medicina 52巻4号 (2015年4月)

増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第9集

臨床検査の標準化

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 血液検査などの検体検査データは患者の診断や治療の決定に必須の客観的な医学的情報である.その重要な指標の1つが基準範囲であるが,その設定や利用においては,多くの施設で異なった方法が取られ統一されていないのが現状である.少数の基準個体データに基づき,求められた施設固有の基準範囲,試薬メーカーの推奨値,委託先衛生検査所の値,論文や教科書の値などがある.そのような理由から,検査の標準化が進んだ項目でも,管理血清試料に対して同じ測定値を正しく出している施設間で使用されている基準範囲が大きくばらついている現状がある(図1).

 近年の医療の分業体制の進行とともに,医療の地域連携が重要視され,個人を生涯にわたって健康管理できる医療システムの構築が模索されている.また,現在の疫学研究では10万人規模の集団を10年以上にわたって追跡することも稀ではない.このように,患者の診療においても臨床研究においても,臨床検査データは時間的空間的にますますビッグデータとして蓄積されようとしている.これらの臨床検査情報を正確かつ有効に利用するためには,検査値の時間的空間的比較性の保証とその判断基準の統一が必須である.

臨床検査の精度管理 細萱 茂実
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臨床検査のクオリティマネジメント

 臨床検査の精度管理は,測定法の誤差管理が主体であった.今日では分析の前後過程を含む臨床検査のあらゆる段階を範疇とするクオリティマネジメント(quality management:QM)に発展している.

 検査室内の測定法の管理を内部精度管理(internal quality control:IQC),測定値の施設間差の評価・管理を外部精度評価(external quality assessment:EQA),分析の前後過程の管理や標準化を含めた総合的な概念を精度保証(quality assurance:QA)とする.さらに,検査室運営にかかわる実際上の要因の良質な検査管理業務(good laboratory practice:GLP)を含めQMとして全体が構成される.なお,検査室間比較による精度評価を技能試験(proficiency testing:PT)と言うこともある(図1)1)

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 医療機関は高度で複雑な判断が求められており,医師の指示の下に行われる臨床検査の結果は,診断,治療方針の決定,予後推定に重大な影響をもつ.したがって,臨床検査室は「精確な(accurate)結果」を提供する能力が問われるほか,検査室自身の組織運営の独立性も求められる.

 経済のグローバル化が進むなかで,臨床検査を含む医療領域も世界経済の仕組みのなかで同様な動きが活発化している.欧州諸国など陸続きの国だけではなく,今や患者さんや検体は国境を超えて移動しており,臨床検査や医療の標準化への動きとともに,医療規制の国際的な整合化が求められている.

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 従来の臨床検査に求められていた「病態を診断するための検査」に加えて,「治療選択のための検査」が日常診療で重要になってきている.2003年に国際ヒトゲノム計画が完了して以降,病態がゲノムレベルで解明されるようになった.癌分野では,癌の増殖・進展に不可欠と考えられるドライバー遺伝子変異が発見され,その変異を標的にした分子標的薬の開発が進展してきた.一方,変異を検出する診断薬は,分子標的薬の対象となる患者を選択するために必須である.米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は2011年7月14日にコンパニオン診断薬に関するドラフト・ガイダンスを発表し,コンパニオン診断薬の使用目的を①ある治療薬が最も有効と予想される患者の同定,②重篤な副作用のリスクが高いと予想される患者の同定,そして③投与計画や投与量の変更,そして治療の中止を決定するための治療効果のモニタリングの3つとした.2014年8月には,ガイダンスとして確定し,発表した.一方,わが国では,2013年7月1日付で厚生労働省医薬食品局審査管理課長からコンパニオン診断薬の定義や承認審査に係る留意事項が通知された.コンパニオン診断薬の定義は,FDAのドラフト・ガイダンスで示された使用目的と同じ内容である.同年12月24日には独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長名でコンパニオン診断薬および関連する医薬品に関する技術的ガイダンスが公表され,2014年2月19日には厚労省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知によって,コンパニオン診断薬の製造販売承認申請に際しての留意点が示された.米国に3年遅れで未完成ではあるが,わが国でもコンパニオン診断薬に関する承認審査の基準が整備された.

 本稿では,コンパニオン診断薬とそれを用いる検査の現状と課題について述べる.

一般検査 尿検査

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検査の概要

 定性検査は試験紙を尿に浸して読み取るという「ディップ・アンド・リード」の形で簡便に実施できることで広く普及してきた.したがって本稿では,尿定性検査を試験紙での検査に限って述べていく.一方,試験紙で実施できる尿検査といってもかなり多くの項目がありその意義もさまざまであるために,現在よく行われていると考えられる9項目については,表1にまとめ,本文では総論的あるいは補足的な事項について記載した.なお,表1に測定原理を加えたのは試験紙検査の結果に関連することが多く,結果の解釈の際に原理を理解しておくとよいものが多いためである.また,最後に最近普及してきている尿アルブミン,クレアチニンの試験紙について補足として記述した.

尿沈渣検査 菊池 春人
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検査の概要

 尿中の沈殿物が尿沈渣であるが,通常尿を遠心することによって集め鏡検を行って同定する.尿沈渣には腎尿路系の病変が直接反映されるので,腎尿路系の基本的で重要な検査の1つであり,さらに結晶・塩類など代謝に関連する成分も認められる.尿沈渣には多様な成分が存在するため,表1に代表的な成分についてまとめて示した.詳細については文献1)を参考にされたい.

 現在,フローサイトメトリー法や画像認識によって尿を遠心せずに尿中の有形成分を判定,定量する自動分析装置が広く使用されるようになってきているが,沈渣鏡検までのレベルには達しておらず,いわばスクリーニング検査の位置づけである.

一般検査 糞便検査

便潜血検査 今福 裕司
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検査の概要

 便潜血検査(fecal occult blood test:FOBT)は,便中の微量な血液成分を検出する検査である.潜血とは目に見えない血液成分という意味であり,本検査は消化管出血を検出することを目的とする.便中の血液成分の由来として全消化管からの出血,および鼻出血や経口的に血液を摂取した場合も成分が便中に出現する.血液成分として最も多い蛋白質であるヘモグロビン(Hb)を検出対象とすることがほとんどであり,その方法として化学法(chemical method)と免疫法(immunological method)が存在している(図1).免疫法は陽性,陰性という結果となる「定性法」と,便中の潜血量(採便容器中の溶液内のHb量を示す値としてng/mLが使用されることが多い)を数値として求められる「定量法」がある.

寄生虫検査 今福 裕司
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検査の概要

 寄生虫は核膜を有する真核生物のうち運動性のあるものであるが,大きく単細胞生物である原虫(protozoa)と多細胞生物である蠕虫(helminth)に分類される.

 便を検体として用いる寄生虫検査には,虫体そのものの検出,虫卵,囊子(cyst),オーシスト(oocyst)の検出などがある.虫体は大きい物は肉眼的に観察でき,回虫の虫体などがそのまま検査室に提出されることもあるが,赤痢アメーバの栄養型が動いて赤血球を捕食する姿などは顕微鏡にて観察することになる(図1).

一般検査 髄液そのほかの穿刺液

胸水・腹水検査 三宅 一徳
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検査の概要

 胸水,腹水は循環障害,栄養障害,炎症,悪性腫瘍の浸潤などの原因により貯留する.胸水・腹水検査はこの貯留液を体表より穿刺,採取して,成因の鑑別を行う検査である.検査項目としては,以下が標準的な検査として実施される.

【一般性状検査】肉眼的性状観察,細胞数算定および分画,Rivalta反応

【生化学検査】総蛋白,アルブミン,グルコース,乳酸脱水素酵素LD(LDH)活性など

【微生物検査】塗抹鏡検,細菌培養

 穿刺液の外観と疑われる病態により,他の生化学項目や腫瘍マーカー,微生物(遺伝子検査含む),細胞診などの検査を選択して追加実施する.

髄液検査 渡邊 卓
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検査の概要

 髄液(脳脊髄液:cerebrospinal fluid)は,くも膜下腔および脳室を満たす無色透明な水様の液体である.中枢神経系への物理的侵襲に対する保護の役割を果たすのみならず,脳室,くも膜下腔内の化学的ホメオスターシスの維持,栄養物質,代謝産物などの輸送,除去などの役割をも担うとされる.髄液は基本的には血液成分に由来するが,髄液の産生は単なる透過,拡散のみではなく,能動的かつ選択的な物質の輸送によるところが大きいと考えられる.

 髄液検査が日常臨床のなかで特に重要な役割を果たすのは中枢神経系疾患の診断であるが,なかでも各種頭蓋内感染症の診断には不可欠である1).このほか,くも膜下出血,頭蓋内悪性腫瘍,脱髄疾患などの診断にも有用な情報を提供する.近年,髄液中の神経伝達物質などの微量物質の定量も試みられ,中枢神経系の機能との関連や,これまで客観的な検査データによる裏付けの困難であった精神疾患(状態)との関連なども検討されるようになってきている.

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検査の概要

 赤血球はヘモグロビンを含み,ヘモグロビンに酸素を結合させて酸素を運搬する役割を担う.赤血球は骨髄で造血幹細胞から赤芽球を経て分化して産生され,末梢血液に放出される.赤血球は約120日間の寿命の後に脾臓で老化赤血球として貪食される.

 赤血球数,ヘモグロビン,ヘマトクリット,赤血球指数,網赤血球数の検査は,さまざまな血液疾患,出血が疑われる場合に,貧血や赤血球増多の程度を知るために行われる.赤血球の減少あるいは増加は,造血障害以外にも,消化器疾患,腎疾患などさまざまな全身性疾患でも起きる可能性がある.これらの検査は,初期診療では欠かすことのできない検査である.

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赤血球浸透圧抵抗試験(Parpart法)

検査の概要

 遺伝性球状赤血球症(hereditary spherocytosis:HS)が疑われる時,すなわち溶血性貧血の症例で末梢血塗抹標本において小型球状赤血球が認められ,さらに遺伝性(先天性)が疑われた場合には,確定診断のために赤血球浸透圧抵抗試験を行う.本試験は,一般的にはParpart法が用いられている.

白血球数,白血球分類 東田 修二
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検査の概要

 白血球は病原微生物や異物から生体を防御する機能をもつ細胞であり,骨髄の造血幹細胞から分化,成熟して産生される.白血球は5種類の細胞からなり,好中球は細菌の貪食,好酸球と好塩基球はアレルギーに関与する.これら3種類の細胞を総称して顆粒球と呼ぶ.リンパ球は抗体産生や細胞性免疫などにかかわり,単球は組織でマクロファージとなって貪食や抗原提示を行う.白血球の増減をみる際には,白血球数や各分画の百分率だけでなく,白血球数に各分画の百分率を掛け合わせた,絶対数の増減をみる必要がある.

 白血球数はEDTAを加えた血液を検体として,自動血球計数器を用いて測定される.白血球分類はこの装置でフローサイトメトリー法による自動分類が行われるが,自動分類できる細胞は正常白血球の5分画に限られ,好中球の桿状核球と分葉核球の区別はできず,白血病細胞がリンパ球分画に入ってしまうこともある.よって,白血球数や分画に異常がある検体や造血器腫瘍が疑われる検体では,塗抹標本の鏡検による目視分類を行う必要がある.

血小板数 矢冨 裕
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検査の概要

 言うまでもなく,血小板は血栓・止血の中心を担う細胞である.一次止血栓は血小板によって形成され,血小板数の減少により,初期の止血が障害される(出血時間が延長する).血小板疾患には数的異常と機能的異常があり,日常診療において頻度が高く,より重要なのは前者であり,特に血小板減少症が出血傾向との関連で問題となることが多い.

 血小板数は,赤血球,白血球の計数と同時に,EDTA加血液を測定検体として,自動血球計数器で測定される.現在の主流である電気抵抗方式・光学的方式に加え,血小板特異抗原を認識する蛍光標識モノクローナル抗体を用いた血小板計数(免疫学的血小板数測定)も可能となっており,より正確な,低値域における血小板算定が可能になっているが,費用の問題が存在する.

末梢血液像 佐藤 尚武
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検査の概要

 末梢血液中に出現する血液細胞(血球)の形態を観察し,評価を行う検査である.まず末梢血の塗抹標本を作成し,これを染色して顕微鏡で観察する.染色は血液普通染色を行うが,必要に応じて特殊染色を追加する.血液普通染色は,現在は重染色が主流で,Wright-Giemsa染色かMay(-Grünwald)-Giemsa染色を行うが,迅速検査ではWright単染色が実施されることもある.

 観察対象は赤血球,白血球および血小板であるが,きわめて稀に末梢血液中に出現した癌細胞など,非血液細胞が対象になることもある.評価対象は数量異常と形態異常であるが,数量異常については血球計数(血算)のほうが正確な情報を得られる場合が多いので,補助的検査という位置づけになる.

骨髄像 東田 修二
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検査の概要

 骨髄は血球産生の場であり,骨髄球系,赤芽球系,巨核球系,リンパ球系の種々の分化段階の細胞と,造血を支持する細胞が存在する.白血病,骨髄増殖性腫瘍,骨髄異形成症候群,骨髄腫はこれらの造血細胞が腫瘍化して生じた疾患であり,その診断のために骨髄検査を行う.血球減少の原因が再生不良性貧血のような骨髄不全である場合にも骨髄検査を行う.リンパ腫や種々の癌の骨髄浸潤を検索する場合にも行われる.さらには,これらの治療効果の判定にも用いられる.

 骨髄検査の適応を検討した後,まず骨髄穿刺を行う.表1のような場合には引き続き,骨髄生検も行う.穿刺は後腸骨稜で行うが,腸骨に放射線治療が行われたなどの理由で腸骨が不適切な症例では,経験豊富な医師が胸骨貫通による合併症に気をつけながら,胸骨から穿刺を行う.生検は腸骨から行う.採取検体を用いて表2に示す検査を行う.標本の鏡検では表3に示す項目を観察する.

特殊染色 東田 修二
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検査の概要

 特殊染色とは,骨髄もしくは血液塗抹標本の細胞に存在する酵素,多糖類,脂質,金属などをそれぞれに対する試薬を用いて染色し,その陽性/陰性,染色顆粒の密度や性状によって,細胞の系統の区別,腫瘍か否かの区別,診断の補助として用いる検査法である.表1に示すような特殊染色が臨床検査として頻用されている.

細胞表面マーカー 小池 由佳子
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検査の概要

 細胞表面マーカー検査とは,フローサイトメーターを用い,主に細胞膜表面(一部細胞質内)に存在する蛋白質,糖蛋白などの抗原(分子)をモノクローナル抗体の反応性によって検出する検査法である.末梢血,骨髄,体腔液など,細胞浮遊液であれば,いずれも検体として測定可能である.リンパ節や生検した組織も丁寧にほぐして細胞を浮遊させ検査を行う.これら抗原の発現から細胞の系統(lineage)および分化段階(differentiation)を同定することができる.

