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期外収縮は健常者にもみられることがある不整脈であり,予後良好な例が多いが,心疾患の初期兆候として,あるいは悪化に伴って生じることもあり,また稀ではあるが,心臓の構造的あるいは電気的な異常を有する例の一部では,致命的な不整脈に移行する危険性もある.したがって,期外収縮が認められた際には心臓精査が必須であり,期外収縮に基づく不快な症状を伴う例,あるいは重篤な不整脈への移行が懸念される例が治療の対象となる.予後良好と判断されれば,不安感を取り除くことが重要である.
ここで取り上げる不整脈,上室頻拍・心室頻拍はともに発作性に出現することがほとんどである.そのため,患者にとっては非発作時には治ったものと考え違いをすることもしばしばである.しかし,基礎心疾患を有する心室頻拍は再発が即命取り(突然死)になる場合もあり,病態を丁寧に説明すると同時に,患者自ら疾患についての誤解を解き,治療に協力していただくことが重要である.
心房細動および心房粗動は致死的な不整脈ではないが,これによる頻脈が持続すると心不全が生じやすく,60歳未満でも高血圧,糖尿病,心機能低下,一過性脳虚血発作や脳梗塞の既往のどれかがあれば,脳梗塞を発症しやすい.これらの危険因子のある例や60歳以上の心房細動例では,脳梗塞予防のためのワルファリンを服用し,INRを2.0前後に保つ.心拍数が130/分以上の例では,房室結節伝導を抑制して心拍数の調節を行う.
洞機能不全症候群(SSS)の自覚症状は徐脈の程度と合併する心機能障害により異なり,無症状の例からめまいや立ちくらみ,失神発作などの脳虚血症状を示す例,さらには倦怠感や呼吸困難などの心不全症状を示す例まで多様である.本症候群の診断において重要なことは,これらの症状が徐脈により説明可能かどうか個々の例で慎重に判断することである.治療においては薬物治療は効果が不安定であり,ガイドラインに準じたペースメーカー治療が推奨される.
房室ブロックは,無症状のものから失神を繰り返し緊急にペースメーカー植え込みが必要なものまでさまざまである.強い症状を伴う例ではペースメーカー治療は必要不可欠であるが,医療機器の植え込みに懸念を示す患者も少なくない.また,器質的心疾患を伴うものが多く,房室ブロックのみならず基礎疾患に対する治療を同時に進めていく必要があること,またペースメーカー植え込みの際の合併症,定期検診の重要性,日常生活における留意点など正確に理解してもらうことが肝要である.
狭心症は,動脈硬化もしくは冠攣縮により,心筋における酸素の供給と需要の不均衡によって生じる.狭心症の治療は,薬物療法を基本に経カテーテル治療や冠動脈バイパス手術などが選択される.療養指導は,発作の予防を考慮し,冠危険因子のコントロールを含めた生活習慣の改善が必須であることを,患者に説明することが重要である.
冠動脈粥腫の破綻とそれに伴い冠動脈内に血栓形成を引き起こす病態を,急性冠症候群と呼んでいるが,このなかに一部の不安定狭心症,急性心筋梗塞,虚血性心臓突然死が含まれている.不安定狭心症は,安定狭心症に比べて急性心筋梗塞へ進展する頻度が高いため,鑑別診断とリスク層別が重要であり,暫定診断下に治療を開始しなければならない場合もある.
急性心筋梗塞は突然の発症例が多く,また,重篤な合併症をきたすことがあり,入院初期に病態や併発症やその対応などについて,十分に説明しておく必要がある.疾患そのものが,完治するものではなく,慢性期の療養が必要である.退院後も,心不全や不整脈などの併発症の治療や予防に加え,心筋梗塞の再発予防も重要となる.再発予防では,各種薬物療法に加え,禁煙,食事療法,運動療法など,患者本人の生活習慣の改善の意義が大きい.
これだけは説明しておきたい病気のはなし
心不全は単一の疾患ではなく,さまざまな心臓病が原因で起こる一連の病態,つまり症候群である.
放置すると予後が不良である.
主な症状はうっ血に基づく労作時息切れや下腿の浮腫,心拍出量の低下に基づく倦怠感や精神症状などである.
感染性心内膜炎とは細菌または真菌などの病原微生物が心臓の内膜に炎症を起こして,組織を破壊し弁膜に疣腫を形成する病気である.心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしており,その大元に感染巣があるので,局所の炎症による弁膜の破壊のみならず,全身にその感染を播種させうることになり重篤な病態を形成する.いまだに診断の遅れから死亡する例もあり,正しい認識が必要である.何よりも予防が第1であるので,基礎心疾患例に対する教育が重要である.
労作時呼吸困難感や動悸を訴えて受診した場合,特徴的聴診所見を聴取すれば診断できる.大動脈弁,僧帽弁いずれにおいても,左室に対する容量負荷から心不全の原因となるが,病態はやや異なる.大動脈弁閉鎖不全症では,拡張期血圧の低下のため,冠循環障害も合併して心筋のダメージが大きい.僧帽弁閉鎖不全症では,心房細動の合併によって左房内に血栓を生じ,脳梗塞などの塞栓症を併発する可能性について説明しておく.心エコー法によれば弁逆流の成因の診断,重症度の評価および治療方針の決定に至る幅広い評価が可能であり,左室駆出率の低下や左室収縮末期径の拡大が術後の予後予測因子となる.急性発症の場合,いずれにおいても比較的急速に左心不全症状を呈するため,緊急あるいは準緊急手術となる例が多い.
成人における狭窄性弁膜症としては大動脈弁狭窄症と僧帽弁狭窄症が挙げられる.リウマチ性の弁膜症が減少する一方で高齢化による加齢性変化や動脈硬化症に伴う弁膜症が増加してきている.いずれの弁膜症も根本的治療は外科的ないし機械的療法となるため,その診断,手術適応と時期を評価することがポイントとなる.
肥大型心筋症は原発性の心室肥大をきす心筋疾患である.無症状で経過する症例も少なくないが,心房細動併発に伴う脳梗塞や拡張相に移行して心不全に陥る症例もある.また,ある種の肥大心では,致死性の不整脈を惹起して突然死することがある.約半数の症例で家族歴があるとされ,遺伝の関与が明らかにされつつある.医師としては,病態を丁寧に説明すると同時に,親族内の突然死を確認しておくことは特に重要である.また遺伝性の疾患であることから,家族歴の聞き取りに際し,患者本人および家族(配偶者)に十分な配慮が必要である.
拡張型心筋症は,原因不明で予後不良の難治性疾患であるが,近年の治療法の進歩により長期予後は改善しつつある.初期診断および経過観察には,心エコー検査と血中BNP測定が有用であるが,確定診断のためには冠動脈造影と心筋生検が必要である.薬物治療はβしゃ断薬とアンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を基本とし,病態に応じて追加の薬物療法および非薬物療法を考慮する.非薬物療法としては,運動療法,植え込み型除細動器,心室再同期療法,僧帽弁形成術,左室補助人工心臓,心移植などがある.
心筋炎は,無症状・無徴候で推移するものが多い.しかし一部の患者の炎症が顕在化し,活動性心筋炎として臨床症状を呈する.いったん発症しても多くは治癒し,元通りの日常生活が送れるが,稀に心肺危機に陥ることがあるため,経時的変化に注意し,重症化を見逃さないことが必要である.
急性心膜炎は,ST上昇や劇的胸痛を伴うような典型的な症例に遭遇することは少ないが,心膜に炎症をきたし,心膜の炎症を示唆する所見を有しながら,原因がはっきりせず,自然に軽快する症例は稀ではない.2週間以内に自然に治れば,急性心膜炎と診断するという原則を堅持しつつ,患者には経過を説明していくことがポイントである.そして,急性心膜炎はきわめて予後がよい疾患であると話して安心させることも重要である.
高血圧は患者数が3,400万人と最も頻度が高い疾患であり,加齢とともに増加する.65歳以上の高齢者では高血圧患者が60%に達する.脳血管障害,虚血性心疾患の重要な危険因子であり,心血管疾患予防のためにも高血圧管理が重要である.特に食塩摂取の多い本邦では,高血圧は生活習慣病の主要な地位を占めるが,生活習慣改善で管理・予防できることを医師も十分に理解し,患者にアドバイスすべきである.
