗塞ではCPKやGOTなどの酵素とは全く異なる流出パターンを示すのが特徴である.
血清アルカリフォスファターゼ(ALP)は肝,骨,胎盤,小腸に由来しており,主な検査目的としては,①肝・胆道疾患,特に胆汁流出障害の有無,②骨新生の状態,③胎盤機能の状態,などを知ることである.また,ある種の腫瘍細胞からも産生され,腫瘍マーカーとしての意義もある.
血清γ-GTP(γ-glutamyl transpeptidaseあるいはtransferase)は,γ-グルタミンペプチドを加水分解しγ-グルタミン基をペプチドやアミノ酸に転移させる作用を持つ転移酵素であり,グルタチオンを介し細胞内へペプチドやアミノ酸を取り込む機能を持つといわれている.吸収や分泌に関連する種々の臓器に分布し,腎,膵,肝,小腸,脳などに存在する.γ-GTPの組織内局在は,他のペプチダーゼと同様にbrush border membrane酵素として局在している.
血清γ-GTPは主として肝由来で,尿γ-GTPは腎由来である.肝のγ-GTPは肝細胞のマイクロソーム分画や細胆管などに存在し,ALP,LAPなどとともに胆道系酵素とも呼ばれている.胆汁中のγ-GTP活性は正常血清のそれより約100倍高いといわれている.胆汁うっ滞では,γ-GTPの合成誘導と胆汁への排泄障害の結果,血清γ-GTP値が上昇する.アルコール性肝障害や薬剤性肝障害での上昇は,合成の誘導に起因する.
日常臨床検査として測定されている血清LAP(EC 3.4.11.2,アリルアミダーゼ)は,ミクロゾーム由来のLAPが主体をなし,肝・胆道疾患を特異的に反映し,特に胆汁うっ滞時に異常高値を示す.血清ALP,γ-GTPなどとともに胆道系酵素群に分類され,胆汁うっ滞の指標とされている.γ-GTPは各種の薬剤,飲酒などによる肝薬物代謝酵素系の誘導と類似した活性変動を示し,ALPは骨疾患などに影響されるため,LAPの測定はこれらの相互評価にも有用である.
血清ADAは急性および慢性肝疾患の診断,経過観察,腫瘍性の血液疾患,ウイルス感染症,免疫不全などの診断に有用である.
慢性肝疾患の終末像は肝硬変であり,慢性化の進展に伴ってコラーゲン線維の増成と蓄積が起こる.肝疾患の際に増生・蓄積されるコラーゲンはI,III,IV,V型コラーゲンであるといわれている.肝に蓄積されたコラーゲン線維はその量が増加すると,周知のごとく周囲組織を圧排し,肝細胞障害を招来し,その修復機転として,さらにコラーゲン線維の蓄積を促進するという悪循環に陥る.蓄積されたコラーゲン線維の量を知ることは疾患の治療や予後の判定に極めて重要である.肝生検はそのためには最も確実な検査法であるが,観血的検査法であり,時には危険を伴う.肝生検に代わるものとして,これまでに種々の試みがなされてきた.血液中に存在する結合組織成分を測定することにより線維化の程度を推定しようとして開発されたのが,いわゆる線維化マーカーである.1969年にIII型プロコラーゲンのN末端ペプチド(PIIIP)の測定法が開発されて,臨床に応用されて以来,ラミニン,プロリン水酸化酵素,IV型コラーゲン(Type IV-C,7S,NC 1)の測定が臨床に応用されている.
Cholinesterase(ChE)は肝の機能の中でも主として予備能を測定するのに用いられるが,また同時に全身の栄養状況を知るための検査でもある.
アルドラーゼ(ALD:D-fructose-1,6-biphosphate-D-glyceraldehyde-3-phosphate-lyase,EC 4.1.2.13)は解糖系酵素の一つであり,フルクトース-1,6-ニリン酸(FDP)をジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)とD-グルセルアルデヒド-3-リン酸とに可逆的に分解するとともに,フルクトース-1-リン酸(FIP)をDHAPとグルセルアルデヒドとに非可逆的に分解する.
ALDは骨格筋,心筋,脾臓に高濃度に存在するA(FDP-ALD)型と,肝臓に高濃度に存在するB型(FIP-ALD),およびA型とB型の中間型で,脳,神経組織に多量に存在するC型の3つのアイソザイムが知られており,これらは免疫学的に区別される1).なお,通常の活性測定系は,A型の活性測定に適した条件であり,筋肉組織に由来するA型が優位に測定されている.
アミラーゼは膵,唾液腺,肝,腎,心,肺,卵管,横紋筋,乳腺,甲状腺などに存在する消化酵素の一種で,膵臓と唾液腺から消化管内に分泌される.一部は膵臓の腺房から血液中に逸脱する.
血液中のアミラーゼは2種類あり,膵臓由来と唾液腺由来である.これらの臓器に由来するアミラーゼをアイソザイムと呼び,それぞれ膵型アミラーゼ,唾液腺型アミラーゼと呼ぶ.アミラーゼとそのアイソザイムの検査は膵疾患のスクリーニング,早期診断,経過観察などに有用である.
膵分泌性トリプシンインヒビター(pancreaticsecretory trypsin inhibitor:PSTI)は膵臓で合成されて膵液中に分泌されるポリペプチドで,膵内で活性化したトリプシンを阻害する作用をもつ物質として発見された1).筆者らは,体液中のPSTIを測定するためのRIA系を確立して臨床的,基礎的研究をすすめ,PSTIが単に膵臓のトリプシン阻害物質であるだけでなく,広く生体の防御反応に関与している物質であることを明らかにした1〜3).
血中PSTIは,①膵疾患の診断,経過観察のよい指標となる,②膵炎以外の生体への種々の侵襲に際して大きく上昇する,③種々の悪性腫瘍患者でも高率に上昇する,という特徴をもつ.
血中リパーゼの測定は膵疾患の検出を目的に行う.異常値は膵疾患の存在を示唆する.正常値は必ずしも膵疾患の存在を否定できない.
現在の測定法で検出される血中リパーゼはほぼ障由来と考えてよい.尿中には検出されない.膵盲の狭窄・閉塞による膵液のうっ滞または膵の組織破壊が存在すれば,血中へのリパーゼの逸脱が曽加する.膵液が後腹膜腔や腹腔内に漏れた場合には該当部位から血中に吸収される.血中リパーゼの一部は尿中に排泄され,尿細管上皮で不活性化されるが,大部分は網内系で代謝されると考えられている.血中に逸脱する量が生体の処理能を越えると血中高値を認める.急性期の血中値とその推移は必ずしも重症度を反映せず,高度の膵組織破壊が急速に起こると(劇症膵炎)正常値,時には低値を認めることさえある.回復期における正常化は臨床症状・所見を参考にして経過のモニターに使用できる.
エラスターゼは血管壁などの結合織のエラスチンを分解する蛋白分解酵素で,体内では主として膵臓に存在し,そのほか白血球,血小板,脾臓,大動脈壁などにもわずかに存在する.
膵エラスターゼにはエラスターゼ-1および-2の2種類が存在し,血中ではほとんどがα1-アンチトリプシンやα2-マクログロブリンの蛋白分解酵素阻害物質と結合して存在する.このため,血中濃度は酵素活性としては測定困難で,免疫活性としてα1-アンチトリプシンと結合したエラスターゼ-1のみがRIA法によって測定される.
膵にはカチオニック(cationic)トリプシンとアニオニック(anionic)トリプシンがあり,正常の膵液には2:1の比で含まれている.これにごく少量のメゾトリプシンが存在している1).血中のトリプシンはα2-マクログロブリン(α2-M)とトリプシン(T)の複合体(α2M-T),α1-アンチトリプシン(α1-A)とトリプシンの複合体(α1A-T),トリプシノーゲン(Tgn)が主な存在様式である.血中にはトリプシンのほかに活性阻害物質や類似活性酵素も共存するので,酵素活性を特異的には測定できない.したがって,血中トリプシンの変動はRIAやEIAを用いた免疫活性で測定している.現在一般に用いられるキットはカチオニックトリプシンを測定するRIAあるいはEIAのキットで,標準物質により測定値が異なる.
ホスホリパーゼA2(PLA2)は,リン脂質の2位の脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素で,生体組織に広く分布する.現在までいくつかのアイソフォームの存在が明らかにされており,これらはI型(従来の膵性)およびII型からなる低分子量分泌型(secretory PLA2)と高分子量細胞質内在型(cytosolic PLA2)に分類されている(表1)1).
膵PLA2は膵腺房細胞で,非活性型の前酵素(zymogen),すなわちpro PLA2として合成され,膵液中に分泌されて十二指腸内の活性型トリプシンによって活性化されて,リン脂質の分解酵素として働く.
