内科エマージェンシー 私の経験
肝硬変・左心房内血栓に上腸間膜動脈塞栓を合併した一例
加藤 佳央
1
1神奈川県立足柄上病院内科
pp.273
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907129
- 有料閲覧
- 文献概要
患者は54歳の男性で肝硬変・心房細動に左心房内血栓を合併し外来経過観察中であった.平成7年1月1日夕食時に食事とともに飲酒,午後9時頃より,嘔気・嘔吐,上腹部痛が出現し治まらないため,午後11時当料に急患受診した.腹部X線上右中腹部に軽度のniveauがあり,イレウスの診断にて入院したが,腹痛・嘔吐が持続するため上部消化管内視鏡を施行した.食道静脈瘤,AGML所見を認めたが,胃内に血液貯留は認めなかった.その後,1月2日午前8時頃より下血が始まり,腹部CTを施行したが,血管閉塞所見は認めていない.大腸内視鏡にても,大腸内に血液貯留があったが,粘膜面に異常所見はなかった.その後も下血が持続するため,経過より上腸間膜動脈塞栓を疑い腹部血管撮影を行い,上腸間膜動脈末梢に急性閉塞によると思われる欠損像を認めた.PGE1動注後,外科にて手術を施行した.術中所見では,回腸末端から盲腸にかけて浮腫状ではあったが,肉眼上血行動態は良好と判断し閉腹した.後日施行した再血管造影では,血管閉塞部は再開通していた.
内科医にとって,上腸間膜動脈の急性閉塞を診断した場合,手術を選択しないことは勇気のいることであるが,振り返ってみると厳重な管理のもとに経過をみれば手術を回避できた症例かもしれないと思っている.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.