増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第5集
血液生化学検査
酵素および関連物質
心筋・肝関連
トロポニンT
安部 智
1
,
中尾 正一朗
1
,
田中 弘允
1
1鹿児島大学医学部第1内科
pp.82-83
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909760
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検査の目的・意義
トロポニンTは,横紋筋の薄いフィラメント上でトロポニンI,Cとともにトロポニン複合体を形成し,筋収縮の調整に関与している蛋白(分子量:39kD)である.平滑筋には存在せず,しかも構造が心筋と骨格筋とで異なるため両者を明確に識別することが可能となり,“心筋トロポニンT(TnT)”は現在最も特異的な心筋傷害のマーカーと考えられている.また,TnTは心筋ミオシン軽鎖I(MLC I)同様,心筋の構造蛋白であるが,一部が細胞質にも存在するため,心筋梗塞発症早期(3〜6時間後)から2〜3週後まで有意の上昇が持続する(diagnostic windowが極めて長い).
再灌流に成功した急性心筋梗塞患者での血清TnTの経時的変化を図1に示す.TnTはクレアチンキナーゼ(CK)とほぼ同時相(ミオグロビン(Mb)よりやや遅く,MLCIより明らかに早期)にピークを示すが,CKが低下した後もTnTは高値を持続し,MLCI同様3〜7日後に第2のピークを認める(CKとMLCIを合わせたような二峰性の濃度時間曲線を描く).
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