ACP(酸性フォスファターゼ)は,リン酸モノエステルを加水分解する酵素のうち,pH4.5〜6.0に至適pHを持つ酵素である.ACPには臓器特異性のあるアイソザイムが数種知られており,前立腺に多く存在するほか,骨,赤血球,白血球,血小板,肝臓など種々の臓器や細胞に存在する.ACPは,上記の臓器などの細胞破壊により血清中に遊出するものと考えられ,血清ACP値は,前立腺,骨,網内系などの疾患の診断のために測定される.
なお,前立腺由来のACP(P-ACP)がL-酒石酸により100%阻害を受けるため,総活性とL-酒石酸阻害時の活性を測定し,その差をP-ACP活性とみなしている.しかし,白血球,血小板および実質臓器由来のACPもL-酒石酸により阻害される.そこで,前立腺疾患の診断には,免疫化学的測定法によるP-ACP蛋白濃度測定値(腫瘍マーカーの「PAP」の項参照)なども用いられる.
活性酵素とSOD
Big Bangに始まる宇宙の歴史からは,酸素の積極的作用によって生物進化が爆発的に進んだPasteur点は16億年前ということであるが,その前段階で,酸素は生物に多くの障害を与え,いわば酸素分子は両刃の剣であった.未熟児を保育箱で保育することによって生じた網膜剥離症は,この酸素中毒の代表的例である.また,慢性肉芽腫(chronic granulomatosis disease:CGD)が,実は貪食した白血球が活性酸素による殺菌能をもたないために生ずる疾患で,活性酸素の生体における意義を端的に示すことはいうまでもない.
しかし,活性酸素(active oxygen)と称せられる一群の分子の強力な働きが明らかになるにつれて,生体への障害の恐れと同時に,生体内においても何らかの防御策が存在するのではないかとの予想がもたれるようになった.その間,1969年にI Fridovichらは,代表的活性酸素種の一つである・O2-(スーパーオキサイドアニオン)を除去(不均化消去)する酵素であるスーパーオキサイドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)が生体内に存在することを発見した.
ADHは多数のアイソザイムが存在するが,エタノールを基質としてその活性を測定した場合,本酵素の生体内分布は,95%が肝で,他臓器では胃粘膜,腎,睾丸,脳,網膜などでわずかに活性を認めるのみであり,肝細胞内では細胞質に局在する.また肝臓の小葉内分布では,中心静脈周囲の小葉中心部に局在することが明らかにされている1).したがって,GPTやLDHなどと同様に,肝の逸脱酵素としての性格を有することから,本酵素の血清中の活性を測定することは,肝細胞障害の程度,特に肝の小葉中心部の肝細胞障害を把握するのに有用な検査である.
血液中グルコースは血糖として測定される.尿細管の糖閾値を越えると尿糖が排泄され陽性になる.この測定法は高血糖または低血糖疾患の診断に用いられる.血糖調節は主として内分泌ホルモンによって行われる.血糖を低下させるホルモンは膵β細胞で合成されるインスリンである.インスリンが不足すると高血糖になり,過剰なら低血糖になる.また,インスリンの拮抗ホルモンには膵α細胞で合成されるグルカゴン,副腎で合成されるコチゾール,カテコールアミンなどがある.拮抗ホルモンが過剰なら高血糖になり,不足すると低血糖になる.高血糖を示す疾患は糖尿病である.低血糖を示す代表的疾患はインスリノーマ,脳下垂体不全症である.
血糖コントロールの指標として,血糖値とともにHbA1cは欠くことのできない検査である.糖尿病患者の血糖は,食事などによる変動も大きく,一点のみの血糖値から日常の血糖コントロール状態を判定することは不可能といえる.HbA1cは約1カ月間の血糖コントロール状態を反映する指標として活用され,将来の合併症の発症・進展を防止するためにも有用なものとなっている.
血糖コントロールの長期指標として,約1カ月間のコントロール状態を反映するHbA1cに対し,フルクトサミンはHbA1cと同様の原理で血清蛋白のAmadori化合物を測定し,過去2〜3週間の血糖コントロール状態を判定する検査である.
糖化アルブミン(glycated albumin:GA)の検査は,中・長期の血糖コントロールの指標として行われる.健常人では血糖は狭い範囲に維持されており,いつ血糖検査しても差は少ない.しかし,糖尿病患者では血糖の変動が大きく,早朝空腹時血糖は比較的安定しているものの,特に薬物療法中の患者では,検査当日に薬物と食事を中止して外来で行う早朝空腹時採血は血糖コントロールを乱すことになったり,また,これらを中止していてもインスリン拮抗ホルモンの作用で血糖は上昇することがあるため非生理的な結果となり,外来ではみだりに早朝空腹時の検査は行うべきではないとされる.さらに,大きく変動している血糖の1ないし数ポイントの測定から,糖尿病患者の血糖コントロール良否の判定は困難なことが多い.そこで,中・長期の血糖コントロールの指標としてHbA1c,フルクトサミン,1,5-AGなどが臨床応用されてきた.
尿蛋白は陰性であるが尿中アルブミン排泄が亢進している時期,すなわち微量アルブミン尿を呈する時期を早期腎症(incipient nephropathy)と定義して,糖尿病性腎症をより早期に診断し治療する試みがされている1).
糖尿病性腎症において,尿蛋白が陽性となる時期にはすでに非可逆性の糸球体病変が存在することが知られている.しかし,早期腎症の時期であれば,血糖と血圧の厳格なコントロールにより腎症の進展を防止し,回復することも可能であることが示唆されている.また,微量アルブミン尿を呈する症例の多くは後に持続性蛋白尿を呈し,糖尿病性腎症に移行することが明らかにされている.したがって,尿中アルブミンを測定し,早期腎症の有無を確認して,糖尿病患者を管理・治療することは大変重要である.
血清(漿)1,5-AGは直前の血糖コントロール状況を鋭敏に反映する極めて高感度の血糖指標で,特に軽症糖尿病の血糖変動の把握に優れる.
インスリン(IRI)の測定により,血糖値の測定と合わせて,膵β細胞からのインスリン分泌の状態とインスリンに対する生体のインスリン感受性の程度を推定できる.通常,空腹時だけでなく,ブドウ糖負荷などのインスリン分泌刺激試験における反応をみる場合が多い.
血糖値に比べIRIが低値の場合,膵β細胞からのインスリン分泌不全が疑われ,その不全の程度はNIDDMとIDDMの鑑別,あるいは治療法の目安になる.血糖値が低値にもかかわらずIRIが高値の場合,インスリノーマやインスリン自己抗体の存在が疑われ,血糖値が正常または高値でIRIが高値の場合,インスリン抵抗性を生じる病態の存在が疑われる.
血中にインスリンに対する抗体が存在するか否か,以下の場合に測定する.
1)インスリン使用中の患者血中のインスリン抗体の存在の有無の検討①インスリン製剤の効果に異常,特にインスリン抵抗性を認めた場合(主にIgG)②インスリンアレルギーを生じた場合(特にIgE)
インスリン受容体
糖尿病はインスリンの相対的な作用不足によって引き起こされるが,インスリンは標的細胞上の受容体に結合することにより,その作用を発現する.インスリン受容体は分子量135,000のαサブユニットと95,000のβサブユニットの2種の糖蛋白からなり,S-S結合によって四量体(β-α-α-β)として存在している.αサブユニットは細胞外に位置し,インスリン結合部位を有する.βサブユニットは細胞膜貫通部位(918-940番アミノ酸)を有し,インスリン作用の発現に重要な①チロシンキナーゼ領域(990-1247番)と,その中に存在するATP結合に重要な②Gly-X-Gly-X-X-Gly……Val-Ala-Val-Lysを持っている.インスリン受容体遺伝子の情報より,αサブユニットは719個(Ebinaらの報告では731個),βサブユニットは620個のアミノ酸よりなり,両サブユニットはArg-Lys-Arg-Argによって結ばれた一本鎖として生成された後,2つに切断されることが明らかになった.また,細胞外領域には糖鎖の結合部位が存在している.
膵β細胞内でプロインスリンはインスリンとC-ペプチドに分解され,両者は等モルで分泌される.血中C-ペプチドの測定がRIA法で可能となったところ,同法で尿中C-ペプチド濃度も測定できることが判明した.血中および尿中の両者を組み合わせて測定すれば,インスリン分泌の時間的,量的動態を詳細に把握できよう.
インスリンは主に肝で,C-ペプチドは腎で代謝されることから,分泌刺激時の血中動態では,インスリンのピークにやや遅れてC-ペプチドのピークがみられる.食事など種々の刺激に対するインスリン分泌の経時的動態の検索は,血中インスリンを測定すべきである.しかし,かつて動物種インスリン製剤の注射歴があり,インスリン抗体の存在が危惧される際や,外来性インスリン投与中の内因性インスリン分泌動態を追跡する際には,血中C-ペプチド動態を測定することになる.
血中ケトン体上昇の原因は,①肝ケトン体産生亢進,②末梢ケトン体利用低下,③腎尿細管機能異常などに帰せられる.また,ケトン体分画測定により得られる3-ヒドロキシ酪酸(3-OHBA)とアセト酢酸(AcAc)との比からは肝ミトコンドリア内の酸化還元状態(redox state)の把握が可能である.この目的ではケトン体の末梢でのクリアランスの影響を回避する目的で動脈採血が推奨されてきたが,静脈採血での検討で十分であるとする報告もある.