◆臨床検査として広く用いられているもの

 主な臨床検査として,リンパ球サブセット検査と造血器腫瘍細胞抗原検査がある.そのほか,造血幹細胞移植の際に採取したCD34陽性造血幹細胞数の算定や発作性夜間血色素尿症の診断などにも利用され,その応用範囲は広い.

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検査の概要

◆白血病

 白血病において染色体転座の結果,2つの遺伝子内の切断点においてお互いが融合し,キメラ遺伝子,さらにキメラmRNAを生じる.これを検出指標(転座マーカー)として,染色体検査や遺伝子検査が行われる.核酸増幅法は,白血病の病型診断(表1)や治療後の微小残存病変(minimal residual disease:MRD)のモニタリングなどに利用する.抗癌薬による寛解導入療法後,または造血幹細胞移植後のMRDの高感度モニタリングは,治療効果判定,疾患予後,寛解導入療法後の個別化治療計画,再発の早期発見,移植後の治療介入(ドナーリンパ球輸注など),さらに自家骨髄移植用に採取された幹細胞の質評価の指標となる.

 急性白血病の転座マーカーは骨髄性の40〜50%,リンパ性の30%の症例で利用できる(表2).そのほかMRDの分子マーカーとして,遺伝子発現マーカー(WT1発現など),FLT3変異,抗原受容体遺伝子などがある.

EPO(エリスロポエチン) 小松 則夫
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検査の概要

 エリスロポエチン(erythropoietin:EPO)は主に腎臓から産生される分子量約34kDa,165個のアミノ酸からなる糖蛋白性の造血因子で,赤芽球系前駆細胞に特異的に作用し,その増殖や分化を支持し,赤血球造血を促進する.EPO産生を調節するのは酸素の需要供給のバランスであり,腎臓の細胞に存在する酸素センサーが働いて,その情報をEPO産生細胞(renal EPO producing cells:REP細胞)に伝え,転写因子である低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor:HIF)の安定化によってEPO遺伝子の転写が促進され,EPO産生が誘導される1).すなわち,低酸素状態(高地在住,肺疾患など)や貧血に陥ると組織での酸素が欠乏し,それが刺激となって腎におけるEPO産生が亢進し,赤血球造血が刺激され,赤血球数が増加する.

 一方,酸素過剰や多血症の際にはEPO産生は低下し,赤血球造血は抑制される.このように,赤血球産生のホメオスタシスは巧妙な制御を受け,維持されているため,血中EPO値の測定は生体内での赤血球造血の状態を把握するうえで,有用な検査である.病院外の検査機関への測定依頼(外注検査)が可能である.

TPO(トロンボポエチン) 小松 則夫
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検査の概要

 トロンボポエチン(thrombopoietin:TPO)は巨核球系細胞に作用して血小板産生を促進する造血因子で,分子量95kDaの糖蛋白である.主な産生臓器は肝臓(肝実質細胞)であるが,腎臓,骨格筋,骨髄などでも産生される.TPOやTPO受容体の遺伝子破壊マウスでは末梢血の血小板数が正常値の20%以下に減少し,骨髄の巨核球系前駆細胞や巨核球の数も同程度に減少し,残存した巨核球の核の多倍体化も低下する.血小板減少症の鑑別診断を行うために血中TPO値を測定するが,測定は一部の研究機関でのみ行われている.

血液検査 血栓・止血検査

出血時間 高蓋 寿朗
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検査の概要

 出血時間は一次止血機能をベッドサイドで評価できるin vivoの検査法である.皮膚に小さな切創をつくり,出血が自然に止まるまでの時間を測定する方法であり,Duke法とIvy法が一般的である.

◆Duke法

 耳朶を消毒した後,ランセットと呼ばれるメスなどで2〜3mmの深さで穿刺し,30秒ごとに濾紙を用いて血液を吸い取り,血液が付着しなくなった時間を「出血時間」とする.簡便性を重視して,本邦では最も普及している.

血小板凝集能 矢冨 裕
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検査の概要

 点状出血など一次止血の異常を認めた場合には,まず血小板の異常を考え,血小板数を確認するが,これに異常を認めない場合は血小板機能異常症を疑う.この際,血小板機能の評価において最も重要で,広く施行される検査が血小板凝集能である.

 本検査は,クエン酸加全血を遠心して得られる多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)に種々の血小板活性化物質を添加することにより惹起される血小板凝集反応を観察するものである.凝集反応によりPRPの濁度が低下して光が透過しやすくなるが,このPRPの光学的変化を経時的に検出する透過光法が一般的である.

血小板活性化マーカー 大森 司
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検査の概要

 生体内での血小板活性化を検出する手法としては,活性化血小板からの放出物質の測定,また,血小板の易活性化を判断する血小板凝集能がある.保険収載されている検査としてはβ-トロンボグロブリン(β-thromboglobulin:β-TG),血小板第4因子(platelet factor-4:PF-4),血小板凝集能検査である.β-TG,PF-4は血小板のα顆粒に含まれている血小板特異的蛋白質である.血小板活性化に伴って放出されるβ-TG,PF-4により,生体内での血小板活性化を定量化する.測定は酵素免疫測定(enzyme immunoassay:EIA)法が主である.

 血小板凝集能は透過度法が一般的である.血小板多血漿へ血小板活性化物質添加後の透過度の変化を定量化する.易活性化をより鋭敏に評価する方法として,粒子計測法や,より簡便な全血を用いた血小板凝集計も開発されている.

von Willebrand因子 高蓋 寿朗
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検査の概要

 von Willebrand因子(von Willebrand factor:VWF)は血管内皮細胞あるいは骨髄巨核球で産生される高分子量の糖蛋白質で,血管内皮細胞,血小板から放出される.合成の過程で,分子量約270kDaのサブユニットがS-S結合によって重合し,分子量約500〜20,000kDaのさまざまなサイズのマルチマーを形成している.VWFは,血管内皮が破綻した部位において血管内皮下組織のコラーゲンに結合し,血小板粘着を惹起して一次止血を誘導する.VWFの質的あるいは量的異常によって,von Willebrand病(von Willebrand disease:VWD)を発症する.また,VWFは凝固第Ⅷ因子と血漿中で複合体を形成し,第Ⅷ因子のキャリアー蛋白として機能することも知られている.

 血漿中のVWFを評価する検査としては,以下の検査がある.

ADAMTS13 高蓋 寿朗
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検査の概要

 von Willebrand因子(von Willebrand factor:VWF)はマルチマー構造を形成した状態で血管内皮細胞と血小板から放出され,止血血栓形成の場において重要な機能を示す.一方,全身の微小血管内に病的血栓が形成されることによって発症する血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)において,血中に超高分子マルチマーが出現することが報告されていた.1990年代以降,TTPにおいてVWFマルチマーを選択的に切断する酵素活性の低下が認められることが指摘され,この酵素がADAMTS13と呼ばれるメタロプロテアーゼであることが明らかとなった.

 ADAMTS13はVWFの特定の部位を切断するが,この切断部位を含む73アミノ酸からなるVWFのペプチド断片(VWF73)がADAMTS13の最小基質であることが見いだされている.また,VWF73がADAMTS13によって切断されて生じる切断端のアミノ酸残基を特異的に認識するモノクローナル抗体も開発され,VWF73とこのモノクローナル抗体を利用して高感度ELISA活性測定法(act-ELISA法)が確立されている.測定法の原理は参考文献を参照していただきたい.

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検査の概要

 凝固反応はそれぞれの凝固因子が活性化されることで最終的にフィブリノゲンが活性化されフィブリンとなる反応である.プロトロンビン時間(prothrombin time:PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)は,凝固反応のスクリーニングとして用いられている(図1).

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検査の概要

◆トロンボテスト

 トロンボテスト(thrombo test)は,肝臓でビタミンK依存性に合成される凝固因子(第Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子)のうち,第Ⅱ,Ⅶ,Ⅹ因子量を反映する検査で,ビタミンK欠乏またはビタミンK拮抗薬(ワルファリンなど)で誘発される蛋白であるPIVKA(proteins induced by vitamin K absence)の影響も含めて測定される.ワルファリンのモニタリングに用いられるが,近年世界的にプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)がモニタリングの主流となり,検査件数は減少している.

◆ヘパプラスチンテスト

 ヘパプラスチンテストはトロンボテストと同様に第Ⅱ,Ⅶ,Ⅹ因子量を反映する検査である.ウシ脳由来の代わりに家兎由来の製剤を用いることで,PIVKAの影響を受けず,より第Ⅱ,Ⅶ,Ⅹ因子量を反映するテストである.肝機能評価に用いられる.

フィブリノゲン 清田 育男
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検査の概要

 フィブリノゲンは血液凝固反応の最終段階に関与し,トロンビンによりフィブリノゲンはフィブリンとなり,さらに血液凝固第XIII因子の触媒により,フィブリンから安定化フィブリンを形成する.肝臓で合成され,生体内半減期は3〜4日とされる.

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検査の概要

 アンチトロンビン〔antithrombin:AT,旧称:アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)〕はトロンビンや活性化凝固第Ⅹ因子(activated factor Ⅹ:Ⅹa)などを阻害する生理的血液凝固阻止因子である.ATはヘパリンとの結合により抗トロンビン作用の反応速度を1,000倍以上に促進される.

 先天性AT欠乏/異常症は常染色体優性遺伝形式をとる血栓性素因の1つであり,その頻度は人口10万人当たり1〜2人と報告されている.先天性AT欠乏/異常症患者のほとんどが50〜60歳までに血栓症を発症するが,そのうちの約70%は外傷,手術,妊娠,経口避妊薬の内服,あるいはそのほかの血栓リスクを契機として10〜35歳に初発する.血栓形成頻発部位は下肢深部静脈,腸管膜静脈などで,静脈系の血栓症を引き起こす.

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検査の概要

◆TAT

 トロンビンとその代表的な阻止因子であるアンチトロンビン(AT)が1:1結合した複合体が,トロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)である(図1,2).何種類かの測定法があるが,トロンビンに対する抗体とATに対する抗体の両者ともに反応する蛋白質を検出する測定原理となっている(サンドイッチEIAなど).

 TATを測定することで,トロンビン産生量,すなわち凝固活性化の程度を間接的に評価することができる.トロンビンの血中半減期はきわめて短いため直接測定は不可能であるが,TATの血中半減期は3〜数分であるため測定することが可能である.

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検査の概要

 組織因子(tissue factor:TF)の作用によって凝固活性化を生じると,最終的にトロンビンが形成される.トロンビンがフィブリノゲンに作用すると,フィブリノゲンはフィブリンに転換して,さらにフィブリンが重合すると血栓が形成される.この重合されたフィブリンを安定化するために,血液凝固第XIII因子による架橋結合(cross-link)が行われる.これに対して,形成された血栓を溶解しようとする働きのことを線溶(fibrinolysis)と呼ぶ(図1).

 線溶が開始されるためには,血管内皮からの組織プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator:t-PA)産生が必要である.t-PAは,プラスミノゲン(肝で産生)をプラスミンに転換し,プラスミンは血栓(架橋化フィブリン)を分解する.血栓が分解された際に生ずる分解産物のことをFDP(D-ダイマー)という.t-PAおよびプラスミノゲンはフィブリン親和性が高く,フィブリン上で能率良く線溶が進行する.

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検査の概要

 プロテインC(protein C:PC)とプロテインS(protein S:PS)はいずれも主に肝臓で産生されるビタミンK依存性凝固制御因子である.PCは血管内皮上のトロンボモジュリンに結合したトロンビンにより,活性化PC(activate PC:APC)となる.PSは血漿中では約6割がC4BP(C4b-binding protein)結合型,残りが遊離型として存在する.この遊離型PSがリン脂質とCa2+の存在下で活性化PCの補助因子として働き,凝固第Ⅴa因子と第Ⅷa因子を限定分解することで抗凝固作用を示す.したがって,PCやPSの異常は血栓傾向を呈する.

 先天性PC欠損症は血栓性素因として知られ,高頻度に血栓症を発症し,特に若年性の反復する血栓症では先天性PC欠損症を疑う必要がある.したがって,PCの活性値や抗原量の測定は,血栓性素因の診断や治療に重要である.

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検査の概要

 凝固因子は血小板血栓の一次止血に続き,二次止血を担う肝臓で産生される血漿蛋白質である.凝固因子は複数が存在し,血管壁の損傷に伴い上流の凝固因子から効率的に酵素反応を増幅し,最終的にフィブリン血栓を形成する.凝固因子活性の低下により二次止血が阻害され,出血傾向をきたす.凝固因子活性低下の原因として,凝固因子産生の低下,血栓形成による消費性の低下,また凝固因子インヒビターが挙げられる.

 凝固因子測定法は大きく分けて,活性と抗原測定に分けられる.日常診療では凝固一段法による活性測定が一般的である.活性測定は,目的とする凝固因子の欠乏血漿に標準血漿を種々の濃度で添加した際の活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT),またはプロトロンビン時間(prothrombin time:PT)値を元に標準曲線を作製し,凝固検査の値から患者血漿中の凝固因子活性を測定する.凝固因子活性は正常血漿中1mLに存在する凝固因子量を1U/mLと定義し,これを100%とする.抗原量の測定はELISA法によるものが一般的だが,日常的に行うことは少ない.第XIII因子活性の測定は,ラテックス凝集法などの異なる手法を用いる.

HIT抗体検査 金子 誠
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検査の概要

 血栓治療薬として投与される抗凝固薬のヘパリンの副作用には,出血のほかにヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)がある.HITは,手術症例や血栓症発症例へのヘパリン投与後5〜14日頃に,血小板減少や血栓症の発症・増悪によって疑われる.病態の中心となるのが,血小板第4因子(platelet factor 4:PF4)とヘパリンが結合した複合体に対する抗体(HIT抗体)である.保険収載されているHIT抗体検査法は免疫学的測定法で,ラテックス凝集法および化学発光免疫測定法に基づきHIT抗体を検出する1)

 ラテックス凝集法(HemoslL® HIT-Ab)では,PF4-ヘパリン複合体に対する総免疫グロブリン(HIT-IgG/IgA/IgM)を検出する.PF4-ヘパリン複合体マウスモノクローナル抗体が結合したラテックス,抗原となるPF4-ポリビニルスルホン酸複合体(PVS)と,患者検体中にHIT抗体の競合反応を観察する(ラテックス凝集を阻害する検体が陽性).一方,化学発光免疫測定法には2種類あり,HIT-IgG/IgA/IgMを検出する方法(HemosIL® AcuStar HIT-Ab)と,HIT-IgGのみ検出する方法(HemosIL®AcuStar HIT-IgG)がある.ともに2ステップ免疫測定法で,患者検体中のHIT抗体を標識抗体で直接,定量的に検出する.この測定法の差により,HIT抗体の検出に大きな差が生じる.

血管内皮マーカー 高蓋 寿朗
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検査の概要

 血管内皮細胞とは大血管から毛細血管に至るすべての血管の表面を単層状に覆う細胞である.通常は血管内で異常な血栓形成などをきたさないように機能しているが,血管損傷,炎症,過凝固状態に際しては,血管内皮細胞自体も活性化し,白血球,血小板の接着,凝集を誘導するように機能することが知られている.高度な血管内皮の活性化,あるいは血栓形成などに伴い血管内皮細胞障害が生じていることを,血漿中の「血管内皮マーカー」によって検出することが以前から試みられてきた.