低血圧は,原因不明の本態性低血圧と明らかな原因に基づく二次性(症候性)低血圧に分けられる.起立性低血圧や食後低血圧などの病態も存在する.低血圧の診断に正しい血圧測定は不可欠である.家庭における自己測定値や携帯型自動血圧計による測定結果も参考になる.治療には非薬物療法と薬物療法がある.治療対象となるのは,ふらつき,めまい,全身倦怠感などの症状があり,これらが低血圧に起因することが明らかな場合である.
検査結果から心臓には器質的異常はない.よって生命への危険はないことを強調する.発作は多くの場合短時間で必ず止まる.予期不安は発作を呼び,発作がさらなる不安を呼ぶと悪循環に陥る.不安と発作の悪循環をなくすためには,不安や発作が起こらない環境づくりが大切で,ストレス緩和と無理のない生活ペースの継続が大切である.治療には精神療法(疾患に対する認識)と同時に薬物療法が非常に有効である.
急性大動脈解離は急激に発症する生命の危険の高い疾患である.大動脈の解離に伴い心タンポナーデや大動脈の破裂などさまざまな症状を呈する.原因不明の胸痛や背部痛があれば常に念頭に置くべき疾患であるが,時に症状が典型的でなく診断が遅れることもあり注意を要する.診断には現在は造影CTが非常に重要な位置づけがされており,これにより分類される病型で外科的治療か内科治療かの方針まで決定される.内科的治療の場合は厳密な血圧コントロールと安静が基本である.
日本において,人口の高齢化,食生活の欧米化や運動不足など生活習慣の変化に伴い,動脈硬化性疾患が増加している.閉塞性動脈硬化症(ASO)は粥状硬化が関与している.また脳・心血管疾患など,他臓器の循環障害の合併頻度も多く,『全身の動脈硬化性血管病変の一部分症』と捉える必要がある.患者には末梢循環障害の改善のみではなく,他臓器疾患(脳梗塞,狭心症など)の精査,動脈硬化進展予防のためリスクファクターの管理,生活習慣の改善などについて説明が必要である.
下肢のむくみや腫脹を主訴にした外来患者あるいは入院患者のコンサルトを受けることは結構多い.それが片側性の場合には下肢の疾患を考える.鑑別診断には,蜂窩織炎,筋肉疾患,関節疾患,リンパ疾患,静脈疾患など多くの疾患があがるが,局所の理学的所見(色調変化,血栓部位圧痛,腓腹部の緊満感)にて静脈血栓症の鑑別は可能である.静脈血栓症が疑われたら,肺塞栓症が合併すれば致命的な場合もあることを説明し,早速に下肢静脈エコー検査にて静脈血栓症の確定診断をする.
胃食道逆流症(GERD)は良性疾患であり,患者自身,時として医師も病気として認識していないことがある.しかし,その症状の出現により著しいQOLの低下をきたしたり,食道炎に伴う貧血や食道狭窄,Barrett食道を併発する.多くが内科的治療でコントロール可能であるため,病態について十分説明のうえ,酸分泌抑制薬などによる薬物療法の遵守と生活習慣の改善を十分にカウンセリングすることが重要である.
食道癌は消化器癌のなかでも頻度が少なく,胃癌や大腸癌と比較しリンパ節転移をきたしやすい疾患である.治療法は進行度や全身状態により多岐にわたる.胸部食道癌の外科手術では頸部,胸部,腹部に及ぶ侵襲の大きな手術であり,合併症の頻度も高率である.また,化学放射線療法では,急性期の有害事象のみならず,晩期の有害事象による全身への影響が問題視されている.
急性胃炎は日常診療において最もよく遭遇する疾患の1つであり,特に日本人においては『胃が痛くて…』という症状は,よく聞かれるものである.一方,急性胃粘膜病変は激しい腹痛,嘔吐,吐血を主体とした急性疾患であり,重篤感を伴い,多くが入院治療を要する.いずれも胃腸,心身の安静を保つことと,潰瘍に準じた治療を行うことにより,速やかに数善するのが特徴である.
慢性胃炎とは内視鏡的・組織学的な胃炎とは区別され,上部消化管に明らかな器質的疾患がないにもかかわらず胃もたれ,心窩部灼熱感,心窩部痛,食後早期膨満感などの症状を訴える場合に用いられている.欧米ではnon-ulcer dyspepsia(NUD)やfunctional dyspepsia(FD)の病名で呼ばれ,本邦でも機能性胃腸症や機能性ジスペプシアなどが日本語病名の候補として挙げられている.
消化性潰瘍の主な原因はHelicobacter pylori感染と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)である.高齢化で腰痛や関節痛などに対するNSAIDsの投与に伴い,消化性潰瘍における高齢者の割合が増加している.さらに心血管イベント防止に用いられる低用量アスピリンは,特に潰瘍の既往のある場合は胃潰瘍の再発に注意が必要である.
ダンピングとは急速に墜落するという意味で,ダンピング症候群とは胃切除後に摂取した食物が急速に小腸内に入るために起こる症状である.食後20~30分以内に起こる早期症状(早期ダンピング)と,食後2~3時間で起こる後期症状(後期ダンピング)とがある.早期症状には,全身症状(冷汗,動機,めまいなど)と腹部症状(腹痛,下痢,悪心,嘔吐など),後期症状には冷汗,頻脈,全身倦怠感などの低血糖症状がある.胃切除後の食事摂取の仕方に注意することが重要である.
胃ポリープ・胃粘膜下腫瘍は,日常内視鏡診療において高頻度に遭遇する疾患群である.いずれの疾患群も隆起性病変であるが,経過観察とするものからすぐに治療を要するものまでさまざまな疾患が包括されている.しかし,「隆起性病変=癌」と考えている患者さんもいるのが現状である.患者さんの常識と,医療者の常識が乖離することがあるので丁寧な説明が必要である.
日本人の胃癌は胃癌をめぐる大きな流れにより胃癌もその宿主も変化してきた.粘膜癌から晩期癌までわれわれが接する胃癌は範囲が広く,検査法も治療法も専門化している.患者に対してのインフォームドコンセント(IC)は容易な仕事ではない.医学水準にもとらないICを行うためには胃癌ガイドラインを示しながら説明を行う必要がある.
潰瘍性大腸炎は,難病指定となっているとおり,患者にとってはその診断は非常に重いものとなる.罹病期間も一生続くことが多いため,医師としては,患者に上手に疾患と付き合っていくことができるよう支援することも必要となる.そのためには,病態を丁寧に説明すると同時に,患者自ら疾患をよく理解し療養することで,再燃を予防し,それまでと変わりのない日常生活が送れることをアドバイスすることも肝要である.
Crohn病は難病に指定され,原因不明で,根本的な治療法もない.器質性病変が蓄積し,やがて消化管機能不全に陥る危険性がある.新しい治療薬の出現により治療は向上しつつあるが,若年で発症し,一生続く病気なのでトータルなケアが必要であり,患者がポジティブに取り組めるよう支援したい.
慢性便秘症は長年にわたり症状が継続するため,日常生活上支障を感じることが多いが,概ね予後良好な疾患である.慢性便秘症は機能性便秘,症候性便秘,薬物性便秘,器質性便秘に大別され,その大多数は機能性便秘である.機能性便秘の誘因は,食習慣,生活習慣,社会環境に由来するものが多く,患者個々の病態の分析に基づいて時間をかけて説明し,理解を得ることが治療上最も大切な点である.薬物療法は,それぞれの病態に応じた適切な薬物を適宜使用するにとどめ,安易に長期投与することは避けるべきである.
感染性下痢症の多くは,健常人でみられるウイルス性下痢症のように,症状が比較的軽く,数日間で自然治癒することが多い.病院に訪れる患者は下痢,腹痛,嘔吐などの症状が強い場合,持続する場合,血便を伴う場合などである.内科医がしばしば遭遇する疾患であり,適切な問診と診察により病原体を絞り込み,何を検査すべきか,患者にどのように治療すればよいのか,何に注意しなければならないのかを的確に知っておく必要がある.
抗生物質関連性腸炎は,急性出血性大腸炎と偽膜性腸炎に大別される.高齢者に多い疾患とされ,診断が遅れると死に至ることもあり注意を要する.直腸中心の内視鏡検査で迅速に診断が可能である.また,ほとんどの症例で前処置は不要である.原因となった抗菌薬の中止や,メトロニダゾ-ル,バンコマイシンなどの内服で多くは治癒する.止痢薬,抗コリン薬などの腸管蠕動抑制薬は,中毒性巨大結腸症を誘発することもあり控える.