血中ケトン体の測定は糖尿病性ケトアシドーシスの診断,治療効果の判定に必須であるが,その他,肥満症治療の際の体重減少が脱水によるものでないことの確認にも有用である.妊婦の場合,食事制限に加え,悪阻などによるケトン体上昇時には児の低酸素血症,心拍数増加への影響が報告されている.また,ケトン体の上昇が腎血流量,糸球体濾過率(GFR)を増加させ,腎糸球体硬化の一因となる可能性を指摘するものもある.しかし,アセトンの神経障害,意識障害への直接の関与は定説化していない.
乳酸はピルビン酸と密接に関係しており,嫌気的解糖の終末代謝産物である.肝や腎でTCA回路や糖新生の基質となっている.乳酸は血中に一価の陰イオン有機酸として存在し,酸塩基平衡に重要である.一方,ピルビン酸は糖,アミノ酸,脂肪酸代謝すべてに関与している.食事摂取,組織の酸素分圧,関連する代謝過程の酵素活性に影響され,組織の酸素分圧の状態,酵素活性の低下の有無などがわかる.
酸塩基平衡の異常,anion gapの増加を伴うアシドーシスや急性循環不全が疑われるとき,血中乳酸値を測定する.また,臨床上は乳酸アシドーシス,ミトコンドリア脳筋症,糖原病,Leigh脳症,各種酵素欠損症などの診断に用いられる.
ミオイノシトールとは
イノシトールは9種類あるD-グルコースの環状異性体の総称であり,唯一生理活性を持っといわれているのがミオイノシトールである(図1).
ヒアルロン酸(hyaluronic acid)はD-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンが繰り返し結合したムコ多糖で,眼硝子体,臍帯,関節,皮膚,軟骨のなどの結合組織に多い.生理的機能として細胞外基質の構造,水平衡の維持,血漿蛋白の組織漏出の制御,関節の潤滑性維持,細胞分裂時の補助などが挙げられる.
最近,細胞表面のCD 44と結合することが明らかになり,リンパ球のリンパ節への集積やリンパ球・好中球の活性化など,細胞の機能制御への関与が注目されている.また,腫瘍細胞ではCD 44と異なる結合蛋白を有するものがあり,これに結合することにより癌の組織侵襲性が増加するとされている.細胞表面を被覆してウイルスや細胞傷害性リンパ球から保護する作用もあるとされる1).
酸性ムコ多糖体(acid mucopolysaccharides)はグルコサミノグリカン(glucosaminoglycans)とも総称され,蛋白コアと結合し,ムコ蛋白,すなわちプロテオグリカン(proteoglycans)を形成している1).グルコサミノグリカンはウロン酸とヘキソサミンが結合した二糖類が単位となって,直鎖状に並んだ酸性高分子物質である.グルコサミノグリカンはヘキソサミンの種類により6種類存在し,グルコサミンを構成体とするヘパリン,ヘパラン硫酸,ヒアルロン酸,ケラタン硫酸と,ガラクトサミンを構成体とするコンドロイチン硫酸,デルマタン硫酸に大別される.
これらは生体内諸臓器および各種結合組織に分布し,潤滑液,陰性荷電物質,支持,軟性,弾性物質,抗血栓性機能および水・塩分保持機能を有している.さらに,これらは血球細胞にも存在している.したがって,尿,血清,関節液,胸水などの濃度を測定することにより,生体内先天性ムコ蛋白代謝異常を診断し,罹患臓器の炎症などによる障害の程度,病気の活動度を診断することが可能である.
生体にとって必須のブドウ糖(糖質)は非極性分子であり,脂質二重層からなる細胞膜は容易に透過できない.細胞膜での糖輸送機構は,糖輸送担体と呼称される疎水性の高い糖蛋白質を介するものである.これには能動輸送に関わるNa+/ブドウ糖共輸送担体と,促通拡散型糖輸送担体の2種類が存在する.両者の間にアミノ酸配列の類似性はなく,後者はあらゆる細胞に発現しているが,ヒトでは少なくとも5種類(GLUT 1〜GLUT 5)が存在し,1つのファミリーを形成している(表1).このうちGLUT 5はブドウ糖も輸送できるが,空腸刷子縁膜上ではフルクトース輸送担体として機能していると考えられている.
コレステロールは,リン脂質とともに細胞膜の構造脂質として重要な物質であり,またステロイドホルモンをはじめ,ホルモン産生の原料などとなる.
コレステロールは大部分は肝臓で,一部は腸管,副腎皮質,皮膚,睾丸,大動脈などで合成される.血液中ではリポ蛋白(超低比重:VLDL,中間型:IDL,低比重:LDL)として存在し,全身の細胞に運ばれ,LDL(BE)レセプターから細胞内に取り込まれ利用される.残ったものは,肝臓内にLDL(BE)レセプターを通じて運ばれ代謝される.過剰のコレステロールは血管内皮細胞や細胞間隙を通過して,血管内膜で変性LDL,あるいはレムナント(IDL)としてスカベンジャーレセプターを介して単球由来のマクロファージ内に異物とみなされて取り込まれる.取り込まれた後,コレステロールオレイン酸エステルの液体結晶の形で蓄積して泡沫細胞化し,また一部はコレステロール結晶の形で粥状動脈硬化巣を形成する.このような蓄積したり余剰のリポ蛋白中のコレステロールの一部は高比重リポ蛋白(HDL)に取り込まれて運搬され,最終的には肝臓に運ばれ,胆汁酸などとなって,腸管内に排出される.
近年数々の疫学調査によって,動脈硬化の進展に高脂血症が深くかかわり,治療により動脈硬化性疾患の発症を有意に抑制し得ることが明らかにされた.このような背景の下に,高脂血症を積極的に治療すべきだとの認識が医学界はもとより一般社会にも浸透し,中性脂肪はコレステロールとともに人間ドックや住民検診の基本検査項目にも組み込まれている.
無症候者における中性脂肪検査の目的ならびに意義は,いうまでもなく脂質代謝異常のスクリーニングである.後述のように,中性脂肪はIIa型以外のすべての高脂血症で高値となるためにスクリーニング効果は大きい.しかし,原因の鑑別においては特異性に乏しく,別の情報が必要である.同じ理由からIIa型以外の高脂血症における治療効果判定に有用であり,高脂血症の管理に必須の検査である.
HDLコレステロール(HDL-C)は,抗動脈硬化作用を有し,冠動脈疾患(CHD)の防御因子として重要であり,低HDL-C血症(<35mg/dl)はCHDの主要なリスクファクターの一つに数えられている1).したがって,HDL-Cは動脈硬化性疾患の予防という観点から,成人病検診においても必須検査項目である.血清脂質―コレステロール,トリグリセライド,Lp(a)など―と同時に測定する.
血清脂質は,リン脂質およびアポ蛋白と球状の複合体(リポ蛋白)をつくって血液中に存在しており,脂質代謝異常はリポ蛋白代謝異常として理解されている.それゆえ,高脂血症の診断と治療には,血清コレステロール値,血清トリグリセライド値の測定のみならず,リポ蛋白レベルでの検討が必要である.
アポリポ(アポ)蛋白はリポ蛋白を構成する蛋白成分である.その役目は①脂質を血中で可溶にして各臓器へ運ぶこと,②リポ蛋白を種類別に各々の受容体へ結合させること,③脂質代謝に関係する酵素の活性化や抑制化などを行うこと,などである1).つまり,アポ蛋白はリポ蛋白の代謝調節に不可欠の重要な役割を果たしている.したがって,アポ蛋白の異常は直接脂質代謝の異常につながるので,その測定はリポ蛋白代謝異常の病態を理解するうえで重要である(表1).
Lipoprotein(a)〔Lp(a)〕はLDL類似の特異なリポ蛋白である(図1)1).Lp(a)の血中濃度は虚血性心疾患,脳梗塞など各種疾患で動脈硬化に関する指標の一つとして測定されるが,他の脂質値と関連がないことなどから,独立した動脈硬化の危険因子とされている.Lp(a)は電気泳動上の異常バンド(mid bandなどと呼ばれる)として1970年代から各種の動脈硬化症とLp(a)の関連が研究されてきた.最近,このリポ蛋白に特徴的なアポ蛋白であるapolipoprotein(a)〔アポ(a)〕の蛋白構造が解明されて,プラスミノゲン(Pg)と類似していることが明らかになった.Pgはフィブリン上などのPgレセプターと結合してプラスミンとなり,フィブリン(血栓)を溶解する.高分子糖蛋白であるアポ(a)を有するLp(a)は,PgとPgレセプターの結合を競合拮抗して阻害することにより,血栓形成を促進する方向に作用する可能性が示された2).動脈硬化巣の組織でLp(a)が存在することも確認されている.