 多くの血管内皮マーカーの可能性が提唱されてきたが,現在では可溶性トロンボモジュリン(soluble thrombomodulin:sTM)とvon Willebrand因子(von Willebrand factor:VWF)が特に有用であると考えられている.VWFについては別項でも解説するので,本稿ではsTMを中心に解説し,ほかの血管内皮マーカーの候補についても触れる.

血液生化学検査など 蛋白

血清総蛋白(TP) 濵田 悦子 , 前川 真人
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検査の概要

 血清中に存在する蛋白質は100種類を超え,これらの総量が総蛋白であり,生理的意義は多種多様である.血清蛋白の変動は,基本的には合成,異化,体内分布,体内からの喪失の4つの因子により調整されている.したがって,いずれかの因子の障害によって血清蛋白濃度が変動する.そのため,全身状態のスクリーニングとして,栄養状態,蛋白質の合成や異化の状態,蛋白質の吸収・漏出の状態,脱水症などの蛋白代謝異常の評価に測定される.

 検査方法は,蛋白質が含有するペプチドとCu2+とのキレート形成による錯化合物の呈色反応を利用したBiuret法を原理として,自動分析装置による測定が大多数を占める.

アルブミン 濵田 悦子 , 前川 真人
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検査の概要

 アルブミンは血漿蛋白質の60〜70%を占める主要な成分で,膠質浸透圧の約80%を担っているだけでなく,栄養源,酸─塩基平衡の維持,各種物質(ビリルビン,遊離脂肪酸,甲状腺ホルモン,Ca)の運搬などの働きを有する.肝臓で合成され,分子量約67,000,等電点4.7〜5.2の水溶性蛋白質である.血中半減期は約21日であり,生体中の栄養状態を反映し,栄養評価蛋白(nutrition assessment protein:NAP)として測定されている.

 測定法は色素結合法を用いた自動分析法が一般的である.用いる色素はBCG[bromcresol green(ブロムクレゾールグリーン)]とBCP[bromcresol purple(ブロムクレゾールパープル)]である.どちらもpH指示薬であり,アルブミンと結合して発色する吸光度を比色定量する.BCG法は簡便で再現性がよいため古くから使用されてきたが,アルブミンだけでなくグロブリン,特に急性反応物質も反応するため正確性に問題がある.BCP法は酸化還元型の反応性の違いや,ビリルビンと共有結合したアルブミンとの反応性に問題があったが,村本らにより1999年にBCP改良法が開発され,アルブミンに高い特異性を示し,国際化学連合(IFCC)標準化法でもある免疫学的測定法とも測定値が一致することから,日本臨床化学会,日本臨床衛生検査技師会の推奨も受け,本邦での普及が進んでいる(すでに50%を超えている).

蛋白分画 濵田 悦子 , 前川 真人
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検査の概要

 血清には約100種類以上の蛋白質が存在している.これら蛋白質の生化学的特性,主な機能を表1にまとめた.血清蛋白電気泳動法は主にセルロースアセテート膜を支持体とする方法であるが,アガロースゲル電気泳動やキャピラリー電気泳動も用いられている.

 右側を陰極,左側を陽極とした電気泳動パターンで示し,デンシトメータで算出された分画%が各分画に相当し,総蛋白量と乗じた分画濃度(g/dL)を評価する.病態に応じたパターンを示すので,病態のスクリーニングに有用である.

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検査の概要

 在院日数の短縮が奨励されるようになり,アルブミン(ALB),トランスサイレチン(transthyretin:TTR),レチノール結合蛋白(retinol binding protein:RBP),トランスフェリン(transferring:Tf)などの反急性期蛋白(anti-acute phase protein)が同時に栄養状態と呼応して変動することから,これらの蛋白質を用いた栄養アセスメントが行われている1,2).アルブミンは血中半減期が約3週間であるが,比較的半減期が短く,炎症時や栄養状態によって変動するTTRと組み合わせて栄養状態を評価することが推奨される.ただし,これらの蛋白質が反急性期蛋白質であることから,C reactive protein(CRP)やserum amyloid A component(SAA)などの増減を評価しながら,評価する必要がある.

免疫電気泳動 藤田 清貴
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検査の概要

 免疫電気泳動とは,ゲル内沈降反応の1つの様式であって,抗原抗体反応にあずかる反応因子(抗原または抗体,その両方)が電気泳動法によって分離される過程(支持体電気泳動法)とゲル内沈降反応(オクタロニー法)とが組み合わされた分析方法を総称している.一般的には免疫電気泳動という場合,Grabar-Williamsの方法を指す.免疫電気泳動が診断上最も有力な武器となるのは,質的異常を示すM蛋白血症であるが,泳動条件,操作法を一定にすることにより量的異常を示す異蛋白血症の分析にも有用である(表1).また,未知の蛋白の同定やその電気的易動度などを知るうえでも有力な手段として用いることができる1)

 免疫電気泳動で最も大切なことは,得られた沈降線をいかに判読するかである.血清,尿などの試料を用いて免疫電気泳動を行った場合には,それぞれの沈降線がどの蛋白成分であるかを知る必要があり,かなりの熟練を要する.実際に市販の抗血清を用いた場合,正常ヒト血清では通常20〜30本の沈降線が観察される(図1).沈降線の現れ方は,使用した抗血清の種類やロット差などによって多少異なった結果が得られる.したがって,用いる抗血清の特徴,すなわち,どの蛋白成分の沈降線が出現しやすく,あるいはまったく認められないかをよく吟味することが大切である.

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検査の概要

 ハプトグロビン(haptoglobin:Hp)は電気泳動においてα2領域に検出される糖蛋白である.Hpは主として肝臓で合成され,血中半減期は3〜5日と短い蛋白であるため,重症肝障害の場合,その血中濃度は著減する.

 Hpは酸化物質である遊離ヘモグロビン(haemoglobin:Hb)と特異的に結合することで,酸化的組織障害から生体を守っている.また,遊離Hb-Hp複合体は,腎糸球体から尿中への鉄の喪失を防いでいる.一方で,Hpは急性期蛋白であり,炎症性疾患(感染症,膠原病など),組織壊死(心筋梗塞など),悪性腫瘍などで血中濃度が上昇し,その活動性の指標となる.

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検査の概要

 免疫グロブリンはリンパ・形質細胞系で合成され,生体内における体液性免疫機構を担当する蛋白でIgG,IgA,IgM,IgD,IgEの5つのクラスが知られている1).表1にヒト免疫グロブリンの物理化学的性状と生物学的活性を示す.IgGは血清中に最も多く,全体の約80%を占めており,生体における二次免疫応答の主要な抗体である.IgAは免疫グロブリンの10〜13%を占めており,粘膜免疫において重要な役割を果している.また,IgMは約6%と少なく,主に一次免疫応答を担っている.IgG,IgA,IgMの定量測定には,主に免疫比濁法あるいは免疫比朧法が用いられており,自動分析装置による測定が可能となっている.IgDの血中濃度はIgG,IgA,IgMに比べて低いことから,低値の測定が可能なラテックスを用いた測定系が用いられているが,その生理的意義はいまだに不明な点が多い.一方,IgEはアナフィラキシーなどのⅠ型アレルギーに関与することが知られているが,その血中濃度はごく微量であり,測定には酵素免疫測定法や化学発光免疫測定法などが用いられている.

補体 秋山 雄次
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検査の概要

 血清中に存在し,熱に弱く,抗体による細菌のオプソニン化と殺菌を促進する成分として発見された.主に肝臓で生成される約20種類の蛋白質の総称で全血清蛋白の約10%を占めるが,血清以外の体液や組織にも広く分布している.進化学的に発生は古く,ヒトデや線虫にも存在し自己・非自己の識別にもかかわる.当初,抗体の抗菌活性を補うものとして発見されたが,自然免疫に属し抗体が産生あるいは動員される前に活性化され効果を示すことができる(第二経路,レクチン経路).以下に述べる種々の免疫反応や感染防御に関与している.

クリオグロブリン血症 秋山 雄次
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検査の概要

 体温以下への冷却で白色に凝集し,37℃以上に加温すると再溶解する血清中の異常蛋白をクリオグロブリン(cryoglobulin)と呼び,そのクリオグロブリンが血中に増加した状態をクリオグロブリン血症という.基礎疾患が不明な本態性と,膠原病などの自己免疫疾患,感染症,リンパ増殖性疾患などに伴って発症する続発性に分かれる.また,クリオグロブリンを形成する免疫グロブリンの性状により3型に分類することが多い(表1).すなわち,単一のモノクローナルな免疫グロブリンからなるⅠ型,ポリクローナルなⅢ型,混合するⅡ型である.Ⅱ型はリウマトイド因子活性をもつモノクローナルIgMとポリクローナルIgGが免疫複合体を形成したもので,Ⅲ型はリウマトイド因子活性をもつポリクローナルIgMとポリクローナルIgG(稀にIgA)が免疫複合体を形成したものである.

 症状としては皮膚症状が最も多く末梢循環不全によりRaynaud現象,四肢末端のチアノーゼ,網状皮斑,寒冷蕁麻疹,紫斑などを呈する.腎糸球体にクリオグロブリンによって生じた免疫複合体が多量に沈着すると糸球体腎炎を引き起こし蛋白尿,血尿,ネフローゼ症候群などを呈する.その他,関節痛,筋痛,末梢神経障害,腹痛,消化管出血,肝脾腫などをきたす.

Bence Jones蛋白 藤田 清貴
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検査の概要

 Bence Jones蛋白(BJP)は,免疫グロブリンの遊離のL鎖が単一クローン性に出現したものであり,56〜60℃の熱処理で混濁し,100℃付近で再溶解する特異な熱凝固性を示す蛋白質をいう.L鎖は分子量が約22,000であるが,BJPのほとんどは二量体として合成・分泌され,単量体や稀に四量体のものも存在する.四量体のものは腎糸球体膜を通過しにくいが,それ以外は分子量が小さいので尿中に排出されやすい.

 尿中BJPの定性法としてPutnum法が用いられているが,この方法はBJPの等電点が酸性側に多いことから,尿を酸性(pH 4.9)下で熱試験を行う.しかし,BJPの等電点には多様性があり,またBJP以外のほかの蛋白成分の混在などにより判定が困難になる場合が少なくない.BJPの同定法としては免疫電気泳動法,免疫固定電気泳動法のような免疫学的な方法がより確実である.BJPの場合,IgG,IgA,IgM,IgD,IgEの各H鎖特異抗血清とはまったく反応せず,L鎖の抗κまたは抗λ鎖抗血清のどちらか一方とのみ反応するM蛋白として観察される(図1).

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検査の概要

 形質細胞はBリンパ球がさらに分化した細胞であり,免疫グロブリンを産生する.形質細胞内ではH鎖とL鎖が別々に産生され,これらが結合して完全型免疫グロブリン(IgG,IgAなど)となり,細胞表面から分泌される.形質細胞内ではH鎖よりもL鎖のほうが多く産生されるため,血中にはH鎖と結合していないL鎖が少量存在している.H鎖と結合していないL鎖を遊離L鎖(free light chain:FLC)と呼ぶ.

 免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比(free light chain ratio:rFLC)は,ネフェロメトリー法により血清中の遊離κ鎖およびλ鎖を測定し,κ/λ比を算出する検査である.多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)などの形質細胞腫瘍の場合,遊離κ鎖もしくはλ鎖どちらか一方が増加するため,κ/λ鎖比が大きく変化する.一方,感染症や自己免疫疾患などの場合,κ/λ鎖比はほとんど変化せず基準値内に収まる1).rFLC測定は,従来から用いられている免疫電気泳動や免疫固定法に比べて高感度のM蛋白検出法であり,高免疫グロブリン血症の鑑別診断や,形質細胞腫瘍の診断,予後予測,治療効果判定などに用いられる.

可溶性IL-2レセプター 増田 亜希子
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検査の概要

 IL-2レセプター(IL-2R)はα鎖(CD25),β鎖(CD122),γ鎖(CD132)の3つのサブユニットで構成されている.IL-2Rは増殖シグナル伝達などに関わっている.

 可溶性IL-2レセプター(sIL-2R)は,IL-2Rα鎖の一部が可溶型となって血中に遊離したものである.IL-2Rα鎖はリンパ球の活性化に伴って発現することから,sIL-2Rの血清中濃度は,活性化リンパ球の細胞数や増殖の勢いを反映する.そのため,臨床的にはリンパ腫の腫瘍マーカーとして用いられている.sIL-2Rは非Hodgkinリンパ腫,成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell lymphoma/leukemia:ATLL)の診断や経過観察に有用である.一方で,リンパ球が活性化されるさまざまな疾患(自己免疫疾患やウイルス感染症など)でも高値となることがあり,非特異的である点に注意が必要である.

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検査の概要

 血清KL-6,SP-A,SP-D値は,主としてⅡ型肺胞上皮細胞の傷害により上昇し,特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias:IIPs)をはじめとする間質性肺炎全般の血清マーカーとして,広く日常臨床で用いられている.IIPsの臨床診断基準(第四次改訂)では,「KL-6,SP-A,SP-D,LDHのうち,1項目以上の上昇」が診断項目の1つに挙げられている1).また間質性肺炎の疾患活動性の指標としても有用であり,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)においては,予後を予測しうるマーカーとしても知られている.間質性肺炎の診断は,特に画像・病理診断において,しばしば医師の熟練度に影響を受けやすく,客観性のある血清バイオマーカーが,広く一般臨床医にも補助診断として有用と思われる.

 KL-6の測定法としては,酵素免疫測定法(enzyme immunoassay:EIA)や電気化学発光免疫測定法(electrochemiluminescence immunoassay:ECLIA),化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay:CLEIA)およびラテックス凝集比濁法などが開発されており,EIA法,ECLIA法,ラテックス凝集比濁法によるものが保険適用となっている.ラテックス凝集比濁法は検体前処理が不要で,測定時間が10分程度と短時間であるため,院内検査であれば,診察前検査を当日の診療に反映することが可能である.SP-A,SP-DはEIA法で測定に数時間を要し,多くの施設で外部の検査機関に委託している.

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検査の概要

 骨は常に代謝を続ける組織であり,骨吸収と骨形成からなるリモデリングによりその恒常性が維持されている.骨の状態の評価法の1つに骨密度測定がある.骨密度は成人となってからその時点までの骨代謝の合算,いわゆる積分値であり,必ずしも現在の骨代謝状態を評価する指標とはならない.一方,骨代謝マーカーはその時点での骨代謝回転を反映した,いわゆる微分値であり,現在の骨代謝を評価する有効な手段となる.

 骨代謝マーカーを大別すると,骨吸収を反映した骨吸収マーカー,骨形成を反映した骨形成マーカー,および骨質に関連した骨マトリックス関連マーカーに分けられる.これらのマーカーは骨折リスクとの関連が明らかにされている.特に骨吸収マーカー高値は骨密度とは独立した骨折リスクであるとされている.