虚血性大腸炎は,腸管の一過性の血流低下と内圧の上昇による相対的な虚血状態により引き起こされる腸管の傷害であり,典型的な発症様式から診断は比較的容易である.本症は,従来,心・血管系の合併症を有する高齢者に好発すると考えられたが,近年,若年者にも発症することが報告されている.本症の診断には病歴から本症を疑い,早期の内視鏡検査を行うことが必要である.
過敏性腸症候群(IBS)は部位,症状を問わず,消化管機能と運動,知覚,中枢神経の生理学的関連,患者へのアプローチにおいて共通項をもつ広範囲の機能性胃腸障害群の1つで,排便の変化を伴う腹部の疼痛,違和感に特徴づけられる最も代表的な機能性腸障害である.精神的苦痛との相関性があり,患者独自の背景を認識し,良好な信頼関係のもとに診断と治療を進めることが大切である.
大腸憩室とは,大腸の腸管壁の一部が腸管外に向かって囊状に突出した状態をいう.大腸憩室の大部分は粘膜が筋層を貫いて発生した仮性憩室である.大腸憩室の有病者の80~85%は無症状のまま一生を終えるといわれており,憩室出血や憩室炎などの合併症を起こした場合にのみ治療が必要になる.
大腸ポリープは粘膜由来の限局性隆起の総称である.病理組織学的に良性腫瘍(腺腫),癌,非腫瘍性ポリープ(過形成性ポリープ,過誤腫性ポリープなど)がある.診断は病変の大きさ,形態などの内視鏡所見や生検病理結果に基づいて下される.患者へは治療の必要性の有無,治療方法,偶発症・合併症,治療後の生活指導などの説明を行う必要がある.
大腸癌は大腸,すなわち直腸,結腸および盲腸の上皮性悪性腫瘍であり,原発性と続発性に分けられる.原発性大腸癌は組織学的には比較的予後のよい高分化型腺癌が多いのが特徴的である.続発性大腸癌は他臓器の癌が浸潤・転移したものであり,終末期癌のことが多い.本稿では原則的に原発性大腸癌について記述する.
痔核は通常の生活のなかで発生し進行していく良性疾患で,便秘や下痢,その他の肛門への負担が原因と考えられている.さらに痔核は肛門を閉鎖するのに必要な正常構造が大きくなって症状をきたすようになったものであり,治療は患者の症状を軽減消失させることが主眼となる.治療は痔核のさまざまな種類,程度に最も適した方法を選択し行うが,そのためには肛門疾患の正確な診断法と治療法に精通することが必要である.
ほとんどの急性肝炎は,安静を守るだけで完治する.急性肝炎と判明したら医者は余分な薬を出さないこと,患者は民間薬に安易に走らないことを徹底したい.急性肝炎の2%が増悪し劇症肝炎となる.劇症化の懸念が消えるまでしっかりフォローすることが急性肝炎診療の根幹である.これまで健康で医者にかかることなど無縁だった急性肝炎の患者をつなぎ止める手段は,薬を出すことではなく,現状と検査の目的をはっきり説明し信頼感を得ることである.
劇症肝炎は肝炎ウイルスなどによる高度な肝細胞破壊のため,急性肝不全に陥った病態である.病型にもよるが,肝再生を認めない場合は致死的である.早期からの専門病院での加療が原則であり,専門医も移植医療を念頭に置き,移植外科との連携も重要である.
B型慢性肝炎は長期間の沈静化後に再燃を繰り返す症例がある反面,自然寛解傾向も強く,多彩な臨床経過をとることより,個々の症例に応じた慎重な治療法の選択が望まれる.従来のインターフェロン(IFN)療法だけでなく,ラミブジンをはじめとする核酸アナログ製剤が開発されて画期的な効果が得られ,ここ数年間で治療方法が大きく変化した.今後は若年者以外では核酸アナログ製剤の治療が中心となるが,耐性ウイルス獲得による肝炎の再燃,数年間にも及ぶ長期投与など多くの問題もあり,患者へのインフォームドコンセントはますます重要となる.
C型慢性肝炎は自覚症状に乏しいが,30年以上の長期経過で肝硬変や肝癌に至ることが多い.ALT軽度上昇や血小板数15×104/mm3未満によって慢性肝炎と診断されたら,専門医と連携して抗ウイルス療法を行うことが第一選択である.
自己免疫性肝炎(AIH)は,患者数が少なく,家庭医学書などにも記載が少ないため,患者は情報不足を感じる場合がある.したがって,病気の全体像に加えて,検査も治療もよく説明し,患者自身によく理解してもらうことが肝要である.再発・再燃を防ぎながら,病気と上手につきあっていくことを指導し,見守ることが大切である.非典型例や,肝硬変進展例では,合併症の診断・治療の説明に加えて,日常生活や食生活へのアドバイスも必要となる.
肝硬変における腹水は,黄疸,肝性脳症とともに肝不全症候の1つであり,非代償性肝硬変へ進展したことを意味する.腹水に関するエビデンスは比較的多く存在しており,国際的なガイドラインもある.標準的治療は塩分制限と利尿薬であり,薬剤としてはスピロノラクトンとフロセミドの併用が推奨されている.治療抵抗性の難治性腹水には,治療的腹水穿刺,経頸静脈的肝内門脈肝静脈短絡術,腹腔静脈短絡術,肝移植などの治療が有効である.
慢性肝不全の重要なサインではあるが,末期肝硬変と診断されるよりも早く,本徴候が出現するときは,シャント脳症を考える.また,肝性脳症が死因となることはほとんどなく,脳症を繰り返す患者への過度の食餌蛋白質の制限は,栄養状態悪化につながるため慎まなければならない.
門脈圧亢進症は臨床的には食道・胃・直腸静脈瘤と,肝性脳症や腹水などの問題に分かれる.静脈瘤では無症状ゆえに内視鏡画像などを示しながら,静脈瘤の成因や治療の必要性を十分に説明しなければならない.しかし,患者の心配は背景の肝硬変症やその原因に向かっている場合も多く,静脈瘤治療のみを説明しても十分なインフォームドコンセントとはいえない.一方,肝性脳症や腹水といった肝不全兆候を有する患者では,患者自身の苦痛だけでなく家族にも配慮し,病態の説明にとどまらず,対処方法などもフォローする.
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は中年女性に好発する慢性胆汁うっ滞性の自己免疫性肝疾患である.AMAが陽性であれば診断は比較的容易である.典型例は肝硬変・肝不全に至り,肝移植のよい適応となるが,無症候性のまま進行しない症例も多い.病名は「肝硬変」となっているが,診断時に肝硬変期に至っていない例が多いため,誤解のないよう説明する必要がある.特定疾患であり,症候性PBCに対しては医療費の一部が公費負担となる.
アルコール性肝障害は,脂肪肝から肝炎,肝線維症,肝硬変へ進展し,稀に肝癌の発症もみられる.患者はその病識に欠けていることが多く,飲酒問題を否認することも特徴的である.しかし,自分の現状と予後を認識することなしには,断酒の継続は難しい.また,断酒に協力することのできるキーパーソンを見つけることも肝要である.
肝細胞癌はC型またはB型慢性肝炎,肝硬変を合併した患者に高率に発生するため,癌の進行度だけでなく,肝機能も考慮したうえで治療法を選択することが重要である.また,根治的な治療を施しても再発率が高い癌であり,実際の臨床ではいくつかの治療法を組み合わせた集学的治療が行われている.再発や再燃を起こしやすく,治療を繰り返すことが多い疾患であることを患者に十分に説明し,肝細胞癌と立ち向かっていく姿勢が重要である.
胆石症と胆囊ポリープは,今日,腹部超音波検査(US)により高率に発見されている.胆石症は臨床的にQOLと予後の異なる5群に分類できる.そのうち,無症候性胆石症はQOLと生命予後が障害されていないため,原則無治療でよい.例外的に胆囊癌の高危険群では胆囊摘出術が推奨される.胆囊ポリープはUSによる大きさ,個数,エコー輝度,表面性状などから,コレステロールポリープ(CP)と腫瘍性病変(腺腫,癌)を鑑別する.大部分を占める前者は経過観察でよいが,癌や腺腫の可能性がある場合は,超音波内視鏡(EUS)などの精査を行い,胆囊摘出術を考慮する.
急性胆囊炎では,胆囊摘出術や胆囊ドレナージを考慮しながら,絶食にし,十分な輸液や鎮痛薬,抗菌薬の投与などの初期治療を行う.改善しない症例では,胆囊摘出術または胆囊ドレナージを行う.急性胆管炎では,放置すると急性閉塞性化膿性胆管炎から敗血症へと移行することがあり,迅速な診断を行い,胆道ドレナージまたは結石除去を積極的に行う.