血清中に存在する脂肪酸の多くはグリセロールエステル(トリグリセライドやリン脂質)やコレステロールエステルの形でリポ蛋白の構成成分となっている.一方,血清中の遊離脂肪酸(free fattyacid:FFA,またはnon-esterified fatty acid:NEFA)は,エステル化されないで脂肪酸そのままの形で存在する.リポ蛋白中のトリグリセライドは肝臓や腸管から末梢の脂肪組織や筋肉組織へと運ばれ,毛細血管壁上のリポ蛋白リパーゼ(LPL)により分解される.そして遊離脂肪酸は脂肪細胞に取り込まれ,トリグリセライドに再合成され蓄積される.蓄積されたトリグリセライドはホルモン感受性リパーゼにより分解され,遊離脂肪酸を放出する.脂肪組織から動員された遊離脂肪酸は,各末梢組織でエネルギー源として利用される.定常状態においては,ほとんどの組織はエネルギー供給の大半を遊離脂肪酸に依存している.血中では遊離脂肪酸の70〜87%がアルブミンと結合して存在する.血中遊離脂肪酸濃度は主として糖・脂質代謝状態を反映していると考えられるので,血中遊離脂肪酸の測定は糖尿病や高脂血症などの代謝性疾患の病態把握の一助となる.
リポ蛋白リパーゼ(LPL)は,肝臓以外の脂肪組織,骨格筋,心臓の毛細血管内皮細胞表面にヘパラン硫酸を介して結合し,食事由来のカイロミクロンや肝臓で合成されたVLDLといった中性脂肪に富んでいるリポ蛋白を,アポ蛋白C-IIを必須因子として異化する酵素である.高中性脂肪血症の病因の解析の目的に測定される.
LCAT(lecithin-cholesterol acyltransferase)は血漿中で主要なリン脂質であるレシチン(phostatidylcholine)の2位のアシル基(主として不飽和脂肪酸)をコレステロールの水酸基に転移する反応を触媒する酵素である.血漿中のコレステロールの約70〜80%は脂肪酸エステルとしてリポ蛋白粒子の核の部分に存在しているが,その大部分はHDL粒子上でLCATによって生成されたものである.HDL上でエステル化されたコレステロールは,その疎水性のためにHDL粒子の中心部に移行するか,コレステリルエステル転送蛋白(CETP)によって他のリポ蛋白に移動する.HDLはさらに末梢細胞より余剰なコレステロールを引き抜くことが可能となる.このように,LCATはコレステロールの末梢からの引き抜きや肝への逆転送に主要な役割を担っているが,一方,リン脂質の代謝という点でも重要である.
本酵素活性の測定の主たる目的は脂質代謝異常症における病態の解析であるが,LCATは肝で合成される半減期の短い糖蛋白であることから,肝の合成能の指標として用いられることもある.
末梢組織に蓄積した余剰のコレステロールが高比重リポ蛋白(HDL)により引き抜かれた後,そのコレステロールはlecithin-cholesterol acyltransferase(LCAT)によってHDL上でエステル化されて,コレステロールエステル(CE)となる.コレステロールエステル転送蛋白(CETP)は,HDL中に含まれるCEを超低比重リポ蛋白(VLDL)や低比重リポ蛋白(LDL)などのアポ蛋白B含有リポ蛋白へと転送する(図1).これらのアポB含有リポ蛋白が,LDL受容体により肝臓に取り込まれて代謝される.この過程はコレステロール逆転送系と呼ばれ,動脈硬化防御機構の一つであるが,末梢組織に蓄積したコレステロールは最終的に胆汁の一部として排泄される.
CETPは分子量64,000〜74,000,476個のアミノ酸からなる疎水性の糖蛋白で,副腎,肝臓,脾臓などの臓器,脂肪組織,骨格筋,ヒト肝癌細胞由来株HepG 2細胞,小腸上皮細胞,CaCo 2細胞,ヒト単球由来マクロファージなどの細胞で合成される.
カイロミクロンおよびVLDLの代謝産物をレムナントという.マクロファージは容易にレムナントを取り込み,泡沫化し,動脈硬化巣を形成するため,高レムナント血症は高コレステロール血症(高LDL血症)とともに動脈硬化を惹起する脂質代謝異常として知られている.わが国は血清コレステロール高値を伴わない心筋梗塞が多く,この場合はレムナントの影響が大きいと考えられる.しかし,従来,レムナントの分離・測定が困難であったため,レムナントの意義が軽視されがちであった.RLPはremnant-like particles(レムナント様リポ蛋白)の略で,このレムナント量を反映し,簡便な操作で分離・測定が可能となった.RLPはリポZともいう.
RLPは,アポB48とオーバーラップしないアポB100のアミノ酸領域を特異的に認識する抗アポB100モノクローナル抗体と,アポA-Iを認識する抗アポA-Iモノクローナル抗体の血清中非結合分画のリポ蛋白である.
肝・胆道疾患のスクリーニング,病態把握および経過観察の目的で測定する.慢性肝炎,特に非活動性では空腹時総胆汁酸(FTBA)は正常のことが多く,肝予備能のスクリーニングとしては肝硬変,あるいはそれに近い病態の判定に適している.鋭敏性と正確性をより増すには胆汁酸負荷試験が行われる1).負荷試験は原発性胆汁性肝硬変(PBC)における胆汁うっ滞2)や慢性肝疾患の重症度,組織学的進行度の判定3)に役立つ.
胆汁酸分画は,胆汁酸の上昇が肝細胞性か胆汁うっ滞性かを鑑別したり,PBCに対するウルソデオキシコール酸(UDCA)療法の効果判定に用いられる2,4).
血液ガスは呼吸機能,循環器機能,腎機能,細胞代謝の異常を把握するために重要な検査である.血液ガスの評価でのポイントは,酸塩基平衡障害と呼吸・循環器障害を区別して考えることである.もちろん両者はお互いに関連をもって変化するが,評価をする場合,区別をしたほうが病態を理解しやすい.pH,PaCO2,HCO3,Base Excess(BE)は主として酸塩基平衡評価(腎機能,呼吸機能,細胞代謝)に,PaCO2,PaO2,O2satは主として呼吸・循環器異常の評価に重要である.
基本的には呼吸によって血液中にO2を取り込み,CO2を排出する.血液のpHは炭酸-重炭酸緩衝系で調節を受けており,CO2濃度によってpHが変化する(呼吸性酸塩基平衡障害).腎臓でのHCO3産生によってもpHが変化する(代謝性酸塩基平衡障害).細胞の代謝障害によって酸の負荷が起こる場合もある.循環器異常では心不全による肺うっ血によってPaO2の低下が認められるし,先天性心疾患では動静脈シャントが生じてPaO2低下が認められる.
Naは体液の主要な滲透圧物質であり,循環血漿の主要な陽イオンである.したがって,体内Naの欠乏は循環系の異常のみならず体細胞の滲透圧の異常,すなわち細胞の容積・代謝の異常にも関与してくる.測定している血清Naは濃度であり,体内の総Na量ではないので,低Na血症がすなわちNa欠乏ということにはならない1).
Na濃度は水分との相対的な関係で決まる.体内の水,Na量は摂取量と排泄量の差によるので,消化器系疾患,腎疾患の異常の有無の検査が必要になってくる.
Ca
検査の目的・意義 Caは各種の細胞機能の維持に必須のイオンであると同時に,骨の主要構成分である.このため,血中のCaイオン濃度は狭い範囲内に維持されており,その異常はCa代謝あるいは骨代謝調節系の障害を意味する.
1.Mgの生体内分布と生化学的作用 マグネシウム(Mg)は,生体内ではカルシウム(Ca),ナトリウム(Na),カリウム(K)についで多い陽イオン金属である.成人の生体内には20〜28gのMgが存在するが,そのうち60〜65%が骨中に,27%が筋肉中に,6〜7%がその他の組織中に,そして残りの1%が細胞外液中に存在する.臓器分布では,骨および筋肉のほか,代謝活性の高い神経組織および心筋,肝臓,消化管,腎臓,外分泌および内分泌腺,リンパ組織などに多い.
Caが主として細胞外に存在するのに比べて,Mgは細胞内に存在して重要な役割を果たしている.特にリン酸伝達反応とATPが関与する酵素反応系にMgがアクチベーターとして必須であることより,膜輸送,アミノ酸活性化,核酸合成,蛋白質合成,酸化的リン酸化,筋収縮,赤血球と血小板の形態保持などに不可欠である.
亜鉛は必須元素の代表であり,時に中毒や欠乏症がみられることもある.亜鉛は補酵素(metalloenzyme)として重要で,亜鉛が補酵素として作用する酵素の数は100以上といわれている.特に炭酸脱水素酵素,蛋白分解酵素,乳酸脱水素酵素などが有名である1).血清亜鉛濃度の測定は,欠乏状態と過剰状態の指標として用いられる.血清亜鉛濃度測定の対象となる疾患は,①味覚・臭覚低下,②腸性肢端皮膚炎(acrodermatitis enteropathica),③長期にわたる高カロリー輸液,④未熟児などであるが,慢性腎不全にて血液透析を行っている患者での測定意義は大きい.
