内科エマージェンシー 私の経験
乳幼児,夜泣きのむこうに
橋本 健一
1
1筑波大学臨床医学系呼吸器内科
pp.228
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907111
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ある地域の中核病院にいたときの話である.深夜も零時になろうという頃,他院から患者が紹介されてきた.「生後6カ月の子供が夜泣きして泣き止まない」のだという.子供は声を張り上げて泣いている.泣き止まない.確かに普通ではない.母親によるとおかしな様子もなかったが,2時間ほど前から泣き始めて泣き続けているのだという.発熱はない.上気道炎症状も認めない.下痢なし,便秘なし,嘔吐なし.項部硬直もない.腹壁緊張はなく,筋性防御もない.腹部に腫瘤も触知しない.さてどうするか?
特異的所見に乏しいので子供が夜泣きする原因になるものを鑑別することにした.候補は次々に否定され,一つだけ否定しきれないものが残った.「腸重積」である.しかし,好発年齢ではあるが嘔吐なく腹部腫瘤触れずDance徴候もない.腹部膨満もはっきりしない.ただ,腹部触診で少し体を逃げるように動かすしぐさがみられこれを腹痛と考え,浣腸で便を確認することにした,便はやや軟の黄色で肉眼的血液付着はない.しかし,便潜血反応をみると3+以上の強陽性である.末梢血白血球は軽度増加,腹部X線撮影に特異的所見なし.典型的所見は揃わない.しかし疑わしい所見が確認され,他に考えられる疾患も見当たらない.早速,小児科に連絡をとった.改めて診察と腹部超音波検査が行われたが前述の所見以外は確認されず,小児科としても現状では確診できないという.しかし,確かに疑いありということでバリウム注腸を緊急で実施することになった.
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