増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第9集
血液生化学検査など
糖代謝検査
乳酸,ピルビン酸
窪田 直人
1
1東京大学医学部附属病院病態栄養治療部
pp.258-261
発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223274
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検査の概要
血液中の乳酸濃度は成人で4〜16mg/dLであり,高値を示す場合は臨床上問題となる.乳酸は解糖系代謝経路の最終産物で,主に骨格筋や赤血球,脳,皮膚,腸管でピルビン酸から乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)の作用により生成される.グルコース→ピルビン酸→乳酸産生経路は,グルコースを酸素なしに酸化する(ATPを産生する)うえで重要である.グルコースからピルビン酸への代謝過程で2分子のNAD+がNADH+Hに変換される.解糖を継続するためには恒常的にNAD+が必須であるが,嫌気的条件下では通常ミトコンドリアにおいて認められるNADH+H酸化によるNAD+再生が起こらないためLDHによる乳酸の産生によりNAD+を得ることとなる.
・ピルビン酸+H++NADH←→乳酸+NAD+
一方,好気的代謝条件下では乳酸の大半はピルビン酸に酸化され肝臓の糖新生の基質として利用され,肝臓での十分な処理能力のため乳酸が高値を示すことはない(cori回路,図1).乳酸は,血中では1価の陰イオン有機酸として存在し,酸塩基平衡に重要な役割を演じている.
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