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適応
●慢性心不全(chronic heart failure:CHF)
●心房細動・粗動による頻脈のrate control
●発作性上室性頻拍
カテコールアミンは心臓や血管にある交感神経α受容体やβ受容体,それにドパミン受容体を刺激する.各種ショック(出血性,心原性,神経原性,敗血症性,アナフィラキシー),高度徐脈など主に急性循環不全の昇圧,心拍数増加,強心作用を目的に用いられる.それぞれに特徴があり,病態に応じて薬剤を選択する必要がある.また,即効性であるが,長期投与により受容体の馴れ現象(down-regulation)が生じ効果が減弱するため,早期での離脱が求められる.
急性心不全(他の治療薬で効果が不十分な場合).
デノパミン(カルグート®)
慢性心不全.
最も使用されている抗狭心症薬である.本剤は狭心症発作緩解を目的とした即効性薬剤と発作予防を目的とした持続性薬剤に分けられる.薬剤にはニトログリセリン(NTG),硝酸イソソルビド(ISDN),一硝酸イソソルビド(ISMN)があり,即効性薬剤には舌下錠,スプレー剤,持続性薬剤には錠剤,パッチ剤,テープ剤,口腔粘膜付着剤,注射剤がある.
ニコランジル(シグマート®)
冠動脈の持続的拡張により冠血流を増加し,静脈還流量も減少させて抗狭心症作用を発現する.
ACE阻害薬は,その降圧薬としての高い有効性に加え,幅広い臓器保護作用(心,腎,脳,血管),心血管事故の抑制・生命予後改善効果が実証されている.これには,レニン—アンジオテンシン—アルドステロン(RAA)系の抑制や降圧系のカリクレイン—キニン—プロスタグランジン系の増強作用,細胞増殖抑制,心肥大の退縮,交感神経抑制,血管内皮機能改善など,多彩な薬理作用が大きく寄与している.現在では高血圧治療の第一選択薬として確立している1〜3).わが国の保険適用は高血圧症以外では,慢性心不全はエナラプリルとリシノプリル,1型糖尿病性腎症はイミダプリルである(表1).しかし薬理学的には,いずれのACE阻害薬にも臓器保護効果は期待でき,降圧効果にも大きな差異はない.
強力な昇圧性生理活性物質であるアンジオテンシン(AT)IIの1型受容体を特異的に拮抗阻害する高血圧治療薬である.本薬剤は高い忍容性,安全性が認められ,主な内外の高血圧ガイドライン―1997年米国合同委員会第6次報告,1999年世界保健機構/国際高血圧学会,2000年日本高血圧学会1~3),ほか―で第一選択の降圧薬ないしACE阻害薬に準じた位置付けである.ATII受容体拮抗薬はその降圧作用に加え,心・腎臓器保護作用が臨床レベルでも実証され始め4~6),心不全,蛋白尿,糖尿病の合併例やこれら病態でACE阻害薬不適応例では特に積極的な適応がある.ただし,わが国における保険適用は今のところ高血圧症のみである.
カルシウム拮抗薬は,現在使用中の降圧薬のなかでは最も使用頻度が高く,多くのものがジヒドロピリジン系に属する.本稿では主な薬剤の副作用と相互作用について述べる.ジヒドロピリジン系の薬剤の副作用で頻度の高いものは,降圧に伴う交感神経の緊張によるものであり,相互作用の多くは肝でのP450酵素の阻害によるものである1,2).
●本態性高血圧症(軽症〜中等症)
●狭心症
●頻脈性不整脈
最近は慢性心不全に対しての適応が認められつつある1〜3).
●本態性および腎性高血圧症
●褐色細胞腫による高血圧症
●前立腺肥大症に伴う排尿障害
α受容体の中枢内分布は,ノルアドレナリン(noradrenaline:NA)ならびにアドレナリン(adrenaline:Ad)含有神経終末の局在とほぼ一致し,特に延髄孤束核,尾側腹外側核,吻側腹外側核が血圧調節に重要とされている.
α受容体はα1受容体,α2受容体に大別され,α1受容体は後シナプス(postsynaptic site)に,α2受容体は前シナプス(presynaptic site)ならびに後シナプスに存在する1).後シナプスα2受容体刺激はニューロンの興奮性を低下させ,遠心性交感神経活性を減少させることにより降圧的に作用する.一方,交感神経終末部の前シナプスα2受容体は神経終末からのノルアドレナリンの遊離に対して抑制的に作用するが2〜4),血圧調節にどのように関与しているかについては,さらに検討を要する.
エホチール注射液®(塩酸エチレフリン)
エホチール注射液®(Effortil®injection,一般名:塩酸エチレフリン,etilefrine hydrochloride)は,フェニレフリンのN-アルキル誘導体の薬理作用を研究した結果,開発された薬剤であり,基本的にはαおよびβアドレナリン受容体刺激薬である.アドレナリンと異なりタキフィラキシー現象は認められない.心拍出量および分時拍出量を増大させて血圧を上昇させるが,心拍数は上昇させない.末梢血管抵抗は減弱させるので循環を改善させる.静脈内投与した場合の血中濃度の半減期は2時間である.静注後24時間で78%が腎臓排泄され,残りは便中に排泄される.透析による除去率に関しては資料がない.
バファリン81mg錠®〔アスピリン81mgとダイアルミネート33mg(アルミニウムグリシネート11mgと炭酸マグネシウム22mg)の合剤〕とバイアスピリン®(アスピリン)の適応症は同じで,狭心症(慢性安定狭心症,不安定狭心症),心筋梗塞,虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作,脳梗塞),冠動脈バイパスあるいは経皮経管冠動脈形成術施行後における血栓・塞栓形成の抑制である.
パナルジン®(塩酸チクロピジン)の適応症は,血管手術および体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血流障害の改善,慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍,疼痛および冷感などの阻血性諸症状の改善,虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作,脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療,くも膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善である.
ワーファリン®(ワルファリンカリウム)の適応症は,静脈血栓症,心筋梗塞症,肺塞栓症,脳塞栓症,緩徐に進行する脳血栓症の治療および予防である.
ノボ・ヘパリン®(ヘパリンナトリウム)とヘパリンナトリウム注N®(ヘパリンナトリウム)の適応症は同じで,汎発性血管内血液凝固症候群の治療,血液透析・人工心肺その他の体外循環装置使用時の血液凝固の防止,血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止,輸血および血液検査の際の血液凝固の防止,血栓塞栓症(静脈血栓症,心筋梗塞症,肺塞栓症,脳塞栓症,四肢動脈血栓塞栓症,手術中・術後の血栓塞栓症など)の治療および予防である.