血液生化学検査など 炎症マーカー,感染マーカー

CRP(C反応性蛋白) 松尾 収二
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検査の概要

 感染症や組織障害を炎症と総称するが,この炎症の主なマーカーとして,白血球とその分類,赤沈,血清蛋白分画およびC反応性蛋白(CRP)がある.CRPは,Caイオンの存在下で肺炎球菌のC多糖体と免疫沈降する物質であり,血清アミロイド蛋白(SAA),α1-アンチトリプシン,ハプトグロビン,フィブリノーゲンなどとともにacute phase protein(急性期蛋白)と称される.

 炎症では,単球・マクロファージが活性化され,白血球などの細胞浸潤,血管透過性の亢進がみられるが,それらの発現を促すのが単球・マクロファージから産生されるTNF-α(tumor necrosis factor-α),IL-1(interleukin 1),IL-6などのサイトカインであり,これらが肝細胞でのCRP産生を促す.特にIL-6の作用が大きい.

赤沈(赤血球沈降速度) 松尾 収二
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検査の概要

 赤血球沈降速度は赤沈あるいは血沈と呼ばれ,古くより炎症性疾患のスクリーニング的診断やモニターに頻用されている.赤沈は抗凝固剤を加えた血液を専用の管に入れて垂直に立て,赤血球の沈降に伴って出現する血漿層の厚さを測定する検査である.測定条件によって値が変わるため一定の方法で測定する.国際血液学標準化委員会(ICSH)はEDTA血を用いる方法を推奨しているが,わが国ではICSHが過去推奨していたWestergren法が広く普及している.具体的には3.28%クエン酸ソーダ0.4mLと血液1.6mLを混合したものを内径2.5mmのWestergren管に吸引し垂直に立て,1時間後の血漿の層の厚さを読み取る.

 最近は,専用の採血管をそのまま血沈管として用いることで血液汚染を防ぎ,30分値からWestergren法の1時間値を推定する装置など,短時間で多数の検体を測定する自動血沈測定装置が普及している.

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検査の概要

 WHOの報告によると世界中の死亡原因の約25%が敗血症である.敗血症に併発する臓器不全は救急・集中医療領域において治療が長引く要因の一つで,保健医療の大きな負担となっている.したがって,生化学的/免疫学的マーカーをモニタリングし,早期診断をし,適切な治療を迅速に行うことが必要である.感染症(敗血症)診断には,以下に示すことが望まれる.①感度および特異度が高い,②感染と非感染を区別できる,③予知能がある,④重症度を反映する,⑤生物学的に筋が通っている,⑥操作が簡便である.

◆プロカルシトニン(procalcitonin:PCT)

 PCTの生理学的役割と産生部位はいまだ完全には理解されていないのが現状である.敗血症時には,PCTはほとんどすべての甲状腺外組織で産生されることが証明されている.PCTは重症細菌感染の診断に役立つだけでなく,その重症度指標ともなる非常に興味深いマーカーである(図1)1).血清を用いたイムノクロマトグラフィ法による半定量法と化学発光酵素免疫測定法による定量法がある.

エンドトキシン 遠藤 重厚
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検査の概要

 エンドトキシン(lipopolysaccharide:LPS)はグラム陰性桿菌性敗血症の病態生理学における一次性誘発物質である.したがって,エンドトキシンは重要なモニタリング指標とみなされる.

 エンドトキシン定量法として知られるリムルステストの名はアメリカ産カブトガニの学名Limulus polyphemusから由来している.このテストは,カブトガニ血球が微量のエンドトキシンで凝固する現象が契機となり開発された1).カブトガニ血球の抽出液(ライセート)に存在するC因子がエンドトキシンの受容体であり,これは哺乳動物の補体のC1sやC1qとの構造類似性が明らかにされている.エンドトキシンと結合するC因子は活性化C因子となる.活性化C因子はB因子を活性化し,活性化B因子は凝固酵素前駆体に作用して凝固酵素に変換する.これが,コアグローゲン(哺乳類のフィブリノーゲンに相当)に作用し,不溶性のコアグリン(フィブリンに相当)を形成する.これがリムルステストのゲル化法と呼ばれるもので,開発当初から敗血症患者の血中エンドトキシンの定量法として用いられるようになった.

β-D-グルカン 遠藤 重厚
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検査の概要

 重篤な基礎疾患を有する患者あるいは侵襲の大きい周術期の患者に対して,必然的に集学的治療を行う結果,抗菌薬,免疫抑制剤,ステロイド剤などの長期投与,中心静脈栄養あるいは血液浄化法時のカニューラ類の使用などにより易感染性に陥り,深在性真菌症を合併することが少なからずみられる.

 深在性真菌症を合併するような病態においては,汎発性血管内凝固症候群,急性呼吸不全症候群さらには多臓器不全症などに進展し,治療に難渋することが多く,このような重篤な病態への進行を予防するためにも深在性真菌症の早期診断が必要である.

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検査の概要

 カルプロテクチンは好中球や単球,マクロファージから放出されるS100A8(別名calgranulin A, myeloid-related protein 8:MRP8)とS100A9(別名calgranulin B, myeloid-related protein 14:MRP14)という2つの蛋白質の複合体である.カルプロテクチンは炎症下では上皮細胞において誘導されることが知られており,便中カルプロテクチンは消化管障害の新たなマーカーとして注目されている.近年,潰瘍性大腸炎やCrohn病といった炎症性腸疾患と過敏性腸症候群の鑑別に対する有用性が報告されている.さらにこれらの炎症性腸疾患における再燃や治療効果などの判定に対する有用性についても検討されており,特に大腸に病変の主座を有する潰瘍性大腸炎の活動性の評価に有用であるとの報告がある.

 便中カルプロテクチンはenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法で測定されるが,2014年11月1日現在国内では保険適用となっておらず,ELISAが可能な施設であれば検査キットを購入して測定することができるが,通常は検査会社に依頼して測定する必要がある.非侵襲的に検体を採取できることに加え,糞便中のカルプロテクチンは室温で7日間安定であり検体の取り扱いが簡便であることも利点の1つである.

血液生化学検査など 窒素化合物,腎機能検査

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検査の概要

 血中尿素窒素(BUN)は,血液中に含まれる尿素量を表し,血清の除蛋白成分のなかの窒素成分の総称である非蛋白窒素(NPN)の約50%を占める.経口摂取した蛋白や組織蛋白の分解産物であるアンモニアは,そのままでは神経毒性を有するため,肝で尿素サイクルの代謝を受けて尿素に変換される.尿素のほとんどは腎糸球体で濾過されて尿中に排泄されるが,その一部は尿細管で再吸収され血中に戻される.すなわち,BUNは,①蛋白摂取,異化亢進,②肝臓での尿素合成,③腎での排泄機能の影響を受ける.日常診療では腎機能の指標として広く利用されているが,BUNのみで腎機能障害を評価してはならない.腎機能以外では,循環血漿量減少,蛋白異化亢進,蛋白摂取量増加などの場合にも病態の補助診断として用いられている.

尿酸 神保 りか , 下澤 達雄
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検査の概要

 尿酸は,DNAやRNAなどの核酸の構成要素や高エネルギー化合物であるアデノシン三リン酸(ATP)などを合成供給するプリン体代謝経路でプリン体の最終分解産物として生成する.尿酸値測定は急性関節炎の鑑別,尿路結石症の鑑別,プリン体代謝異常や腎機能障害の診断に有用な検査である.測定方法はウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法が一般的である.検体の取扱は冷蔵保存で約1週間,凍結保存で長期間安定である.

アンモニア 神保 りか , 下澤 達雄
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検査の概要

 アンモニア(NH3)は食事に含まれるアミノ酸の腸管細菌による脱アミノ化,消化管への分泌液に含まれる尿素の腸内細菌および腸管粘膜のウレアーゼによる分解,肝臓・腎臓におけるグルタミナーゼによるグルタミンの脱アミノ反応などで産生される.そのほか,アンモニアは,骨格筋や脳でも産生される.アンモニアのほとんどは腸管で吸収されて,門脈血中を肝臓に輸送され,尿素サイクルで尿素に変換(解毒)され,尿素は腎より尿中に排泄される.

 アンモニアは高濃度になると神経毒性を持ち,アンモニア中毒の症状としては,無気力,振戦,不明瞭言語,視力不鮮明,嘔吐,昏睡,死などがある.血中アンモニア濃度測定は臨床的には意識障害の鑑別,肝性脳症や肝硬変,劇症肝炎の病態把握に重要な検査である.

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クレアチニン

検査の概要

 クレアチニンは,筋肉へ取り込まれたクレアチンの通常約2%から不可逆的に生成される.そのため,血清クレアチニン値は筋肉に含まれるクレアチン量と比例する.

 血中へ放出されたクレアチニンは,腎外での排泄や尿細管での再吸収・分泌がほとんどなく糸球体から濾過される(ただし,わずかに近位尿細管から分泌される).したがって,血清クレアチニン値は腎機能のおおよその指標とされる.

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検査の概要

 クリアランスとは,物質が単位時間あたりどれくらい血液から除去されるかを示す指標である.腎クリアランス低下は,腎での物質の除去能低下を表し,腎機能の障害を示唆する.

 クレアチニン(Cr)は主として腎糸球体から排泄される内因性物質である.Crは分子量が113であり,糸球体基底膜を自由に通過し,血清Cr値が高値でない限り尿細管からは再吸収されない.しかしながら,尿中Crの約10〜15%は尿細管より分泌されるため,イヌリンクリアランス(Cin)による真の糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)よりもクレアチニンクリアランス(Ccr)は高値となる.しかし,Crは比較的安定的に測定可能であることから,CcrはGFRの近似として用いられる.

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シスタチンC

検査の概要

 血清シスタチンCは分子量13.3kDaの低分子蛋白である.全身の有核細胞から一定量が産生され,腎臓の糸球体を通過する際にそのほとんどが濾過されて尿中に排泄される.そのため,シスタチンCは腎機能,すなわち糸球体濾過量(glomerular filtration ratio:GFR)の評価に用いられている.

 従来から腎機能の評価として用いられている血清クレアチニンは,筋肉に含まれるクレアチンから非酵素的に産生されるため,筋肉量の影響を考慮する必要がある.またクレアチニンはシスタチンCと同様に糸球体での濾過により尿中に排泄されるが,一部は尿細管からも尿中に分泌される.シスタチンCは筋肉量による影響は受けず,尿細管での分泌や再吸収による影響も少ない.これまでの報告によると,クレアチニンよりもシスタチンCを用いた腎機能評価のほうが,特に早期の腎機能低下を鋭敏に検出する.慢性腎臓病は末期腎不全および心血管イベントのリスク因子であることが知られているが,クレアチニンよりもシスタチンCを用いた推算GFR(eGFR)による腎機能評価のほうが,これらのリスクを正確に評価できる1)

血液生化学検査など 酵素,肝機能検査

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検査の概要

 乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)は解糖系最終段階の酵素で,すべての細胞に存在する.細胞の可溶性分画に存在するため,細胞の傷害時に直接もしくはリンパを通って間接的に血管内に流入する逸脱酵素である.したがって,大多数の細胞傷害で血清LD活性が上昇するため,非常に感度のよい体内での異常の発信シグナルであり,初診時のスクリーニング検査として重要な役割を示す.

 LD活性は,ほとんどの施設で,日本臨床化学会(JSCC)勧告法に準拠したJSCC標準化対応法によって測定されている.乳酸を基質として用い,NAD(nicotinamide adenine dinucleotide)が還元され生成するNADHを340nmの増加で連続的に捉える方法である.

AST(GOT),ALT(GPT) 野村 文夫
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検査の概要

 aspartate aminotransferase(AST)とalanine aminotransferase(ALT)は,それぞれaspartic acidとalanineのα-アミノ基をケトグルタール酸のα-ケト基に転移する酵素であり,トランスアミナーゼと総称される.以前はASTはGOT,ALTはGPTと呼ばれていた.

 両酵素ともきわめて多くの臓器に存在するが,組織中のAST濃度が最も高いのは肝臓であり,次いで心臓,骨格筋,腎,脳,膵,肺,白血球,赤血球の順である.ALT濃度も肝臓で最も高く,肝特異性はALTのほうがASTよりも高い.肝胆道疾患のスクリーニングや経過観察の目的で用いられることが多いが,特にASTは心疾患,筋疾患,溶血性疾患においても上昇する.ASTは肝細胞では細胞質(sAST)とミトコンドリア(mAST)に存在する.健常人血中では大部分がsASTであり,通常はmASTが上昇するのは重度の肝障害の場合である.

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検査の概要

 アルカリフォスファターゼ(ALP)はアルカリ性下でリン酸モノエステルを加水分解する酵素である.細胞膜の外側に結合しており,活性の中心にZnイオンを有し,Mgイオンによって活性化される.

 血漿(清)中ALP活性の測定は,4-ニトロフェニルリン酸を基質とし,ALPによって生成される4-ニトロフェノールを測定する方法が用いられている.血清またはへパリン血漿で測定が可能だが,EDTA血漿はZnイオンやMgイオンがキレートされ活性が極端に低下するため検体として不適である.

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γ-GT

検査の概要

 γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)はγ-グルタミル基をもつペプチドからグルタミル基をほかのペプチドやアミノ酸に移す酵素である.肝,腎,膵,脾,脳,腸など多くの臓器に存在しているが,血中の酵素蛋白は主に肝由来と考えられる.

 血清γ-GTの異常高値が診断のきっかけとなる病態として,最も有名なのはアルコールの過剰摂取による上昇である.禁酒によりγ-GTが低下することはアルコール性肝障害診断基準における重要な一項目であり1),完全に禁酒すると2〜3週後には前値の50%程度に改善する.また,γ-GTはアルカリフォスファターゼ(ALP),ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)とともに胆道系酵素と呼ばれ,肝内・肝外の胆汁うっ滞により上昇する.これら3酵素のなかで胆汁うっ滞の検出率はγ-GTが最も高いとされている.ただし,遺伝性肝内胆汁うっ滞のなかにはγ-GTが上昇しないタイプもある.中年女性が健診におけるγ-GTの異常高値をきっかけに原発性胆汁性肝硬変と診断されるケースも少なくない.

コリンエステラーゼ(ChE) 榎奥 健一郎
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検査の概要

 コリンエステラーゼ(cholinesterase:ChE)はコリンエステル類を加水分解する酵素であり,生体内にはアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2種類がある.

 アセチルコリンエステラーゼは神経組織や赤血球に存在し,アセチルコリンをコリンと酢酸に分解する.アセチルコリンは運動神経や副交感神経の末端から放出される神経伝達物質である.神経末端から放出されたアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼにより速やかに分解される.毒ガスの一種である神経ガスはアセチルコリンエステラーゼを阻害し,アセチルコリンを分解・除去できなくしてしまう.その結果,神経伝達が阻害され筋肉が正常に動けなくなる.症状としては瞳孔収縮,痙攣などが生じ,さらに進むと呼吸筋が動かなくなり窒息に至る.アセチルコリンエステラーゼは真性コリンエステラーゼと呼ばれることもある.

