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ポイント
●心肺停止症例に対する救命処置の究極の目的は,心肺脳蘇生すなわち心肺機能の回復のみならず中枢神経系に後遺症なく救命することである.
●心肺停止症例の救命率の向上には“Chain of survival”の概念すなわち,①迅速な救急要請,②迅速な一次救命処置,③迅速な除細動,④迅速な二次救命処置,の4つの輪が円滑に連携することが必要不可欠である.
●一般に心肺停止症例の予後規定因子として,原疾患,目撃者の有無,BLS(一次救命処置)までの時間,ACLS(二次救命処置)までの時間などがあげられる.
●理論的には原疾患によってCPRの手順が変わる可能性があるが,現実的にはBLS開始の時点で原疾患を同定することは難しい.
●日頃の準備が最良の治療結果を生む.
●あわてない! 冷静に処置と評価を繰り返す.
●緊急時のチェック:A-B-C-D & P-V-C
●早期の除細動の重要性.
●エアウェイの挿入は手技的に易しいが,確実な気道確保の方法は気管内挿管である.しかし,繰り返される挿管操作は出血や分泌物の増加をまねき,気管内挿管はいっそう難しくなる.また喉頭痙攣や声門浮腫の原因ともなる.
●胃内容物の逆流や誤嚥の危険がある患者にエアウェイを挿入して陽圧換気を行うことは原則的に禁忌である.
●どちらを選択して気道確保を行うか十分考慮する必要がある.ラリンゲルマスクTMやファーストラックTMは気道確保後換気しながら気管内挿管が可能で,常備している手術室も多い.その挿入法をぜひマスターしたい.
●静脈路の確保は二次救命救急処置の薬物投与,輸液,輸血のルートとして重要である.
●まず末梢静脈の血管確保を確実にできること.そのためには良い血管を見つけること.
●中心静脈の確保は,末梢静脈が虚脱して確保できないとき,大量の輸液や検査のため太い血管が必要なときに適応となる.
●中心静脈の確保では重篤な合併症が起こりうるので,合併症を起こさないような手技の習得と,起きたときの速やかな対応が重要である.
●患者の病態の評価には直接バイタルサインを評価することが最も大切であるが,客観的手法によって正確なモニタリングをし,病態を把握し,治療を行い,その成果を評価することが大切である.
●内科エマージェンシーにおいては,優れた手法である中心静脈圧測定,Swan-Ganzカテーテル法,観血的動脈圧測定などによるモニターが循環動態を把握するために必要になってくる.
●エマージェンシーにおける救急処置の内容は,計画的診療における内容と本質的に同一である.
●その処置を時間的な制限のなかで,または使用できる機材の制約のもとで施行しなければならない.
●その処置を施行する際に必要な知識と技術は,日常の計画的診療において培っておかなければならない.
●単にモニター上に示された不整脈の種類を特定するのみでなく,患者の身体状況全体より事態の緊急性を確認,確定すべきである.
●意志決定,実行に躊躇があってはならない.
●早期除細動はすべてに先行してなされる場合が多い.
●救急患者の治療に頻用される薬物については,多数の薬物について網羅的に浅い知識をもつより少ない薬物について深い知識をもつべきである.
●各薬物の主要消失経路を知り,合併病態時の投与量調節を熟知することも重要である.
●救急薬物はあくまでも対象療法または時間稼ぎの手段であり,原因療法を速やかに開始しなければならない.
●輸血適応の決定は,ベネフィットがリスクを上回ると考えられるときにのみ行う.
●輸血の緊急性がどの程度であるかを,患者のヘマトクリット,基礎疾患,心肺疾患の有無,貧血の原因,貧血になるまでの時間などで判断する.
●超緊急時は,無理して血液型をチェックせずに,迷わずO型の赤血球濃厚液(MAP)を輸血する.
●検査データは,患者の臨床症状から予測される診断の裏づけをするものであり,詳細な問診,視診,触診の実行が第一である.
●血液疾患は早期診断,早期治療を要するものが多い.疑わしい患者があれば,救急部においてでも積極的に末梢血塗抹標本の観察を行い,血球細胞の形態異常の検索に努めるべきである.
●測定の目的は,酸素化能,換気能,酸塩基平衡状態の評価である.
●採血時気泡除去,ヘパリンとの混和,温度補正に注意する.
●低酸素血症では,肺胞動脈血酸素分圧較差(AaDO2),P/F ratioが評価に有効である.
●酸塩基平衡異常では,アシドーシス,アルカローシス,代謝性,呼吸性,代償性変化について評価する.
●アニオンギャップの開大は,不揮発性酸による代謝性アシドーシスの存在を示唆する.
●pH7.20以下,7.50以上では,緊急治療を要する.
●原因不明の代謝性アシドーシスでは,腸管壊死も鑑別診断の一つに考慮する.
●緊急時に評価すべきは,Na, Cl, Kおよび必要に応じCaである.
●測定誤差を最小にするため,適切な採血手技および迅速な血漿分離が大切である.
●Na, Clは水代謝異常を反映し,細胞外液量(ECF)の程度で治療方針が左右される.
●高K血症は致死的経過をたどるため迅速な対応を要するが,ほかは比較的緩徐な補正が原則である.
●BUNとクレアチニンは高窒素血症の指標として,腎機能評価などに有用な検査項目である.
●軽度ないし中等度の腎機能異常では,必ずしも異常値にはならない.
●両者同時測定が原則で,その比の値が諸疾患の鑑別上有用である.
●肝機能検査おのおのの生化学的特性を十分に理解し,総合的に判断することが必要である.
●急性腹症における肝胆道系疾患の診断には,病歴,理学的所見が最も重要であり,これに肝機能のデータを加えて診断を進めることが必要である.病期,病態により肝機能検査は非特異的な結果を示すため,データを過信しないよう心がけるべきである.
●外科的治療を必要とする肝胆道系疾患では,理学所見,全身状態に肝機能検査を組み合わせて判断し,タイミングよくドレナージや手術を行う.
●肝機能検査は,肝胆道系疾患のスクリーニング以外に,肝疾患の経過観察,重症度および予後の判定にも重要である.
●血球算定(CBC),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),プロトロンビン時間(PT),フィブリノゲン,FDP,D-ダイマー,出血時間を組み合わせて,出血性疾患の鑑別は概ね可能である.
●使用する採血試験管の種類とその意味は理解しておきたい.ミスを防ぐことにもなる.
●重要な出血性疾患は次の通りである.再生不良性貧血,特発性血小板減少性紫斑病,血栓性血小板減少性紫斑病,ストレージプール病,血小板無力症,Bernard-Soulier症候群,血友病AとB,von Willebrand病,播種性血管内凝固症候群(DIC),
●血小板機能を抑制する薬剤(アスピリンなど)や抗生物質による腸内細菌の死滅によるビタミンKの欠乏には注意する.
●尿検査は患者に苦痛を与えることがなくでき,腎・尿路疾患のみならず,心,肝,内分泌臓器などの異常を知るうえでも大切な検査であり,救急患者の診察においても忘れてはならない.
●種々ある試験紙法でもpH,蛋白,糖,ケトン体,ビリルビン,潜血,ウロビリノーゲン,細菌などを短時間で検査ができる.したがって,救急医療で遭遇するすべての患者で尿検査を行うことが望ましい.
●特に救急医療で腎・尿路の異常が考えられる場合は尿沈渣を,腹部の異常が考えられる場合は尿のアミラーゼを追加する.また,尿中の電解質,クレアチニン濃度の測定なども役に立つ場合が多い.
●グラム染色検査は,比較的簡単な手技で短時間のうちに,各種感染症の起因菌を早期診断または推定するために役立つ重要な検査である.培養検査結果と合わせて起因菌診断のために用いる.
●正しいグラム染色の方法と検鏡所見の正しい解釈のしかたをマスターすること,また,主要な細菌のグラム染色上の形態的特徴をよく理解して銘記しておくことが大切である.
●手技について習熟する.穿刺針は背面に垂直ないしやや上方に刺入するのが,成功の決め手である.
●一連の手技は清潔操作が原則である.
●穿刺部位は,成人の場合,L4-5が望ましい.その目安として,Jacoby線(両腸骨稜を結んだ線で,L3-4の棘間またはL4の棘突起のレベルに相当する)を参考にするとよい.また,事前に腰椎のX線で,穿刺部位の状況を把握しておくとよい.
●針先がくも膜下腔に達したと思われても,髄液の流出がない場合,針先が馬尾に接触していることがあるため,穿刺針を回転させると髄液の流出をみることがある.
●適応,禁忌,副作用を十分に理解する.特に髄膜刺激徴候を有する患者には,施行をためらってはならない.
●CK値の上昇をみたら,CK-MBも測定する.
●CK-MBが上昇していたら,まず心筋梗塞などの心疾患を考え,早急に確定のための検査,治療を開始する.
●広範囲の骨格性障害の場合,原疾患の治療を行うとともに,ミオグロビン尿症による急性腎不全に注意する.
●CK高値を呈する病態は重篤なことが多く,迅速な対応が要求される.
●胸部単純X線写真は,胸部内科エマージェンシーのほぼすべてに対し適応のある有用な画像診断である.
●まず異常ガス像の有無をチェックする.
●正常構造物や縦隔陰影の位置や性状に注意する.
●胸痛症例では常に肺塞栓症の可能性を考える.
●疑わしい症例では,積極的にコンピュータ断層撮影(CT)を施行する.
●腹部エマージェンシーでは臥位と立位の腹部単純と立位胸部単純を撮影する.もし立位になれなければ,左側臥位正面像を撮影する.