プラスミノーゲンをプラスミンに活性化する物質がプラスミノーゲンアクチベータであり,これが血栓溶解薬の基本的な薬理作用である.フィブリンに結合したプラスミノーゲンアクチベータによってフィブリンのプラスミンは活性化され,血栓は溶解する(図1).現在臨床で用いられている血栓溶解薬を表1に示した.ウロキナーゼ(UK)やストレプトキナーゼ(SK)は循環血液中で作用するプラスミノーゲンアクチベータであり,α2プラスミンインヒビターで失活される以上の量が必要であることから全身の線溶能を高めることになり出血傾向に注意を払わなければならない.そのため,血栓親和性を有し血栓上で作用するt—PAやpro-UKが開発された.t-PAには遺伝子組換え型(recombinant)t-PAと細胞培養による天然型t-PAの2種類がある.t-PAやpro-UKにより全身の線溶能を高めることなく血栓を溶解し,UKに比べ高い溶解率が得られるようになった.しかし,血中半減期が短く持続点滴が必要なため,より半減期が長いt-PAが開発された.mutant t-PAは,遺伝子組換え技術によりアミノ酸配列を置換することで半減期を長くしたt—PAであり,単回投与が可能となった.
プロスタグランジン製剤は強力な血管拡張物質の一つであり,閉塞性動脈硬化症をはじめとする末梢循環障害(図1)に対して有効である.注射用プロスタグランジンは末梢血管拡張・血小板凝集抑制・赤血球変形態改善・活性酸素産生抑制など血液と血管壁の両面に作用し,心機能・血圧・呼吸に対する影響が比較的少ない薬剤である.近年使用できる製剤が増え,動脈内・静脈内投与や経口投与も可能になり応用範囲も拡大されてきた.
ループ利尿薬は,ヘンレ係蹄の太い上行脚部におけるNa+-K+-2 Cl-の共輸送系を尿細管腔側から阻害し,Na+,Cl-の再吸収を抑制することにより,強力な利尿作用を発揮する.フロセミド(ラシックス®),アゾセミド(ダイアート®),トラセミド(ルプラック®)などが代表的な薬剤である.
心性浮腫,腎性浮腫,肝性浮腫などが適応となるが,浮腫,胸水,腹水がある場合には,初めにその原因の鑑別診断を行うことが大切である.特に心不全,肝硬変,腎不全,ネフローゼなどの疾患の有無を明らかにし,それらの治療を十分に行う必要がある.原疾患の治療,および食塩制限や安静などによっても浮腫の改善が認められない場合,本剤の投与が考慮される.緊急にループ利尿薬の投与が必要となるのは,心不全や腎不全により肺水腫をきたしている場合や,高度の腹水が貯留して呼吸不全を呈している場合である.
高血圧症(本態性,腎性),悪性高血圧,心性浮腫(うっ血性心不全),腎性浮腫,肝性浮腫や,月経前緊張症における軽い浮腫.
高血圧症(本態性,腎性),浮腫(本態性,腎性,特発性),悪性腫瘍に伴う浮腫および腹水,栄養失調性浮腫,原発性アルドステロン症の診断および症状の改善.
Ia群抗不整脈薬はNaチャネル遮断作用が主であるが,一部Kチャネル遮断作用も有するので,活動電位持続時間を延長させる.このIa群薬に共通する重大な副作用は催不整脈作用である.そのなかで特に重要なのは,QT延長に伴う多形性心室頻拍(torsades de pointes:TdP)である(図1).特にQT延長をきたすような薬剤との併用や,低K血症などの電解質異常を有する場合は十分な注意が必要である.また伝導遅延に伴う心室頻拍が起こることがある.これらはそれぞれ不応期の延長・伝導抑制が問題となるため,QTc・QRS幅に注意する.
Ib群薬のうち,リドカイン(キシロカイン®)・メキシレチン(メキシチール®)は,他のI群薬同様,Naチャネル遮断作用が主であるが,K電流を減少させないので活動電位持続時間は短縮する.またQT延長・QRS幅増大は通常認めない.このため他のI群薬と比べ,副作用としての心室頻拍・心室細動の頻度は少ないといわれている.アプリンジン(アスペノン®)はIb群に属するが,結合解離動態は中間型で(前二者は速い),弱いながらCa・Kチャネル遮断作用をもつ点で前二者と異なる.
Ic群抗不整脈薬の主な作用は強力なNaチャネル遮断作用であるが,Ia・Ib群薬と異なり活動電位持続時間には影響せず,強い伝導抑制作用をもっ.副作用のうち特に重要なものは,催不整脈作用と心抑制作用である.前者に関連する重要な研究にCAST(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)がある.心筋梗塞後の心室性期外収縮に対し,不整脈による突然死を予防する目的で,Ic群薬〔フレカイニド(タンボコール®)とエンカイニド(日本未発売)〕を用いたこの試験では,投与群で心室性不整脈を減少させたにもかかわらず不整脈死・心臓死の発生率がプラセボ投与群よりも有意に高かったと報告され,不整脈治療を見直すきっかけとなった1).その結果を考慮し,同じIc群に属するピルジカイニド(サンリズム®)およびプロパフェノン(プロノン®)においても,心筋梗塞後の患者には原則使用しないこととされている.
塩酸アミオダロン(アンカロン®)
生命に危険のある再発性不整脈で他の抗不整脈薬が無効か,使用できない場合に用いる.心室頻拍,心室細動,肥大型心筋症に伴う心房細動.
塩酸ベプリジル(ベプリコール®)
他の抗不整脈薬が使用できないか,無効な心室性頻拍性不整脈に用いる.
H2受容体拮抗薬は胃底腺壁細胞のヒスタミン受容体(H2受容体)を遮断することにより,強力な酸分泌抑制力を発揮するもので,Blackらの開発したシメチジン(タガメット®)が最初に臨床応用され,以後膨大な酸関連疾患患者に投与されてきた.H2受容体拮抗薬は他の薬剤同様,共通の副作用と,各自のものとがあるが,長期投与を含め基本的には安全な薬剤であることが確認されている.
薬剤の種類と適応
プロトンポンプ阻害薬(PPI)は,現在われわれが使用しうる最も強力な胃酸分泌抑制薬であり,オメプラゾール(オメプラール®,オメプラゾン®),ランソプラゾール(タケプロン®),ラベプラゾール(パリエット®)の3種類が使用可能である.その適応疾患は,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,吻合部潰瘍,逆流性食道炎,Zollinger-Ellison症候群である.さらにオメプラゾールおよびランソプラゾールは,消化性潰瘍に対するHelicobacter pylori(H. pylori)除菌療法における併用薬として使用が認められ,また同2剤は再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法において長期投与が認められている.
水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム(マーロックス®),乾燥水酸化アルミニウムゲル(アルミゲル®)はいずれも代表的な酸中和薬であるが,その主な作用機序としては,制酸作用と胃粘膜保護作用の2つに分けられる.制酸作用としては,マーロックス®懸濁内服用1.2gにより約30mEqのHCL(hydrochloric acid)を中和する作用をもち1),また中和によりペプシノーゲンの活性化を抑制する.胃粘膜保護作用としては,ゲル状になって酸に不溶性のゼラチン様皮膜を形成し,胃粘膜に付着して機械的に胃酸の粘膜を保護する.そのほか内因性プロスタグランジンやNO(nitric oxide)を介さないサイトプロクテクション作用を有するともいわれている2).