鉄は体内に約4,000mg存在する微量元素で,そのうち約2/3がヘモグロビン内に含まれる.残り1/3のほとんどが,フェリチンやヘモジデリンなどの貯蔵鉄として肝臓,脾臓や骨髄の網内系に分布し,血漿中に存在する鉄はトランスフェリンと結合した約0.1%を占めるに過ぎない.トランスフェリンはβ1-グロブリン分画に含まれる分子量79,500の糖蛋白で,貯蔵鉄プールから骨髄の赤芽球に鉄を運搬する役割を演ずる.トランスフェリン1分子は鉄2原子を結合することから,血漿中のトランスフェリンが結合し得る鉄の総量を総鉄結合能(total iron binding capacity:TIBC)という.
一方,健常人では通常トランスフェリンの持つTIBCの約1/3に鉄が結合しており,さらにトランスフェリンに結合し得る鉄の量を不飽和鉄結合能(unsaturated iron binding capacity:UIBC)と呼ぶ.したがって,
UIBC=TIBC-血清鉄
の関係が成立する.
血漿浸透圧(Posm)はNa,K,ブドウ糖,尿素などの溶質濃度の総和によって決定される.臨床検査としては凝固点降下法によることが多いが,血中の各溶質成分濃度より次の計算式によって算出可能である.
血漿(血清)レチノール濃度はビタミンA欠乏症,過剰症の診断に用いられる.ビタミンA活性をもつ物質の代表はレチノールであるが,血漿中にはその他レチニルエステル,レチノイン酸,プロビタミンAであるβ-カロチンなどが存在する.通常は主成分のレチノールのみが測定される.
ビタミンAは動物性食品には主としてレチニルエステル,植物性食品にはβ-カロチンの形で含まれ,腸管から吸収されると小腸粘膜上皮細胞内でレチニルエステルとなり,カイロミクロンのコア(芯)を構成してリンパ管に分泌される.カイロミクロンは胸管を経て静脈に移行するが,その間にリポ蛋白リパーゼの作用を受け,トリグリセライドを放出してカイロミクロンレムナントとなり,一部はさらにLDL(低比重リポ蛋白)となって,アポEレセプター,アポB100レセプターを介して肝細胞に取り込まれる.この肝細胞に取り込まれたレチニルエステルは加水分解されてレチノールになり,脂肪貯蔵細胞(stellate cell,伊東細胞)に転送されて貯蔵され,または需要に応じて同じ肝細胞内でつくられるレチノール結合蛋白(RBP)と結合して血中に分泌され,さらにプレアルブミンと複合体を形成して標的臓器へ輸送される.したがって,それら過程のいずれかに障害が起こると血漿レチノール濃度に影響がみられる.
血中総ビタミンB1
ビタミンB1欠乏症および潜在性ビタミンB1欠乏状態の指標として測定する.
ビタミンB12は造血ビタミンの一つであり,欠乏すると貧血,特に巨赤芽球貧血を起こす.その欠乏の原因として,ビタミンB12の摂取不足,吸収障害,および需要増大が考えられる.
また,血中ビタミンB12の異常高値は白血病,特に慢性骨髄性白血病や,肝障害,特に急性肝炎時などで顕著に現れる.
ビタミンD(以下Dと略)は,副甲状腺ホルモン(PTH),カルシトニン(CT)とともに小腸,骨組織,および腎臓に作用し,また相互に関連して作用し合って血中カルシウム(Ca)の恒常性を調節する重要な因子である.
Dの代謝経路を図1に示す.
赤血球膜,血小板,ミトコンドリアをはじめ,各種の生体細胞構築には,多価不飽和脂肪酸(PUFA)がリン脂質などの存在様式で組み込まれその主要な部分を構成している.一方,生体は多彩な代謝系において,酸素をより反応性に富む活性酸素として利用している.ミクロゾーム電子伝達系(NADPH-cyt-P 450)1酸素添加反応はその代表的な例である.生体内には各種の活性酸素(表1)が誘発され,周辺の細胞構築に関与するPUFAは常に酸化の場にさらされている.ビタミンEは抗酸化的に働き,過酸化脂質の生成を抑制し,細胞の安定化と機能維持に関与している1).脂溶性ビタミンであるため,胆汁うっ滞など肝・胆道疾患,栄養不良,脂肪吸収障害などで血中ビタミンEの低下がみられ,溶血傾向,運動失調など神経症状を伴う場合もある.
ビリルビンは,ヘム蛋白(主にヘモグロビン)が網内系で処理されて生成する色素であり,肝臓で取り込まれてグルクロン酸抱合を受け,胆管を通じて腸管に排出される.血清中のビリルビン値に異常を認める場合,これらの過程のいずれかに異常が存在することを示している.肝臓でグルクロン酸抱合されたビリルビンを直接ビリルビン,抱合されていないビリルビンを間接ビリルビンといい,それぞれ異常をきたす病態が異なるので,ビリルビン分画を測定することにより疾患の鑑別がある程度可能である.
血中薬物濃度と効果および副作用の関係についての研究から,すでに1960年にはフェニトインの有効血中濃度に関する報告がなされている.その後,今日に至るまで,薬物濃度の測定法および薬物動態学的手法の進歩などにより,血中薬物濃度モニタリング(TDM:therapeutic drug monitoring)が広く行われるようになってきた.わが国においても,1981年に抗躁薬の炭酸リチウムに「特定薬剤治療管理料」が適用され,保険請求が可能となった.現在では,ジギタリス製剤,テオフィリン製剤,抗不整脈薬,抗てんかん薬,アミノ配糖体抗生物質,バンコマイシン,免疫抑制薬,サリチル酸製剤,メトトレキサート,ハロペリドール製剤,リチウム製剤がその適用となっている.
TDMは,①初期投与設計を行うとき,②有効に治療が行われているかどうかの確認をするとき,③服薬指示違反が疑われるとき,④中毒・副作用の疑いがあるとき,⑤肝機能・腎機能の変化などによる薬物の体内動態の変化が考えられるとき,⑥薬物相互作用が考えられるとき,⑦誤薬の疑いがあるとき,などに行われる.
抗てんかん薬の効果は投与された薬物の血中濃度と相関する1).しかしながら,同一投与量でも患者によって薬物の血中濃度に差があるため,血中濃度の測定値をもとに患者ごとに投与量を補正する.また,過量投与時の症状が病気本来の症状と類似している場合にも血中濃度による判定が有効である,向精神薬については,患者の血中濃度と効果との関係はあまり明確ではなく,治療に反応する患者としない患者が知られている1).しかし,高濃度での中毒症状を避けるため血中濃度のモニタリングが有効である.
ジギタリスは約30年前より薬物動態の研究が始められ,1964年にはヒトの心筋内のジギタリス濃度と血中濃度との間に高い相関が認められることが報告された.このことより,血中濃度から心筋内の濃度が推定され,治療上の指標になることが明らかとなった.また,血中濃度と効果および副作用の発現についての研究より,ジギタリスの有効治療域は非常に狭く,中毒域とも近接しているために,血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)が行われるようになった.
代表的なジギタリス製剤はジゴキシンとジギトキシンである.ジゴキシンは消化管からの吸収過程におけるばらつきが非常に大きいという欠点を持つが,ジギトキシンに比較して半減期が短く,注射剤と経口剤の両方が使用できるため,広く使用されている.一方,ジギトキシンは吸収が良好であるが,半減期が非常に長く(約7日),定常状態に達するのに約1カ月を要する.また,副作用発現後,投与を中止しても体内からの消失が非常に遅く,副作用症状がすぐに消失しないといったことがあり,現在はほとんど用いられていない.したがって,ここではジゴキシンを中心に述べることにする.
テオフィリンは,気管支喘息をはじめとした閉塞性肺疾患の治療に広く使用されている代表的な“気管支拡張薬”である.テオフィリンの血中濃度と臨床効果(喘息の発作頻度,1秒量などの肺機能の改善度,気管支痙攣の抑制度)および副作用の発現頻度には相関性があることが報告されている.しかし,その有効治療域は非常に狭く,中毒域の濃度とも近い.テオフィリンは,投与量の約90%が肝臓で代謝されて排泄されるが,その過程には非常に大きな個人差があり,種々の要因によって影響を受ける(表1).したがって,患者個別の投与設計をし,有効な治療を行うためには,血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)が必要となる.`
薬物動態学理論および微量薬物濃度測定技術の進歩に伴い,体液中薬物濃度を参考に投与設計や処方の改善,さらに服薬遵守の確保など,薬物治療の適正化を進めていく血中薬物濃度モニタリングが治療の場で普及してきた.
アミノグリコシド系抗生物質の血中薬物濃度モニタリングの目的は,抗菌作用を十分に発揮させつつ,その有する生体への有害作用,とりわけ腎障害および聴覚障害(耳毒性)の発現をできるだけ少なく,また軽度に抑えるためである.このような背景により,多くの抗菌薬の中で,アミノグリコシド系抗生物質の血中薬物濃度測定だけが,計画的な治療計画を行ったことに対する診療報酬としての特定薬剤治療管理料の対象になっている.