重症急性膵炎は難治性疾患に指定されており,全身の臓器障害を伴う致死率がきわめて高い疾患である.エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドラインが本邦で作成されており,発症48時間以内の初期治療が救命には非常に重要である.発症初期に軽症でも後に重症化することもあり,病態の変化によっては,全身麻酔下の集中治療や外科治療が必要になる可能性があることも念頭に置くべきである.
慢性膵炎は現在の医療で完全な回復が困難であり,良性疾患であるにもかかわらず,腹痛,低栄養,糖尿病など,患者のQOLを大きく損なう問題も生じる.長い経過をたどり,病期により治療方針が変わるため,患者に病態を理解してもらい,適切な療養生活を送ってもらうよう支援することが重要である.また,膵癌をはじめとする癌の合併が多いため,定期検査の必要性を理解してもらうことも必要である.
膵臓は膵液を産生する腺房,アミラーゼなどの消化酵素を含んだ膵液を運ぶ膵管およびインスリンなどのホルモンを分泌する内分泌腺などからなるが,膵癌の約90%は膵管から発生する膵管癌であり,通常「膵癌」といえば膵管癌を指し,膵内分泌腫瘍,膵管内乳頭粘液性腫瘍などの稀な腫瘍とは区別される.一般に通常型膵癌(浸潤性膵管癌)の症状は背部痛や食思不振などの不定愁訴が多く,特異的な症状やスクリーニングに使用できるマーカーに乏しいため,診断が困難である.多くは来院時にすでに進行しており,わずか3割弱の症例にのみ外科的切除が適応となる.しかし,たとえ手術が行われた場合でも術後早期に再発することが多く,最も予後が不良な難治癌の1つである.
口内炎とは,全身的または局所的原因で生じた口腔粘膜の炎症をいう.アレルギー,自己免疫疾患,ビタミン欠乏症に伴い発症するもの,服用中の薬の副作用として生じるもの,結核や梅毒などの特異性炎の一症状として現れるもの,口腔内の火傷,外傷,あるいは義歯や歯牙の鋭縁による刺激,頭頸部癌の放射線・化学療法で起こるものなど,発症原因は多岐にわたる.発症頻度も高く,患者の自発的動機による受診以外にも口腔咽頭診察の際に発見することもある.したがって,専門医以外でも口内炎に遭遇する機会は多いため,適切な診断と治療法を知っておく必要がある.
片頭痛も緊張型頭痛も日常臨床の場で非常に多い頭痛である.片頭痛は疾患概念がはっきりしているのに対し,緊張型頭痛は不明確である.しかしいずれも長期にわたって出現する患者が多いので,単なる疼痛除去だけでなく,長期的予後を見据えて慢性疾患として対応する心構えが必要である.またいずれの頭痛も各種の環境などに外的要因が病状の強弱に影響することも多いので,投薬だけでなく,それらの点にも配慮した指導が必要である.
一過性脳虚血発作(TIA)は,虚血によって生じる脳局所の神経症状が短時間で消失するもので,診察時には異常所見を認めないことがほとんどであるが,半数以上は再発,梗塞化する.このため脳梗塞急性期に準じて入院のうえ,精査・治療を行う必要があることを説明する.発症機序に応じた抗血小板療法,抗凝固療法などが必要なため,十分な精査が行えないときは,脳卒中専門病院へ紹介する.
脳梗塞は急性発症の虚血性脳血管障害である.突然発症し,患者の多くは長期間の入院治療を必要とし,退院後も何らかの後遺症を残すことになる.入院による経済的損失だけでなく,患者やその家族の社会的役割の変化が,家庭全体に与える影響は大きい.患者説明時には,伝えるべき内容を一度にすべて伝えるのではなく,脳梗塞の治療段階,患者・家族の理解力と後遺症に対する受容度を見極めながら,段階的に説明を行うことが大切である.
近年,リスクファクターの管理により脳内出血による死亡率は急激に減少しているが,くも膜下出血は現在においても重篤な疾患であり,発生率も漸増している.脳内出血の外科治療の適応は,救命の目的以外には異論があるが,直径3cm以上の小脳出血は好適応である.くも膜下出血は,再破裂の防止が肝要であり,症例に応じて,クリッピング術,コイル塞栓術を選択する.
未破裂脳動脈瘤は成人の数%で発見され,これが破裂するとくも膜下出血となる.脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は働き盛りの壮年~中年をおそう重篤な病気であり,1/3は生命にかかわり,1/3は後遺症が残る.しかし,未破裂脳動脈瘤が破裂する確率は全体で1%弱とされ,瘤の大きさ,場所,形,年齢,家族歴,喫煙などにより確率が異なり,治療選択も複数あり,各患者に正確な情報を伝えることが肝要である.
社会の高齢化に伴い認知症患者が増加している.原因としてAlzheimer病と脳血管性認知症が多くみられるが,その他の治療可能な原因を検索することが重要である.根本的な治療は望めないが,早期診断・治療により症状増悪が抑制できる可能性がある.薬物療法には限界があるため,非薬物療法を積極的に取り入れる.病状や経過についての十分な説明を行い,患者・家族教育を進めることも重要である.
側頭動脈炎は側頭動脈をはじめとする頭頸部動脈に巨細胞性肉芽腫を伴う血管炎を生じる疾患である.副腎皮質ステロイド薬が有効である半面,治療のタイミングを逸すると大きな後遺症を残すこともあるので,常に念頭に置いておきたい疾患である.
基本的には予後良好な疾患であるが,何らかの自他覚症状の後遺症を残す例は約30%もあり,10%には重度の後遺症が残存する.死亡例も2~3%にみられる.特に軸索型は重症化しやすく,回復も遅延し後遺症を残す例が多い.Guillain-Barré症候群は従来から予後良好な疾患の印象が強いが,機能予後は決して良好でないことは十分に説明する必要がある.Guillain-Barré症候群における予後不良因子として,①高齢発症,②四肢完全麻痺が急速に完成,③発症初期から呼吸器装着が必要,④複合筋活動電位の著明な低下(20%以下),⑤急性運動感覚軸索型,⑥専門医への搬送が遅れる,などが挙げられる5).再発率は2~3%とされる.
Parkinson病は神経難病のひとつで,説明してもすぐには疾患概念を理解するのは困難である.多忙な外来での説明は誤解を生じやすく,患者や家族には特別に時間をとっての説明が必要であろう.場合により,訪問看護師やケアマネジャーの同席も患者の許可を得て考慮したい.また,Parkinson病治療薬はさまざまなものが導入されてきており,症状コントロールについて希望を失わないように伝えることが必要である.
Bell麻痺は急性発症の末梢性顔面神経麻痺をきたす原因不明の疾患である.予後は一般に良好であるが,時に後遺症を残し,機能障害のみならず精神的苦痛をも与えうることから,回復率の向上や後遺症の軽減のために治療が必要となる.末梢性顔面神経麻痺の過半数は本症によるものであるが,鑑別疾患は多岐にわたり,それぞれ治療法や予後が異なることから,適切な診療プロセスを理解しておく必要がある.
てんかんは比較的よく目にする疾患であり,多くの場合は抗てんかん薬で良好にコントロールできる.しかし,コントロールがうまくいかない場合や,何らかの合併症を有する場合は専門医に委ねる必要がある.最近,日本神経学会や日本てんかん学会などから診断・治療のガイドラインが発表されており,それらに準じて以下を記載していきたい.
肺炎については,発症した環境により,原因微生物をある程度推定できるという経験的事実に基づいて,以下のように分類することが一般的となっている.すなわち,市中肺炎(市中生活者に発症した肺炎)と院内肺炎(入院患者に入院後48時間ないし72時間以降に発症した肺炎,ただし潜伏期間から考えて病院外での感染が明らかな場合はこれに含めない)である.院内肺炎の大半は,患者は,入院が必要な基礎疾患を有していること,および原因微生物として,病院環境に生息している微生物の関与が大きい,という特徴がある.このように,市中肺炎と院内肺炎の間には,患者背景,原因微生物に明らかな違いがあるため,患者に対する説明時の注意点やポイントも異なってくる.本稿では市中肺炎に関して記載する.
“「肺炎」という病気”は一般によく認識されており,急性期の高齢な患者に疫学データや疾患概念を説明することはまずない.しかし,肺炎の程度やその後の予測される経過に関する説明は必須であり,基礎疾患によっては肺炎が重症化しやすいことや,肺炎によって糖尿病や心不全などの基礎疾患が一時的に悪化する可能性についても言及しておく.あらかじめ気管内挿管・人工呼吸管理に関する意向を尋ねておくことも高齢者医療では求められる.
