増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第5集
血液生化学検査
ビタミンおよび生体色素関連物質
ビタミンA
安田 和人
1
1帝京大学医学部臨床病理
pp.228-230
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909814
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検査の目的・意義
血漿(血清)レチノール濃度はビタミンA欠乏症,過剰症の診断に用いられる.ビタミンA活性をもつ物質の代表はレチノールであるが,血漿中にはその他レチニルエステル,レチノイン酸,プロビタミンAであるβ-カロチンなどが存在する.通常は主成分のレチノールのみが測定される.
ビタミンAは動物性食品には主としてレチニルエステル,植物性食品にはβ-カロチンの形で含まれ,腸管から吸収されると小腸粘膜上皮細胞内でレチニルエステルとなり,カイロミクロンのコア(芯)を構成してリンパ管に分泌される.カイロミクロンは胸管を経て静脈に移行するが,その間にリポ蛋白リパーゼの作用を受け,トリグリセライドを放出してカイロミクロンレムナントとなり,一部はさらにLDL(低比重リポ蛋白)となって,アポEレセプター,アポB100レセプターを介して肝細胞に取り込まれる.この肝細胞に取り込まれたレチニルエステルは加水分解されてレチノールになり,脂肪貯蔵細胞(stellate cell,伊東細胞)に転送されて貯蔵され,または需要に応じて同じ肝細胞内でつくられるレチノール結合蛋白(RBP)と結合して血中に分泌され,さらにプレアルブミンと複合体を形成して標的臓器へ輸送される.したがって,それら過程のいずれかに障害が起こると血漿レチノール濃度に影響がみられる.
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