●胃潰瘍,十二指腸潰瘍
●下記疾患の胃粘膜病変(びらん,出血,発赤,浮腫)の改善
●急性胃炎,慢性胃炎の急性増悪期
1.メトクロプラミド(プリンペラン®)
次の場合における消化機能異常(悪心,嘔吐,食欲不振,腹部膨満感).
●胃炎,胃・十二指腸潰瘍,胆嚢・胆道疾患,腎炎,尿毒症,乳幼児嘔吐,薬剤(制癌剤,抗生物質,抗結核薬,麻酔薬)投与時,胃内・気管内挿管時,放射線照射時,開腹術後
●X線検査時のバリウムの通過促進
セロトニン作動薬は,消化管のコリン作動性神経(迷走神経)の節後神経上に存在するセロトニン5-HT4受容体を刺激して,迷走神経末端からアセチルコリンの遊離を促進し,遊離したアセチルコリンが消化管の平滑筋に働き消化管の運動を促進させる薬剤で,5—HT1,3,4受容体アゴニストでドパミン遮断作用を有するシサプリド(アセナリン®,リサモール®)と,選択的セロトニン5-HT4受容体アゴニストのクエン酸モサプリド(ガスモチン®)がある.
シサプリドは,肝チトクロームP 450 3A4で代謝されるため,相互作用があるアゾール系抗真菌薬,エリスロマイシン,クラリスロマイシン,インジナビル,リトナビル,ネルフィナビル,アンプレナビル,エファビレンツ,マレイン酸フルボキサミンとの併用やQT延長のある患者(先天性QT延長症候群,特発性QT延長,糖尿病性QT延長),先天性QT延長症候群の家族歴のある患者への投与により,QT延長や重篤な心室性不整脈をきたす.
使用法と使用上の注意
副交感神経遮断薬は,副交感神経節や副交感神経支配臓器に存在するアセチルコリン受容体に対するアセチルコリンの作用を遮断する薬物であり,腹部の内臓痛を対象として広く使用される.副交感神経遮断薬は,天然アルカロイド・3級アミン製剤・4級アンモニウム製剤・選択的ムスカリン受容体拮抗薬に分類されるが,天然アルカロイドや3級アミン製剤は血液・脳関門を通過し中枢神経への副作用を示すため,臨床的には4級アンモニウム製剤〔臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン®)〕が汎用される.
常用量は,内服薬で1回10〜20mgを1日3〜5回,注射薬で1回10〜20mg(静注・皮下注・筋注)を用い,作用は2〜6時間持続する.
弛緩性便秘が適応となる.便秘は排便の回数と量が減り,腹部膨満や腹痛などの症状が発現した状態を指す.便秘の際は摂取した食物残渣の大腸通過時間が延長し,水分が大腸より過剰に吸収され,便が固くなりさらに排出困難をきたす.塩類下剤・膨張性下剤・浸潤性下剤は便を軟化させる作用があり,大腸刺激性下剤との併用は弛緩性便秘に有効である.
アローゼン®(センナ)の作用は,大黄中のsennosideが腸内細菌によって活性物質となり,大腸粘膜筋層内の神経叢を刺激し蠕動運動を亢進させることにより発揮される.
●酸化マグネシウム(カマ):便秘症,胃・十二指腸潰瘍,胃炎,上部消化管機能異常における制酸
●クエン酸マグネシウム(マグコロールP®):大腸内視鏡・注腸造影検査・外科手術前処置用下剤(前処置用のみの適応しかない)
本剤は,大腸内視鏡検査および大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除を目的として使用される特殊組成電解質液(表1)である.1980年にDavisら1)がポリエチレングリコールと電解質からなる経口腸管洗浄液を考案し,本邦においては上野ら2)によって大腸内視鏡検査の前処置におけるその有用性が報告されている.前処置はいかなる検査においても,被検者に負担が少なく受容性が高く,簡便でしかも精密な検査を可能とするものでなければならないが,ニフレック®はBrown法3)を基本としたこれまでの各種の方法より優れた評価が得られ,広く用いられている.
止瀉薬の領域では従来,収斂剤,吸着剤,副交感神経遮断薬,腸内細菌殺菌剤,整腸剤などのいわゆる古典的薬剤が使用されてきたが,効果や副作用の点で限界があった.また,opium, morphine, codeineなどの作用の強い止瀉薬は特に長期間使用した場合,中枢作用に由来する依存性を生じる可能性があり,その使用には限界があった.そこで腸管に対する作用と中枢に対する作用が分離された止瀉薬が求められ合成されたのが,塩酸ロペラミド(ロペミン®)である.塩酸ロペラミドは腸管神経叢に作用し,腸管内コリン作動性ニューロン機能を抑制し,また,腸管の輪状筋方向の進展により誘発されるアセチルコリンとプロスタグランジンの放出を抑制し,腸管内容物輸送抑制,蠕動抑制をもたらす.塩酸ロペラミドは,morphineやcodeine, diphenoxylateよりも強力かつ持続的な止瀉作用を示す一方1),非毒性用量では中枢作用を示さないのが大きな特徴である.
過敏性腸症候群治療薬であるポリカルボフィルカルシウム(コロネル®,ポリフル®)の適応は「過敏性腸症候群における便通異常(下痢,便秘)および消化器症状」であるが,まず過敏性腸症候群の診断をきちんと行うことが重要である.過敏性腸症候群は腹痛,腹部不快感などの腹部症状に加え,便秘または下痢の便通異常や排便困難・排便切迫などの排便不快感を主訴とし,不安・緊張・ストレスなどの精神的な要素が影響することが多い.下痢が主体の下痢型,便秘が主体の便秘型,これらが交互に出現する交替型に分類される.下痢,腹痛,排便困難のために内科を受診する患者は多く,そのなかで感冒,感染性腸炎,薬剤性腸炎,潰瘍性大腸炎,Crohn病などの他の器質的疾患を除外し,最終的に診断を行う必要がある.過敏性腸症候群の診断基準として最もスタンダードな基準であるRome II診断基準1)を表1に示す.
サリチルアゾスルファピリジン(サラゾピリン®)は,大腸において,腸内細菌の作用を受けてアゾ結合が解離しスルファピリジンと5-アミノサリチル酸(5-ASA)に分解される.前者は大腸においてほとんど吸収されるが,後者は1/3が大腸から吸収され,残りの2/3が糞便中に排泄される.メサラジン(ペンタサ®)はサラゾピリン®で起こる種々の副作用の原因であるスルファピリジンを除去し,有効成分の5-ASAのみにしたものである.したがって炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,Crohn病)における両剤の治療効果はほとんど同等であり1),適応などでも両剤に共通点がみられる.両剤ともに5-ASA製剤であり,サラゾピリン®はサルファ剤でもある.
