増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第9集
血液生化学検査など
脂質・リポ蛋白
アポ蛋白分画
野尻 卓宏
1
,
蔵野 信
1
1東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学
pp.272-274
発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223278
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検査の概要
コレステロール,中性脂肪などの疎水性の強い脂質は血液中に溶解できないため,親水性の高いリン脂質のような脂質や蛋白質とともにリポ蛋白という粒子を形成し,血液中を運搬されている.リポ蛋白に存在する蛋白質は,アポリポ蛋白あるいはアポ蛋白と呼ばれ,リポ蛋白の構造蛋白としての役割,およびリポ蛋白受容体のリガンドやリポ蛋白代謝に関わる酵素活性の修飾因子として,リポ蛋白代謝の調節を担う役割がある.そのためアポ蛋白遺伝子の欠損または変異は,原発性脂質異常症の原因となる.またアポBやアポA-Ⅰは,限られたリポ蛋白上に存在するため,そのリポ蛋白の粒子数を反映する指標となる.以上よりアポ蛋白の測定は,原発性脂質異常症の原因探索および脂質異常症全般の管理目的に用いられる.
現在,日常診療において測定できるアポ蛋白には,アポA-Ⅰ,アポA-Ⅱ,アポB,アポC-Ⅱ,アポC-Ⅲ,アポEの6項目がある.これらのアポ蛋白は免疫比濁法を測定原理とする方法で測定されている.またアポEの特定のフェノタイプは原発性脂質異常症や神経変性疾患の危険因子であるため,保険適用外ではあるが等電点電気泳動法によるアポEフェノタイプの判別が行われることがある.これらの項目はすべて血清検体で測定が可能である.また検体の保存条件は冷蔵が推奨されているが,蛋白であるため,リポ蛋白の測定とは異なり,冷凍検体でも測定できる.
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