●イレウスの診断は小腸の拡張(3cm)もってする.
●便秘を伴う腹痛患者で大腸の鏡面像をみたら,入院させるべき患者と判断できる.
●急激な腹痛を主訴とする場合は,何らかの破裂か管腔臓器(血管,胆管,尿管など)の閉塞を考える。腸管の閉塞や炎症での急激な発症は少ない.
●救急外来における心エコー図は,胸痛あるいはショックを伴った患者の鑑別診断に有用である.
●急性心筋梗塞では,心エコー図は診断,梗塞範囲および責任冠動脈の推定,合併症の診断に有用である.
●急性大動脈解離例では,経食道心エコー図の診断価値が高く,急性期の実施が望ましい.
●心タンポナーデ例では心膜穿刺の際に心エコー図は必須である.
●感染性心内膜炎を疑えば,心エコー図検査を必ず行うべきである.
●消化管病変の描出には5.0〜7.5MHzの高周波探触子を用いる.
●急性胃粘膜病変,アニサキス症,および胃スキルスでは,著明な胃壁肥厚像が描出される.
●細菌性腸炎では腸管壁の肥厚,もしくは腸管内液体貯留が描出される.
●肥厚した腸管壁内には豊富な血液シグナルが描出される.
●虚血性および薬剤性腸炎では,血流シグナルは乏しい.
●尿管結石嵌頓は偏側性水腎症で疑う.
●妊娠可能な女性において,ダクラス窩のfluid spaceが描出されたなら,hCG妊娠反応をみる.
●緊急頭部CTの適応は広く,特に急性脳血管障害を疑う場合には第一選択の検査である.
●通常脳梗塞は低吸収域に,脳出血は高吸収域に認められる.
●急性期脳梗塞はCT上で所見が明らかでない場合が,脳出血では血管奇形,腫瘍など器質疾患の精査が必要な場合がある.
●疾患に応じて造影CT,追跡CT,MRI,血管造影など適切な画像上での経過観察が必要である.
●炎症性疾患,脱髄疾患では,CT検査で明らかな異常所見がなくても疾患の存在は否定できない.
●高速ヘリカルCTの普及により,呼吸器・循環器疾患の救急領域の診断における胸部CTの役割は大幅に増しており,この領域の救急医療に携わる医師にとって,その適応と基本的な画像所見を理解することは必要不可欠なことである.
●急性呼吸器疾患の診断における胸部CTは,感染症と非感染症の鑑別やその重症度判定のみならず,非感染性の急性びまん性疾患においても非侵襲的に病態評価や確定診断に迫るアプローチが可能で,その有用性は高い.また,心大血管領域の診断においてもCTは不可欠といえ,急性大動脈解離や急性肺動脈血栓塞栓症を疑った場合には積極的にCTを行うべきである.
●救急疾患で腹部CTを行う場合,外傷例では最初に単純CTを撮像し,高濃度血腫と腹腔内出血の有無を確認する.これらが認められた場合,さらにDynamic helical CTを行い,活動性出血の診断を行うべきである.
●急性腹症を含めた非外傷例では造影CTを第一選択とし,絞扼性腸閉塞や腸間膜動脈閉塞症などの血流障害を伴う疾患を早期に診断する必要がある.また,消化管穿孔が疑われる症例ではウィンドウ幅を広げた画像で,腹腔内遊離ガス像を丹念に検索する.
●拡散強調画像を利用することにより超急性期脳梗塞の診断が可能である.
●急性大動脈解離が確実に診断可能である.
●頸髄損傷の予後が推定できる.
●頭部外傷ではCTで捉えにくい病変が描出可能である.
●ショックは種々の疾患に起因する全身性循環障害で,急速に多臓器障害へと発展する.
●初期治療が大切であり,昇圧と同時に鑑別診断を行い,早急に原因疾患の治療を行う.
●失神の多くは血管迷走神経反射や起立性低血圧が原因となる良性の失神である.
●生命予後不良である心原性失神の的確で迅速な診断が重要である.
●失神が疑われる患者では,まず詳細な病歴の聴取,一般内科的ならびに神経学的診察,心電図を行うべきで,これらにより失神の原因の50%が診断できる.
●病歴,診察,心電図により心原性失神が疑われる患者は,入院精査の適応がある.精査の進めかたについては循環器内科ヘコンサルテーションを行う.
●てんかん発作との鑑別が困難な場合や局所神経症候がみられるときは,頭部の画像検査や脳波が必要であり,神経内科へのコンサルテーションを行う.
●昏睡の原因は脳の局所性病変より,代謝性あるいは広範な脳機能障害のほうが多い.したがって中枢神経疾患にとらわれず,全身の状態をよく観察すべきである.
●病歴聴取や神経学的診察に時間をかけすぎない.まず救急処置が必要なことも多く,簡潔にして要を得た診察が大切である.
●神経学的な所見では,眼球症候,神経症候の左右差,髄膜刺激徴候に注目する.眼球症候は脳幹の機能を判断するために最も再現性の高い所見と考えられる.
●昏睡の鑑別診断にCTは極めて有用で,できる限り早い時期に行うべきである.しかし後頭蓋窩病変,くも膜下出血などの診断には限界もあり,その成績を過大評価すべきではない.
●せん妄は意識障害の一種であり,老年者に多く,中枢神経疾患以外に薬物の副作用や全身疾患の二次的作用で起こりやすい.
●意識の清明度が著しく変化,動揺するのが特徴で,見当識障害,記憶障害,妄想,幻覚を伴う.
●重症度の把握には簡易な知的機能検査やConfusional State Evaluationが有用である.
●治療可能な病態であり,積極的な原因の検索と対策とともに環境調整も重要である.
●直ちに救急対応を必要とする頭痛,すなわち生命に危険である頭痛,または失明や重篤な視力障害を起こしうる頭痛であるかどうかを見分け,迅速に適切な処置を行う.
●救命を要する頭痛でなくとも,患者が最も望んでいることは激しい頭痛を取り除くことであり,そのための正確な診断と迅速な処置が必要である.
●「激しい頭痛」を呈したときは,必ず頭部X線CTを施行する.ないときは装備してある病院に転送する.
●突発した頭痛はくも膜下出血の可能性があり,X線CTで異常がなくとも,くも膜下出血が疑われる場合には髄液検査を行う.
●プライマリ・ケアにおいて髄膜炎は見逃されやすい疾患である.頭痛と発熱,嘔吐を呈している患者では,常に髄膜炎を念頭に置いて髄液検査を施行する.
●痙攣発作は意識障害を伴っていても,一過性で数分以内に治まることが多いが,発作を頻回に繰り返したり長時間(30分以上)持続する痙攣重積発作の場合は,エマージェンシーとしてすぐに適切な処置を行い痙攣を止める必要がある.
●原因となる疾患を診断し治療することはもちろんであるが,早期に専門家ヘコンサルテーションするべきである.
●原因不明のことも多いので,てんかん発作であれば適量・適切な抗痙攣剤の投与と,患者の日常生活における指導が大切である.
●回転性めまい(vertigo)で来院する救急患者の診察のポイントは,その原因疾患についての迅速な鑑別診断と,めまいにしばしば伴う悪心,嘔吐や不安症状に対して的確な対症療法を速やかに開始することにある.
●回転性めまいの原因は非常に多岐にわたるが,救急外来で必要なことは,それが生命に直接かかわる緊急の原因によるものか否かを判別することである.
●緊急度に応じて,神経内科,脳外科,耳鼻科など専門医へのコンサルテーションを行いつつ,重症度に応じて入院加療が必要かどうかも判断する.
●急速な四肢麻痺とは,随意運動の経路(上位運動ニューロン,下位運動ニューロン,神経筋接合部,筋肉)のいずれかが両側性にしかも急速に障害されることに起因する四肢の筋力低下である.
●四肢麻痺患者では,呼吸不全の進行に絶えず注意を払う必要がある.
●頸髄損傷の可能性が否定されない限り,頸部の安定を保つこと.
●ミオグロビン尿症では腎不全を併発することがあり,輸液により十分な尿量を確保すべきである.
●鎮静剤や筋弛緩剤は安易に投与しないこと.
●点滴は下肢にしないこと.
●バイタルサイン,身体所見を直ちに確認する.
●病歴聴取,痛みの性状から疾患を想定する.
●痛みの特徴を知っておき,重要なものから鑑別してゆく.
●コンサルテーションは速やかに行う.
●検査はあくまで確認のものである.
●呼吸困難を訴える患者が救急外来を受診したら,バイタルサインと要領のよい診察で,エマージェンシーかどうかを判断する.低酸素血症があれば放置せず,即,酸素投与を開始する.ただしPCO2の増加に注意する.
●パルスオキシメータによる経皮的酸素飽和度測定の限界を認識する.
●鑑別診断をあげるときは,致命的な疾患をまず除外する.
●腰・背部痛を訴えて救急外来を受診する患者の原因疾患として最も多いのは整形外科疾患である.問診では疼痛の部位,疼痛の経過に注意する.理学所見では痛みの局所を診察するだけでなく下肢の神経学的所見をとる.
●外傷で腰・背部痛を主訴に来院した場合,胸腰椎の打撲,捻挫,骨折などを考えるのは当然だが,同時に内臓臓器損傷も考える.
●腰・背部痛を主訴とする疾患で緊急性が高いのは,呼吸・循環器疾患と急性腹症を呈する内臓疾患である.