異型肺炎とは,定型的な細菌性肺炎と異なる臨床所見,血液学的所見,画像所見を呈する肺炎をいう.原因病原体としては,マイコプラズマ,クラミジア,レジオネラ,コクシエラ,ウイルスなどが含まれる.本稿では,異型肺炎の特徴,診断法,治療法について概略を述べる.
わが国は先進国にもかかわらず,法定伝染病の結核は現在でも高率にみられる.結核の治療期間は最短でも6カ月を要し,排菌者は感染性の高い期間は入院が必要であること,さまざまな点で患者の負担は大きいが,結核予防法下に医療費の補助がなされることなどを説明する.また,結核は適切な治療をすれば完治しうるが,治療が不十分だと耐性化して遷延化しやすいことを説明し,その後もことあるごとに注意を喚起する.
気管支喘息はガイドラインにより,気道閉塞と気道炎症により特徴づけられている。また,気道閉塞は軽度のものから致死的なものまで存在し,自然または治療により可逆的である.安静時には症状を認めないが,発作時には咳・痰・呼吸困難・喘鳴の症状を特徴とする.治療は,以前は苦しい発作を鎮めることが中心であったが,最近では,吸入ステロイド薬により,発作を起こさないようにコントロールすることに重点がおかれている.
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,たばこ・大気汚染などが原因で気道に炎症を起こし,非可逆性の気流閉塞が進行性にみられる疾患である.従来は慢性気管支炎と肺気腫と呼ばれてきたもので,咳・痰・労作時の呼吸困難を訴える.治療で大切なことは,禁煙・気管支拡張薬・インフルエンザワクチン接種を基本として,栄養療法,下肢を中心にした運動療法を継続的に実施し,急性増悪を未然に防ぐ自己管理能力を身につけることである.
気管支拡張症は,気管支壁が炎症などで壊れて限局性あるいはびまん性に不可逆的に拡張した状態で,そこに痰が溜まって,慢性的に感染が起こりやすい状態になっている.副鼻腔炎を伴うことも多い.症状としては,咳嗽・喀痰のほかに血痰・喀血もよくみられる.多量の痰を上手に出し,気管支に起きている炎症を抑えることが治療のポイントである.この気管支拡張症は独立した疾患ではなく,さまざまな疾患に付随した病態である.
特発性間質性肺炎(IIPs)は原因不明の疾患であり,診断においては原因の明らかなびまん性肺疾患を除外することが重要である.IIPsには複数の疾患が含まれるが,最多とされる特発性肺線維症(IPF)は進行性・治療抵抗性で予後がきわめて不良である.一般になじみのない病名であるので,十分時間をかけて説明を行う必要がある.
過敏性肺炎は吸入抗原によるアレルギー性疾患であり,真菌,細菌,鳥糞・羽毛,キノコ胞子などが原因となる.肺感染症ではないので抗菌薬や抗真菌薬は使用されず,抗原からの回避が重要となる.本邦においては住居の真菌(トリコスポロン)により発症する夏型過敏性肺炎が最多であるが,治療においては住居の環境改善が必要となる.鳥関連抗原が原因となる過敏性肺炎は慢性発症することが多く,進行期には特発性間質性肺炎との鑑別が困難である.同じ環境であっても過敏性肺炎を発症する人は限られており,病気についての理解が得にくい場合がある.
サルコイドーシス(sarcoidosis)は類上皮細胞を主体とする肉芽腫病変が肺,皮膚,眼,神経・筋,肝臓,心臓やリンパ組織など各種臓器に起こる原因不明の慢性疾患である.何らかの外因と,肉芽腫ができやすい(ないし持続しやすい)宿主側要因の両者が相まって起こるものと思われるが,その発症機序は明らかでない.典型例では胸部X線写真で両側肺門リンパ節腫脹(BHL)を認めるので呼吸器科医が診療にあたることが多いが,元来,全身性疾患なので,各科専門医と連携して診療にあたる必要がある1,2).
既存の疾患がなく心因的な要因で発症する(いわゆる)過換気症候群では,診断は容易である.呼吸困難感を伴い頻呼吸を呈し,動脈血液ガス分析では炭酸ガス分圧(PaCO2)は低下し,アルカローシスとなる.PaO2は100 Torr以上となる.治療は自分の呼気中の炭酸ガス(CO2)を吸入する紙袋再呼吸法(paper bag rebreathing)が有用であるが,心身医学的なアプローチを要することが多い.
急性肺損傷(ALI)および急性呼吸窮迫(促迫)症候群(ARDS)は,何らかの基礎疾患の経過中に急性に発症し,治療抵抗性の呼吸不全および胸部画像上両側肺に浸潤影を呈する疾患である.左心不全は否定される.ALIとARDSは同じ疾患概念であり,ALIの重症型がARDSである.PaO2/FlO2(P/F比)が300以下をALI,200以下をARDSと定義する.基礎疾患として頻度の多いのは肺炎や敗血症である.本症の基本病態は肺血管透過性亢進型肺水腫であり,全身性炎症反応症候群(SIRS)に基づく多臓器不全の一症状であるとされている.本症の発生機序は十分に解明されていない.したがって,根本的な治療法がなく死亡率が高い.最近,低容量人工換気療法,重症敗血症に対してヒト活性型プロテインC,好中球エラスターゼ阻害薬が多数例による多施設臨床試験で有用性が確認された.
肺塞栓症・肺梗塞は見逃されることが多く,適切な治療が早急に行われなかった場合は予後が悪い疾患である.確定診断をつけることが難しい場合もあり,医師は診断の方法やその限界について丁寧な説明をすることが求められる.急性期には侵襲的な治療を要することがあるために,その利益と危険性について十分な説明を行う必要がある.急性期を過ぎてからも抗凝固薬の内服を継続することが多く,服薬上の注意点を十分に説明することも重要である.
胸膜炎の原因は多岐にわたり,膿胸など迅速な対応を迫られるものも少なくない.診断確定のため胸腔穿刺を必要とする場合がほとんどである.穿刺の必要性,合併症の生じる可能性などについて丁寧な説明が必要である.
膿胸は抗菌薬のみでは治療が困難であり,ドレナージや外科的処置を要する.発症の背景に糖尿病や悪性疾患などの基礎疾患が潜んでいることがあり,これらの検索および治療を同時に行わなければならない.誤嚥の関与も多く,食生活や口腔ケアなどを本人,家族とよく相談・検討して再発予防に努める必要がある.
気胸は突然の胸痛や呼吸困難で発症し,場合によっては早急に処置を必要とする救急疾患の1つである.特に緊張性気胸や血気胸は非常に重篤な病態であり,直ちに緊急処置や手術が行われないと生命が脅かされることもある.医師は病状を丁寧に説明したうえで,場合によっては至急に処置が必要であることを説明する必要がある.また,しばしば再発を起こすことがあるために,治癒した後も胸痛などの自覚症状が再度出現した場合はすぐに医療機関を受診するように説明するべきである.
睡眠時無呼吸症候群(SAS)には閉塞型SASとチェーンストークス型呼吸が代表的な中枢型SASがある(図1).閉塞型SASの診断には睡眠1時間当たり5回以上の睡眠時無呼吸・低呼吸と臨床症状が必要である.いずれのSASも重症になると予後が悪化すると報告されている.重症閉塞型SASに関連して発症した脳・心血管障害による予後の悪化は持続気道陽圧(CPAP)療法にて防止できる.CPAP療法は根本的な治療法ではないが,臨床症状の改善と,重症患者では予後も改善が期待できる治療法なので,通常1日4時間以上使用するようにきめ細かい指導と管理が重要である.
肺癌は頻度が高く予後が悪い疾患である.症状が出にくく,初診時に約70%の患者はすでに治癒的な治療ができない病期にある.非小細胞肺癌で切除可能な場合には外科的治療を中心に治療していき,小細胞肺癌では化学療法を中心に治療を行っていくが,大部分の患者において治癒は望めず,治療中における社会復帰や在宅での看護体制・終末期医療をどうするかを患者本人と十分に相談しながら診療を進めていくことが大事である.
・アスベストに関連した所見・疾患としては胸膜斑,アスベスト肺(石綿肺),良性胸膜炎/びまん性胸膜肥厚,肺癌,中皮腫がある.
