増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第5集
血液生化学検査
糖質および関連物質
血中ケトン体
小沼 富男
1
,
後藤 尚
1
,
武部 和夫
1
1弘前大学医学部第3内科
pp.155-157
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909789
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検査の目的・意義
血中ケトン体上昇の原因は,①肝ケトン体産生亢進,②末梢ケトン体利用低下,③腎尿細管機能異常などに帰せられる.また,ケトン体分画測定により得られる3-ヒドロキシ酪酸(3-OHBA)とアセト酢酸(AcAc)との比からは肝ミトコンドリア内の酸化還元状態(redox state)の把握が可能である.この目的ではケトン体の末梢でのクリアランスの影響を回避する目的で動脈採血が推奨されてきたが,静脈採血での検討で十分であるとする報告もある.
血中ケトン体の測定は糖尿病性ケトアシドーシスの診断,治療効果の判定に必須であるが,その他,肥満症治療の際の体重減少が脱水によるものでないことの確認にも有用である.妊婦の場合,食事制限に加え,悪阻などによるケトン体上昇時には児の低酸素血症,心拍数増加への影響が報告されている.また,ケトン体の上昇が腎血流量,糸球体濾過率(GFR)を増加させ,腎糸球体硬化の一因となる可能性を指摘するものもある.しかし,アセトンの神経障害,意識障害への直接の関与は定説化していない.
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