●腎盂腎炎,尿路結石などの患者や女性の骨盤腹膜炎も,腰背部痛を主訴に来院するので注意する.
●喀血の症例では全身状態の把握と喀血量の推定が必須であり,気道確保が最優先である.
●大量喀血や呼吸不全,出血傾向などを伴う症例は入院適応である.
●必要に応じて気管支鏡,気管支動脈造影,外科的手術など,専門医の連携が重要である.
●吐血,黒色便は上部消化管からの出血を意味し,時に致死的となることもあり,緊急治療を要する臨床徴候である.
●全身管理が最優先されるが,同時に内視鏡的に出血部位を確認し止血処置を行う.
●重症度は原因疾患と出血量や出血の速度に関係するが,その予後は循環動態の早期安定と止血処置の成否にかかっている.
●重症例や止血困難例では外科医との連絡を密にし,手術時期を逸することがないようにする.
●一般に,下血はTreitz靱帯より肛門側の消化管出血により生じる.
●新鮮下血を診るにあたり最も大切なことは,全身状態(重症度)の把握と循環不全の予防にある.
●第二に重要なことは出血源の同定であり,的確な検査法の選択が迫られる.
●急性腹痛は発症のしかたと痛みの局在ならびに性状より診断が絞られるので,問診と身体所見が大切である.
●特に緊急処置を要するような重症例に関しては,時間を費やすことなく診断と治療を進めていかなければならず,迅速かつ合理的に病歴,身体所見をとり,検査を行っていかなければならない.
●そのためには,症状からみた鑑別診断のポイントと緊急検査や緊急処置の選択や手技上のコツについて熟知していなければならない.
●安易に鎮痛剤を投与してしまうと重症例を見誤ってしまうことがあるので,確定診断がつくまでは鎮痛剤の投与は行ってはならない.
●開腹手術を要するような急性腹症に関しては,速やかに外科医にコンサルトできる連携体制が重要である.
●詳細な病歴を聴取することにより,感染性腸炎か否かの鑑別が必要.
●脱水の程度,電解質異常の有無を評価し,脱水が強い場合,電解質異常のある場合,発熱・激しい腹痛の場合,血性下痢の場合は速やかな処置が必要である.
●原因を早期に診断する.特に閉塞性黄疸の鑑別を最初に行う.
●重症度については,血清ビリルビン値のみで判断せず,原因を検索し,他の症状,検査所見から,推測される予後を念頭に,前後の変化のなかで判断する.
●急性肝炎では重症化,劇症化の予知とその早期対策を行う.
●肝硬変では末期所見か,あるいは増悪因子が関与したものかを見極める.
●閉塞性黄疸では急性閉塞性化膿性胆管炎への注意とドレナージ挿入時期が重要である.
●尿量が400ml/日以下を乏尿,50〜100ml/日以下を無尿という.
●乏尿の原因は腎前性,腎性,腎後性の三つに分けて考える.
●無尿の原因は尿路閉塞が多い.
●乏尿の原因で最も多いのは腎前性であり,初期治療で回復可能であることが多い.
●現病歴,身体所見,血液所見とともに尿所見(尿沈渣,尿浸透圧,尿中Na濃度)が鑑別診断のうえで必須である.
●腎性腎不全で糸球体病変を疑う場合や透析療法の適応が考えられる場合は,早期に専門医にコンサルトが必要である.
●出血傾向の初期診療の目的は,問診,診察ならびにスクリーニング検査によって出血傾向の有無,重症度,病態や原因疾患などを的確に把握し,初期治療の内容や専門医にコンサルトするタイミングを適切に判断することにある.
●血小板数が1万以下になると重篤な出血性合併症を起こす危険性が高まるため,緊急の対応が必要になる.
●PTやAPTTが30%以下または正常対照の1.5倍以上に延長している場合,あるいはフィブリノーゲンが100mg/dl未満の場合は重篤な出血を起こす危険性があり,出血症状を伴う場合は緊急の対応が必要である.
●発熱をきたす疾患は数多くあるが,感染症,悪性腫瘍,膠原病が3大発熱疾患である.
●診断を進める際に重要なのは,全身状態の評価を行い,感染性なのか非感染性なのかを鑑別することと,急いで処置しなければならない疾患を見極めることである.
●詳細な問診と入念な診察を行い,投薬を開始する前に十分な培養検体を採取する.
●無意味な抗菌剤,解熱剤,副腎皮質ステロイドホルモンの投与は臨床経過をわかりにくくし,診断を誤る可能性があるので慎むべきである.
●好中球減少時の発熱は,敗血症など重篤な合併症を併発している可能性があるため,緊急事態であると認識しなければならない.
●検査(特に血液培養)と同時に可能な限り最大量の広域スペクトラムの抗菌薬を開始する.
●患者の腸内無菌化,無菌環境,無菌看護で新たに起こる感染症の予防対策を十分行う.
●血液疾患の治療など事前に好中球減少が予想できる場合は,抜歯や患者の無菌化などの感染症の予防が大事である.
●全身性発疹の患者に遭遇した場合,まず行うべきは発疹を注意深く観察することである.この際,特に重症を示唆するような所見の有無に注意を払う.
●全身のびまん性の発赤,Nikolsky(ニコルスキー)現象,高度な粘膜疹,高熱などが認められる場合には重症例,すなわち中毒性表皮壊死症,Stevens-Johnson症候群などの可能性があるので,十分に注意する.
●全身性発疹の症例では,原則的にはすぐに皮膚科専門医にコンサルテーションしたほうがよい.少なくともこれらの重症を示唆する所見がみられたときには,早急にコンサルテーションすべきである.
●一過性脳虚血発作(TIA)は放置すると脳梗塞へ移行しやすい.特に発症直後のTIAは脳梗塞を生じやすいので救急疾患として対処し,1週間以内に検査を終了し,治療を開始する必要がある.
●クレッシェンドTIAは切迫梗塞と考えるべきであり,緊急入院による抗凝固療法の適応がある.
●発症直後のTIAやクレッシェンドTIAに抗血小板薬を用いる場合には,300 mg以上のアスピリンをloading doseとして投与すべきである.
●70%以上の頸動脈狭窄を有するTIAには,内科療法よりも内膜摘除術が有効である.
●脳梗塞はbrain attackとして緊急に治療されるべきである.
●Ischemic penumbraを早期に改善させることが重要である.
●脳梗塞の臨床病型を的確に診断し,最も適した治療法を選択する.
●脳梗塞の発症機序を検討し,可能な限り早期から抗血栓療法(抗血小板療法,抗凝固療法)を開始する.
●小脳梗塞では手術適応の時期を逸しないようにする.
●脳出血は脳梗塞と比較して急性期死亡率が高く,生存者の多くは何らかの神経脱落症状を残すことが多い.
●発症して5〜6時間以内は血腫が拡大し,神経症候が増悪する場合がある.
●脳梗塞や糖尿病の既往,肝機能障害,CT上のいびつな血腫,抗凝固薬を内服している患者では血腫が拡大しやすく,注意を要する.
●皮質下出血は被殻出血と比較し浮腫が強い.
●神経症候を観察しながら,必要に応じてCT検査を再検する.
●収縮期血圧が200mmHgを超える場合は,20%程度の降圧を行う.
●小脳出血を除き,脳出血の手術適応は未確立である.
●突然に始まる激しい頭痛は,破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血を疑う.
●非造影の頭部CTでくも膜下出血の有無を確認する.
●CTが正常であっても,くも膜下出血の疑いがあれば,腰椎穿刺で髄液検査を行う.
●くも膜下出血が確定すれば,直ちに脳神経外科医に相談し患者の移送を考える.
●血圧をコントロールし(140mmHg以下),必要があれば鎮静する.
●破裂脳動脈瘤の急性期の治療の原則は,できるだけ早期に開頭術による動脈瘤のクリッピング術を行い,再破裂を予防することである.
●より早く髄膜炎を認識する.
●最も考えられる起炎菌を迅速に決定する.
●適切な抗菌薬投与を早急に始める.
●抗菌薬が必要な場合と不必要な場合とを鑑別する.
●発熱,頭痛の患者が意識障害,痙攣,髄膜刺激症状などを呈したとき脳炎を考える.
●脳炎はneurological emergencyであり,なかでもヘルペス脳炎は頻度が高く,重篤で予後不良な疾患であるが,唯一治療法が確立されている.
●ヘルペス脳炎を疑ったら直ちにacyclovir治療を,二次性脳炎にはステロイド治療を開始する.
●ヘルペス脳炎の診断は,髄液抗体価の変動かPCR法によるウイルスのDNAの証明である.
●ギラン・バレー症候群(GBS)は,急速に運動優位の障害をきたす比較的頻度の高い全身性末梢神経炎である.
●呼吸筋麻痺や咽喉頭麻痺に至り,人工呼吸管理を要する急性悪化が珍しくない.
●確定診断には神経伝導検査が必要.
●基本的には死亡に至る疾患ではなく,きめ細かい看護が重要.
●立てない程度まで悪化すると血漿分離交換(免疫吸着)の適応である.
●筋無力性クリーゼの主症状は重篤な呼吸不全(主として肺胞低換気)であり,ICUでの人工呼吸管理の対象となる.
●重症筋無力症と診断されていない症例が性無力性クリーゼを発症した場合,患者の顔貌(筋病性顔貌)に留意することが診断の糸口となる.
●クリーゼの前兆としての症状—吸気時の喘鳴を伴った呼吸困難の発作,短時間の意識混濁,球症状の急激な増悪,落ち着きのなさ,睡眠障害,頻脈や炭酸ガスの蓄積による高血圧および散瞳などに留意する.