1.ウリナスタチン(ミラクリッド®)
(1)急性膵炎〔外傷性,術後およびERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)後の急性膵炎を含む〕,慢性再発性膵炎の急性増悪期.
(2)急性循環不全(出血性ショック,細菌性ショック,外傷性ショック,熱傷性ショック).
グリチルリチン(GL)は甘草から抽出され,肝疾患に対し有用性が認められている.その効果には,AST・ALTの改善のみならず,組織学的改善1)があり,その結果,肝硬変・肝癌への進展抑制2)などが報告されている.このため,慢性ウイルス性肝炎を主たる対象として広く使用されている.
剤型には経口剤と注射剤があるが,注射剤に比して経口剤の効果は弱い.また,注射剤の効果は,一般的に1回投与量や投与回数に相関する.保険適用上,100ml投与可能な製剤とそうでない製剤があるので注意が必要である.常用量は1日20〜40mlであり,一般にAST・ALTの推移をみながら投与量・投与回数は適宜増減されるが,強力ネオミノファーゲンシー®などは,AST・ALTの改善が不十分な場合には1日100mlまで増量できる.なお,急な中止後にはAST・ALTの再上昇がみられる場合が多いので注意を有する.
インターフェロン(IFN)は,B型,C型慢性肝疾患の治療の中心的役割を果たす薬剤である.このほか,腎癌,多発性骨髄腫,膠芽腫,皮膚悪性黒色腫,慢性骨髄性白血病(CML)など,消化器以外の腫瘍性疾患に対して用いられている.本稿では,肝臓領域で主に用いられるIFNについて解説する.
①HBe抗原陽性かつDNAポリメラーゼ陽性のB型慢性活動性肝炎
②C型慢性肝炎
リバビリン(レベトール®)は1972年に合成されたプリンヌクレオシドアナログで,ウイルスの増殖を複数の作用点で阻害する薬剤である.1991年にC型慢性肝炎に対する治療結果が報告されたが,本剤単独では十分な抗ウイルス効果は得られなかった1).しかしその後インターフェロン(IFN)との併用療法の有用性が確認され2,3),難治性といわれるHCV genotype Ibで高ウイルス量(100kcopies/ml以上,1Meq/ml以上)を示す症例に対する新しい治療法として登場した.本稿では本剤の使用に際しての注意事項を中心に述べる.
●ALT上昇を示すB型慢性肝炎.
●B型急性肝炎重症型ないし遷延例.
●HBe抗原陽性・陰性にはかかわらず.
●肝硬変の疑われる例には慎重投与.
ウルソ®(ウルソデオキシコール酸)は1957年に承認された肝・胆・消化機能改善薬であり,わが国で年間約280万人に使用されている.わが国の保険診療における適応は以下のとおりである.
(1)下記疾患における利胆:胆道(胆管・胆嚢)系疾患および胆汁うっ滞を伴う肝疾患
(2)慢性肝疾患における肝機能の改善
(3)下記疾患における消化不良:小腸切除後遺症,炎症性小腸疾患
(4)外殻石灰化を認めないコレステロール系胆石の溶解
(5)原発性胆汁性肝硬変における肝機能の改善
海外では,胆石溶解,急速な減量を行った肥満者における胆石予防,原発性胆汁性肝硬変が適応であり,有用性の評価は未定ではあるが肝移植後の肝機能の改善目的に投与されている1).
塩酸グラニセトロン(カイトリル®)
(1)錠・細粒:抗悪性腫瘍薬(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心,嘔吐).通常,成人にはグラニセトロンとして1回2mgを1日1回経口投与する.なお,年齢,症状により適宜増減する.
(2)注射:抗悪性腫瘍薬(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心,嘔吐).通常,成人にはグラニセトロンとして40μg/kgを1日1回静注または点滴静注する.なお,年齢,症状により適宜増減するが,症状が改善されない場合には,40μg/kgを1回追加投与できる.通常,小児にはグラニセトロンとして40μg/kgを1日1回点滴静注する.なお,年齢,症状により適宜増減するが,症状が改善されない場合には,40μg/kgを1回追加投与できる.
(1)各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静.
(2)疼痛時における鎮痛.
(3)激しい下痢症状の改善.
咳嗽は,多くの呼吸器疾患や一部の非呼吸器疾患の症状であり,QOLを損なう.近年,8週間以上持続する慢性咳嗽の原因としてアトピー咳嗽や咳喘息といった疾患概念が確立され,それぞれの特異的治療法によって治療できるようになった1)が,原因を特定できない場合が多い2〜8週間持続する遷延性咳嗽や1〜2週間で自然軽快する急性咳嗽では,対症療法として中枢性鎮咳薬を処方することが多い.
一般的に,咳嗽は気道粘膜に存在するrapidlyadapting receptorやC—線維末端にある咳受容体が,化学的あるいは物理学的に刺激を受けることによって発現する.その刺激は,求心性神経の有髄のAδ線維あるいは主に気管支領域に分布している無髄のC—線維を介して延髄の孤束核に入り,以後,延髄の咳反射の統合経路を経て,各種の遠心性神経に伝えられる.中枢性鎮咳薬の鎮咳効果は,反射経路のうち咳中枢を抑制することによって生じる.非麻薬性鎮咳薬は麻薬性のものに比べ,耐性・依存性がなく,副作用も弱いという利点がある(表1).
生薬とは薬草の根や茎,葉など,天然の植物・動物・鉱物の全部または一部を採取し,乾燥あるいは簡単な処理を行って調整した薬物をいう.一つひとつの生薬には,さまざまな作用をもつ多くの有効成分が含まれている.数種類の生薬を組み合わせた薬剤が漢方薬である.すなわち,生薬は漢方薬の最も基本となるものであり,生薬の品質によって漢方薬の治療効果は大きく左右される1).医療に用いられる生薬は,『日本薬局方』により厳密に規定されており,その品質が保証されている.
従来,漢方薬は重篤な副作用の頻度が少ないと信じられ,1976年には漢方薬が医薬品として認可された.しかし,1991年の小紫胡湯による間質性肺炎発症の報告2)はわれわれ医療従事者にとって衝撃的であり,生薬でもその使用にあたっては副作用および相互作用に注意を要することがあらためて喚起された.近年,医療現場における漢方薬の使用量および使用頻度は,併用も含めて増加しており,それに伴って新たな副作用や相互作用が報告されている.
粘液溶解薬は,粘液の粘稠度を低下させることにより,痰の喀出を促す薬剤である.
代表的薬剤であるビソルボン®(塩酸ブロムヘキシン)は,気管支粘膜および粘膜下気管支腺の分泌を活性化し,漿液性分泌を増加させることにより,気管支粘膜の杯細胞および気管支腺において粘液溶解作用を示す.また,線毛運動亢進作用も認められている.経口薬(錠剤,細粒,シロップ),注射薬,吸入薬の各種剤型が用意されており,使用頻度の高い薬剤である.