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検査の概要

 ICG(インドシアニングリーン)とは暗緑色の色素であり,静脈投与すると肝細胞に取り込まれて,抱合などの代謝を受けずに胆汁中に排泄される.肝外排泄はほとんどない.また腸肝循環もしない.静注してから一定時間後の色素の血中停滞率(retention rate)から肝機能を推定する.一般的には15分後の血中停滞率(R15)が用いられることが多い.ICG試験の結果は,単位時間あたりの肝血流量,肝細胞の血中からのICG摂取能力,肝細胞の胆汁中へのICG排泄能力を反映しているが,ICGは肝臓の初回通過で大部分が取り込まれるため肝血流量が最も影響している.

 肝血流量は摂食状況や運動で変化するため,ICG試験は早朝空腹時に安静臥位で行う.体重1kgあたり0.5mgのICGを注射用蒸留水で5mg/mL程度に希釈し,肘静脈より30秒以内に症状に注意しながら徐々に静脈注射する.採血は反対側の肘静脈から行う.ICGは光に不安定なので採血後の血清には光が当たらないようにする.

ビリルビン 榎奥 健一郎
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検査の概要

 ビリルビンは主に赤血球ヘモグロビンの代謝分解物であり肝臓で胆汁へ排泄される.ゆえに,その総和である総ビリルビンを調べることで赤血球の分解亢進,肝機能障害,胆道閉塞などの異常を検出することができる.脾臓で赤血球が分解されるとヘモグロビンも分解され,ヘムは非抱合型ビリルビンになる.非抱合型ビリルビンは水に溶けないためアルブミンと結合して肝臓へと送られる.非抱合型ビリルビンは,間接ビリルビンとも呼ばれる.肝臓においてビリルビンはグルクロン酸抱合を受け,水に溶けるようになる.抱合型ビリルビンは胆汁中に排泄される.抱合型ビリルビンは,直接ビリルビンとも呼ばれている.

 非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)は光により分解しやすいので,採血後速やかに測定する必要がある.保存血清で測定する場合には血清を遮光冷凍しておく.

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検査の概要

 ウイルス,アルコール,薬剤,過栄養,自己免疫機序などの原因にかかわらず,肝臓への障害が継続(慢性化)すると,これに対する創傷治癒機転が持続するため,肝臓には線維成分が沈着し線維化をきたす.線維化が高度に及ぶと肝硬変症となり,肝機能の低下,門脈圧亢進症などにより予後不良の病態となる.すなわち,線維化の程度の把握は診療上,重要である.また,わが国で慢性肝臓病の原因として最も頻度の高いC型肝炎においては,治療法の進歩によりウイルスを排除し完治を目指すことが可能となってきたが,一般に線維化が進んだ症例では,治療効果が低いことが明らかとなっている.したがって,C型肝炎の治療効果を推定するためにも線維化の診断は重要となっている.この肝線維化の程度を判断するための血液中マーカーとして頻用されているのがⅣ型コラーゲン,ヒアルロン酸である.

◆感度・特異度

【ヒアルロン酸】肝臓の線維化に最も特異的であり,特に進展した肝線維化の診断に有用とされるが,線維化を伴う肝疾患以外にも,関節リウマチ,変形性関節症などの関節障害を伴う疾患や,強皮症,皮膚筋炎,血管炎などの膠原病関連疾患,悪性リンパ腫,乳癌などの悪性腫瘍でも上昇する.また,腎臓でも代謝されるため,腎不全でも上昇することが知られている.

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検査の概要

 アミラーゼは,でんぷんをデキストリン,マントース,ブドウ糖に分解する消化酵素であり,膵臓,唾液腺のみならず,肝臓,腎臓,心臓,肺,卵巣,横紋筋,乳腺,甲状腺など,体内に広く分布する酵素である.血中アミラーゼの由来は主に膵臓と唾液腺であり,それぞれの臓器特異的なアイソザイムがある.血中アミラーゼは,腎臓から尿中に排泄されて血中ではほぼ一定の値を示す.

 性差はなく,運動の影響,日内変動も認めない.また,健常者の場合は,食事の影響も認めない.血中アミラーゼは,Body Mass Index(BMI)に影響を受け,BMI高値のほうが高値を示し,同一人物でも体重減少により血中アミラーゼの低下を認める.しかし,基準値を逸脱するほどの大幅な変動ではない.

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検査の概要

 膵酵素の検査項目には,アミラーゼ,アミラーゼアイソザイム,リパーゼ,トリプシン,エラスターゼⅠ,PLA2,PSTⅠなどがある.

 リパーゼ,エラスターゼⅠ,トリプシンは,いずれも膵腺房細胞で合成され膵液中に分泌される消化酵素である.膵腺房細胞障害により血中に逸脱し血清値は高値を示す.いわば,膵腺房細胞障害マーカーである.これらはいずれも,血中アミラーゼと比較して膵に特異性が高い.いずれの酵素も日内変動や食事の影響は少なく,溶血の影響は認められない.

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検査の概要

 心筋傷害(壊死)という病態を反映する心筋マーカーには,心筋型脂肪酸結合蛋白,ミオグロビン,心筋トロポニン(ⅠおよびT)やミオシン軽鎖などがある.心筋マーカーは,急性心筋梗塞の早期診断,梗塞サイズの評価や予後の推定などに用いられる.特に,トロポニンは,急性冠症候群疑い患者における急性心筋梗塞の早期診断とリスク層別化に不可欠な検査項目である.

 2009年7月に,トロポニンの最小検出感度を従来(標準)測定より10倍以上改善した高感度測定が登場した.高感度測定はトロポニン値の低濃度域を正確に測定できるため,急性心筋梗塞の基準値(健常者の99パーセントタイル値)を引き下げ,急性心筋梗塞発症早期の診断感度を大幅に改善した.一方,急性冠症候群以外の病態に起因する心筋傷害をも鋭敏に検出するため,診断特異度は著しく低下した.したがって,高感度測定値を解釈する際には従来測定値以上に,トロポニン値の上昇(異常)は心筋傷害の存在を意味するが,必ずしも急性心筋梗塞ではないことを銘記しておく必要がある.

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検査の概要

 クレアチンキナーゼ(CK)はアデノシン三リン酸(ATP)のリン酸基をクレアチンに転移する反応(高エネルギーリン酸の貯蔵)と,クレアチンリン酸のリン酸基をアデノシン二リン酸(ADP)に転移する反応(ATPの再産生)を触媒する酵素で,エネルギー代謝における重要な役割を果たしている.心筋,骨格筋や脳に多量に存在するため,これらの組織に細胞障害(壊死)が生じると血中に遊出し,血清CK活性は上昇する.

 CKはM型(筋型)とB型(脳型)の2種類のサブユニットからなる2量体で,分子量は82kDaである.細胞上清分画にはCK-MM,CK-MBとCK-BBの3つのアイソザイムが,ミトコンドリア分画にはミトコンドリアCKが存在する.CK-MBは骨格筋に比較して心筋に多量に存在するため,その心筋特異性は高い.CK-MBの迅速測定法にはMサブユニット活性だけを阻害する免疫阻害法と,特異的抗体を用いてCK-MBを蛋白量として測定する免疫学的測定法(CK-MB蛋白量測定)があるが,急性心筋梗塞の早期診断にはより心筋特異性の高いCK-MB蛋白量測定を活用するべきである1).なお,異常CKの解析には電気泳動法を用いる.

ALD(アルドラーゼ) 石井 潤一
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検査の概要

 アルドラーゼ(aldolase:ALD)は解糖系酵素の一員であり,フルクトース-1,6-2-リン酸(FDP)をジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)とD-グリセルアルデヒド-3-リン酸に分解する反応とともに,フルクトース-1-リン酸(FIP)をDHAPとD-グリセルアルデヒドに分解する反応を触媒する1).骨格筋,心筋,肝や脳に多量に存在する細胞質内酵素であるため,これらの組織に障害が生じると血中に流出し,血清ALD活性は上昇する.

 ALDは4種類のサブユニットからなる4量体で,分子量は150kDaである.A(筋)型,B(肝)型およびC(脳)型の3種のアイソザイムがある.心筋梗塞,骨格筋障害,悪性腫瘍ではA型が,肝疾患ではB型が,脳血管障害ではA型とC型が上昇してくるため,アイソザイム分析は診断に有用である.しかしながら,血清アイソザイム分析は現在行われていない2)

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検査の概要

 アデノシンデアミナーゼ(ADA)は核酸代謝におけるアデノシンからイノシンへの脱アミノ反応を触媒する酵素で,プリンのサルベージ代謝経路に関与する1).ADA1とADA2の2種のアイソザイムがあり,ADA1はさまざまな組織に,ADA2は主に単球・マクロファージおよび一部のT細胞に発現している.血中のADA活性は,これらのアイソザイムの組織・細胞からの逸脱・放出に由来するが,大半はADA2である.

 ADA1は分子量40kDaのADA-Sと分子量280kDaのADA-Lの2つのフォームがある.ADA-LはADA-Sと結合蛋白の複合体であり,ADA1の大半を占める.その結合蛋白はCD26であることが近年明らかにされ,ADA-Lは酵素活性のみならず,細胞表面上に存在して共刺激分子として作用することが知られており,特に免疫機能に重要である.ADA1をコードするADA遺伝子はヒト20番染色体q12-q13.11領域に位置し,その先天的異常によるADA欠損症は重症複合免疫不全症(SCID)の約20%を占める2).このADA1欠損は,大半がADA2由来である血中ADA活性には反映され難いことに留意する必要がある.

酸性ホスファターゼ(ACP) 涌井 昌俊
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検査の概要

 酸性ホスファターゼ(ACP)はリン酸モノエステルの加水分解酵素のうち,至適pHが4.5〜6.0と酸性側にある酵素の総称である.前立腺で大量に生成される前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が血中のACPの多くを占めている.酵素活性として検出される血中ACPの増加は,前立腺疾患に伴うPAPの逸脱に由来する可能性が示唆される1).しかし,ACPは前立腺以外のさまざまな組織でも生成されており,それらの疾患に伴う逸脱による血中増加の可能性を考慮して鑑別する必要がある.

 PAPの酵素活性は酒石酸により阻害されるが,それ以外のACPの酵素活性は基本的に酒石酸抵抗性を呈する.この差異を利用してPAPを検出・測定することができるが,chemiluminescent enzyme immunoassay(CLEIA)やenzyme immunoassay(EIA)などの免疫学的検査法でも測定可能である.

血液生化学検査など 糖代謝検査

グルコース 窪田 直人
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検査の概要

 グルコース(ブドウ糖)は,エネルギー源として生体組織,細胞の機能維持に重要な物質の一つである.食後,腸管より吸収されたグルコースはその約10%が肝臓に,残りの90%は大循環に入り骨格筋や脂肪組織に取り込まれる.一方,絶食時には肝臓よりグリコーゲン分解や糖新生によりブドウ糖が放出される.これらの作用はインスリンやそれと拮抗するホルモン(グルカゴン,コルチゾール,カテコラミン,成長ホルモンなど),インスリン分泌増強作用を有する消化管ホルモン(インクレチン)などにより精密にコントロールされているため,血中グルコース濃度はほぼ一定の状態で維持されている.

 血中グルコース濃度(血糖値)の測定は,糖尿病の診断・治療を行っていくうえで必要不可欠な検査である.近年測定は簡便に行われるようになってきているが,測定原理や方法をよく理解し,誤差が生じうることを念頭に置きながら評価する必要がある.

HbA1c(グリコヘモグロビン) 窪田 直人
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HbA1cの国際標準化に伴う表記法の変更

 わが国で汎用されてきたJapan Diabetes Society(JDS)値のHbA1cは,わが国以外のほとんどの国で使用されているNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値と比較すると約0.4%ほど低値であるという乖離が以前より指摘され,特に英文誌の原著論文や国際学会の発表において問題となっていた.日本糖尿病学会ではこの問題に対し「糖尿病関連検査の標準化に関する検討委員会」を立ち上げ,2010年7月1日より,まず英文誌や国際学会における発表においてNGSP相当値(国際標準値:JDS値+0.4)を使用することとした.一方で日常臨床においては混乱を避けるためJDS値が使用され続けた.その後2011年10月1日,検査医学標準物質機構(ReCCS)がJDS値を決める指定比較法であるKO500法で,NGSPの基準測定施設であるアジア地区secondary reference laboratory(SRL)の認証を取得した.それによりJDS値とNGSP値との関係が「NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25%」という換算式で表現できることが確定したことを受け,診療報酬の改定に合わせて2012年4月1日よりNGSP値が日常臨床に初めて導入された.移行期間としてJDS値との併記が行われたが,2014年4月1日よりわが国のHbA1cの表記はすべてNGSP値に統一された.

グリコアルブミン 武井 泉
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検査の概要

 グリコアルブミン(glycoalbumin:GA)はアルブミン分子中のリジンが糖化された糖化蛋白である.アルブミンが肝臓で生成されて代謝される間血糖値に応じて,高ければ多量のGAが,低ければ少量のGAが生成される.そのためGAの多寡により約17日間(アルブミンの半減期)の血糖状態を把握することができる.詳細な検討によればGAは過去約2カ月間の血糖状態を反映するが,主として1カ月間,特に直近2週間の血糖状態によりその多寡が決定される1)

尿中アルブミン 武井 泉
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検査の概要

 尿中アルブミン(Alb)は主に糖尿病の腎機能低下の評価として用いられている検査であるが,そのほかにも慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)疾患,動脈硬化性疾患(脳梗塞,虚血性心疾患)の評価として利用しうる検査である.

 尿中Albは糖尿病腎症病期分類,CKD重症度分類に関連して臨床的に用いられている指標である.

1,5-AG(1,5-anhydroglucitol) 山内 俊一
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検査の概要

 血清(血中)1,5-AGは血糖変動に迅速かつ鋭敏に反応する血糖コントロール指標である.HbA1cより血糖の動向が正確に捉えられるため,治療の開始や中止時の血糖変化のモニターに適する.特に,HbA1cが7%台以下で変化の幅がきわめて大きいため,食事や運動療法の成果を正確に捉えうる.また,食後高血糖の把握に優れるため,食後高血糖改善薬の効果判定も明確で,服薬遵守度も判明する.

 HbA1cの0.1%程度の変化が広く拡大されるため,誤差範囲か否か峻別される.糖尿病では,HbA1cが5%台で安定していても1,5-AGは不安定なことが多い.

インスリン,C-ペプチド 山内 俊一
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インスリン

検査の概要

 血糖を下げる事実上ほぼ唯一のホルモンであるインスリンは,不足すれば高血糖や死を招く.一方過剰だと,肥満や低血糖の原因となる.すなわち,これらの病態の原因を探る際に測定される.ただし,食事による変動が大きいため,早朝空腹時の測定値および75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)時の値のみが通常用いられる.

 以前は放射性物質を用いた免疫学的測定法であったが,現在は化学発光物質を用いている.また,モノクローナル抗体の使用により,プロインスリンとの交差反応はなくなり,インスリンのみを測定している.測定値はIRI(immunoreactive insulin)と呼ばれる.検体は血清,血漿のいずれでもよい.-20℃で長期間安定である.