●急性心筋梗塞すべてがエマージェンシー・ケースといえ,できるだけ早期にCCUのある施設に収容し再灌流療法を行うことが,死亡率の低下,予後の改善につながる.
●特に緊急を要するものとしては,心室細動などの不整脈,心原性ショック,心破裂などの機械的合併症があげられる.
●再灌流療法には血栓溶解療法とPTCAがあるが,心原性ショックに対してはPTCAが第一選択となる.再灌流療法が不十分な場合はCABGが必要となる.
●急性冠症候群は冠動脈病変の急激な進行により発症する虚血性心疾患の総称であり,不安定狭心症,急性心性梗塞および虚血性急性心臓死を包括する.
●急性冠症候群の病態は,冠動脈粥腫の破綻とそれに伴う出血や血栓形成および冠攣縮の関与が考えられる.
●不安定狭心症は,内科治療に反応する例から梗塞進展により生命の危機を伴う例までその病態は多様であり,重症度の把握が必要となる.
●不安定狭心症の治療は十分な薬剤加療を直ちに開始し,保存的治療や冠血行再建術(PTCA, CABG)により,症状の安定化,心性梗塞への移行の阻止を図らねばならない.
●本邦では年間3万人の突然死の発生が推定されており,原因として頻脈性不整脈の意義は大きい.
●頻脈自体は致死的でなくとも持続すると急性心不全に至る.
●診断は心電図記録で可能であるが,直前に停止した例や心室細動に移行した例では原因の頻脈を同定することは困難である.
●蘇生例や頻脈の停止例では診断に電気生理学的検査を考慮する.
●徐脈性不整脈で緊急治療が必要であるかどうかは,基本的には臨床症状の有無と血行動態により決定される.薬物療法では硫酸アトロピンや塩酸イソプロテレノールが用いられるが,それぞれ効果の限界と禁忌がある.薬物療法が無効の際には体外式ペースメーカーによる一時的ペーシングを行う.
●血行動態が安定したら,徐脈性不整脈の原因の検索を行う.薬物もこの原因となることがあるので,服薬中の薬物についての問診も忘れてはならない.必要ならば,Holter心電図検査や電気生理学的検査などを施行する.ペーシングが唯一の治療であれば,恒久的ペースメーカを植え込む.
●心原性ショックは,心ポンプ機能低下による血圧低下と重要臓器の循環不全による症状から構成される臨床症候群である.
●急性心筋梗塞,心原性ショック,ショックの重症度を同時進行的に診断し,治療を開始する.
●プレショック時に適切な治療を行うことが救命のポイントである.
●そのためには,高齢,糖尿病患者,再梗塞,広範囲梗塞,低左室駆出率,冠動脈近位部閉塞などのショックの予知因子を熟知する必要がある.
●薬物および補助循環のみでの治療では,死亡率は80%を超す.
●PTCA(ステント留置)による確実で十分な再灌流療法を早期に施行することが重要である.
●呼吸困難,チアノーゼ,肺ラ音,胸部X線のうっ血像から臨床的にうっ血性心不全を診断し,初期治療を開始する.
●心電図,心エコー,必要ならSwan-Ganzカテーテルにより病態を評価し,薬剤を選択する.
●初期治療から特異的治療が必要な心筋梗塞や弁膜症を見逃さない.
●心膜液の貯留速度が血行動態の悪化に大きく影響する.
●急性の原因としては,急性心筋梗塞,急性大動脈解離,心臓カテーテル検査,急性心膜炎などがある.
●臨床所見は,頻脈,頻呼吸,静脈圧上昇,奇脈,血圧低下,ショックなどである.
●診断は,心エコーによる心膜液貯留に伴った右房,右室の虚脱が重要な所見である.
●治療の基本は,心膜穿刺あるいは心膜切開により心膜液を排除し,心膜腔内圧の減少を図ることである.
●大動脈解離はエマージェンシー疾患であり,来院後直ちに検査,治療する.
●内科治療としては血圧コントロールが重要であり,降圧薬,β遮断薬を使用する.
●急性A型解離および重大合併症を有する例は,早期手術の適応である.
●大動脈瘤破裂および破裂切迫例は,緊急手術の適応である.
●大動脈瘤は,瘤径の大きさ,拡大速度により手術を行う.
●急性動脈閉塞には,主として心疾患に起因する動脈塞栓症と,動脈硬化を基盤とし血栓により閉塞をきたす急性動脈血栓症がある.
●診断は症状から容易である一方,骨格筋の阻血許容時間は6〜8時間であり,治療の開始の遅れは,死亡や肢の切断に至るので,素早い血管外科との連携が必要である.
●再灌流治療後の合併症であるMNMSは,合併すると極めて重篤である.
●重症の高血圧は,発見,管理,治療の普及とともに減少傾向にあるが,緊急に治療を要する高血圧エマージェンシーは少なくない.
●治療が遅れると,脳,心,腎,血管などに非可逆的な変化をもたらすので,速効性の薬物を多くは非経口的に用いることが多い.
●治療は集中治療室で行うことを原則とし,血圧の頻回のモニターが必須である.
●急性心筋炎のエマージェンシー・ケースとしては,以下の3点である.①心ポンプ失調による心原性ショックおよび心不全,②心室ブロックおよび重症心室性不整脈,③心膜炎の合併による心タンポナーデ.
●急性呼吸不全は急性に発症した呼吸不全であり,緊急性を要する病態である.
●呼吸不全の初療は,気道確保のうえでの肺酸素化能,換気の改善.維持であり,原因治療となる.
●現病歴,現症が最も重要であり,モニターとしてのパルスオキシメーターはバイタルサインの一つとして認識したい.
●急性増悪の治療は,いかに早期に診断するかにかかっている.
●O2療法は低流量(または低濃度)投与が原則だが,身体所見から明らかに瀕死状態で著明な低酸素血症が疑われる場合,高濃度O2投与を行うべきである.
●原因病態への治療も早急に開始すべきである.
●患者が来院したら,直ちに意識状態,呼吸状態,チアノーゼの有無をチェックする.
●PaO2が60Torr以下,PaCO2が45Torr以上の場合は,高度の気道閉塞が示唆される.
●治療方針を決定するうえで,発作の重症度,合併症,服薬歴,血清電解質濃度,血中テオフィリン濃度などの把握が重要である.
●アスピリン喘息患者にコハク酸エステル型ステロイド剤の急速静注は禁忌である.
●人工呼吸器管理を行う場合,PaCO2の改善よりもPaO2の維持と圧外傷の防止を優先する.
●内科的薬物療法に反応しない場合は,気管支拡張作用のある麻酔薬の使用を考慮する.
●急性肺塞栓症が緊急を要する疾患として重要なのは,致死性急性肺塞栓症という急性死をもたらす病態があるからである.
●わが国では急性肺塞栓症は少ないといわれたが,近年増加の傾向にあり,致死性急性肺塞栓症も稀ではなくなった.
●本症は,内科,外科,整形外科,産婦人科など臨床各科にまたがる疾患であり,臨床の現場で救急医療の実践が要求される.
●内科的救急手技としては,第一に呼吸循環の管理であるが,次いで抗凝固薬の投与が必要であり,第一選択薬はヘパリンである.
●第一に重症度を評価することが大切である.難治化のリスク要因(高齢,基礎疾患,呼吸不全,広範かつ急速進行性の肺炎など)をもつ患者は入院治療が必要である.
●臨床像により,典型的(古典的)肺炎,異型肺炎,誤嚥と関連した肺炎,肺化膿症,高齢者の肺炎,基礎疾患を有する患者にみられる肺炎などに分類し,起炎微生物を推定する.
●治療を開始する前に喀疾のグラム染色を行い,喀痰,血液,胸水を培養に提出する.
●臨床像および患者背景を参考にしてempiric therapyを開始する.
●気胸は大きく分けて自然気胸,外傷性気胸,医原性気胸に分類され,それぞれエマージェンシー・ケースになりうる.
●自然気胸のなかで血胸を合併した特発性気胸はエマージェンシー・ケースとなり,緊急手術を要する.特に再発性の気胸に多い.
●自然気胸のなかで肺に基礎疾患を有する患者に生じる続発性気胸では,軽度であっても呼吸不全が増悪し,エマージェンシー・ケースとなりうる.
●外傷性気胸は緊張性気胸を呈することが多く,直ちに胸腔ドレーンを挿入するとともに,外科医にコンサルトする.
●医原性気胸のなかで人工呼吸管理中に生じた気胸はエマージェンシー・ケースである.陽圧換気により,短時間で緊張性気胸へ移行することがある.
●側臥位(decubitus position)胸部X線所見で10mm以上あれば胸水採取可能である.
●胸腔穿刺は肋骨上縁に沿って行う.
●貯留胸腔液は,漏出性胸水,滲出性胸水,乳び胸水,血性胸水,膿胸,血胸に分類される.
●最も緊急な内科的胸水貯留疾患は,急性大動脈解離とBoerhaave症候群である.
●血胸性疾患で100ml/h以上の出血が持続するなら,外科的検討が必要である.
●動脈血液ガス分析でPaCO2の低下,呼吸性アルカローシスを認め,通常低酸素血症は伴わない.
●過換気をきたす他疾患の除外.
●精神的誘因が発作の原因となりやすい.
●異物が気道内に入ると,その嵌頓部位によっては致死的病態を引き起こす.最悪のケースは窒息死であるが,これを回避できても二次的合併症を呈する危険性がまだ残されている.異物誤嚥が起きたら早期に嵌頓部位を確実に診断し,慎重に摘出しなければならない.