塩酸アンブロキソール(ムコソルバン®,ムコサール®など)の作用機序は,気道の分泌性上皮細胞(杯細胞)や粘膜下分泌腺からの分泌の亢進,クララ細胞からの顆粒状物質の分泌亢進,肺胞II型細胞からのサーファクタント分泌の促進を通じて喀痰の排出経路である気道を潤滑にし,喀出を容易にすることである1,2).剤型としては錠(15mg),液(7.5mg/ml),Lカプセル(45mg),シロップ(3mg/ml),ドライシロップ(15mg/g)がある.塩酸アンブロキソール・錠,同・液,同・Lカプセルの共通した適応疾患として,下記疾患の去痰が挙げられる.
以下の急性および慢性疾患における気道分泌亢進・喀痰喀出困難.
1.ムコダイン®(L-カルボシステイン)
上気道炎(咽頭炎,喉頭炎),急性気管支炎,気管支喘息,慢性気管支炎,気管支拡張症,肺結核,慢性副鼻腔炎の排膿,滲出性中耳炎の排液(ムコダイン®シロップ5%のみ).
呼吸器の薬剤としての交感神経刺激薬はβ2受容体刺激作用による気管支拡張作用を主眼に用いられており,β2受容体選択性の程度により第1世代,第2世代,第3世代に分類される.第1世代交感神経刺激薬は最も早く開発されたが(〜1960年代),α受容体刺激性を多かれ少なかれもっており,β2受容体選択性も高くない.一方,それ以後に開発された第2・第3世代交感神経刺激薬はα受容体刺激性はほとんどなく,世代が進むにつれβ2受容体選択性が強まり,また作用時間も長くなってきている.
第1世代交感神経刺激薬の主な薬剤としてはエピネフリン,イソプロテレノール,オルシプロナリンなどがあり,通常は気管支喘息の発作治療薬(リリーバー)として用いられる.エピネフリンは臨床で用いられた初めての合成β受容体刺激薬であるが,β作用よりはα作用が強く,一般には中等〜重症の気管支喘息発作時に皮下あるいは筋肉内注射薬として使用される.またbrittleasthma,特に比較的安定した状態から,突然予期せぬ重症発作を起こすtype 2のbrittleasthmaとよばれる病型には有効性が高いとされている.
交感神経刺激薬は,最も強力な気管支拡張作用を有し,特に気管支喘息の急性増悪時の症状軽減および運動誘発性喘息の予防に対して,有効性が確立している.慢性閉塞性肺疾患(chronicobstructive pulmonary disease:COPD)の気道攣縮の改善に対しても用いられている.
交感神経刺激薬は,作用時間から短時間作用型(イソプロテレノールなど),中時間作用型(サルブタモール,テルブタリンなど),長時間作用型(サルメテロールなど)に分類される.また,β受容体選択性から第1世代(イソプロテレノール,オルシプレナリンなど),第2世代(サルブタモール,テルブタリンなど),第3世代(フェノテロール,プロカテロール,ツロブテロールなど)に分類され,世代が進むごとにβ2受容体選択性が高くなり,β1受容体刺激による動悸や脈拍増加などの副作用が少なくなった.
気管支拡張薬であるβ2アドレナリン受容体刺激薬(以下β2刺激薬)は,その効果が即効性で強力であるため,現在でも気管支喘息発作の第一選択薬として用いられている.第2,第3世代と進むにつれてβ2選択性が高まり,循環器系への影響は少なくなってきている.気管支拡張薬の吸入方法も改善されてきており,第3世代はより使いやすく有用な薬となってきた.また,長時間作用型のβ2刺激薬も発売され,気管支喘息の予防維持薬や慢性閉塞性肺疾患治療薬としての位置づけもなされてきているため,気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患患者の増加とともに,今後ますます日常臨床にて第3世代β2刺激薬を使用する機会が増えると思われる.本稿では,β2刺激薬を使用する際に必要な相互作用・副作用を中心に,最近の知見を含めて紹介することとする.
キサンチン誘導体にはテオフィリン,アミノフィリン,ジプロフィリン,プロキシフィリンが市販されている.このうち,呼吸器系に対して使用されているものにテオフィリン(内服薬としてテオドール®・テオロング®・スロービッド®・ユニコン®・ユニフィル®,注射薬としてテオドリップ®)とアミノフィリン(内服薬としてネオフィリン®,坐剤としてアルビナ®,注射薬としてネオフィリン®〉,ジプロフィリン(内服薬・坐剤としてアストモリジン®,注射薬としてネオフィリンM®),プロキシフィリン(内服薬・注射薬としてモノフィリン®)がある.ジプロフィリンおよびプロキシフィリン注射薬はうっ血性心不全に適応を有する.
薬の副作用を考慮するにあたり,抗コリン薬(アトロベント®,テルシガン®,フルブロン®)は(経口ではなく)吸入で使用するため,全身的な副作用は軽微であるのが特徴である.しかし,投与対象となる疾患は慢性閉塞性肺疾患(chronicobstructive pulmonary disease:COPD)が主であり,そのため高齢者が多いことを考慮すると,併存疾患・併用薬剤に留意して吸入抗コリン薬を使用する必要はある.
吸入抗コリン薬は,日本呼吸器病学会が提唱しているCOPDガイドラインでは第一選択薬になっている.気管支喘息の気道閉塞に対する効果は限られているので,COPDが投与対象の主な疾患になる.
気管支喘息長期管理
気管支喘息は可逆性の気流制限により特徴づけられる疾患であるが,さまざまな炎症細胞や気道構成細胞が関与する気道炎症が重要な基本的病態である.気道炎症により気道過敏性が惹起され,容易に気流制限が起きる.喘息長期管理の目標は,気道炎症を制御・鎮静化することであり,強力な抗炎症作用をもつ吸入ステロイド薬(inhaledcorticosteroid:ICS)が中心的治療薬として位置づけられている.
ケミカルメディエーター遊離抑制薬は,アレルゲンにより感作された肥満細胞からのケミカルメディエーターの遊離抑制によりアレルギー反応を抑制する薬剤である.気管支喘息,アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患に適応があり,抗ヒスタミン薬よりも抗コリン作用による症状(眠気,口渇)が少なく,副作用も軽微なものが多い.
気管支喘息の予防効果が認められるまでに2~4週間必要であり,急性期症状の改善には無効である.患者指導においては,予防的に使用する薬剤であること,自己判断による服薬中止をしないこと,発作時には適切な対応がとれるように指導する必要がある.
ヒスタミンH1拮抗薬は,蕁麻疹やアトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,花粉症,気管支喘息などのアレルギー性疾患に対して使用される.
わが国での喘息予防・管理のガイドライン(1998年)のなかでは,抗喘息薬として急性増悪に対する治療薬ではなく,長期管理における重症度対応段階的薬物療法1)のなかに含まれる薬剤である.すなわち,軽症間欠型(ステップ1),軽症持続型(ステップ2),中等症持続型(ステップ3),重症持続型(ステップ4)のすべてに取り上げられており,諸外国のガイドライン(GINA,EPR—II)より,重視されている2).ステップ1ではロイコトリエン拮抗薬考慮,ステップ2,3では適用,ステップ4では考慮とされている.