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検査の概要

 インスリン抗体とは,インスリンに対して体内で産生された抗体である.

 インスリン抗体には投与を受けた外来性インスリン(ウシ,ブタあるいはヒトインスリン)に対して産生されたインスリン抗体(IA)と自己のヒトインスリンを抗原としたインスリン自己抗体(IAA)の2種類がある.インスリン治療中の糖尿病患者で,予想以上に多くのインスリンを必要とする場合や,予期しない血糖変動(著しい高血糖や低血糖を繰り返す)がみられる場合,インスリン自己免疫症候群が疑われる低血糖症の患者,1型糖尿病の補助診断などの目的で測定される.

抗GAD抗体 末冨 吏佐 , 谷澤 幸生
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検査の概要

 グルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase:GAD)は,抑制性神経伝達物質であるガンマアミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:GABA)をグルタミン酸より合成する酵素である.主としてGABAニューロンの神経終末に存在しているが,膵Langerhans島β細胞にも存在している.GADにはGAD65(分子量65kDa)とGAD67(分子量67kDa)という分子量の異なった2つのisoformが存在している.脳・神経組織ではGAD65,GAD67がともに存在しているが,β細胞ではGAD65がほとんどを占めている.

 GADに対する自己抗体が抗GAD抗体である.現在わが国で広く検査されているのは,GAD65に対する抗体である.検体としては血清・血漿(クエン酸Na,フッ化Na,ヘパリンNaの採血管)が用いられる.検査方法として,リコンビナントヒトGAD65を抗原として用いるラジオイムノアッセイ法(radio immuno assay:RIA)が使用されている.これは,Immunology of Diabetes Workshop(IDW)において行われたGAD antibody proficiency testの結果,RIA法がほかの測定法と比較して感度・特異ともに優れていることが示されたことによる.

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検査の概要

 血糖降下ホルモンであるインスリンは,細胞膜表面でチロシンキナーゼ共役型レセプターの1つであるインスリン受容体と結合し,細胞内へのグルコースの取り込みやグリコーゲン合成シグナル伝達の開始を指示する役割を担っている.

 インスリン受容体が正常に機能しない疾患として「インスリン受容体異常症」には,インスリン受容体遺伝子の異常であるA型と,後天的なインスリン受容体抗体の出現によるB型が知られている(表1).

血中ケトン体 窪田 直人
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検査の概要

 ケトン体は,遊離脂肪酸の肝での代謝産物であり,主に筋肉,心臓,脳で利用される.肝臓はケトン体を産生するのみで利用はできない.ケトン体とは,3-ヒドロキシ酪酸,アセト酢酸,アセトンの総称である.

 絶食が長期化すると血漿中のケトン体が上昇し,ブドウ糖の濃度より高くなる.これは,肝の貯蔵グリコーゲンの枯渇により肝の脂肪酸からケトン体への産生速度が増すことによる.肝に取り込まれた遊離脂肪酸はアセチルCoAとなり,その一部はミトコンドリアに入りβ酸化を受けアセ卜酢酸が生成され,さらに3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素によって還元され3-ヒドロキシ酪酸となる.肝ではケトン体は代謝されず,末梢組織(筋肉,脳,心臓,腎臓など)に取り込まれ,アセト酢酸はアセチルCoAに転換され,TCAサイクルで代謝されエネルギー源として利用される.アセトンは揮発性で呼気に排出されやすい(図1).ケトン体の合成過程はグルカゴンにより亢進し,インスリンにより抑制される.

乳酸,ピルビン酸 窪田 直人
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検査の概要

 血液中の乳酸濃度は成人で4〜16mg/dLであり,高値を示す場合は臨床上問題となる.乳酸は解糖系代謝経路の最終産物で,主に骨格筋や赤血球,脳,皮膚,腸管でピルビン酸から乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)の作用により生成される.グルコース→ピルビン酸→乳酸産生経路は,グルコースを酸素なしに酸化する(ATPを産生する)うえで重要である.グルコースからピルビン酸への代謝過程で2分子のNAD+がNADH+Hに変換される.解糖を継続するためには恒常的にNAD+が必須であるが,嫌気的条件下では通常ミトコンドリアにおいて認められるNADH+H酸化によるNAD+再生が起こらないためLDHによる乳酸の産生によりNAD+を得ることとなる.

・ピルビン酸+H++NADH←→乳酸+NAD+

 一方,好気的代謝条件下では乳酸の大半はピルビン酸に酸化され肝臓の糖新生の基質として利用され,肝臓での十分な処理能力のため乳酸が高値を示すことはない(cori回路,図1).乳酸は,血中では1価の陰イオン有機酸として存在し,酸塩基平衡に重要な役割を演じている.

血液生化学検査など 脂質・リポ蛋白

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検査の概要

 総コレステロール(TC)とLDLコレステロール(LDL-C)の上昇,HDLコレステロール(HDL-C)の低下は,動脈硬化性疾患の発症や進展と密接に関係している.よって,これらの検査は,動脈硬化や冠動脈疾患のスクリーニング検査としてだけでなく,病態評価や治療のための臨床検査指標として頻用されている1)

 米国のFramingham studyの報告では,TCが180〜200mg/dLの場合に最も総死亡率が低いJ-curve現象を認める.しかし,コレステロール低値の場合には,低栄養や悪性疾患などによる死亡が影響している可能性がある.一方,TCが180mg/dL以上の場合,冠動脈疾患の発症は直線的に増加する.また,LDL-CもTCと同様に冠動脈疾患のリスクと強く関連する.欧米の報告では,LDL-Cが1mg/dL増加すると,一次および二次予防ともに冠動脈疾患の発症リスクが約1〜2%程度増加する.LDL-Cへの介入効果を検討したメタ解析(108のランダム化比較試験による約30万人が対象)では,治療によるLDL-C 10mg/dLの減少は,冠動脈疾患イベント,冠動脈疾患死亡,総死亡の相対リスクを有意に減少させることが明らかになっている2)

TG(トリグリセライド) 三井田 孝
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検査の概要

 TGは,3価のアルコールであるグリセロールに脂肪酸が3つエステル結合したものの総称で,正式にはトリアシルグリセロール(TAG)と呼ばれる.血中には,わずかだが遊離グリセロールと,脂肪酸が1または2個しか結合していないモノアシルグリセロール(MAG),ジアシルグリセロール(DAG)がある.血液中のTGは,コレステロール,リン脂質,アポ蛋白と結合して二層性のリポ蛋白を形成する.TGは,疎水性が強いためリポ蛋白の「芯」に存在する.TGは,粒子径の大きなリポ蛋白[カイロミクロンと超低比重リポ蛋白(VLDL)]に多く分布する.

 わが国のTG測定法では,まず遊離グリセロールを消去し,残ったMAG,DAG,TAGをリポ蛋白リパーゼ(LPL)で分解し,産生されたグリセロールを測定する.これを,トリオレイン(グリセロールにオレイン酸が3つエステル結合したもの)に換算し,TG値として報告している.

リポ蛋白分画 野尻 卓宏 , 蔵野 信
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検査の概要

 コレステロールや中性脂肪などの疎水性の強い脂質は,そのままの状態では血液中に溶解できないため,親水性の強いリン脂質などの脂質や蛋白質とともにリポ蛋白という粒子を形成し,血液中を運搬されている.リポ蛋白は比重により定義されており,低比重のものからカイロミクロン,VLDL,IDL,LDL,HDLに分類されるが,日常臨床ではIDLとLDLは広義のLDLにまとめて扱われる.リポ蛋白分画は脂質代謝の全体像を概観するのに有用であるため,高脂血症のWHO分類に利用されており,脂質異常症の診断に重要な検査項目として,特にⅢ型高脂血症の判定には必須となる.

 リポ蛋白の分画方法にはさまざまな方法が存在するが,リポ蛋白は比重により定義されているため,比重の違いでリポ蛋白を分画する超遠心法が最も定義に沿った分画方法とされる.実際,米国疾病管理センター(CDC)では,LDLコレステロールの基準法として,超遠心法と沈殿法を組み合わせた方法(beta quantification法:BQ法)を採用している.しかし超遠心法は所要時間や必要な検体量の点で他法よりも劣るため,日常検査としては,荷電状態,粒子サイズなどの物性がリポ蛋白の種類により異なるということを利用した電気泳動法が用いられている.電気泳動法は,リポ蛋白をpre-βリポ蛋白,βリポ蛋白,αリポ蛋白に分け,それぞれVLDL,LDL,HDLに相当する.また,近年,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いてリポ蛋白を分画する新しい方法が保険収載された.以下,各方法について概説する.

アポ蛋白分画 野尻 卓宏 , 蔵野 信
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検査の概要

 コレステロール,中性脂肪などの疎水性の強い脂質は血液中に溶解できないため,親水性の高いリン脂質のような脂質や蛋白質とともにリポ蛋白という粒子を形成し,血液中を運搬されている.リポ蛋白に存在する蛋白質は,アポリポ蛋白あるいはアポ蛋白と呼ばれ,リポ蛋白の構造蛋白としての役割,およびリポ蛋白受容体のリガンドやリポ蛋白代謝に関わる酵素活性の修飾因子として,リポ蛋白代謝の調節を担う役割がある.そのためアポ蛋白遺伝子の欠損または変異は,原発性脂質異常症の原因となる.またアポBやアポA-Ⅰは,限られたリポ蛋白上に存在するため,そのリポ蛋白の粒子数を反映する指標となる.以上よりアポ蛋白の測定は,原発性脂質異常症の原因探索および脂質異常症全般の管理目的に用いられる.

 現在,日常診療において測定できるアポ蛋白には,アポA-Ⅰ,アポA-Ⅱ,アポB,アポC-Ⅱ,アポC-Ⅲ,アポEの6項目がある.これらのアポ蛋白は免疫比濁法を測定原理とする方法で測定されている.またアポEの特定のフェノタイプは原発性脂質異常症や神経変性疾患の危険因子であるため,保険適用外ではあるが等電点電気泳動法によるアポEフェノタイプの判別が行われることがある.これらの項目はすべて血清検体で測定が可能である.また検体の保存条件は冷蔵が推奨されているが,蛋白であるため,リポ蛋白の測定とは異なり,冷凍検体でも測定できる.

Lp(a)[リポプロテイン(a)] 蔵野 信
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検査の概要

 Lp(a)[リポプロテイン(a)]は,LDLと同様に動脈硬化巣への沈着が確認されており,動脈硬化症の新規危険因子として注目されているリポ蛋白である.その構造はLDLと類似しているが,LDLのコアアポ蛋白であるアポ蛋白B100に,アポ蛋白(a)[apo(a)]がジスルフィド結合している.Lp(a)は,apo(a)とLDLがクリングルという環状構造を形成し,このクリングルの繰り返し回数により多くのフェノタイプ(20種類以上)が存在する.そのため,分子量は100〜800kDaと幅が広い.

 Lp(a)の動脈硬化性疾患の病態生理へのかかわりは,まだ完全には確立されていないが,Lp(a)は酸化されると,酸化LDLと同様にスカベンジャー受容体によりマクロファージに取り込まれ,泡沫化され,動脈内膜に沈着する.また,Lp(a)の構成成分であるapo(a)は,プラスミノーゲンとの相同性が高く,プラスミノーゲンと競合し,プラスミンを低下させ,血栓形成に促進的に働いているとされる.その他,平滑筋細胞増殖作用,物性として酸化リン脂質を結合しやすいなどさまざまな動脈硬化促進作用が報告されている.

血液生化学検査など 電解質・微量金属・浸透圧

Na,K,Cl 林 松彦
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検査の概要

 血清・尿中Na,K,Cl濃度は基本的な生化学的検査であり,スクリーニング検査として,あるいはさまざまな症状に対して検査される.測定方法はいずれも,イオン電極法という方法を用い,試薬による発色といった手順はなく,電極により直接測定される.したがって,正確な意味では測定しているものは各イオン濃度である.疾患としては,低Na血症,高Na血症,高K血症,低K血症が臨床上問題となることが多く,Cl濃度の異常は,酸・塩基平衡異常の指標として用いられる.いずれも,通常は自動分析器により測定され,機器により,ある一定の希釈倍率で希釈された検体が用いられる.このため,後述する偽性低Na血症を生じる場合がある.

Ca,P 林 恭秉 , 竹内 靖博
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検査の概要

 血清カルシウム(Ca)と無機リン(P)の濃度は,副甲状腺ホルモン(PTH),活性型ビタミンDである1,25水酸化ビタミンD,線維芽細胞増殖因子23(FGF23)などの内分泌因子がそれぞれの標的臓器に作用することで制御されている.PTHは腎でのCa再吸収を促進し,P排泄を促進すると同時に骨から細胞外液への両者の動員を促進する.1,25水酸化ビタミンDは主に腸管からの両者の吸収を促進する.FGF23は腎臓からのPの排泄を促進する.

 血清中のCaのうち約40%はアルブミンを主体とする蛋白と結合している.生化学自動分析装置で得られる結果は,イオン化Caと蛋白結合Caの総和である.測定には,クレゾールフタレインコンプレクソン法・メチルキシレノールブルー法・酵素法などが用いられる.

マグネシウム 大和 梓 , 竹内 靖博
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検査の概要

 マグネシウム(Mg)は体内で4番目,細胞内で2番目に多い陽イオンである.細胞内における多くの酵素反応の活性化,蛋白合成および筋神経系の興奮伝達などに関与し,生体内の代謝調節や細胞機能の維持に重要である.体内Mg含有量は21〜28gであり50〜60%は骨に,20%は筋肉内に存在し細胞外液内に存在するのは1%に過ぎない.

 Mg濃度の測定法として酵素法,色素法,原子吸光法が挙げられる.酵素法はイソクエン酸脱水素酵素などの酵素活性が検体中のMg濃度に依存することを利用し,酵素反応の生成物の吸光度の増加量より検体中のMg濃度を決定する方法で,特異性が高く多検体処理が可能である.色素法の1つであるキシリジルブルー法は,試料中のMgがアルカリ条件下においてキシリルアゾバイオレットと結合して赤色のキレート化合物を形成することを利用し,この吸光度よりMg濃度を測定する方法である.原子吸光法はMg濃度測定において最も正確な測定法である.

小倉 彩世子 , 下澤 達雄
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検査の概要

 銅は,銅酵素の重要な構成成分として骨代謝,結合織代謝,造血などに重要な役割を果たしている.銅欠乏の所見は銅酵素の活性低下と関連づけられる(表1).

 銅蛋白質の働きとしては,大きく3つに分けられる.①造血能に関与(セルロプラスミンがFe2+→Fe3+の酸化反応を触媒),②オキシダーゼ作用〔チトクローム酸化酵素として電子伝達系への関与・スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の酸化反応への関与〕,③銅酵素構成(チロシンをメラニンに変換するチロシナーゼ反応)など,生命の維持に重要な機能を担っている.