シクロスポリン(CS)は臓器移植における新しい強力な免疫抑制薬であり,その登場によって臓器移植の新しい幕が開けられたといって過言ではない.現在,CSを中心とした多剤免疫抑制療法の導入により,生体腎移植であれば95%,死体腎移植でも85%の移植腎1年生着率が得られ,良好な腎移植成績を示している.また,臓器移植以外の領域においても,例えばBehçet病,尋常性乾癬,特発性再生不良性貧血,原発性胆汁性肝硬変,微小変化ネフローゼ症候群,関節性リウマチ,多発性筋炎/皮膚筋炎などの自己免疫疾患,あるいは免疫調節障害の疾患の治療にも有効性が認められている.
しかし,その著しい免疫抑制効果の反面,CS製剤そのものに起因する薬理動態の不安定性,狭い治療濃度域による不安定な薬効,そして腎毒性に代表される薬剤の直接の副作用が,CS免疫抑制療法下の患者管理を困難にしている.このため,CS免疫抑制療法を安全かつ有効に遂行するには,CsA血中濃度モニタリング(TDM)による投与量の決定が不可欠とされている.
疾患のスクリーニングは,その疾患を疑わせる症状を認めるために行われるハイリスク・スクリーニングと,発症前に一般集団の中から患者を発見するマス・スクリーニングとに大別される.全国規模で実施されている新生児・乳児スクリーニングはマス・スクリーニング検査であり,発症前の患者発見と早期治療を目的としている.現在,わが国では,治療せずに放置すると死亡したり,生存しても重篤な後遺症を残すが,早期発見・早期治療によりスクリーニングの効果が期待される先天性(代謝)異常6疾患(表1),および白血病,脳腫瘍についで多い小児癌である神経芽細胞腫を対象として,検査費用公費負担による新生児・乳児マス・スクリーニング検査が実施され,治療効果を上げている1).
グルコース6リン酸脱水素酵素(G-6-PD1〜3))
G-6-PDはグルコース6リン酸(G-6-P)→6ホスホグルコン酸(6-PG)の反応を触媒する,五炭糖回路の律速酵素である.この段階にはNADP→NADPHの反応が共役しており,その点G-6-PDはNADPHを供給することにより,細胞を酸化的侵襲から防御する重要な役割を担っている.本酵素の欠乏した赤血球は酸化的刺激に対し,容易に変性してハインツ小体を形成して溶血する.赤血球G-6-PD欠乏症は,世界で保因者が1億人以上と推定される,最も普遍的な先天性赤血球酵素異常症である.
本症は遺伝的変異型が多く,症状のスペクトラムも無症状から溶血まで多様であるが,溶血の病態は薬剤誘発性溶血性貧血と慢性溶血性貧血に大別される.酸化的薬剤(サルファ剤や解熱剤,その他)の服用後1〜3日で赤褐色尿を呈する急激な溶血を示した場合や,原因不明の慢性非球状性溶血性貧血を呈する例では,赤血球のG-6-PD活性を測定する必要がある。
いずれも貧血あるいは赤血球増加症の有無を調べるために行われる.かつてはそれぞれ別々に測定が行われていたが,現在は,静脈血を用いて自動血球計算器で一度に算定されることがほとんどである.また,それらの数字から,平均赤血球容積(MCV),平均ヘモグロビン量(MCH),平均ヘモグロビン濃度(MCHC)も自動的に算定される.MCVは1個の赤血球の体積の平均で,MCHは1個の赤血球の中に含まれるヘモグロビン量の平均である.MCHは赤血球の大きさ(MCV)にほぼ比例するので,MCVをみればすむと思う.MCHCは一定体積の赤血球あたりのヘモグロビン濃度である.これらの値は貧血の鑑別診断上有用である.
網赤血球は赤芽球から核の消失したミトコンドリア,リボソームを有する未熟な赤血球である.この網赤血球は1〜2日後には成熟赤血球になる.末梢血液の赤血球に認められる網赤血球を算定することにより,骨髄における赤血球の造血状態を間接的ではあるが把握することが可能であり,貧血の診断・治療に現在もなお活用されている.
赤血球寿命の短縮による貧血,つまり溶血性貧血の確定診断のために行う.しかし,溶血性貧血の診断には,貧血,黄疸,脾腫,網赤血球増加,間接ビリルビン高値,ハプトグロビンの低下などの種々の目安があり,さらに溶血性貧血の種類を確定する詳細な検査が可能になっている.したがって,赤血球寿命測定の意義は以前ほど高くはない.しかし,溶血に関する種々の検査結果がちぐはぐであったり,異常が軽微である場合は赤血球寿命の測定が診断上必要になる.
砂糖水試験とHAM試験は,発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)のスクリーニングおよび診断に不可欠な検査として知られている.PNHは赤血球膜蛋白であるglycosyl phosphatidyl inositol(GPI)結合型膜蛋白の欠損により血管内で補体溶血を起こす,慢性の後天性の溶血性貧血である.この疾患は睡眠中に血液中にCO2がたまって血液pHが低下すると起こりやすく,早朝,暗赤褐色尿をみることが多いため,“発作性夜間血色素尿症”と名付けられた.この補体溶血をin vitroで起こさせ,診断に用いるのが本試験であり,砂糖水という低電離度液中で赤血球に補体を付着しやすくしたものが砂糖水試験,塩酸を加えてpHを酸性(pH6.5〜7.0)にすることにより補体を付着しやすくしたものがHAM試験と呼ばれている.なお,砂糖水試験は陽性に出やすく,スクリーニングとして普及しており,HAM試験はPNHに特異的といわれ,確認検査として用いられている.
白血球系の数量的,形態的,機能的異常をきたすすべての疾患(表2)について,その病態(腫瘍性か反応性か,また産生低下か),経過(急性期か回復期か),さらに臨床効果(特に抗腫瘍薬やサイトカイン使用時)を評価するために測定する.その場合,白血球は顆粒球(好中球,好酸球,好塩基球),リンパ球,単球からなり,各々が別々の生理的機能を有しているので,単に数の増減だけではなく,同時にその分画(後述)を調べることが極めて重要である.
染色される血球には赤血球,白血球(好中球,好酸球,好塩基球,単球,リンパ球),血小板があり,これらの血球に量的・質的異常が生じると,貧血,免疫能低下,出血傾向などの症状を認めるが,これらの病態や疾患の診断,治療を評価するために検査する.一般に白血球百分率(分画)の異常は,その数の変化を伴って観察されることが多いが,白血球数が正常範囲でも,分画の異常や形態異常(dysplasia)をしばしば認める.特に骨髄異形成症候群(MDS)におけるdysplasiaの有無は重要な予後因子の一つであり,末梢血液像検索の意義は高い.
表1のごとく,好酸球が増加する疾患には多くのものがあり,これらの診断の一助として好酸球数が測定される.多くの場合,アレルギー性の病態の存在を示唆するが,好酸球増多症の診断において重要なことは,好酸球による臓器傷害の有無に注意することと,好酸球の増殖が腫瘍性か反応性かを判別し,また反応性であっても基礎疾患に悪性腫瘍が存在しないかを検索することである.
表1のごとく,好塩基球が増加する疾患が知られている.これらの診断の一助として好塩基球が測定される.類白血病反応と骨髄増殖性疾患の鑑別にも用いられる.
流血中の血小板は,傷害された血管壁の内皮細胞下組織と反応して止血血栓を形成することを主な機能としており,皮膚・粘膜出血など出血傾向の認められる例では,出血原因の鑑別に血小板数の算定は必須の検査である.また赤血球・白血球に異常のみられる症例でも,その病態を知るために検査が必要である.稀ではあるが,血小板増加が動脈血栓症を惹起させることがあるので,動脈血栓塞栓症例でも血小板数の算定を行っておく.
血小板数10万/μl以下を血小板減少とするが,出血症状は血小板数が5万以下に減じて初めて出現する.3万以下では皮膚に出血斑・出血点が出現し,2万以下では粘膜出血(鼻出血,歯肉出血,性器出血,消化管出血,脳出血など)も認められる.血小板数5万以上の例で上記出血症状がみられた場合には,血小板機能障害・凝固異常の合併を考慮する必要がある.
骨髄像は,種々の原因によって引き起こされる血液疾患の診断や,急性白血病を代表とする造血器腫瘍の治療効果判定,悪性リンパ腫などの病期判定を行ううえで極めて重要な検査である1).また,癌の骨髄転移など,他の部位で発生した病変の骨髄への波及を検索する場合や,先天性代謝異常などの全身疾患の診断にも有用である.
アルカリホスファターゼ染色
検査の目的・意義(表1)
末梢血の成熟好中球のアルカリホスファターゼ(ALP)活性の程度を,末梢血塗抹標本の本染色による陽性顆粒の密度から半定量的に測定するもので,好中球ALP(NAP)スコアとして表す.表1に示すような末梢血液検査異常を示す場合の鑑別診断にNAPスコアの測定は有用である.