・アスベスト曝露には職業性・環境性の曝露があり,多くのアスベスト関連疾患は潜伏期間が長く,曝露をはっきりさせることが難しいことが多い.原因不明の胸水・肺線維症・肺癌などの診療においては,常にアスベスト関連疾患の可能性を念頭に置く必要がある.
最も頻度の高い貧血であり,鉄(Fe)の補充で治癒する疾患である.鉄欠乏性貧血の診断には,小球性低色素性貧血,血清鉄低下のほか,必ず貯蔵鉄マーカーである血清フェリチン値の低下を確認する必要がある.成人女性では子宮筋腫や子宮内膜症による月経過多が原因であることが多く,婦人科的診察が必要であるほか,中高年で発症した鉄欠乏性貧血では,胃・大腸癌の初発症状であることもあるため消化管のスクリーニング検査が必要である.
悪性貧血とは,主に抗内因子抗体や抗壁細胞抗体などの出現による自己免疫現象を原因とする慢性萎縮性胃炎に伴いビタミンB12の吸収不全が起こり,ビタミンB12欠乏症としての巨赤芽球性貧血,消化器症状,および神経症状を示す疾患である.大球性貧血,過分葉好中球を伴う汎血球減少症,LDH高値,間接ビリルビン高値,ハプトグロビン低値で本症を疑う.ビタミンB12製剤筋注の補充療法を週2~3回実施する.投与後1週間で網状赤血球の増加,3週でヘモグロビンの増加と倦怠感などの消失が認められる.貧血が改善したら2~3カ月に1回の補充療法を生涯にわたって行う.
再生不良性貧血は末梢血の汎血球減少と骨髄の低形成を主体とする疾患である.近年,免疫抑制療法により再生不良性貧血の治療成績は向上しているが,罹病期間が長く,輸血や免疫抑制薬の副作用も認められるため,患者自身が病気の本態,治療効果,副作用を十分理解したうえで治療を行うことが重要となる.
貧血と黄疸を主症状とする疾患で罹患期間は長期にわたる.温式抗体による慢性特発性例の標準治療は副腎皮質ステロイド薬であり,冷式抗体によるものには同薬はほとんど無効である.副腎皮質ステロイド薬に伴う合併症のなかで感染症には特に注意を払う必要があり,高齢者では治療関連死亡率は高くなる.無形成クリーゼにより貧血が急速に進行し生命を脅かされることがある.輸血の適応は不適合輸血になるリスクを考慮し,慎重に判断する必要がある.
多血症は,その原因により絶対的および相対的赤血球増加症に分類される.絶対的赤血球増加症のなかでも真性多血症は,造血幹細胞の腫瘍性増殖によるもので,本邦での頻度は低いが,血栓症のリスクや,骨髄線維症および急性白血病発症の可能性を常に念頭に置かなくてはならない.そのため,患者には診断時より十分な説明を行い,来院しなくなることのないように,瀉血や化学療法を施行しながら,長期経過を慎重にみる必要がある.
慢性骨髄性白血病の診療は,特効薬であるメシル酸イマチニブの登場によって近年劇的に変化した.しかしながら,まだ市販後数年しか経過しておらず,今後長期にわたるエビデンスの蓄積が必要である.患者に対してはイマチニブの最新の知見や継続内服の必要性,また薬剤の副作用などを適宜示しつつ,病期が進行した場合には造血幹細胞移植など治療変更が必要となることについても十分な説明を行う.治療成績は大きく向上したとはいえ,いずれの治療法が選択された場合でも長期にわたる通院と内服が必要とされる造血器悪性疾患である.医師の側からの積極的な情報開示と,時に総合相談室や看護部とも連携したチームワーク医療が求められる.
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は急性型と慢性型に分類されるが,慢性ITPで血小板数5万/μl以下の場合は治療適応となる.治療の選択肢としては,Helicobacter pylori除菌療法,副腎皮質ステロイド薬,脾臓摘出術などがあるが,血小板数,出血傾向,ライフスタイルや合併症などにより総合的に治療方針を決定する.治療の目的は出血症状の改善,重篤な出血の予防であり,治療による長期的な副作用まで注意することが必要である.
骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞の単クローン性造血障害である.これは造血細胞の形態異常(異形成)という共通項でまとめられたもの─あり.症状や予後などの臨床的側面からは不均一な症候群である.治療法や予後とも関連するMDSの病型診断はきわめて重要であり,病型を含めてよく説明する.外来患者では血球減少が前面に立つことが多く,感染症予防,出血予防,心不全などの貧血症状のケアなど長期的に管理することが必要である.
悪性リンパ腫に対しては,従来の化学療法,放射線療法に加えて,モノクローナル抗体による分子標的療法,造血幹細胞移植が加わり,患者に対する疾患概念や治療の説明も年々進化している.一方,治療期間が長期にわたる特徴があり,入院治療が必要となることもしばしばである.したがって,患者のみでなく,家族の生活にも大きな影響が及ぶことになり,家族にも疾患の経過・治療の大まかな流れを十分に理解してもらうことが肝要である.
1型糖尿病は,短期間に膵β細胞の障害が生じ,インスリンが高度に欠乏,インスリン注射が生命の維持に必須となる疾患であり,生活習慣病である2型糖尿病とは大きく異なる.緩徐進行型や劇症型などの病型が存在し,内因性インスリン分泌能が枯渇すると,血糖コントロールに難渋することが多い.インスリン注射を中断しないこと,シックデイにはケトーシスを生じることがあること,などを十分に教育・指導しておく必要がある.
2型糖尿病はインスリン作用の不足(インスリン分泌の低下ないしインスリン抵抗性に対する相対的なインスリン分泌の低下)により慢性の高血糖をきたす疾患である.放置や治療の中断により高血糖は悪化し,網膜症や腎症のような細小血管症や動脈硬化症が進展する.境界型やメタボリックシンドロームは2型糖尿病発症のハイリスク状態であり,このような早期の段階から食事・運動療法など生活習慣の改善を行うことにより,発症や進展を遅らせることができる.
糖尿病足壊疸は,種々の足病変の最終病態であり,最悪の場合敗血症に陥り死亡に至ることもあり,危険である.足壊疸は何らかの外科的治療が必要である.外観上軽微な瘢痕を残すものから,膝上ないし股関節や寛骨部での切断例もあり,そのバリエーションの認識が必要である.足切断後はリハビリテーションを施行し,社会復帰への準備と,その後の足壊疸再発の防止が必要である.
高度の高血糖から意識障害に至る糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧症候群(HHS)は急性期の治療には共通点が多いが,原因,予後,慢性期の治療法は大きく異なる.意識障害から回復後にインスリン注射を永続的に必要とする場合もあり,スムーズな慢性期治療への移行を念頭に置いた説明を心がける.低血糖性昏睡は治療に伴う合併症であり,予防のための指導が重要であると同時に,きちんと対応すれば怖いものではないことも理解してもらう必要がある.
高LDL血症,高トリグリセリド血症,低HDL血症は,いずれも血漿脂質リポ蛋白代謝の面からみた動脈硬化症の危険因子である.これらの是正は動脈硬化症に由来する心筋梗塞や脳梗塞の予防のために行うものであり,多くは食習慣や運動など生活習慣に起因する場合が多く,その是正によるこれらの因子の改善は健康管理の重要な一環であると位置づけられる.適切な薬剤の使用も選択肢となる.これら脂質代謝面の危険因子の是正による動脈硬化性疾患の予防については,大規模臨床試験などによる明白な証拠に基づいて期待できるものと,仮説的な段階にとどまるものがあり,これらについて具体的な説明が必要である.また,その予防効果の定量性についてもある程度の説明が必要である.注意を要するのは,危険因子の集積によるリスクの上昇であり,とりわけ心筋梗塞や脳梗塞の二次予防(一度発症した後の2度目以降の発作の予防)については,より厳重な脂質危険因子の管理が推奨される.見逃してならないのは,明白な遺伝子の異常に基づく疾患群であり,なかでもLDL受容体の機能欠損による家族性高コレステロール血症(FH)はわが国でも一般人口500人に1人のヘテロ型が存在すると考えられ,この患者群では高LDL血症の是正は絶対適応であり,早期から薬物治療を選択する必要性が高い.
最近,メタボリックシンドロームの臨床マーカーとして改めて高尿酸血症が注目されている.ここでは高尿酸血症の一症状である痛風発作を間違いなく治療するためのマニュアルを示す.日常診療では生活習慣病型の高尿酸血症であるかどうかの鑑別が最も重要であり,尿路結石や腎障害は高尿酸血症の合併症であること,動脈硬化性疾患は内臓脂肪蓄積を伴う高尿酸血症患者で生じやすいことなどが基本的に重要な観点である.