●異物により気道が閉塞される場合,部位として口腔内,咽喉頭,声門下,気管,気管支がある.いずれの場合も気道の確保が最優先であり,前三者は指拭法,吸引法,背部叩打法,Heimlich法が,後二者には気管支ファイバースコープによる異物の除去が必須である.
●食道胃静脈瘤破裂の治療は他の消化管出血の治療と異なり,止血の完了が治療の終了ではなく,静脈瘤の完全消失をもって治療終了とする.
●基礎疾患に肝硬変症をはじめとする門脈圧亢進症を有する.
●門脈腫瘍塞栓を有する肝癌合併例,pipe line varix1)は止血に難渋する.
●病態を十分に把握したうえでの迅速,正確な診断かつ治療が望まれ,発症から止血までの時間が予後に直結している.
●内視鏡的治療が第一選択である.これには内視鏡的硬化療法(EIS)と内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)がある.
●消化管出血患者の循環動態は流動的であり,全身管理を含めた治療を心掛ける必要がある.
●消化管出血の治療には,純エタノール局注法,ヒーター・プローブ法,クリップ止血法などがあるが,それぞれの止血機序を熟知しておかなければならない.
●再出血をきたしやすい病態を念頭に置いて,治療に臨む.
●予想される合併症については,十分な配慮が必要である.
●止血困難例においては,外科手術のタイミングを逃さないようにする.
●消化管穿孔および続発する急性腹膜炎は外科エマージェンシーである.
●急性腹膜炎は多くの場合,臨床所見のみで診断可能である.
●特殊例では補助的な検査が必要となる.
●初期治療の基本は,水・電解質補正と抗生物質投与である.
●原則として,内科で経過観察・特異的治療を行うことはない.
●イレウスの診断治療に際しては,まず単純性か絞拒性かの鑑別が重要である.
●経鼻胃管の挿入は,いくつかのコツを会得しておくことにより,患者のみならず術者にとっても驚くほど楽になる.
●イレウス管の挿入もぜひ習熟すべき手技であり,経鼻胃管からイレウス管への変更のタイミングも大切である.
●保存治療輸液や腸管の減圧療法の限界の見極めも重要である.そのためにも,早い時期から外科コンサルトをすべきである(他科や先輩仲間との相談で,有益なサジェスチョンやヒントが得られることが多い.相談は「タダ」である).
●血性下痢,腹痛がある場合には,便秘などの便通異常がないかなどの問診が重要である.
●診断を確定するには,超音波検査,内視鏡検査を行う.
●超音波検査は本症の診断だけではなく,壊疽型の診断など重症度の判定にも有用である.
●壊疽型は可及的速やかに外科的手術を行わなければ,致命的となる.
●炎症性腸疾患の緊急合併症には,もちろん不可避なものもあるが,日々の診療内容を工夫し,これらの合併症を起こさないようにすることが重要である.
●ステロイド服用中の患者は,自他覚所見に乏しいことがあるため注意を要する.
●緊急症例の治療として,第一に内科的な治療を考慮すべきであるが,これらの病態は,病変部を切除することにより緊急事態から脱することができるので,外科的な治療のタイミングを逃してはならない.
●内科的治療の限界のために外科的治療に移行した場合も,外科医とともにチーム医療を続けることが重要である.
●高齢者ほど頻度が高い.
●日本人でもS状結腸を中心とする左側が多くなり,欧米なみになりつつある.
●炎症や穿孔や大量出血例がエマージェンシーとして遭遇される.
●炎症は基本的には保存的治療だが,穿孔は緊急手術の対象となる.狭窄や瘻孔は急がずに精密検査を行う.
●出血は一過性,間歇型が多い.
●診断は大腸鏡による緊急検査が必須で,持続する出血では血管造影が有用でありともに止血治療も可能である.
●非手術療法で止血できない大量出血例のみが緊急手術の適応である.
●消化管の異物では,まず存在部位と性状を確認する.
●咽頭,食道の異物は主として誤嚥によって起こり,鋭利なものは食道損傷を,大きなものは閉塞を惹起する.単純X線,喉頭鏡,内視鏡などで診断し,速やかに除去する.ボタン電池は磁石付き胃管にて除去する.
●胃,小腸に存在する異物の大部分はそのまま消化管を通過する.一般に積極的には除去せず経過観察を行うことができるが,鋭利なものは可能であれば除去する.
●直腸異物は肛門からの異物挿入によって起こるものがほとんどである.直腸損傷に留意する.
●急性肝不全は原則として全例が内科的エマージェンシー・ケースに該当する.
●急性肝不全は予後不良な疾患であり,早期に診断し,集中治療を行う必要がある.
●急性肝不全は病因によっては特異的治療が可能であり,迅速な病因診断が求められる.
●急性肝不全に対する特殊組成アミノ酸輸液は有害とされている.
●内科的治療無効例は肝移植の適応となる.
●エマージェンシー・ケースは,ショック,敗血症と急性閉塞性化膿性胆管炎である.
●急性胆管炎には内視鏡的胆道ドレナージが有効である.
●右季肋部の筋性防御は限局性腹膜炎の存在を疑わせる.これを認めたら,外科的治療を考える.
●内科的治療を開始して数日後に,炎症所見が継続あるいは増悪している場合は他の治療を考える.
●手術適応の決定には,腹部エコー,腹部CTが有用である.
●急性膵炎のうち,重症度診断基準により重症と判断された例や,膵の局所合併症や多臓器不全を伴う例などは,エマージェンシー治療が必要である.
●重症度診断基準,CTなどの画像診断は,重症度の診断に有用である.
●治療開始後7〜14日間で臨床所見が改善しない壊死性膵炎例は,画像ガイド下穿刺にて細菌感染の有無を確認し,外科的切除の必要性を判断する.
●脱水の分類表に適合するような典型例は少ない.
●欠乏量を推定する様々な計算式は,実際は役立たない.
●症状,身体所見を重視する.
●急速な補正は避け,無難な輸液をする.
●状態が安定するまでは頻回に効果判定をし,軌道修正することが最も重要である.
●酸塩基平衡異常の理解には,血液ガス値と血中電解質の値を用いた正確な解析に基づく病態の理解が必要である.
●治療の原則は,あくまでも根底にある基礎疾患の是正であり,血液ガス値の異常を見かけ上正常化させることではない.
●代謝性アシドーシスにおける重曹投与の有効性については確立されていない.
●羽ばたき振戦や昏睡などの中枢神経症状—透析療法.
●頻回の嘔吐をきたす消化器症状—透析療法.
●尿毒症性心膜炎—透析療法.
●体液過剰によるうっ血性心不全やコントロール困難な高血圧症—保存的療法+透析療法.
●高カリウム血症—保存的療法+透析療法.
●代謝性アシドーシス—保存的療法+透析療法.
●低Na血症では脳浮腫が起こり生命の危険があるが,ある程度持続するとadaptationにより脳浮腫は軽減する.この時期に急速なNaの補正を行うと脳幹の脱髄を惹起して,逆に生命を脅かすことになる.
●したがって単に血清Na値を見てあわてて治療を開始するのではなく,低Na血症の程度,期間,中枢神経症状の有無を見極め,背後にある病態を考えて治療することが大切である.
●一方,高Na血症は医原性に引き起こされることが多いので,まずそれを作らないように日頃から注意すべきである.
●内科的エマージェンシーの1つであり,原因検索の前に早急な治療を要することもある.
●特に細胞外カリウム(K)濃度は心筋の興奮性に影響を与え,K6.5mEq/l以上の高K血症では,重篤な不整脈(心室細動,完全房室ブロック,心停止など)を惹起する危険がある.
●血清K濃度異常は酸塩基平衡異常,腎不全,循環不全などに併発することが多く,原疾患の治療も重要である.
●低K血症の緊急補正時には,補正速度,補充液濃度,総補充量に注意する必要がある.
●著明な高Ca血症で臨床症状を伴う場合は,エマージェンシー・ケースとしてまず生理食塩水負荷・利尿薬投与を行う.
●臨床症状を伴う低Ca血症に対しては,グルコン酸カルシウム経静脈投与を行う.
●腎機能正常者における高P血症には生理食塩水負荷・アセタゾラミド投与で対処する.
●高度の低P血症では神経症状・筋症状を合併することがあるが,このような場合にはP製剤の経静脈投与を注意深く行う.ただし,細胞内へのシフトによるものの場合はPの欠乏がない限り必要ない.
●初期治療と同時に,Ca・P異常症においてはCa,PのほかにMg,PTH,ビタミンDなどほかのパラメータから総合的に鑑別を進める必要がある.
●意識障害,ショックの患者を診るときには,下垂体卒中,下垂体昏睡を鑑別診断に加えておくことが重要であり,詳細な病歴,現症により本疾患を疑う.
●画像髄により診断が得られることもあるが,急性副腎不全,甲状腺簾低下症を疑ったときには採血を行った後,結果を待たずに直ちに治療を開始する場合がある.
●下垂体卒中では緊急手術の適応となることがあるので,脳外科医との密接な連携が必要である.
●本症は救命のために迅速に治療を開始することが重要なので,血中コルチゾールやACTHの結果が判明するのを待つことなく,家族からの問診や,低Na・高K血症,低血糖,白血球分画での好酸球,リンパ球増加など,本症が疑われたら直ちに治療を開始する.この際,ヒドロコルチゾンを使用する.