ことに慢性骨髄性白血病(CML),真性赤血球増加症(PV),発作性夜間血色素尿症(PNH),あるいは骨髄異形成症候群(MDS)が疑われる場合には,本検査は必須である.
ヘモグロビン(Hb)遺伝子における塩基置換,欠失/重複,不均等交差の結果は,①表現型に何らの変化も示さない単なるDNAレベルにおける遺伝子多形,②特定のグロビンの合成量の減少(サラミセア),③グロビンのアミノ酸配列異常,または④個体発生におけるグロビン合成スイッチの切り替えの異常(hereditary persistence of fetal Hb:HPFH)のどれかに該当する.臨床的には小球性貧血,血流閉塞,溶血,チアノーゼ,多血,貧血などが問題となる.簡単なスクリーニングテストによって蓋然的診断を行い,最終的にはグロビンのアミノ酸配列分析または遺伝子DNAの塩基配列分析を行う.
止血機構の異常がどこにあるかを調べる検査であり,本検査で異常値となれば外因系因子の異常が存在することになる.新生児メレナや幼少時より繰り返す出血症状など先天性出血性素因が疑われる場合,あるいは重症肝障害,悪性腫瘍,播種性血管内凝固異常(DIC)など後天的に凝固因子生成の低下または消費の亢進が疑われる場合,さらに手術前のスクリーニング検査などとして行われる.
止血機構の異常がどこにあるかを調べる検査であり,本検査で異常値となれば内因系因子の異常が存在することになる.
PTと同様に,先天性出血性素因が疑われる場合,後天的な凝固因子の異常が疑われる場合,術前検査などとして行われる.
トロンボテストとヘパプラスチンテストは,肝で産生されるビタミンK依存性凝固因子を総合的に測定するためにプロトロンビン時間(PT)に改良を加えたものである.
1)トロンボテストは希釈したウシ脳トロンボプラスチンと精製セファリン(リン脂質)にフィブリノゲン,V因子などの補充源としてウシ吸着血漿を加えることにより,ビタミンK依存性凝固因子(FII,FVII,FX)活性の変化を鋭敏に検出する.また,ウシ脳トロンボプラスチンは,ビタミンK欠乏状態やワーファリンなどの経口抗凝固療法により産生されるPIVKA(proteins induced byvitamin K abscence)に対する感受性が高く,凝固が強く抑制されるため,わが国ではしばしば経口抗凝血薬療法のコントロールに用いられている.トロンボテストは,因子の低下とともにPIVKAによる抑制作用を反映するため,抗凝血薬にてFII,FVII,FXが低下した者と肝障害にて同程度の因子レベルに低下した者では前者のほうがより強く延長を示す.本法の測定範囲は5〜100%であり,低値域での測定精度が高いのが特徴である.
出血時間は,血管が破綻して出血が起こった際に血小板が内皮下の膠原線維に粘着し,これが発端となって血小板が活性化され,顆粒に含有する種々の生理活性物質を放出し,血小板どうしが凝集し合って血小板凝集塊を形成して,一次止血を完了するまでの時間である.したがって出血時間測定の意義は,血小板の数および粘着・放出・凝集という機能が正常であるかどうかをみることにある.
毛細血管抵抗試験は,毛細血管に陽圧あるいは陰圧の圧をかけ,赤血球が血管外に漏れやすいかどうかをみることにより,毛細血管の抵抗性を検査するものである.毛細血管の構造や透過性の変化のほかに,血小板や線溶因子なども関与している.血小板・凝固・線溶検査が進歩した現在では臨床的価値は低くなっているが,血管性出血傾向の数少ない簡便な検査として今なお用いられている.
フィブリノゲンは凝固第I因子と呼ばれ,肝において産生される分子量約34万の糖蛋白である.出血時に,血管の障害部位で血液凝固反応の活性化により生成されたトロンビンによりフィブリンに転化し,止血血栓を形成する役割をになっている.このため,出血・血栓傾向を呈している種々の疾患・病態において検査を行う必要がある.また,フィブリノゲンは感染症,膠原病などの炎症性疾患で急性相反応物質として増加を認めるため,これらの疾患においては炎症マーカーの一つともなる.
アンチトロンビンIII(以下AT III)は肝で産生されるアミノ酸432個からなる分子量約56,000の一本鎖の糖蛋白である.凝固阻止因子として血液凝固反応が過度に進みすぎないよう調節的役割を担っており,トロンビン,活性化第X因子(以下FXa)をはじめ,血液凝固反応過程で生じるほとんどすべての活性化凝固因子(serine protease)と1対1の等モル比で結合して安定な複合体を形成することにより,それらを失活させる.この反応はヘパリンの存在下では著しく加速される(図1).
AT IIIの検査法には,被検血漿中に存在する蛋白量として測定する免疫学的測定法と,検体中のAT IIIがどれだけの活性化凝固因子失活能をもつかという,機能面からとらえる活性測定法とがある.多くの場合,抗原量の低下は活性値の低下に反映される.最も頻繁に行われているものが,発色性合成基質を用いた活性測定法である(図2).
血中に存在するフィブリノゲンや,凝固系の活性化で生じたフィブリンは,線溶系の活性化で生じたプラスミンにより分解され,FDP(fibrin/fibrinogen degradation products,フィブリン/フィブリノゲン分解産物)を生じる.フィブリノゲンの分解では,図1に示すように中間産物であるX,Y分画を経て,最終的には2分子のD分画(Dモノマー)と1分子のE分画が生成されるが,それぞれの分画には分解程度が異なる亜分画が存在する.一方,活性型XIII因子の作用でクロスリンクを受けた安定化フィブリンの分解では,Dダイマー分画(Ddimer)とE分画とが非共有結合的に会合したDD/E複合体(DD/E complex)を基本単位として,DD/EのほかYD/DY,YY/DXDなどのさまざまな高分子複合体が生じる1).
血清FDPの測定は,血中での線溶亢進状態を検出する目的で行われる.また血漿(血清)Dダイマーは安定化フィブリンの分解でのみ生じることから,血栓溶解状態,すなわち二次線溶の検出を目的として行われる.
生体内での血液凝固反応の亢進は,一連の酵素転換反応によりトロンビンが生成されると,その基質であるフィブリノゲンからフィブリノペプタイドAおよびBが遊離され,フィブリンモノマーが生成される(図1).このフィブリンモノマーは互いに重合し,フィブリンポリマーを形成し,最終的に活性化された凝固第XIII因子による架橋反応により,安定したフィブリン(血栓)を形成する.この重合する前のフィブリンモノマーは,フィブリノゲン分解産物(FDP)の初期分解産物やフィプロネクチンなどと会合し,生体内では可溶性の状態で存在する.この状態のものは可溶性フィブリンモノマー複合体(soluble fibrinmonomercomplex:SFMC)と呼ばれる.
したがって,SFMCを検出することは,生体内で凝固亢進に伴って生じたトロンビンによるフィブリン形成(血栓形成)を意味すると考えられる.
検査の目的,意義
血栓の形成は,血管内の血液凝固亢進に伴ってトロンビンが生成され,フィブリノゲンからフィブリンへの転換で終末となる.この一連の反応の中で生成されたトロンビンそのものを検出できれば,この血管内における血栓形成の初期段階を把握することが可能となる.
しかし,血中には,トロンビンに対する生理的なインヒビターであるアンチトロンビンIII(ATIII)が存在し,血管壁に存在するヘパリン様物質を介して速やかに生成したトロンビンの活性を不活性化させるため,血中のトロンビンを直接測定することは困難である.
血管内で血栓が形成されると,フィブリンの析出を契機として線溶系が活性化され,線溶酵素プラスミン(plasmin:Plm)が形成される.血管の破綻孔に形成される止血血栓(hemostatic thrombus)では,止血という目的を達成するために,フィブリンにα2-プラスミンインヒビター(α2-plasmin inhibitor:α2-PI)が活性型XIII因子を介して架橋結合され,フィブリン血栓が容易に溶け去ることのないように保護している(図1).しかし,DIC症候群におけるように,微小血栓の形成が急激に進むと,Plmの産生も急激かつ過剰となり,時には出血性素因を招来するが,このPlmも血中に存在するα2-PIに捕捉され,失活してしまう(図1).
α2-PIは,血中に存在するプロテアーゼインヒビターの中でも酵素を中和する力は抜群で,リジン結合部位(lysine binding site:LBS)を介してPlmと急速に結合し,次いで酵素結合部位でPlmの活性中心をなすセリン残基との間にアシル結合をつくってPlmを中和してしまう(図2).
