増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第5集
免疫学的検査
感染症関連検査
ウイルス抗原・抗体検査
麻疹ウイルス
小浜 友昭
1
1国立予防衛生研究所村山分室ウイルス製剤部
pp.544-545
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909933
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麻疹ウイルスはヒトの麻疹(はしか;measles)の原因ウイルスである.麻疹に罹患すると高熱,結膜炎,鼻カタル,発疹などを特徴とする全身症状を呈する.麻疹ウイルスは患者の咳の飛沫,鼻汁などを介して健康人の気道や鼻粘膜に感染する.ウイルスの感染力は極めて強く,かつ不顕性感染は稀である.そのため患者からウイルスをもたらされた感受性者(抗体陰性の人)のほとんどは罹患することになる.ウイルスの潜伏期は約10日である.この期間のあとに微熱,咳,鼻炎,結膜炎,高熱の順で臨床症状が現れる(前駆期).この期間が数日続いたのち発疹が生じる(発疹期).発疹期は約5日間続き,回復へと向う(回復期).症状は典型的であり,明確な診断基準が存在する.特に前駆期の終わりに口腔粘膜にみられるコプリック斑(Koplick spot)は麻疹に特徴的である.
一方,臨床上麻疹に類似する猩紅熱,風疹,突発性発疹などとの区別が困難な場合,また気管支炎,肺炎,中耳炎などの合併症,さらに麻疹ウイルスによる持続感染症としての麻疹後脳炎,亜急性硬化性全脳炎(SSPE)などが疑われる場合には血清診断が必要となる.
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