●本症は予防が重要であり,慢性副腎皮質機能低下症患者には教育と服薬指導を徹底する.
●糖尿病性昏睡の迅速な診断と治療には,糖尿病性ケトアシドーシス,非ケトン性高浸透圧性昏睡,乳酸アシドーシスの病態をよく理解しておく必要がある.
●昏睡の背景にある誘因を考慮に入れた検査治療計画を立てる.
●糖尿病性ケトアシドーシスと非ケトン性高浸透圧性昏睡の治療の基本は,代謝異常の是正,脱水の改善,電解質の補正である.
●糖尿病性昏睡の経過は,身体所見,検査所見ともに大きな変化を示すので注意深く経過を観察し,昏睡に伴う合併症の予防および早期診断と治療を心掛ける.
●血糖値が50mg/dl以下になると低血糖症状が出現し,重症例では低血糖性昏睡に至る.
●低血糖性昏睡の患者を診た場合,まず血糖の是正により昏睡からの回復をはかることが最優先であり,低血糖の原因検索はその後になってもよい.
●臨床的な頻度が高いのは糖尿病患者にみられる低血糖であるので,糖尿病の治療歴は必ず確認する.また,薬物使用歴も重要である.
●低血糖の原因を検索するためには,低血糖が空腹時に出現したか,または食後に出現したかを確認する必要がある.
●空腹時低血糖ではインスリノーマ,汎下垂体機能低下症,ACTH単独欠損症などが重要であり,食後低血糖では,胃切除後低血糖,特発性低血糖などがある.
●甲状腺クリーゼは,甲状腺ホルモン作用が生命に危険が及ぶほど強く発現しすぎたために起こる病態である.高体温,頻脈と心・肝など各臓器の代償不全をきたす.
●甲状腺クリーゼの治療は,抗甲状腺剤,βプロッカー,ステロイド剤などの投与と一般的治療からなる.
●粘液水腫昏睡は,甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン作用が全くなくなって生命維持ができなくなってきた病態である.意識障害,低体温,低血圧などをきたす.
●粘液水腫昏睡の治療は甲状腺ホルモン剤,ステロイド剤などの投与である.
●甲状腺クリーゼも粘液水腫昏睡も,検査結果が出そろうのを待たず,臨床的に診断して速やかに治療を始めるべき緊急病態である.
●臨床症状の把握,血圧の維持.
●出血の有無の確認,出血量の推定,輸血量の決定.
●全血球計算(complete blood cell count:CBC;赤血球数,ヘモグロビン値,ヘマトクリット値,網赤血球数,血小板数,白血球数とその分類の算定).
●網赤血球の数により骨髄での赤血球産生状況を判断する.
●白血球数,血小板数の異常に注意.
●血清鉄,フェリチン,ビタミンB12,葉酸を測定して,造血材料の過不足を判定する.
●末梢血塗抹標本の観察.骨髄検査.必要により染色体分析.
●DIC治療の原則はあくまでも原因の除去/軽減にあり,①基礎疾患の治療,②抗凝固療法,③補充療法の3者を並行して行う.
●凝固線溶系分子マーカーの測定により,Pre-DICをより早期に的確に把握することが重要である
●急速に進行する血小板減少は,その原因にかかわらずエマージェンシーである.
●血小板数が2万/μl以下の場合は致死的臓器出血の危険が高く,緊急性が高い状態である.
●血小板減少を認めた場合は,末梢血塗抹標本で顕微鏡下に血小板数と血球形態を確認する.
●原因が特定できない場合は,基礎疾患を迅速に診断するために骨髄検査を行う.
●病態により血小板減少機序が異なるため,治療法も基礎疾患の病態に応じて選択する.
●転移性脊髄性圧迫症候群は悪性腫瘍患者のQOLに重大な影響を及ぼす.
●悪性腫瘍の種類によらず,ほとんどの患者で背部痛,筋力低下,感覚障害,自律神経障害を呈する.
●神経学的症候と脊椎単純X線検査で異常を認めたときは,直ちに治療を開始する.
●初期治療として高用量ステロイド投与と放射線療法を行う.
●診断時に歩行可能な場合は,治療後も歩行機能が維持されることが多い.
●上大静脈症候群とは,上大静脈あるいは両側腕頭静脈が狭窄あるいは閉塞し,上半身からの静脈還流が障害されて起こる一連の症候群であり,胸部悪性腫瘍によることが多い.
●診断には胸部造影CTや上大静脈造影が有用である.
●治療開始前に組織診断を確定する(非小細胞肺癌や転移性腫瘍と,肺小細胞癌や悪性リンパ腫では治療法が異なる).
●治療は放射線療法と化学療法のいずれか,もしくは併用が行われることが多い.
●血液疾患,悪性腫瘍でみられる高Ca血症(MAH)はHHMとLOHに分けられる.
●補正Ca値15mg/dl以上,中枢神経症状,心電図上QT短縮などがある場合は緊急治療を要する.
●高Ca血症の初期治療は,生食大量輸液とフロセミドの投与,bisphosphonatesの静注である.
●敗血症の治療は,感染症としての抗菌化学療法と,合併する循環不全,ショック,臓器不全への対応の両方が必要である.
●急速に悪化する可能性が高く緊急の対応が必要だが,原因の感染症に対して有効な治療が行われれば短期間に回復する見込みが大きいので,intensiveな治療の適応がある.
●熱中症(労作性熱射病)は,高温多湿の環境や運動によって高体温や意識障害をきたす疾患である.
●患者の一部にリアノジン受容体RYR1異常があり,全身麻酔の合併症である悪性高熱症との関連が示唆される.
●診断は,過呼吸を伴う体温の急激な異常上昇,意識障害,循環不全で行う.横紋筋融解も高頻度にみられる.
●治療の原則は早期発見であり,直ちに体表面冷却と冷却輸液を行う.高体温や横紋筋融解が続く症例には,悪性高熱症の特効薬であるダントロレンを投与する.
●溺水の基本病態は窒息による低酸素血症とそれに伴う低酸素脳症である.
●救出時には口腔内に異物がないか確認し気道確保する.自発呼吸がなければ人工呼吸を開始し,心肺停止状態ならば心肺蘇生術を行う.同時に加温を図ることも重要である.
●意識障害を伴う溺水患者は集中治療管理を必要とし,意識障害のない軽症例でも24時間は入院経過観察する.
●入院後は肺水腫と低酸素脳症による脳浮腫の治療が中心となる.肺水腫には気管内挿管のうえで呼気終末陽圧呼吸(PEEP)を行い,脳浮腫にはグリセオールまたはマンニトールの点滴静注を行う.
●偶発性低体温症とは,生体が寒冷に曝露され,深部体温が35度以下に低下した状態をいう.
●低体温症は死亡率の高い重篤な疾患であり,直ちに治療を必要とする緊急疾患である.
●予後を左右する因子は,低体温の程度,冷却速度,治療までの時間と反応,治療法,年齢,基礎疾患,合併症などによる.医師は本症の病態を正確に理解し,早期に治療することが重要である.
●治療法は,passive rewarmingとactive rewarmingとがある.前者の治療に反応しない例や重篤な例には,後者を選択する.
●病院としての針刺し後のフォローアップ手順を確認しておく.
●救急時にすることを決めておく.
●時間的に急ぐのはHIVの針刺しである.この場合,プライバシー保護につとめること.
●胸腔穿刺・胸膜生検を行う際の偶発症としては,気胸,血胸,肝臓または脾臓穿刺などがある.
●穿刺の際に大気と交通させないようにする,肋骨の上縁を穿刺する,深く刺しすぎないようにストッパーをかける,生検のときに生検針の刃を上に向けない,などの注意により偶発症は防げる.
●気胸や血胸が起こったときには,胸腔ドレーンを入れる必要がある.
●最も高頻度で重篤な偶発症は出血である.特に肝生検後2時間以内の疼痛,血圧低下,頻脈に注意する.
●出血に対しては,血液検査に加え超音波など画像診断も併用して経過を観察する.
●必要により輸血をするが,多くは自然に止血しうる.出血が進行する場合には,動脈塞栓術,開腹手術を考慮する.
●超音波ガイド下での肝生検が,他臓器損傷予防にも有効である.
●消化管内視鏡の治療を行うにあたって,偶発症を未然に防ぐためには,内視鏡治療の適応について慎重に判定することが重要である,また,良好な治療環境をつくり,的確な治療技術を身に付けて治療を行うことは当然である.
●患者には術前に治療後の日常生活の注意や術後安静の必要性について説明し,前もって注意書きを渡しておくことも大切である.
●偶発症が起きた鉱合に備えて各種内視鏡治療手技を十分にマスターしておく.特に内視鏡的止血手技は必要になる機会が多い.内視鏡治療の処置で不十分な場合には外科的な処置が迅速にできるように,外科医と連携しておくことも必要である.
●画像診断の進歩に伴い,検査時の造影剤使用頻度が増加している.
●代表的造影剤は非イオン性ヨード系造影剤で,日本ではこの薬剤を用いた検査が年間1,000万件程度行われていると考えられる.
●即時型副作用で年間10名以上の人命が失われ,遅発型副作用で年間40万人程程度の患者に不快な副作用が生じていると推測される.
●造影剤の副作用と造影剤使用に関する禁忌.慎重投与例の理解は,真に重要である.
●中心静脈穿刺の偶発症のうちエマージェンシーとなるのは,気胸,血胸,血管損傷,空気塞栓症,静脈血栓症である.
●手技を行う前の十分な準備が最も重要である.