亜鉛 広浜 大五郎 , 下澤 達雄
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検査の概要

 亜鉛(Zn)は必須微量元素として生体内のあらゆる組織に存在して,DNAポリメラーゼ,RNAポリメラーゼ,アルカリフォスファターゼ(ALP)など300種類以上の酵素や,サイトカイン,ホルモンに含まれ,生体の構造や機能を維持するために必須の微量元素である.蛋白質生合成などに関与し,骨格の発育,皮膚代謝,生殖機能,味覚・嗅覚の維持,免疫機能など,正常な生命維持に不可欠な役割を担っている.Zn欠乏は微量元素欠乏のなかで最も頻度が高いため重要である.通常は血清,尿が測定対象となる.

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フェリチン

異常値の出るメカニズムと臨床的意義

 体内の鉄貯蔵量を調べるために最も信頼性の高い検査は肝生検で得られた組織中の鉄濃度測定と考えられている.しかし,この検査は侵襲を伴い合併症のリスクを考慮すると安易に行うべき検査ではない.最近,欧米ではMRIを用いた肝鉄濃度測定法が開発され普及してきている.一方,日常臨床では血清フェリチン値が簡便に測定できる鉄貯蔵マーカーとしてよく利用されている.フェリチンは鉄を結合して貯蔵するための蛋白で,肝・脾・骨髄・胎盤などの組織に広く分布しておりその分布量は概ね血清中濃度と相関する.

血漿浸透圧 林 松彦
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検査の概要

 血漿浸透圧は,血漿中電解質と,尿素窒素,グルコースなどの血漿成分により規定される.浸透圧はモル濃度により規定されるので,血漿中のモル濃度が高いNa,Cl,重炭酸,グルコース濃度が,主に寄与している.凝固点降下度測定法に基づいて測定する浸透圧計を用いるのが一般的である.検体として血漿を用いるので,ヘパリンまたはEDTAを入れた容器に血液を取り,血漿分離して測定する.

血液生化学検査など 血液ガス分析

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検査の概要

 臨床上,血液ガス測定を考慮するのは,①急性および慢性呼吸不全の診断と治療経過の評価,②人工換気時や在宅酸素療法時の適正な酸素投与量や換気条件の設定,③神経・筋疾患による呼吸筋力の評価〔換気不全で動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)上昇〕,④原因不明の意識障害の原因検索などである.

 動脈穿刺によってヘパリン採血された動脈血が検体となる.採血後は十分な混和,混入空気の除去,密閉後,即時測定を行う.動脈血酸素分圧(PaO2),PaCO2,pHは電極法によって直接測定され,酸素飽和度(SaO2),重炭酸イオン濃度(HCO3-),過剰塩基(base excess:BE)は計算によって求められる.

血液生化学検査など ビタミン

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検査の概要

 ビタミンB12,葉酸はビタミンB6と共役して正常な造血に働く.表1に示す欠乏症や欠乏状態の時,ビタミンB12と葉酸はともに巨赤芽球性貧血症,高ホモシステイン血症をきたすので鑑別の時に検査する.

 ビタミンB12と葉酸の測定法は,従来,競合的蛋白結合を利用したRI法が行われていたが,近年,化学発光免疫測定(CLEIA)法がある.また葉酸の測定法は,液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS/MS)法がある.検体はビタミンB12,葉酸ともに空腹時採血,血清保存は当日なら室温(遮光)で,1日なら冷蔵(4℃),長期保存は冷凍(-80℃)である.特に注意すべきことは,ビタミンB12,葉酸でEDTA血漿は高値に出る.葉酸は溶血すると赤血球中の葉酸の影響で高値に出る.

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検査の概要

 欠乏症や欠乏状態を表1に示した.ビタミンA,Dは過剰症がある.欠乏状態や,過剰状態を疑ったときに施行する検査である.

 測定法は表1に示すが,ビタミンB1は国際的には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法から液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS/MS)法に移行しつつある1)

薬物関連検査 血中薬物濃度

抗てんかん薬,向精神薬 岡島 由佳
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検査の概要

 てんかん患者の治療では,抗てんかん薬の血中薬物濃度測定(therapeutic drug monitoring:TDM)が不可欠である.指標となる治療有効濃度範囲は,効果発現閾値(下限値)と急性副作用発現濃度(上限値)の幅を,多数の症例についてみた統計学的数値である.そのため,発作抑制効果や副作用の出現について測定値が臨床的判断に先行するものではないが,抗てんかん薬の用量の決定に際し,重要な指標となる.

 向精神薬で現在TDMが可能なものは,気分調整薬である炭酸リチウム,抗精神病薬であるハロペリドール(HPD),ブロムペリドール(BPD)である.精神科領域ではバルプロ酸ナトリウム(VPA),カルバマゼピン(CBZ),ジアゼパム,クロナゼパムは抗てんかん薬であるだけではなく,気分調整薬,抗不安薬としても用いられている.

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検査の概要

 強心薬のなかで,血中薬物濃度測定が一般的に行われている薬剤はジゴキシンのみである.ジゴキシンは有効血中濃度域が狭いため,きわめて厳密な血中濃度コントロールを必要とする.しかしながら,ジゴキシンの体内動態は個体差が大きく,剤形によりバイオアベイラビリティが異なることが知られている.また,多くの薬物と相互作用を起こし,血中濃度,薬剤感受性が変動する.そのため,TDM(therapeutic drug monitoring)による濃度測定・投与量調整が有効な薬剤である.

 特に,小児においては成長とともに体内動態が大きく変化する.例えば,ジゴキシンの半減期は新生児期では35〜70時間であるが,生後1年では15〜30時間となり,また,同時期の小児の体重当たりの分布容積は成人の1.5〜2倍程度であることが知られている.そのため,小児期,なかでも新生児期は最もTDMが必要な時期であると言える.

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検査の概要

 血中薬物濃度測定に基づいて投与量を設定することを薬物治療モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)と呼び,抗菌薬のなかでも特にTDMの実施が望ましい薬物として,アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン,アミカシン,トブラマイシン,イセパマイシン,アルベカシン)やグリコペプチド系抗菌薬(バンコマイシン,テイコプラニン),ボリコナゾールが挙げられる.

 抗菌薬のTDMにより,有効かつ副作用を生じない範囲で濃度をコントロールすることで,感染症の治癒のみならず,菌の耐性化を極力回避することが可能となる.したがって,抗菌薬適正使用の観点から,これらの抗菌薬を使用する際には可能な限り,TDMに基づき治療方針を決定していくことが望ましい.

免疫抑制薬 中澤 勇一
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検査の概要

 血中濃度を測定し投与量を調節する免疫抑制薬として,シクロスポリン(cyclosporine A:CYA),タクロリムス(tacrolimus:TAC),エベロリムス(evelorimus:EVR),ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetile:MMF)などが挙げられる.

 現在,EVR,MMFは臓器移植(EVR:心・腎移植,MMF:心・腎・肺・肝・膵移植)後の拒絶反応の抑制のみに適応が認められているが,CYA,TACは臓器移植のみならずそれ以外のさまざまな病態・疾患(CYA:眼症状のあるBehçet病,再生不良性貧血など,TAC:全身性重症筋無力症,重症関節リウマチなど)にも適応を有している.

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検査の概要

 ワルファリンはビタミンK類似構造のクマリン誘導体で,ビタミンK代謝サイクルを阻害し,肝臓での再利用を抑制することにより,ビタミンK依存性凝固因子の活性化を阻害する.ワルファリンは抗凝固療法の基本的薬剤として高く評価されているものの,薬剤効果や副作用の個人差が大きいため,使い慣れていない医師にとってはやや使いづらいとも言われている.添付文書においても「成人における維持投与量は1日1回1〜5mg程度となることが多い」と投与量の個人差の大きいことが示唆されており,当院でも1〜10mg/日と個人差が大きいことを経験している.

 ワルファリンの作用が,その代謝酵素であるCYP2C9,および標的分子のVKORC1の遺伝子多型に大きく影響を受けていることが明らかになってきたため(図1),これらの解析を実施している.

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検査の概要

pylori菌クラリスロマイシン耐性検査

 Helicobacter pylori菌(以下,pylori菌)のクラリスロマイシン耐性は,その作用標的であるpylori菌23S rRNA遺伝子のdomain Vにおける変異に由来する.最も多くみられる変異は,2063番目のアデニン(A)のグアニン(G)への変異,そのほかに2064番目のAがGへ変異した株も認められている.これらの変異があると,クラリスロマイシン耐性であることがわかる.

◆CYP2C19遺伝子多型検査

 pylori菌療法は,プロトンポンプ阻害薬とアモキシシリンとクラリスロマイシンを用いることになっている.これらの薬剤血中濃度が除菌の成功に関わっていると考えられている.なかでも,プロトンポンプ阻害薬の血中濃度は,その代謝酵素であるCYP2C19の活性に依存すると考えられている.CYP2C19の酵素活性は,CYP2C19遺伝子多型と強い相関があり,遺伝子多型検査が,薬剤の効果予測に有用であることが知られている1).CYP2C19には8種類のアレル(1〜8)が報告されている.1は正常の代謝活性を示し,そのほかの2〜8は代謝能がないと考えられている.1,002人の日本人を対象としたわれわれの検討では,日本人では4〜8は認められず,アレル1,2,3は図1のような頻度で認められた.

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検査の概要

 肝移植,腎移植など臓器移植後には免疫抑制療法が必要であり,免疫抑制薬として,ステロイドに替わりカルシニューリン阻害薬を用いることが中心となってきている.カルシニューリン阻害薬はイムノフィリンに結合して,その複合体がカルシニューリンを阻害する.タクロリムスとシクロスポリンの2剤があるものの,その使い分けは採用されているレジメンや医師の経験に依存することが多い.当院では生体肝移植後の免疫抑制療法にはタクロリムスを用いるレジメンを採用しており,血中トラフ値を10〜15ng/mLに維持するように投与量を調整している.

 ある時,タクロリムス血中濃度が十分に上昇せず,投与量を数倍増量することを余儀なくされる症例が見いだされた.タクロリムスはヒト体内で肝臓や消化管に存在するチトクロームP450(CYP)3A4,CYP3A5,MDRにより代謝・排泄されることが明らかとなっている.CYP3A4,CYP3A5にはそれぞれ遺伝子多型が存在することが知られ,特にCYP3A5がタクロリムスの薬物動態に影響を与えることが報告されている1)

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検査の概要

 薬物代謝酵素の遺伝子多型検査は,薬物代謝能や治療反応性の評価の指標となり,患者ごとの最適な薬物の選択と投与量の調節を行うことにより,薬効を最大限に引き出すとともに副作用を軽減できる.現在,薬物代謝酵素の遺伝子診断で保険適用となっているのは,UDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase:UGT)1A1の遺伝子診断のみであるが,ここではがん薬物療法関連遺伝子として,チオプリンS-メチル基転移酵素(thiopurine S-methyltransferase:TPMT)およびジヒドロピリミジン脱水素酵素(dihydropyrimidine dehydrogenase:DPD)についても,その概要と臨床的意義について述べる(表1).

薬剤リンパ球刺激試験 山口 正雄
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検査の概要

 薬剤を原因として何らかの異常反応が生じ,それが免疫を介する反応と推定される場合に行う.リンパ球幼若化検査において,薬剤を添加して培養を行う間に増殖する細胞が取り込む3H-チミジンを測定し,薬剤非添加での測定値と比較する(薬剤リンパ球刺激試験,drug lymphocyte stimulation test:DLST).前者と後者の数値の比が一定の数値を越えていれば,薬剤特異的リンパ球の存在の傍証とする検査である.

内分泌学的検査 下垂体

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 下垂体ホルモンの分泌は,視床下部に存在する放出促進,または抑制ホルモンにより制御されている.このなかで成長ホルモン(GH)は,他の下垂体前葉ホルモンとは異なり,視床下部の2種のホルモン,すなわちGH放出促進ホルモン(GHRH)とGH放出抑制ホルモンSS(Somatostatin)により相反する制御を受けていることが大きな特徴である.さらに,GHには他のホルモンのように独立した標的臓器が存在しないことも特徴である.そこで,GHは肝臓や種々の組織に作用して成長因子の一つIGF-I(インスリン様成長因子-1)を産生し,このIGF-Iが小児ではいわゆる成長促進因子として,成長完了後は代謝調節因子として作用する.IGF-Iの血中濃度は主に肝臓由来で,思春期に最大となって18歳で成人の基準値に戻り,以後加齢とともに漸減する.

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検査の概要

 甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone, thyrotropin:TSH)は下垂体前葉で合成・分泌される糖蛋白ホルモンである.αとβのサブユニットからなり,αサブユニットは黄体化ホルモン(luteinizing hormone:LH),卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:FSH),胎盤性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)と共通である.TSHは甲状腺濾胞上皮細胞表面のTSH受容体に結合し,細胞の増殖,甲状腺ホルモンの合成と分泌を促進する.TSHはイムノアッセイで測定される1,2)

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検査の概要

◆プロラクチン(PRL)

 血中PRLは日内変動を示し,夜間睡眠時に上昇する.また,性,年齢,月経周期,妊娠,授乳,産褥,ストレス,食事により変動する.男性より女性で,小児より成人でやや高く,月経周期の排卵期にやや高く,妊娠月数に伴い上昇,哺乳刺激で上昇し,産褥期に除々に低下する,また,ストレス,運動,食事により一過性に上昇する.採血は安静時にストレスを避け,できれば空腹時に行うのが望ましい.食後採血するなら少なくとも1時間以上おくべきである.血中PRL濃度は,測定キットにより最大2倍程度異なる(表1).この乖離には,各社のキットで用いる標準品が異なることが大きく影響している.同一キット内の変動係数(CV%)は10%程度であるが,異なるキット間のCV%は20%程度に達する.

◆黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)

 LH,FSHの血中濃度は,乳幼児期には高値を認め,その後低下し,思春期までは低値を示す.男女ともにLHは12歳頃より,FSHは10歳頃より上昇して成人レベルに達する.その後,LH,FSHの基礎値は,女性では閉経後に,男性では60歳以降にさらに上昇する.女性の月経周期との関連ではLH,FSH共に排卵期に上昇し,黄体期は卵胞期より低値を示す.また,LHはパルス状に分泌される(律動的分泌/パルス状分泌:pulsatile).LH,FSH値は日内変動,日差変動があるため,複数回測定すべきである.LH,FSHの測定はnon RIA法を用いた数社のキットがあり,同一キット内の変動係数(CV)は5%以下と良好で,異なるキット間のCVは10%程度である.

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン) 庄司 優
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検査の概要

 副腎皮質刺激ホルモン(adrenocotricotropic hormone:ACTH)は下垂体前葉ACTH細胞から分泌されるポリペプチドホルモンで,副腎皮質のACTH受容体に結合し,コルチゾールの合成・分泌を促進する.メラニン色素合成も刺激する.ACTHは視床下部─下垂体─副腎皮質系の疾患の診断と病態の解明に重要な検査である.特に,Cushing症候群,下垂体前葉機能低下症,副腎皮質機能低下症の診断やステロイド治療下の副腎皮質の機能の推定に欠かせない.