抗アレルギー薬は,広義にはアレルギー性炎症を抑制する薬を指し,狭義にはIgEを介するアレルギー反応,すなわち即時型あるいはI型アレルギー反応に関与する化学伝達物質,すなわち炎症性メディエーター(表1)1)の遊離や作用を調節する薬剤の総称である.本稿では,そのなかでトロンボキサンA2阻害薬について述べる.この薬には,トロンボキサンA2合成酵素阻害薬とトロンボキサンA2拮抗薬(受容体拮抗薬)の2種類がある(表2).
気管支喘息,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎.
抗結核薬は一般に多剤併用が原則であり,副作用出現はどの薬剤が責任薬剤かわかりがたいことが多い.重篤な副作用出現時は全薬剤を中止し,可能性が低いと考えられる薬剤から1剤ずつ,経過をみながら再投与するのが原則である.この過程は比較的長期を要するので,この間の化学療法をカバーする観点から,該当副作用とは無関係と考えられる他抗結核薬(注射薬を含む)をこの期間投与すべきである.
以下,結核症の標準治療に用いられる薬剤の主な副作用について記載する.
近年の疫学調査によって,高脂血症,特に高コレステロール血症は,冠動脈疾患の最も重要な危険因子であることが明らかになっている.
生体のコレステロールは,食事から吸収されるもの(約30%)と,自ら生合成するもの(約70%)に大別される.HMG-CoA還元酵素阻害薬は,後者の律速酵素である3—ヒドロキシ−3—メチルグルタリル—CoA(HMG-CoA)還元酵素を阻害することによって,肝細胞内のコレステロール含有量を減少させる.肝細胞は細胞内のコレステロール含有量維持のためにLDL受容体を増加させ,LDLの肝への取り込みを増加させて,結果として血中のLDLを低下させる.
高脂血症(家族性高コレステロール血症,黄色腫を含む).
フィブラート系薬剤は,主にトリグリセライド(triglyceride:TG)を低下させ,高比重リポ蛋白(high density lipoprotein:HDL)を上昇させる作用をもち,わが国で以前から使用されていたが,総コレステロールの低下作用ではスタチン系薬剤に比べ弱かった.しかし,最近のベザフィブラート(ベザトールSR®)・フェノフィブラート(リパンチル®)はコレステロール低下作用も強い.フィブラート系薬剤の作用機序の詳細はこれまで明らかではなかったが,最近,肝細胞内の核内受容体の一つであるperoxisome proliferatoractivated receptor(PPAR)αを活性化して種々の蛋白質の発現を調節することにより,遅延する超低比重リポ蛋白(very-low-density lipoprotein:VLDL)の代謝を改善し,HDLを増加させることが明らかとなってきた.基本的にTGリッチなリポ蛋白の代謝を改善し,HDLを増加させる作用は,ベザフィブラート・フェノフィブラートとも共通であるが,肝機能や尿酸値に及ぼす影響は,この2剤では差が認められる.
本稿では,最近使用頻度の高くなったフィブラート系薬剤の副作用・相互作用につきまとめた.
陰イオン交換樹脂(レジン)系薬剤には,コレスチポール,コレスチラミン(クエストラン®),コレスチミド(コレバイン®)の3種があるが,コレスチポールはわが国では発売されず,コレスチラミンも本年5月に発売中止となったため,現在市販されているのはコレスチミドだけである.
ニコチン系薬剤(ペリシット®,コレキサシン®,ユベラニコチネート®など)は高TG(トリグリセリド)血症〔高VLDL(超低比重リポ蛋白)血症〕,高コレステロール血症〔高LDL(低比重リポ蛋白)血症〕に対して適応がある.Lp(a)の低下作用は,今のところ本剤にのみ認められている.
イコサペント酸エチル(エパデール®)は二重結合を5つもつn−3多価不飽和脂肪酸であるイコサペント酸(eicosapentaenoic acid:EPA)のエチルエステル体である.構造式を図1に示す.
本剤はイワシの脂から高純度に精製した脂肪酸で,魚脂中に多く含まれ,安全性は高いと考えられる.イコサペント酸エチルを服用すると,EPAとして各種細胞の細胞膜の主にリン脂質に取り込まれる.細胞膜がEPAに富むと,細胞膜の流動性が増し,血小板は凝集しにくくなり,血液粘度が下がり,赤血球は変形しやすくなるなど1),体が抗血栓に傾く.
(1)ほとんどすべての1型糖尿病.
(2)食事・運動療法,経口血糖降下薬で,血糖が十分に改善しない2型糖尿病.
(3)他の治療法では血糖が改善しない,その他の糖尿病.
(4)手術,外傷,感染症,高カロリー輸液などで,一時的に高血糖状態になっている症例.
(5)妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠.
スルホニル尿素薬(以下SU剤)は最も古くから糖尿病治療に用いられており,単剤での使用で最も血糖降下作用の強い経口糖尿病薬である.SU剤の主作用は,膵β細胞を刺激して内因性インスリンの分泌を促進することによって,血糖を下げることである.また,抗脂肪分解作用により血中遊離脂肪酸,中性脂肪の低下などが認められている.最も新しいSU剤であるグリメピリド(アマリール®)は,インスリン分泌作用はグリベンクラミド(ダオニール,オイグルコン®)に比べやや劣るが,血糖降下作用はほぼ同等であり,これはインスリン感受性改善などの膵外作用や肝内への糖の取り込み促進作用によるものと考えられている.
2型糖尿病における食後血糖推移の改善(ただし,食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合,または食事療法・運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害薬〔アカルボース(グルコバイ®),ボグリボース(ベイスン®)〕を使用している患者で,十分な効果が得られない場合に限る.
α-グルコシダーゼ阻害薬は,小腸からの糖の吸収を遅らせることによって,2型糖尿病の初期にみられる食後の血糖上昇を抑制し,「ブドウ糖毒性」によるインスリン分泌能およびその感受性の低下を改善させる.それは,糖尿病性網膜症,腎症,神経障害だけでなく,高脂血症,高血圧,肥満,動脈硬化などの発症・進展を抑えることにつながる.
本剤は単独投与だけでなく,他の経口血糖降下薬またはインスリンとの併用が有効である.現在市販されているのは,アカルボース(グルコバイ®)とボグリボース(ベイスン®)である.
●ビグアナイド(biguanide:BG)薬は,インスリン分泌を介さない膵外作用により血糖を下げ1〜4)(図1),表1に示すものが市販されている.
●血糖降下作用はmildで,単独あるいはスルホニル尿素(sulfonylurea:SU)薬をはじめとして,いずれの経口血糖降下薬およびインスリン製剤とも併用が可能で,大きな効果を発揮する5〜7).