●穿刺中に患者の状態に明らかな変化が生じた場合には,中心静脈にこだわらず,即座に状況に応じた対応策をとる.
●気管支鏡検査は呼吸器疾患を扱ううえで日常的に施行されている標準的な手技であるが,重篤な合併症発生の可能性が常に存在している.
●合併症は通常,気管支鏡下に対処が難しく,その予防が最も重要である.
●合併症の予防には,気管支鏡検査の目的と限界を理解し,慎重かつ素早く検査を行うことが重要である.
●発生してしまった合併症に対しては,常日頃から対処の準備を行っておくことは当然である.
●治療薬による急性中毒のうち特徴的なものに,アスピリンによる代謝性アシドーシス,アセトアミノフェンによる急性肝壊死,鎮静剤による遷延性意識障害,抗そううつ剤による心電図変化,フェニトイン・リドカイン・ジギタリス・テオフィリンによる不整脈や痙攣などがある.これらの薬剤は内科領域で頻用されており,その急性中毒は意外に多いので,注意が必要である.
●中毒とは,体外から由来した物質による生体に対する有害作用である.したがって,原因物質を同定することが診断上,最も重要である.
●自律神経症状は原因物質を同定するうえで非常に有用である.縮瞳,散瞳,発汗をきたす主な中毒原因物質を表1に掲げた.
●後日,分析が必要になることがあるので,尿,血清,吐物などの試料は必ず凍結保存する.また,分析を行う際には中毒の発生状況や臨床所見から,あらかじめターゲットを絞っておく.
●中毒の治療は,a)原因物質の排出(胃洗浄,活性炭投与,強制利尿,血液浄化法など),b)拮抗薬,c)対症療法(呼吸,循環管理など)からなる.この3点を常に念頭に置きながら治療を進める.自殺企図の場合は精神科的治療が必要になる.
●自殺企図手段では向精神薬による服薬自殺が増加している.
●収容場所で注意しなくてはいけないのは「再自殺」であるため,決して患者を一人にしない.
●自殺の原因(精神病によるのか,うつによるのか,あるいは衝動的なのか)を特定する.
●日本中毒情報センターが1997年に受信した35,224件中,5歳以下の小児の中毒事故は28,053件(80%)であった.特に0〜2歳児の誤飲事故が多く,起因物質はタバコ,化粧品,医薬品,洗浄剤,文具類,家庭用殺虫剤の順に多い.
●タバコの誤飲は0歳児に多いが,摂取量が通常少ないために,数時間程度の経過観察のみで治療を要しないことが多い.
●コイン型リチウム電池は最近使用量が増加している.ボタン型電池に比べて大きいため食道に停滞する危険性が大きく,電圧も高いため放電速度がより速く,障害が発生するまでの時間が短いので迅速な対応が必要である.
●一酸化炭素中毒が疑われた場合は,まず100%酸素の吸入を行う.
●意識障害があれば直ちに人工呼吸器で強制換気を行い,高圧酸素療法を検討する.
●一般的な全身管理は必要であるが,アシドーシスの補正はあわてて行わないようにする.
●日本人では,比較的少量のアルコールでも急性アルコール中毒となりうる.
●昏睡,血圧低下,呼吸抑制は死亡につながる危険なサインである.
●アルコール離脱症候群は振戦,発汗などの自律神経症状を伴う.
●治療はベンゾジアゼピン系薬剤が第一選択である.
●食中毒とは,細菌や毒素に汚染された飲食物を摂取して発生した中毒のことである.必要条件は次の2点である.①食中毒の原因となる飲食物を摂ったことが,疫学的または細菌学的に確認できる,②複数以上の患者が存在する.
●特徴は次の6点である.①細菌による食中毒が多い,②季節は夏が多い,③対症療法のみにて治癒することが多い,④腹痛,下痢,嘔気・嘔吐の消化器症状が主体である,⑤重症度の判定は循環動態の変化による,⑥1996年から腸管出血性大腸菌O157:H7による食中毒が多発している.
中毒では,患者の現症と重症度や治療の緊急性とが必ずしも一致しないことがある.パラコート中毒,塩素ガス中毒,アセトアミノフェン中毒の初期,黄燐中毒の無症状期などがその典型である.
本項では,比較的よく遭遇する中毒で重要と思われる起因物質を筆者の独断で選別し,主症状,主たる治療,禁忌などの留意点を羅列した.中毒の診断と治療の一助としていただきたい.さらに中毒起因物質が推定できたら,その毒作用機序や治療法などに関して,もっと正確な情報を得ていただきたい.そのために存在する(財)日本中毒情報センターの電話番号は下記のとおりである.
アナフィラキシーは重要な内科エマージェンシーである.ここでは,救急外来で経験したセファクロルによるアナフィラキシーの一例を提示する.治療には,エピネフリンの皮下注射,輸液と酸素吸入,ネオフィリン.塩酸ドパミン・メチルプレドニゾロンの点滴静注が有効であった.また,原因薬剤決定には,スクラッチテストが有用であった.
症例提示:症例は48歳,女性.1997年12月上旬より咽頭痛,咳嗽があり,12月11日,近医でセファクロル,ジフルニサル,アルジオキサ,リン酸ベンプロペリンを処方された.同日午後8時過ぎに4種類の薬剤を内服した.8時30分前後に全身の痒みのある皮疹,胸内苦悶が出現し,8時45分に当院救急外来を受診した,身体所見では,意識は清明.脈拍85/min,収縮期血圧1000mmHg,SpO298%,全身に発赤し,紅皮症様であった.薬剤による発疹と考え,輸液とコハク酸メチルプレドニゾロンの点滴静注を開始した(9時前後)事この間に喉頭喘鳴も加わり,収縮期血圧60mmHg,脈拍微弱,脈拍数60/min,SpO285%となり,アナフィラキシーと診断した.酸素吸入とエピネフリン1,000倍液(ボスミン®)0.3mlの皮下注射をすぐに行い,さらにネオフィリンと塩酸ドパミンの点滴静注を開始した.また,持続的な心電図と血圧のモニターを開始した.エピネフリン皮下注射は合計3回行った.その後も嘔気,頭痛,胸内苦悶が約2時間続いた.
胃癌術後で5-FU投与にて経過観察されていた63歳男性.しゃべりにくさと左手の使いにくさを主訴に,早朝6時当院救急外来受診し,脳梗塞の診断にて入院となった.構語障害と巧緻運動障害は1時間ほどで回復したが,緊急の検査データが当直医をあわてさせた.WBC 4,300/μl,Hb 7.2g/dl,plt 7,000/μl,PT,aPTTは正常,TP 6.3g/dl,BUN 25mg/dl,Cr 0.9mg/dl,GOT 66KU,GPT 47KU,T. bil 1.9mg/dl,D. bil 0.5mg/dl,LDH 1,696HU,Amy 98SU/dl,CK 113IU/l,ESR 45mm/1hr,CRP 0.9mg/dl.尿定性は蛋白(1+),潜血(3+).
著明な血小板減少に加えて高LDH血症がある.肝障害も軽度ありそうだ.DICだろうか?初期なら凝固はまだ正常でもいい.胃癌が再発して骨髄への浸潤でも生じているのだろうか?
真夏の猛暑の日にライトバンを運転中の35歳男性が,頭痛に引き続き意識もうろうとなり電柱に激突し救急車にて搬送された.既往として特記すべきこともなく,来院時,意識清明で,自覚症状もなくバイタルサインや身体所見,神経学的所見も異常なし,炎天下の運転ながら熱中症を思わせるような体温の変化や血液生化学的な異常もなく,MRIや脳波も異常なかった.原因がわからず困っていたところ,事故の状況を捜査した警察署より,ライトバンの積み荷に二酸化炭素のボンベが数本あり,そのうちの1本のボンベの栓のネジがゆるんでいた旨の連絡があり,密閉された車内に二酸化炭素が充満したために,意識もうろうとなり事故に至ったものと判明した.よくよく本人に聞いてみると彼の職種は食品関係の営業で,生ビール用の二酸化炭素のボンベをよく運ぶとのこと.ライトバンの積み荷のことまで詳しく問診していれば迅速な診断が下せたと反省する一方で,問診のとりかたの難しさを痛感したエピソードであった.
ある公立病院に勤めていた6年前の,のどかな秋の休日のことである,病棟へ行ってみると,42歳の男性が“脱水”として入院していた.
浅黒く口に焼けたこの屈強な男性が呼吸困難と胸痛を訴えて最初の入院をしたのは,前年の7月だった.左に血性胸水5,000ml.診断は悪性胸膜中皮腫.化学療法と胸膜癒着術を行って退院し,その冬には出稼ぎにも行ったのだが,ここ5日ほど前から腹満と嘔気のため摂食できず,前夜来院したところを当直医が入院させたのだ.
救急室から意識消失の患者がいるので来て欲しいと連絡があった.聞けば某有名病院精神科に受診している48歳女性とのこと.何で精神科でなくて神経内科なんだと少し不満もあったが仕方ないとかけつけた.Arm dropping testをしてみると見事に顔の上に落ちる.レジデントが言うには「精神科の外来を受診するため家族と一緒に独歩来院し,待っている間に呼吸停止が生じた.挿管しようとしたら喉頭展開したところで呼吸が戻った.某精神科に『夜眠れない.だるい.疲れやすい』というので数カ月前からかかっているが,ヒステリーでここまでなるのか?」という.返ってきた呼吸回復直後の血液ガスではなんとPco2103.その他,血圧,緊急の血算,生化,胸部X線,心電図では正常とのこと.Arm dropping testの結果もあるので,さすがにヒステリではなかろうというので診察したが,巣症状や瞳孔異常などない.深部反射も正常で異常反射もない.項部硬直もなければ,発熱もない.向精神薬の大量内服なども考えたが異常眼球運動もないし,少し前まで家族がついていて薬の大量内服などできる状態ではなかった.困ったが,一応念のためにとアンチレックスを注射してみた.わずかだが呼吸がさらによくなったようだ.早速,反復刺激をしてみたら見事なwaningがみられた.後日返ってきた抗アセチルコリン受容体抗体も陽性だった.