血管内血栓は,プラスミノゲンアクチベーター(PA)により活性化されたプラスミンにより分解除去される.PAインヒビター1(PAI-1)はPAの生理的に最も重要な阻害因子であり,血栓溶解反応の開始点を制御する.健常人血中では,血漿中以外に血小板α顆粒中にPAI-1が存在する.採血した検体中では,PAI-1は,活性型(恐らくそのほとんどが血中ビトロネクチンと結合して存在している),PAとの複合体,活性が隠れてしまったフリーの“潜在型”など多彩な存在形態を示す.それぞれの形態のPAI-1を分けて測定することは実験室レベルでは可能である.
しかし,たとえ完全な手技で採血されたとしても,例えば活性型は,室温で時間とともに潜在型に変化していくために,in vivoで果たして,どれくらいが活性型で存在するかを一般の臨床検体で測定することはほとんど不可能である.したがって,測定されるPAI-1値としては,総PAI-1量が現在までのところ最も実際的で,信頼できるものと考えられる.
線溶系は,凝固系活性化の最終産物であるフィブリン(血栓)を溶解して,循環血液中よりこれを除去する生理的な機構である.フィブリンを溶解するのはプラスミンという酵素であるが,プラスミンは通常,その前駆体で酵素活性を持たないプラスミノゲンとして血液中に存在している.プラスミノゲンをプラスミンに活性化する酵素がプラスミノゲンアクチベーター(plasminogen activator:PA)である.
組織性プラスミノゲンアクチベーター(tissue-type plasminogen activator:t-PA)は,ヒトの血管内皮細胞から循環血液中に分泌されるフィブリン親和性を有するPAで,フィブリン(血栓)上でプラスミノゲンをプラスミンに活性化してフィブリンの溶解を促進する.
t-PAは血管内に生じた血栓の溶解反応を開始するプラスミノゲン活性化酵素である.t-PAはプラスミノゲンとともに血栓内のフィブリンに結合し,フィブリン分子の上でt-PAによりプラスミノゲンが活性化されてできたプラスミンがフィブリンを分解する.
PAI-1はt-PAの活性を阻害する生理的インヒビターで,それゆえ線溶反応の重要な制御因子の一つといえる.プラスミノゲンやα2-プラスミンインヒビターがほぼ一定の血中レベルに保たれるのに対し,駆血や運動で血液中のt-PA濃度が上昇し,PAI-1はエンドトキシンやサイトカインなどの刺激で血管壁での産生が著しく増加することから,線溶開始活性はこれらの因子の動的なバランスの上になりたっているといえる1).心筋梗塞の冠動脈血栓溶解療法などにt-PAが応用されるようになり,血液中の線溶状態を的確にモニターすることはますます重要になり,t-PA,PAI-1のバランスを知ることが求められている.
プロテインC(PC)とプロテインS(PS)は,主として肝臓で産生されるビタミンK依存性血漿蛋白質で,血液の流動性維持に不可欠なPC凝固制御系(図1)の中心的因子である.すなわち,内皮細胞上のトロンボモジュリン(TM)に結合したトロンビンによって活性化されたPC(APC)は,PSをコファクターとして,凝固第Va因子および第vIIIa因子を特異的に分解・失活化し,凝固反応を強く制御する.最近,新たに第V因子がPSとは異なる新しいAPCコファクター(APC cofactor 2)として機能することが発見され,その生理的意義と重要性が明らかになった.
これまでに血栓症をきたした多数の先天性PC異常症,PS異常症,およびAPC抵抗症(APCresistant)が発見されている.これらの異常症の検査・診断は,血栓症の原因の解明と治療法の確立において非常に重要である.
第VIII因子は内因系凝固因子の一つで,第IXa因子,リン脂質,Ca2+とともに第X因子活性化複合体(X-ase complex)を形成し,第X因子の活性化を促進する.また,von Willebrand因子は血中では第VIII因子と結合して,第VIII因子/von Willebrand因子複合体として循環しており,第VIII因子蛋白の活性を保護し,止血局所に導くという担体としての役割を果たす.その他,止血の場では,露出した血管内皮下組織のコラーゲンと血小板膜糖蛋白のGPIbを粘着させる分子糊として働き,一次止血に重要な役割を担っている.
第VIII因子とvon Willebrand因子の先天性の欠損症はそれぞれ血友病A,von Willebrand病である.出血症状としては血友病Aでは皮下,筋肉内血腫,関節内出血,消化管出血などであるが,vonWillebrand病では点状出血,皮下溢血斑,鼻出血,過多月経などの表層性の出血が多いのが特徴である.第VIII因子やvon Willebrand因子の測定は,これらの鑑別診断や補充療法中の治療経過をモニターするうえで重要である.
血友病,その他の血液凝固因子欠乏症などの先天性血液凝固障害,およびビタミンK欠乏症,DIC(disseminated intravascular coagulation,播種性血管内凝固異常症),肝疾患,凝固インヒビターなどの後天性血液凝固障害の診断のために行う.
具体的には出血傾向またはその他の理由で,APTTあるいはプロトロンビン時間(PT)を検査し,異常を認めるものの,その理由が不明のときに確定診断に迫るために行う.
血小板凝集能と粘着能は血小板機能の中で最も重要である.これらを行うことにより,血小板機能異常が検出され,各種血小板機能異常症,vonWillebrand病などの出血性疾患の診断および血栓症の病態把握への指針となる.具体的には以下の2点のあるときに施行する.
血中あるいは尿中GH(growth hormone)の測定は,下垂体のGH分泌能を評価する目的で行われる.下垂体性小人症,末端肥大症の診断,治療効果の判定に不可欠である.また,各種の視床下部下垂体疾患では,GHの分泌はゴナドトロピンと並んで早期に分泌が障害されるので,視床下部下垂体機能の指標の一つとなる.
下垂体から分泌されるTSH(thyroid stimulating hormone)は甲状腺機能を調節しており,その血中濃度の変化は甲状腺機能を最も敏感に反映すると考えられる.
甲状腺機能の調節は,視床下部から分泌されるthyrotropin releasing hormone(TRH)によるTSHの分泌刺激,さらにTSHは甲状腺ホルモン(T3,T4)の生成・分泌を刺激すると同時に,甲状腺の成長・発育の促進を行う.一方,甲状腺から分泌されたT3やT4は,逆に下垂体のTSH分泌細胞の機能を抑制し,TSHの分泌を減少させる(negative feed back system).また,T3,T4は視床下部に作用してTRHの分泌も抑制することがわかっている.
プロラクチン(PRL)は,脳下垂体前葉のPRL分泌細胞から分泌される分子量約22,000の単純蛋白ホルモンである.通常は妊娠,産褥期に分泌が亢進し,標的臓器である乳腺に作用し,腺の発達と乳汁の産生を促進する.
一方,PRLが何らかの原因で下垂体から過剰に分泌され,高プロラクチン血症(hyperprolactinemia)になると,男女とも性機能が抑制される.女性では乳汁漏出症とともに,無排卵に基づく無月経や不妊が招来されるので,乳汁漏出無月経症候群(galactorrhea-amenorrhea syndrome)と呼ばれる.男性においても高プロラクチン血症は性欲減退,インポテンス,乏精子症などの原因となる.
LH(luteinizing hormone,黄体化ホルモン)は下垂体のゴナドトロープから分泌されるFSH(follicle stimulating hormone,卵胞刺激ホルモン)とともにゴナドトロピンであり,測定値で下垂体のゴナドトロピンの産生・分泌能を知ることができる.
また,下垂体は単独で機能してゴナドトロピンを分泌しているのではなく,視床下部,卵巣・精巣など他の生殖内分泌臓器とともに形成している機能環の一部としてゴナドトロピンを分泌しているので,ゴナドトロピンの一つであるLHを測定することは,この機能環が正常に作動しているかどうかを調べることにもなる.
FSH(follicle stimulating hormone,卵胞刺激ホルモン)は下垂体から分泌されるLH(luteinizing hormone,黄体化ホルモン)とともにゴナドトロピンであり,卵巣または精巣を刺激し,その機能を賦活する作用を有し,その測定値で下垂体のゴナドトロピンの産生・分泌能をおおよそ推定することができる.
また,ゴナドトロピン分泌は視床下部からのGnRH(gonadotropin releasing hormone,ゴナドトロピン放出因子),卵巣・精巣からの性ステロイドホルモンとともに形成している機能環の一部の機能であるので,FSHを測定することは,この機能環が正常に作動しているかどうかを調べることにもなる.
ACTH(adrenocorticotropic hormone,副腎皮質刺激ホルモン)は39個のアミノ酸からなるポリペプチドで,下垂体前葉から分泌され,副腎皮質からのステロイド分泌を促進する.血漿ACTH濃度は下垂体からのACTH分泌能を反映し,その測定は視床下部・下垂体・副腎皮質系の疾患の診断と病態の解明に不可欠である.
ADH(antidiuretic hormone,抗利尿ホルモン)は視床下部-下垂体後葉系において合成分泌されるホルモンで,腎集合管における水透過性を高め,自由水再吸収を促進し,体液量と血漿浸透圧の調節を行っている.ADH分泌は血漿浸透圧および循環血液量,血圧により調節され,ADHの評価は,その分泌調節機序をふまえて行う必要がある.
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