増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第5集
血液生化学検査
血中薬物濃度
強心薬(ジギタリス)
中野 重行
1
,
八塚 陽子
1
,
堤 喜美子
1
1大分医科大学臨床薬理
pp.250-251
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909822
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検査の目的・意義
ジギタリスは約30年前より薬物動態の研究が始められ,1964年にはヒトの心筋内のジギタリス濃度と血中濃度との間に高い相関が認められることが報告された.このことより,血中濃度から心筋内の濃度が推定され,治療上の指標になることが明らかとなった.また,血中濃度と効果および副作用の発現についての研究より,ジギタリスの有効治療域は非常に狭く,中毒域とも近接しているために,血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)が行われるようになった.
代表的なジギタリス製剤はジゴキシンとジギトキシンである.ジゴキシンは消化管からの吸収過程におけるばらつきが非常に大きいという欠点を持つが,ジギトキシンに比較して半減期が短く,注射剤と経口剤の両方が使用できるため,広く使用されている.一方,ジギトキシンは吸収が良好であるが,半減期が非常に長く(約7日),定常状態に達するのに約1カ月を要する.また,副作用発現後,投与を中止しても体内からの消失が非常に遅く,副作用症状がすぐに消失しないといったことがあり,現在はほとんど用いられていない.したがって,ここではジゴキシンを中心に述べることにする.
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