メタボリックシンドロームとは,内臓脂肪蓄積を基盤とし,血圧上昇,脂質異常,血糖上昇(インスリン抵抗性)のうち2つ以上のリスクを合わせもつ病態で,飽食と車社会のなかで急速に大きな位置を占めつつある過栄養を上流とした心血管疾患のマルチプルリスクファクター症候群である.働き盛りの労働者を襲う心血管死亡を予防し,病態が進行すれば心血管疾患を起こして高額の医療費を要することになる高血圧症,高脂血症,糖尿病などの生活習慣病を予防するために,国民1人ひとりがライフスタイルを変革して上流にある内臓脂肪の減少を目指すことを目的としている.
下垂体前葉機能低下症と診断した場合は,欠落したホルモンに対応するホルモンを補充すると同時に,原因を明らかにするために視床下部下垂体の画像診断が必須である.ホルモン補充に際して注意することは,ACTH, TSHの両方が欠落している場合に必ず副腎皮質ホルモンの補充を甲状腺ホルモンの補充より先んじて行う必要があることである.順序を逆にすると副腎クリーゼを引き起こすおそれがあるため,注意が必要である.
甲状腺機能亢進症の代表であるBasedow病は,抗TSH受容体抗体を病因とする自己免疫疾患である.小児から中高年にかけての女性に多い.治療には抗甲状腺薬による内科的治療法,外科的甲状腺切除,放射性ヨード内用療法の3種類がある.甲状腺機能亢進症の初期は,抗甲状腺薬を投与して,強い運動や手術などは避けるように指導する.慢性期の治療としていずれを選ぶかは患者と十分相談して,患者が納得のいく治療法を選択するのがよい.
慢性甲状腺炎(橋本病)は世界中で多くの患者がいる.特に女性は罹患しやすい.しかし,本症は病気のなかではきわめて良性で,定期的に経過さえみていけば,日常生活上の制限はほとんどない.ただ,昆布などヨードの過剰摂取には注意が必要である.また,出産計画のある場合は,甲状腺ホルモン検査が勧められる.経過中に甲状腺が増大する場合は,特に高齢者の場合,甲状腺原発悪性リンパ腫の可能性も考慮に入れる.
亜急性甲状腺炎は甲状腺部に痛みを伴う代表的疾患である.一過性の破壊性甲状腺中毒症を呈するため,疼痛の軽い例ではBasedow病などとの鑑別が大切である.有痛性の結節を触知し,エコーでは同部に一致して低エコー域を認める.破壊性甲状腺中毒症の特徴は甲状腺摂取率低値である.未治療で改善する例からステロイド治療を要する例まで個人差が激しい.必ず治癒する疾患である.急性化膿性甲状腺炎は下咽頭梨状窩瘻を介する甲状腺周囲の細菌感染であり,抗生物質と切開排膿を要する.治癒後瘻孔を証明し,摘出する.
血清アルブミン濃度で補正した血清カルシウム(Ca)濃度が10.2mg/dlを超えるものを高Ca血症とする.高Ca血症の原因は90%以上が原発性副甲状腺機能亢進症(1oHPT)または悪性腫瘍に伴うものである.高Ca血症クリーゼに対しては,大量の補液およびループ利尿薬や骨吸収抑制薬の投与などを行う.同時に,高Ca血症の発症機序を明らかにするために,血液・尿におけるCa代謝の評価を行う必要がある.
原発性副甲状腺機能亢進症は,検診などで偶発的に高カルシウム血症が発見される場合は無症状であることが大部分で,治療すべき理由をきちんと説明する必要がある.NIHの手術適応基準と,その基となる疾患の病態生理を,副甲状腺ホルモンの作用からわかりやすく説明する.特に過形成の場合は遺伝子異常が関係してくるので,専門的なガイダンスの必要も出てくる.
バゾプレシン分泌過剰症(SIADH)は抗利尿ホルモンであるバゾプレシン(AVP)の過剰分泌により尿希釈障害を生じ,体内水貯留から低ナトリウム(Na)血症をきたす症候群である.種々の原因で起こり,患者にはなかなか理解しにくい疾患概念である.実際の療養指導では水制限の指示が重要になるので,なぜ水制限をしなければいけないのか,低Na血症によりどのような症状が出るのかを説明することが重要である.
月経異常を診断するためには,正常の月経について十分説明しておく必要がある.月経異常の原因は多岐にわたるので,系統的な診断手順を踏み,基礎体温測定を参考にしながら,適宜ホルモン測定を行うことが重要である.治療は性ホルモン投与が一般的であるが,挙児希望があれば排卵誘発治療を行うことがある.また,全身性疾患の1症状である場合には,その治療を検討する.
更年期障害はエストロゲンの低下による不定愁訴であり,患者への説明においては,他の器質性疾患を否定すること,障害の程度に個人差が大きいこと,時期により症状の発現内容や程度にも差があること,治療の目的は生活の質の向上にあること,などを説明しておく必要がある.治療においては,性ホルモン補充療法が中心であるが,運動療法や食事療法,自律神経調整薬や漢方薬なども試してみる価値がある.
花粉症は花粉によって引き起こされる季節性アレルギー性鼻炎であり,日本ではスギ花粉によるスギ花粉症は患者数,症状の強さから最も大きな問題となっている.くしゃみ,鼻水,鼻閉を3主徴とするが,これらの症状のために,集中力低下,睡眠不足,ひいてはうつなどをきたすことがあり,患者にとっては実に辛い疾患あることを理解しなければならない.また花粉症は一度発症すると,その後長年にわたり花粉飛散期に症状が出現するため,あらかじめ花粉症対策を講じることが必要である.
アナフィラキシーとは,ある原因物質により引き起こされる急性で全身に及ぶ即時型アレルギー(様)反応のことである.そのなかで,著明な血圧低下により意識障害を伴うものをアナフィラキシーショックといい,死に至る可能性が高い.アナフィラキシーを引き起こす原因物質として多いものに薬物,食物やハチ毒がある.薬物では,抗生物質・抗菌薬,非ステロイド性消炎鎮痛解熱薬(NSAID),抗腫瘍薬,造影剤,アレルギー性疾患治療用アレルゲン,最近ではリウマチ治療目的の生物製剤が報告されている.食物では牛乳,卵,大豆,ピーナッツなどが挙げられる.これらのアナフィラキシー反応の対策として予防が重要であり,薬物や食物アレルギーでは原因薬剤およびアレルゲンを問診や諸検査によって特定し,疑わしい場合も含め回避することが重要である.さらにハチアレルギーまたはハチ毒過敏症と診断された人や,重篤な食物,薬物アレルギー既往患者は,エピネフリン自己注射キットを携帯し,アナフィラキシー反応の兆候が現れた時点で使用すべきである.
関節リウマチ(RA)は多発性かつ対称性の関節炎を特徴とする慢性疾患である.関節炎は手足の小関節や膝などに起こり,このために日常労作が障害される.さらに関節炎が遷延すると,関節破壊が生ずるために生活の質が障害される.しかし,早期発見および早期から抗リウマチ薬(DMARDs)を中心とする積極的な治療によって,関節破壊を阻止することが可能になりつつある.
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は,高齢者にみられる軀幹近位筋のこわばりと痛みを主症状とする原因不明の疾患であり,高齢者のリウマチ性疾患として本疾患の存在を認識することが大切である.PMRに側頭動脈炎が合併することがあり,失明の危険が高いために,早期診断と早期治療が重要である.少量のステロイド薬投与によって劇的に症状が改善し予後のよい病気であるが,再燃することが多く,治療期間が長期に及ぶ可能性があることをよく理解してもらうことが大切である.
全身性エリテマトーデス(SLE)は結合組織病の代表的疾患である.症状は発熱,関節炎,皮疹,腎炎,肋膜炎,心外膜炎,中枢神経症状などと多彩である.SLEは若い女性に発症しやすい.結婚,出産,家庭,職業,いずれにも直面した問題となる.最も大切なことは,常に患者サイドに立って社会での歩みを支えてゆく姿勢である.multidisciplinary care(多くの科の専門家が加わるケア)を要する疾患である.
多発性筋炎/皮膚筋炎は,進行性の筋力低下や皮膚病変を認め,悪性腫瘍や肺病変を合併することがある.患者は日常生活を満足に送ることができなくなっており,病気に対して大きな不安を抱いていることが多い.適切な治療により多くの患者が健常者と同様の日常生活を取り戻すことができることを説明すると同時に,患者に病気について十分に理解してもらい,自己管理が重要であることを認識してもらう必要がある.
