内科エマージェンシー 私の経験
クリーゼで来院した副腎褐色細胞腫の患者
今中 基雄
1
1大阪赤十字病院呼吸器科
pp.436
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907196
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38歳の女性が,9月12日の夕方から出現持続する嘔気・嘔吐を訴え,同日深夜救急外来を訪れた.診察中も嘔気・嘔吐を繰り返し,胸内苦悶感を訴えた.皮膚は冷たく湿潤し,120回/minの頻脈と200/150の高血圧を認めた.左上腹部に圧痛を伴う手挙大の腫瘤を触知した.
同様の胸内苦悶感や頭痛が5年前から時々出現していたが,家業多忙のため受診したことはなかった.この症例は後から考えると典型的な褐色細胞腫のクリーゼで,問診や身体所見から容易に診断できたはずだが,当時は激しい嘔気.嘔吐に目を奪われ,食中毒などの消化器疾患を疑った.異常な高血圧を不審に思ったものの,そのコントロールにだけ注意を払い,原因としての褐色細胞腫を思いついたのは数日後であった.その後,腹部エコー,CTで左副腎腫瘍を確認し,血中・尿中カテコラミンの異常高値を証明し,内分泌学的負荷検査を行ったのち外科に紹介した.2カ月後手術を行い,病理学的に左副腎褐色細胞腫と診断確定した.あわただしい救急外来の現場であったとはいえ,病歴や身体所見の重要なサインを見すごしてしまい,検査所見に頼ろうとしたため,典型例にもわわからず診断できなかったことを反省している.
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