内科エマージェンシー 私の経験
ある意識喪失患者の問診
鈴木 悦郎
1
1塩山市民病院内科
pp.65
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907054
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真夏の猛暑の日にライトバンを運転中の35歳男性が,頭痛に引き続き意識もうろうとなり電柱に激突し救急車にて搬送された.既往として特記すべきこともなく,来院時,意識清明で,自覚症状もなくバイタルサインや身体所見,神経学的所見も異常なし,炎天下の運転ながら熱中症を思わせるような体温の変化や血液生化学的な異常もなく,MRIや脳波も異常なかった.原因がわからず困っていたところ,事故の状況を捜査した警察署より,ライトバンの積み荷に二酸化炭素のボンベが数本あり,そのうちの1本のボンベの栓のネジがゆるんでいた旨の連絡があり,密閉された車内に二酸化炭素が充満したために,意識もうろうとなり事故に至ったものと判明した.よくよく本人に聞いてみると彼の職種は食品関係の営業で,生ビール用の二酸化炭素のボンベをよく運ぶとのこと.ライトバンの積み荷のことまで詳しく問診していれば迅速な診断が下せたと反省する一方で,問診のとりかたの難しさを痛感したエピソードであった.
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