外分泌腺の原因不明の慢性炎症の結果,罹患臓器の機能低下をきたし,主として眼および口腔の乾燥症状などを呈する疾患である.関節炎,慢性甲状腺炎,間質性肺炎,腎尿細管アシドーシスなどの全身症状を伴うこともある.患者は,単に乾燥症状ではなく,痛みなど多様な症状として訴えることも多く,注意が必要である.慢性疾患であり,長期にわたると病気との共存が必要であるため,病気の正しい理解と心構えを指導することが重要である.
Behçet病は口腔内アフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状,陰部潰瘍,中枢神経病変,血管症状,腸管症状など多彩な症状が繰り返し出現する炎症性疾患である.個々の症例により有する症状の組み合わせは異なり,日常生活への影響度や予後は異なるために症状に応じた対応が必要である.
急性糸球体腎炎は,急性腎炎症候群の代表的な疾患で,過去に腎炎の既往のない患者に上気道感染,特に溶連菌性の扁桃腺炎に罹患後に血尿,蛋白尿,乏尿・浮腫,高血圧などの症状が突発的に発症してくる疾患である.本症は3~10歳の小児に多く,予後のよい疾患であるので,患者あるいはその両親には,まず初期の安静・食事療法が大事で,1~2カ月間,がまんしてしっかり治療すれば退院できることを説明する.そして退院後は,小児では5%,成人では20~30%の患者が慢性化する可能性があるので少なくとも数年間は通院する必要があることを納得させる.
ネフローゼ症候群は,糸球体上皮傷害による高度の蛋白(アルブミン)尿が引き金となり,低蛋白(アルブミン)血症,浮腫,高脂血症が発現する病態であり,この4項目が診断基準となる.病理学的に異なるさまざまな疾患が含まれるが,微小変化型ネフローゼ症候群が多数を占め,一般にそれらはステロイドで完全寛解となる.しかし,その他の多くは難治性といわれ,治療に苦慮することが少なくないので慎重な対応が必要である.
わが国の慢性糸球体腎炎のなかで最も頻度が高く,患者の約40%は20年の経過で末期腎不全に至る.顕微鏡的血尿はほぼ必発で,間欠的もしくは持続的蛋白尿を認める.確定診断は腎生検によりなされ,組織所見・臨床検査所見から予後分類がなされる.予後比較的不良群もしくは予後不良群ではステロイド治療を検討する.IgA腎症診療指針の要を表1に示す.
糖尿病性腎症から人工透析に至る患者数は毎年13,000人を超えており,透析導入原因疾患の第1位である.特効薬のない糖尿病性腎症の治療の基本は,血糖および血圧の良好な管理で,早期発見と早期治療開始が重用である.しかし持続性蛋白尿の出現した後のいわゆる顕性腎症期であっても,血糖,血圧の厳格な管理と低蛋白食の遵守により進展の遅延は可能で,さらには蛋白尿の消失に至る症例もあるので,繰り返しの説明と粘り強い治療の姿勢が必要である.
尿路感染症(urinary tract infections:UTIs)は代表的なcommon diseaseの1つであるが,しばしば,診断・治療に悩まされるケースにも遭遇する.さまざまなUTIsについて,病態の正しい理解と,適切な検査,治療が望まれる.
急性腎不全とは“急激な腎機能低下によって尿毒症,電解質異常,アシドーシスなどを認める状態”である.本症は適切な薬物療法や透析療法を施行することで腎不全そのものによる死亡の多くを防ぐことができるが,多臓器不全の一症状として出現する場合はその原因疾患の予後に左右されるため死亡率が高くなる.そのため診療にあたっては,腎臓はもとより原因疾患に対しても病状,予後,治療方法について丁寧に説明し,理解を得ることが大切である.
慢性腎不全とは慢性に経過し不可逆的に進行する腎機能障害の総称である.血清クレアチニン濃度を指標にしてその進行を評価し,治療は食事療法,降圧療法が行われる.特にアンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬の効果が期待されているが不十分で,多くの症例が尿毒症に陥り透析療法を要する.長い療養期間をどう付き合っていくのか,十分な病態の説明と理解が重要である.
尿路結石の主症状は腰背部痛と血尿である.結石の性状と閉塞の状況を評価し,部位・サイズにより治療方法を選択する.結石による尿路閉塞が持続すると腎機能に不可逆的な変化を生ずることがある.尿路結石は再発する頻度が高く,代謝疾患に起因することも多いため,結石素因の解明が必須であり,病因に対する治療は二次予防の点からも重要である.療養指導は,飲水,食事,薬物治療を組み合わせて行う.
排尿障害は,尿排出と蓄尿に関する障害があり,これらは下部尿路(膀胱と尿道)の機能障害であり,そこから発生する多彩な症状を下部尿路症状(LUTS)という.すなわち,LUTSは排尿症状,蓄尿症状,排尿後症状の3つに大別され,問診時には障害がどの部位にあるのかを推定しながら患者の症状ならびに随伴症状をよく聞き出す必要がある.LUTSの原因疾患は,神経因性膀胱,前立腺肥大症,前立腺癌,膀胱腫瘍,膀胱結石,膀胱炎,飲水過多,糖尿病,尿崩症,心不全,加齢,心因性と多岐にわたるので原因疾患を特定し,的確な治療により症状が改善することを理解してもらう.本稿では過活動膀胱に焦点を当てて概説する.
前立腺肥大症(BPH)は高齢男性において,前立腺の腫大に伴いさまざまな下部尿路症状(LUTS)をきたす良性疾患である.前立腺癌と症状が類似するため,その鑑別は重要となる.BPHと診断された場合はLUTSとそれに伴う生活の質(QOL)の障害が問題であるので,重症度を判定したうえで多岐にわたる治療法を患者と選択していくことが大切である.
前立腺癌は骨転移をきたしやすく,難治性の癌という印象であったが,近年は前立腺特異抗原(PSA)検診を受ける人が増加し,早期に発見される例が増えている.また,発症が高齢者に多く,他の悪性腫瘍よりも進行が比較的緩徐なため,前立腺全摘除術という手術療法以外にもホルモン療法などの治療の選択肢が多い.治療法の決定には,患者の平均余命と治療による生命予後の延長との比較,QOLを加味した生存期間についての考慮が必要である.
性的興奮は副交感神経が優位の状態で陰茎内の小動脈が拡張して起こる.そのため,リラックスした状態で勃起が起こることをまず患者に理解させる.そのため,心因性勃起障害(ED)の治療は心因となる要因を取り除くより,いかに性を楽しむかを指導することが大切になる.心因性EDは突然発症し,器質性EDは徐々に発症するので,問診による鑑別診断は容易である.特に早朝勃起やマスターベーションで勃起が確認できれば心因性EDと考えてよい.
毎年,冬に流行し,患者数は全人口の5~10%である.発症後急激に38~40℃まで発熱し,発熱パターンは二峰性となることもある.症状は,呼吸器症状,消化器症状,神経症状など多彩であるため,症状のみで診断をつけることは難しく迅速診断を実施する必要がある.抗ウイルス薬による治療は,発症後48時間以内に開始しなければならない.インフルエンザを疑ったら早めに医療機関を受診するように指導する.ハイリスク患者では,インフルエンザは重篤化しやすく肺炎なども高率に合併する.低年齢の小児では,解熱後でも他人への感染源となる可能性があるため,マスク,手洗いを指導し,集団生活の復帰は慎重に行う.
Epstein-Barr(EB)ウイルスは伝染性単核球症(IM)の原因である.IMは予後良好な疾患であるが,稀に慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV),血球貪食性リンパ組織球症(HLH)などの致死的感染症がみられる.さらにEBウイルスは種々の腫瘍性疾患に関連している.IMは原則的に治療が不要であるが,CAEBV,EBV-HLHでは免疫抑制薬,抗癌薬,造血幹細胞移植などの治療が必要である.
ブドウ球菌は通常の場合は病原性を発揮せず,健康な人の皮膚や粘膜に普通にみられる常在菌として存在している.しかし,黄色ブドウ球菌は一度皮膚バリアを越えると深く侵入して広がることも多く,市中感染症と院内感染症のいずれにおいても皮膚感染症や菌血症の主要な病原菌となっている1).また,表皮ブドウ球菌は本来病原性の弱い菌であるが,血管内カテーテルなどの医療器具の留置される機会の多い入院患者においては院内感染の病原体として重要な存在である.