2型糖尿病の患者で,食事・運動療法は無効で軽症〜中等症の糖尿病患者が適応となる・肥満でインスリン抵抗性の有するものほど有効であるので,インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR*の高いものに効果がみられる.また,男性よりも女性により有効である.1型糖尿病には適応とならない.SU剤など,治療していた患者が無効になった場合には,インスリン抵抗性改善薬を併用投与することにより,血糖が改善することもある.また最近,α—グルコシダーゼ阻害薬との併用も,保険適用が認可された.
糖尿病性末梢神経障害に伴う自覚症状(しびれ感,疼痛),振動覚異常,心拍変動異常の改善1).
肥満症治療は食事療法と運動療法がその中心となるが,その実践と長期的維持には行動療法的アプローチが必要である.さらにその補助療法として,薬物・外科療法などが用いられる.肥満症治療に用いられる薬物は,①中枢性食欲抑制薬,②代謝促進薬,③消化吸収阻害薬に分類される(表1).このなかで,わが国で現在使用可能な抗肥満薬は,保険適用のあるマジンドール(サノレックス®)に限られている.本稿では,この薬物を中心にわれわれの使用経験を交え,概説する.
アロプリノール〔alloprinol:AP(ザイロリック®,サロベール®,アロシトール®,リボール®,アノプロリン®,アリスメット®,アロチーム®,アロック®,アロリン®,アンジーフ®,サイトックD®,モナーク®)〕はキサンチンオキシダーゼ阻害薬であり,体内のキサンチンオキシダーゼの基質となるヒポキサンチンやキサンチンと拮抗して尿酸生成合成を抑制し,血中および尿中尿酸値を低下させる.
(1)痛風における高尿酸血症の改善.
(2)高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の改善.
尿酸排泄促進薬(ユリノーム®)は,尿細管における尿酸の再吸収を特異的に阻害し,尿酸の尿中への排泄を促進することで高尿酸血症を改善させる.
骨吸収抑制薬にはカルシトニン製剤,エストロゲン製剤,イプリフラボン,ビスホスホン酸製剤がある.本稿では,カルシトニン製剤およびイプリフラボンについて述べる.
活性型ビタミンD3製剤には,ビタミンD3の1α位のみが水酸化されたものと,1α位と25位の両方が水酸化されたものがある.前者がアルファカルシドール(ワンアルファ®,アルファロール®など)であり,後者がカルシトリオール(ロカルトロール®)である.
ビタミンD3はカルシトリオールの形で核内受容体に作用し,その生物活性をもたらすものであるため,厳密にはカルシトリオールのみが,「活性型」であるが,わが国においては両者が活性型ビタミンD3製剤として,保険適用を受けている.
1.経口薬
(1)骨粗鬆症,骨Paget病,脊髄損傷後・股関節形成術後の異所性骨化の抑制:エチドロネート(ダイドロネル®).
(2)骨粗鬆症:アレンドロネート(ボナロン®),フォサマック®),リセドロネート(アクトネル®,ベネット®).
ビタミンKは出血を防止する因子として発見されたビタミンで,凝固第II・VII・IX・X因子,プロテインC,オステオカルシンなどの蛋白に存在するグルタミン残基のγカルボキシル化(Gla化)に必須である.ビタミンKには,植物由来のK1(フィロキノン,別名フィトナジオン),動物由来のK2(メナキノン),および人工のK3(メナジオン)が存在する(図1).ビタミンK2には種々の同族体が存在するが,本邦では,K1およびメナキノン−4であるメナテトレノンが薬剤として使用されている(図1).ビタミンK2製剤としては,用量の異なる製剤(グラケー®,ケイツー®)が異なる疾患に対し保険適用となっている.
最初に,抗てんかん薬の種類を表1に示す.
Parkinson病,Parkinson症候群.
ドパミン受容体アゴニストは,ドパミン受容体を刺激して,ドパミン神経機能を高める薬である.現在,Parkinson病や下垂体腫瘍,産後の乳漏症の治療に用いられている.前者ではドパミンの不足によって起こるParkinson病の症状に対して,ドパミン受容体アゴニストを用いた補充療法である.後者は隆起漏斗系のドパミン神経が下垂体におけるプロラクチン分泌の抑制因子であることから,ドパミン受容体アゴニストによりプロラクチンの分泌を抑制するものである.
本稿では,前者の適応について概説する.
抗コリン薬はParkinson病治療薬として最も古い歴史があり,19世紀中頃より利用されている.現在使用されている抗コリン薬は1940年代後半に開発されたもので,中枢性抗コリン作用の強いものである.治療薬の中心がレボドパからドパミンアゴニストに移ってきた現在でも,発症初期の静止時振戦を主症状とする比較的若いPar—kinson病患者に対しては,first choiceとして使用されることがある.また,抗コリン薬が著効し,他剤では効果が期待できないParkinson症候群の例もある1).
大脳基底核における神経伝達において,ドパミンとアセチルコリンの間に均衡関係があると考えられている.コリン作動薬はParkinson症状を悪化させ,抗コリン薬はその症状を改善させることが示されてきている.Parkinson病における抗コリン薬の正確な作用機序は不明であるが,本疾患では黒質線条体ドパミンニューロンの機能低下によって,線条体コリン作動性ニューロンが機能亢進状態にある.したがって,その線条体コリン作動性ニューロンを抑制することにより,不均衡になった両ニューロンを是正することで治療効果を発揮すると考えられている.
塩酸アマンタジン(シンメトレル®)
Parkinson症候群,脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性の低下.
脳卒中の後遺症として頻度が高いものに,自覚症状としての頭重感,めまい,精神症候としての自発性の低下,抑うつ気分,知的機能の低下などがある.これらの後遺症が起こる病態として,脳循環代謝の障害が想定されている.
脳卒中後遺症に対する治療の中心は薬物療法であり,最初に薬物が用いられたのは約40数年前である.その後,多くの脳循環改善薬が開発されたが,最近の厚生省の指導による見直しにより,かなりの薬物が承認の取り消しを受けた1).
アリセプト®(塩酸ドネペジル)は軽度および中等度のAlzheimer型痴呆に対して,認知機能や行動異常の改善ならびに痴呆症状の進行抑制効果をもつ.1日1回3mgから開始し,1〜2週後に5mgに増量する.重度のAlzheimer型痴呆に適応はなく,またAlzheimer型痴呆の病理そのものの進行を抑制するという成績も得られていない.
現時点では,Alzheimer型痴呆以外の痴呆性疾患に適応はないが,最近,Lewy小体を伴う痴呆や血管性痴呆に対する有効性を確認した研究がいくつか報告されており,将来的に適応拡大される可能性はある.
本稿ではダントリウム®とボトックス®をとりあげる.両者の作用機序は全く異なり,ダントリウム®は筋に直接働くが,ボトックス®は神経終末からの神経伝達物質放出を阻害することにより神経筋伝達を阻害し,間接的に筋力を弱める.