 ACTHは,EDTA-2Na採血から遠心分離された血漿0.5mLを測定検体として二抗体法のECLIAにより迅速に測定される.

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検査の概要

 抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)は視床下部で転写され下垂体後葉系から分泌されるペプチドホルモンで,腎集合管における水再吸収を促進し,体液量と血漿浸透圧を調節する.ADHの産生・分泌の障害は,水利尿をもたらし,脱水や高Na血症を引き起こす.反対に,ADHの分泌過剰は水再吸収を亢進させて進行性の低Na血症と水中毒をもたらす.このように,ADHは水電解質代謝異常症,特に尿崩症とADH分泌過剰症(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)の診療に欠かせない重要な検査である.

 ADHは,EDTA-2Na採血から遠心分離された血漿2.2mLを測定検体として二抗体法によるRIA(radioimmunoassay:放射免疫測定法)で測定される.

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検査の概要

 甲状腺ホルモンの合成・分泌は下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)により調節されており,視床下部-下垂体-甲状腺系にネガティブフィードバック機構が存在する(TSHの項の図1 p332参照).甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの98%がサイロキシン(T4)であり,甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の働きにより脱ヨードを受け,生理活性を有する3,5,3′-トリヨードサイロニン(T3)に変換され甲状腺ホルモンとしての生理作用を発揮する.血中の甲状腺ホルモンの大部分は甲状腺ホルモン結合蛋白(thyroid hormone-binding protein:TBP)と結合している.TBPと結合していない甲状腺ホルモンが遊離型のfree T4(FT4),free T3(FT3)として存在する1,2)

 甲状腺機能検査としてはTBPの影響を受けない遊離甲状腺ホルモンであるFT4,FT3が測定される.FT4はT4の0.02%,FT3はT3の0.3%程度である1,2)

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Tg(サイログロブリン)

検査の概要

 Tgは甲状腺濾胞腔に貯えられているコロイドの主成分である.Tgは健常人の血中にも存在するが,さまざまな甲状腺疾患では高値を示す.甲状腺の悪性腫瘍だけでなく良性腫瘍でも血中Tgが高値を示すため,血中Tg値だけでは良性・悪性の鑑別はできない.しかし,濾胞性腫瘍(濾胞癌or濾胞腺腫)において,血中Tgが1,000ng/mL以上を示す場合は濾胞癌の可能性が高いとの報告があるため,甲状腺に腫瘍を認めた場合には定期的に測定することが多い.また,甲状腺乳頭癌・濾胞癌で甲状腺を全摘したあとの腫瘍マーカーとしては非常に有用で,術後に血中Tg値が上昇してきた場合には癌の再発・転移を疑う.

 Tgは,血清を測定検体として,ECLIA法(電気化学発光免疫測定法)などの免疫測定法で測定される.ただし,抗サイログロブリン抗体(TgAb)が陽性の検体では,血中Tg値が偽低値を示すことがあるため,血中Tg測定時にはTgAbも同時に測定する.

抗サイログロブリン抗体 日高 洋
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検査の概要

 びまん性の甲状腺腫を認める場合,あるいは甲状腺機能低下症の所見(FT4低値)・症状(無気力,易疲労感,眼瞼浮腫,寒がり,体重増加,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下,便秘,嗄声など)を認め,慢性甲状腺炎(橋本病)を疑ったときに抗サイログロブリン抗体(TgAb)を検査する.

 TgAbは,血清を測定検体として,ECLIA法(電気化学発光免疫測定法)などの免疫測定法で測定される.TgAbをPA法(粒子凝集反応)で測定した場合は,TgAb半定量(以前はサイロイドテストと呼ばれていた)と検査項目名で区別される.

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検査の概要

 びまん性の甲状腺腫を認める場合,あるいは甲状腺機能低下症の所見(FT4低値)・症状(無気力,易疲労感,眼瞼浮腫,寒がり,体重増加,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下,便秘,嗄声など)を認め,慢性甲状腺炎(橋本病)を疑ったときに「抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)ないし抗甲状腺マイクロゾーム抗体」を検査する.

 TPOAbは当初,甲状腺マイクロゾーム分画に反応する自己抗体として発見されたため,抗甲状腺マイクロゾーム抗体と呼ばれていた.TPOAbは,血清を測定検体として,ECLIA法(電気化学発光免疫測定法)などの免疫測定法で測定される.抗甲状腺マイクロゾーム抗体はPA法(粒子凝集反応)で測定され,検査項目名は抗甲状腺マイクロゾーム抗体半定量(以前はマイクロゾームテストと呼ばれていた)である.

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検査の概要

 甲状腺ホルモンの合成と分泌は,下垂体前葉から分泌されるTSHにより促進されるが,TSHは甲状腺濾胞上皮細胞に存在するTSHレセプターに結合して作用を発揮する.このTSHレセプターに対する自己抗体がTSHレセプター抗体であり,刺激型と阻害型の抗体がある.

 TSHレセプター抗体の測定には,以下の2通りの方法がある.

尿中総ヨウ素 常川 勝彦 , 村上 正巳
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 ヨウ素は海草類などの食品中に多く含まれ,食事により摂取されると腸管より吸収され,その多くは甲状腺に取り込まれる.体内の80%近くのヨウ素が甲状腺に存在し,甲状腺ホルモンの合成に用いられる.甲状腺ホルモンから遊離したヨウ素や甲状腺ホルモンの合成に用いられなかったヨウ素は90%以上が尿中に排泄される.

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検査の概要

 哺乳類において,カルシトニンは主に甲状腺傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されるペプチドホルモンであり,32個のアミノ酸から構成される.カルシトニンは破骨細胞の骨吸収を抑制し,血中カルシウム(Ca)濃度を低下させる.だが,その生物活性はサケ鰓後腺由来のカルシトニンに比べると1/10以下と弱い1).脊椎動物は進化のなかでCaが豊富な海から陸地への上陸を果たすが,その過程でカルシトニン,ビタミンD以外の骨代謝調節因子としてPTHを獲得し,相対的にカルシトニンの生理的意義は低下した.よって本検査の目的は,Ca・骨代謝異常の鑑別診断ではなく,C細胞由来の癌である甲状腺髄様癌の腫瘍マーカーとしての役割に限定される.

 実際の測定は,早朝空腹時採血で得られる血清0.5mLで行う.

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検査の概要

【副甲状腺ホルモン(PTH)】副甲状腺主細胞で合成・分泌されるペプチドホルモンで,84個のアミノ酸からなる.PTH分泌は副甲状腺細胞上のカルシウム感知受容体(CaSR)によって制御される.PTHの主な標的臓器は腎や骨で,PTH/副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)受容体を介し作用する.腎尿細管ではCa再吸収促進とリン(P)再吸収抑制,ビタミンD(VitD)活性化作用を有する.骨では骨芽細胞と骨細胞に作用し,骨吸収活性化と骨形成促進をもたらす1).PTHは血中Ca濃度の恒常性維持に重要な役割を果たしている.

【PTHrP】PTHと類似構造をもち,PTH/PTHrP受容体を介しPTH様作用を発揮する.生理的には局所因子として作用し,妊娠・授乳などの特殊な状況を除いて血中には出現しない.PTHrPは悪性腫瘍で分泌される場合があり,悪性腫瘍による高Ca血症のなかのhumoral hypercalcemia of malignancy(HHM)の主因となる生理活性分子である.

内分泌学的検査 副腎・腎

コルチゾール 二川原 健 , 大門 眞
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 ヒト糖質コルチコイドの代表であるコルチゾールは,血糖上昇作用,抗炎症作用,免疫抑制作用を有する.また,若干の鉱質コルチコイド作用や水利尿作用をもち,生体のホメオスタシス維持に不可欠なホルモンである.

 副腎皮質束状層で産生されるコルチゾールは,視床下部のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH),さらにその下位ホルモンである下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)からの合成・分泌刺激を受けている.逆にコルチゾールはCRHおよびACTHにネガティブフィードバックを及ぼす.この調節系により,平時では早朝に高く深夜に低い血中コルチゾールの日内リズムが形成され,感染や外傷などの身体的ストレス下では需要に応じたコルチゾールの分泌増加が起こる.精神的ストレスによっても容易に上昇する.

アルドステロン 保嶋 実
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 アルドステロンは副腎皮質球状層で産生,分泌される強力な鉱質コルチコイドである.アルドステロンの主要な分泌調節因子はレニン・アンジオテンシン(renin angiotensin:RA)系であり,ほかに副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)やK濃度なども関与している.アルドステロンの主な標的器官は腎の遠位尿細管で,NaとOHの再吸収とKとHの排泄に働き,体液や血圧の恒常性維持に重要な役割を果たしている.

レニン 保嶋 実
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 レニンは腎傍糸球体細胞で産生,分泌される酵素である.レニン基質(アンジオテンシノゲン)に作用し,アンジオテンシンⅠ(angiotensin Ⅰ:AⅠ)を産生する.AⅠはアンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)によりAⅡに変換される.AⅡは血管平滑筋の収縮による昇圧と副腎からのアルドステロン分泌を介し,血圧・体液調節に重要な役割を果たしている.レニンの産生そして分泌から,AⅡに至る経路はレニン・アンジオテンシン(renin angiotensin:RA)系と呼称されており,レニンがこの系の律速酵素である.

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検査の概要

 カテコールアミンは副腎髄質や交感神経終末から放出されるホルモンである.褐色細胞腫腫瘍組織からも過剰に産生・放出され,高血圧や動悸などの症状を呈することになる.カテコールアミンの特徴は基本的に神経伝達物質であるので,作用後は速やかに再吸収・代謝・分解されるということである.すなわち,不安定な物質であるので測定には注意が必要である.

 カテコールアミンを産生する腫瘍には褐色細胞腫,神経芽腫,カルチノイドがあるが,診断に用いられるのは褐色細胞腫である.

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検査の概要

 血中カテコールアミンの70%はカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)によってメトキシ化され,24%はモノアミン酸化酵素(MAO)によって脱アミノ化されるなどして代謝される.また,褐色細胞腫の腫瘍自体がCOMTを多く含み代謝物を産生している.したがって,メタネフリン,バニリルマンデル酸(vanillylmandelic acid:VMA;メタネフリンがさらに脱アミノ化された最終代謝産物)などのカテコールアミン代謝物の測定が重要となる.

 メタネフリン(MN)2分画には,メタネフリンとノルメタネフリン(NMN)があり,それぞれアドレナリン,ノルアドレナリンのOメチル誘導体である.血中メタネフリンには遊離型と抱合型があるがほとんどが抱合体であり,検査では抱合を加水分解して測定している.

内分泌学的検査 性腺

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 ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)は妊娠の成立,維持に重要な働きをする糖蛋白ホルモンであり,分子量は約37,000でα,β鎖の非共有結合により構成される異分子二量体である.α鎖は下垂体前葉から分泌される黄体ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)のα鎖と免疫学的に同一のもので,構造もほぼ同様である.β鎖は145個のアミノ酸配列からなる分子量23,000の糖蛋白であり,LH, FSHなどのβ鎖とは異なっている.特にhCG-β鎖のC末端にはLHのβ鎖にないアミノ酸配列があり,hCGβ-CTP(carboxyl terminal peptide)と呼ばれている.

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検査の概要

 エストロゲンは女性ホルモンまたは卵胞ホルモンと呼ばれる性ステロイドホルモンである.そのなかでエストロン(E1),エストラジオール(E2),エストリオール(E3)がよく知られ,卵巣顆粒膜細胞で卵胞刺激ホルモン(FSH)の刺激によりアロマターゼ活性が亢進し,莢膜細胞より供給されたアンドロゲンからエストロゲンが産生される.

 その臨床的意義としては,①女性における第二次性徴や妊娠・出産をはじめとする生殖機能への関与,②骨代謝や心疾患系の機能調節における役割,③乳腺や子宮内膜などのエストロゲン標的臓器の増殖や癌化への関与など,非常に幅広い生理作用をもつ1)

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検査の概要

 テストステロンは男性では95%が精巣で産生される.下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(lutenizing hormone:LH)が精巣間質細胞であるLeydig細胞に作用することにより,テストステロンが分泌される.男性の場合,小児期は生後4カ月まで3ng/mL程度を最高値とする一過性の上昇を認めるが,生後6カ月で0.03ng/mL程度に低下し,思春期までは低値を維持する.思春期の発来とともに,急激に成人男性レベルに達する.その後,20歳台をピークとして,加齢とともに緩やかに減少するが,女性の閉経のような大きな変化は認められない.女性においても卵巣で男性の約20分の1のテストステロンが産生されている.テストステロンは筋肉,骨,血管,脂質代謝,性機能など,広範な臓器の機能に関係することが知られている.また,男女とも副腎から微量のテストステロンが産生されている.

 血中テストステロンの約98%はsex hormone binding globulin(SHBG)との結合型テストステロン(SHBG-T)とアルブミンとの結合型テストステロン(Alb-T)であり,残りの2%が遊離テストステロンとして存在する.これらのうち,遊離テストステロンとAlb-Tがアンドロゲン生理活性を有することからbioavailable testosterone(BAT)と呼ばれている.近年問題となっている加齢男性性腺機能低下症(LOH症候群)の診療にはBATの測定が望まれるが,実地臨床では遊離テストステロンと総テストステロンの測定で十分であると考えられている.

内分泌学的検査 そのほかのホルモン

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検査の概要

 A型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)とB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心臓から分泌される心臓ホルモンである.グアニル酸シクラーゼ活性をもつ機能的受容体(NPR-A受容体)に結合し,ナトリウム利尿作用,血管拡張作用,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系や交感神経系の抑性作用,さらに心臓局所では心筋肥大や心筋線維化の抑制作用などの生理作用を発揮する.

 一方,N末端プロBNP(NT-proBNP)は76個のアミノ酸より構成されるペプチドである.BNPとNT-proBNPの生成は同じBNP遺伝子による.BNP遺伝子の転写・翻訳後,まずプロBNP(1-108)が生成される.プロBNPは心筋内で蛋白分解酵素corinによって,生理作用のあるBNP(77-108)と生理作用のないNT-proBNP(1-76)に分裂し,1:1の等モル比で血中に分泌される.

免疫学的検査 アレルギー検査

IgE 山口 正雄
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検査の概要

 IgE(immunoglobulin E)は,アレルギー性鼻炎や気管支喘息,アナフィラキシーといったⅠ型アレルギー疾患の発症に関わる重要な抗体である.血清IgE値はさまざまな抗原特異性をもつIgE抗体の総和であり,IgE値だけで診断名が確定するわけではないが,アレルゲンごとの特異的IgE抗体を測定する時はIgE値も検査することが望ましい.

 かつては放射性同位元素を用いたRIST法(radioimmunosorbent test)で測定されたが,現在は通常EIA法で測定される.濃度の単位としてはIU/mLが用いられ,1IUは2.4ngに対応している.後述する特異的IgEの単位UA/mLあるいはKU/Lは,アレルゲンごと,測定系ごとに定められたものであり,1単位が2.4ngを意味するわけではないことに注意が必要である.