筆者らは,大腿骨骨折後の脂肪塞栓症候群の診断に,呼吸器症状,中枢神経症状とともに眼瞼結膜の点状出血斑が有用であった症例を経験したので呈示する.
症例は17歳の女子高校生で交通事故による両側大腿骨骨折のため当院整形外科に入院した.入院時,意識は清明で胸部X線所見も正常であった.翌日,意識混濁状態となり低酸素血症(酸素3l下でPO2:42mmHg)と胸部X線上びまん性にスリガラス状陰影が認められた.また眼瞼結膜に点状出血斑を認めた(図1).以上の所見より脂肪塞栓症候群と診断し,ハイドロコーチゾンとメシル酸ガベキサートの治療を開始した.治療後,胸部陰影,低酸素血症は徐々に改善していき,4週後には意識も清明となった.
「先生,ちょっとお願いします」救急外来からである.行ってみると研修医の先生が血管確保で四苦八苦している.聞いてみると,患者さんはハチ刺によるアナフィラキシーで血圧低下があり,少し朦朧とした感じで気分不快を訴えていたので,迷わずエピネフリンを皮下注で使用し,その後で輸液路を確保しようとしたところ,確保できなくなって困っているという.
「さっきまで血管は見えていたんで,楽に輸液路を確保できると思っていたんですが…」
周期性四肢麻痺に甲状腺機能亢進症の合併が多いことはよく知られている.低カリウム性周期性四肢麻痺でカリウム製剤の外来点滴を2カ月間,数週間おきに実施していたある男性は,著明な肥満体で,特に頻脈,発汗,体重減少,いわんや前頸部の腫大などの特徴的な臨床症状はなく,総コレステロール143mg/dlなども含めて甲状腺異常を疑わせるようなものはなかった,ある日,いつものように外来でカリウム製剤の点滴をしていたが,この日ばかりは四肢麻痺がいつもより強く,血清カリウム値も1.4mEq/lとひどかったため,入院とした.午後5時の入院で年後7時頃には血清カリウム値も5.1mEq/lまで改善したものの,全身状態が不良となり,高血圧,頻脈,高熱,著明な発汗,意識障害,背部痛,腹痛,嘔吐,痙攣を起こしはじめ,ついにはBiot呼吸にも似た不規則な頻呼吸,高度の上室性頻脈から心室性頻拍・ショックを起こした.
人工呼吸器装着,胸壁殴打を施行して何とか心肺蘇生には成功したものの,全く原因に思い当たるものがなく,しかも多彩すぎるほど多彩な臨床症状で家族に説明するにもはたと困ってしまった.
1.高齢者本人に眠剤管理を任せるな
75歳男性,7年前SAH+V-Pシャント.20年前より肺気腫.ある朝昏睡状態で搬送.両側縮瞳.Flaccid.脳CT,EKG,CXR,血液ガス,CBC,血液生化学,TSHに新たな異常なし.IVH管理で経過観察とす.3日後覚醒し歩きだそうとす.問診にて不眠日が持続し搬送前夜ハルシオン7mg1度に服用したと判明.昼食も平らげ,素知らぬ顔で独歩退院す.
大学病院で当直をしていたときのことである.急患があって救急外来に呼ばれ,処置をして病棟の仕事にとりかかろうとしていたとき,精神科の先生からちょうど同じときに救急外来を受診されたある患者さんの診察を依頼された.40歳の女性,当病院は初診で,紹介状もなく飛び込みで救急外来にやってきていた.さっそく診察しようと見にいくと,その患者は手足をばたばたさせて,「やめてくれー」,「帰るー」などとわめきちらして暴れていた.名前を聞いても,こちらを見て下さいと言っても,全く従うことができなかった.診察にならないので困ったが,とりあえず両手足を動かしているのだから麻痺はないであろうと判断し,瞳孔など脳神経系と深部腱反射も正常なのを確認し,「局所神経症状はないようですね,心因反応ですかねー?」と言ってその場を離れた.
ところが後にその精神科の先生から再びその患者依頼を受け,どうも脳梗塞らしいからもう一度見てくれといわれた.そんなはずはと思ったが,CTスキャンでは両側後頭葉,側頭葉にかなり大きい脳梗塞があり,視中枢の障害で眼が見えなくなる,いわゆる皮質盲の状態と考えられた.「こちらを見て」と言っても無理なわけである.精神症状も側頭葉などの病変のためと思われた.さらに家族からよく話を聞くと,もやもや病で他の病院に入院したことがあるとわかった.診察前にもやもや病であることや発症前後の様子がわかっていれば,もう少し別の見方ができたかも……と専門医として恥ずかしい思いをした.
こわい先輩がいる.その瞬間に何を考え,何が必要と判断し,持てる技術をすぐに実行できるかどうかが重要で,そこで内科医の真価が問われるのだといつも言っていた.
1995年のとある土曜日夕方,Y町立病院から電話があった.67歳の女性が敗血症性ショックによる多臓器不全になり危篤状態となっているので移送したいとのことだった.その日の救急当番であった私は,勤務時間をあと30分残すだけの時間であったが渋々移送を承諾した.そしていざ患者が到着してみると,患者は抜き差しならぬ状態で傾眠傾向であった.昇圧剤はドパミン20μg/kg/minが投与されていたが血圧は50mmHg台であり,もちろん無尿,ICUのベッドに移すときには徐脈になり心肺停止にならんばかりであった.
レジオネラ肺炎は進行が早く,早期診断・早期治療が行われないと死亡率が高い.最近では尿中抗原検出法,PCR法などが有用とされているが,一番重要なことは,主治医が発症早期に鑑別診断に本症をあげることである.
症例は60歳男性で境界型糖尿病がある.平成3年9月5日出張先の老朽化したホテルに宿泊した.9月7日より発熱,歩行障害出現,9月8日咳嗽出現.当院救急外来で左肺炎の診断でCTMの点滴受けるも改善せず,9月9日入院した.飲酒歴は連日2合であった.入院時胸部X線写真(右図)で肺炎の急速な悪化と胸水の存在が疑われた.白血球数5,100/mm3であったがCRP50.7mg/dlと著増していた.動脈血血液ガス分析では室内気でPO2が38.6mmHgと著明な低酸素血症を認めた,肝機能障害(GPT72IU/l,T. Bil2.2mg/dl)と低P血症(1.0mg/dl)もみられた.喀疾培養では有意な細菌は検出されなかった.入院後,重症肺炎の診断にてIPM/CS,MINOの治療を開始するも効果なく,9月9日よりせん妄状態が出現した.9月11日には胸部X線上陰影は左肺全体に及んだ.9月12日より旅行歴,宿泊歴,精神症状よりレジオネラ肺炎を強く疑い,エリスロマイシン1g/日の併用と抗炎症作用を目的として水溶性プレドニン®50mgを開始した.9月14日より胸部X線の改善がみられ,9月15日には意識も清明となった.
呼吸器科の専門医が緊急な対応を要する患者さんのほとんどは,呼吸困難や喘鳴などを主訴にしています.
気管支喘息と心臓喘息はいずれも呼吸困難と喘鳴を認めますが,前者は気道の炎症で,後者は肺の循環障害です.ある日,夜中の呼び出しを受けた患者さんは63歳,女性で初診でした.強い呼吸困難を訴え,胸部X線では左肺野に肺炎様陰影,右上肺野に陳旧性肺結核による気管支拡張症を認めました.起座呼吸で低酸素血症と白血球増多があり,両胸部全体に著しい喘鳴を聴取しました.夜間の救急外来は直感に頼る場合が多く,陳旧性肺結核に肺炎が加わり喘息発作を起こしているのではないかと考えて,直ちに抗生剤,補液,ステロイド投与,β2刺激剤の吸入をしますが,一向に良くなりません.SaO2も80%から90%で,あえぐような呼吸は悪化していきました.
原因不明のイレウスで腹部以外の症状が診断のきっかけとなった症例を紹介する.
症例は89歳女性.腹痛と嘔吐で来院した.2日前から嘔吐が持続,排ガス,排便がなく典型的なイレウス症状を呈していた.腹部単純X線では拡張した小腸ガスと著明なNiveau形成がみられた.輸液を開始し,イレウス管を挿入した.ここでイレウスは間違いないとして,その原因は何なのだろうと考えた.手術歴はなく癒着性のものは考えにくい.腫瘍の可能性,腫重積などの機械的な閉塞も考えた.また,入院時より左側の股関節から大腿部にかけての痛みを訴え,鼠径ヘルニア,大腿ヘルニアを疑ったが,鼠径部に腫瘤は認めなかった.外科的処置が必要ではと考え外科のドクターに相談したところ,大腿部の痛みはHowship-Romberg signであり,閉鎖孔ヘルニアの疑いがあるとの返答であった.CTにて恥骨筋の下側に閉鎖孔ヘルニアの腫瘤が確認され,緊急手術となった.回腸がRichter型嵌頓をきたしていたが,壊死はなく無事整復は終了した.