中枢性筋弛緩薬は大脳,脳幹,脊髄の単シナプス・多シナプスに作用し抑制することで,筋弛緩をもたらす薬剤のことである1〜5).末梢性筋弛緩薬が外科的手術時に筋弛緩を得るために全身麻酔薬と併用されることが多いのに比べ,中枢性筋弛緩薬では痙性麻痺などに対する筋弛緩の目的で使用される.
痙性麻痺をきたす原因には,脳血管障害や脊髄障害などによる中枢神経系の器質性疾患が多い.上位運動ニューロン症候群(upper motor neuronsyndrome)では,痙直のほか,反射亢進,病的反射の出現,クローヌス,巧緻運動障害がみられる.中枢性筋弛緩薬は患者が最も困る上位運動ニューロン症候群の症状のうち,巧緻運動障害の改善には効果がないので,治療にはおのずと限界がある.つまり,手指の細かい運動,例えば箸を使ったり,手紙を書いたり,編み物をしたり,料理で食材を細かく切ったりする緻密な運動は,筋弛緩薬で痙直をとっても必ずしも改善しないので,薬効には限度があることを知ったうえでこれらの薬を使う必要がある.
適応(両剤共通)
(1)脳浮腫または頭蓋内圧亢進の改善.
(2)脳外科手術時の脳容積縮小.
(3)脳血流増加作用(血液粘度低下による微小循環改善).
(4)眼圧下降,眼容積縮小.
カフェルゴット®(酒石酸エルゴタミン1mg,無水カフェイン100mg)
片頭痛発作.
本邦では,めまい急性期に炭酸水素ナトリウム(メイロン®)静注が,慢性期にメシル酸ベタヒスチン(メリスロン®),アデノシン三リン酸二ナトリウム(アデポス®),塩酸ジフェニドール(セファドール®)などが,漠然と使われる機会が多い.しかし,これらの薬物は今日的意味でエビデンスは得られていないばかりか,臨床の現場で有用性を実感することもほとんどない.専門的立場からすると,めまい急性期には前庭抑制薬(抗ヒスタミン薬,ベンゾジアゼピン,抗コリン薬)と制吐薬の点滴治療で十分足りるし,それ以降は疾患に応じた特異的治療を行うことになる1,2).加えて,めまい発作で来院困難な状況,ないし来院に及ばない軽症発作時用に,前庭抑制薬と制吐薬の内服薬を頓服処方する.
以下,高度の急性めまい発作時の点滴治療薬とそれ以外の内服治療薬について解説する.
(1)慢性および急性副腎皮質機能不全.
(2)各種膠原病・自己免疫疾患:エリテマトーデス(全身性および慢性円板状),関節リウマチ,若年性関節リウマチ,リウマチ性多発筋痛症,全身性血管炎,多発性筋炎(皮膚筋炎)など.
(3)ネフローゼおよびネフローゼ症候群.
(4)呼吸器疾患:気管支喘息,間質性肺炎など.
(5)重症感染症(化学療法と併用する).
(6)血液疾患:自己免疫性溶血性貧血,特発性血小板減少性紫斑など.
(7)その他:潰瘍性大腸炎,劇症肝炎,アレルギー性皮膚炎など.
内科医が処方するステロイド薬には,プレドニゾロンのほか,メチルプレドニゾロン(メドロール®,ソルメドロール®),デキサメタゾン(デカドロン®,リメタゾン®),ベタメタゾン(リンデロン®),トリアムシノロン(ケナコルトA®)などがある.ヒドロコルチゾンを基準とした各種ステロイド薬の薬理作用の比較を表1に示す.ここではプレドニゾロン以外のステロイド薬について概説する.
1.アザチオプリン:AZP(イムラン®など)
わが国における保険適用は臓器移植における拒絶反応の抑制のみであり,副腎皮質ステロイドや他の免疫抑制薬との併用で用いることとなっている.膠原病はすべて保険適用外であるが,ステロイド抵抗性のさまざまな病態の改善目的でステロイドと併用される.例えば一次性血管炎や全身性エリテマトーデス(SLE)・関節リウマチ(RA)などに伴う二次性血管炎,筋炎,SLEや混合性結合組織病(MCTD)の腎炎・漿膜炎・関節炎・血小板減少症,あるいは筋炎などである1,2)(しかし,これらの疾患や病態に対して,最近ではシクロホスファミドパルス療法やシクロスポリンAが用いられることが多くなっている).通常1mg/kg/dayの単回投与より開始し,効果不十分なら2mg/kg/dayの2分割投与まで増量する.イギリスでの膠原病治療における最大投与量は3mg/kg/dayである.
エンドキサン®(シクロホスファミド)は本来ナイトロジェンマスタード系の抗悪性腫瘍薬で,アルキル化薬に分類される.投与後,生体内で活性化されて抗悪性腫瘍作用を示すプロドラッグでもある.しかし,同時に免疫抑制作用を有し,抗炎症薬ないし抗リウマチ薬として添付文書,医薬品インタビューフォーム(塩野義製薬)には記載されていない特異な使われ方をしている薬剤である.
プログラフ®(タクロリムス)は,シクロスポリン(サンディミュン®,ネオーラル®など)と同様の内服薬・注射薬に加えて,アトピー性皮膚炎の治療に用いる外皮用軟膏がある.以下,プログラフ®に関しては,内服薬・注射薬について,シクロスポリンとの相違点を挙げておく.
注射金製剤(シオゾール®:金チオリンゴ酸ナトリウム,以下GST),経口金製剤(リドーラ®:オーラノフィン,以下Aur),ともに関節リウマチが適応である.GSTは,抗リウマチ薬のなかでは中等度の薬効をもっており,病初期から中期の中等度の活動性の症例に使用される.Aurの抗リウマチ作用は軽度であるので,病初期の軽症症例に使用されることが多い.
GSTは筋注後,速やかに吸収され,約2時間で血中濃度は最高となる.その後,徐々に低下し,1週間後には半減する.毎週筋注を行うと血中金濃度は徐々に上昇し,6〜8週後にプラトー(平衡状態)に達する.Aur 6mgを経口投与すると,血中金濃度は約2時間後に最高となり,その半減期は17日である.6mg/dayを投与し続けると,血中濃度は徐々に上昇し,約2〜3ヵ月後にプラトーに達する.
1.メタルカプターゼ®(D-ペニシラミン)
(1)関節リウマチ(100mg/dayより開始し,200〜300mg/dayまで).
(2)Wilson病(1,000mg/dayを分1〜数回).
(3)強皮症(100mg/dayより開始し,200〜300mg/dayまで,保険適用外).
関節リウマチ(RA)の治療に用いられる代謝拮抗薬はメトトレキサート(MTX)とミゾリビン(MZR),アザチオプリン(AZ)である.近い将来認可されるレフルノミド(LEF)も,代謝拮抗薬に属する新規抗リウマチ薬である1).
関節リウマチ.
頭痛,歯痛,月経痛,感冒の解熱,関節リウマチ,リウマチ熱,症候性神経痛,狭心症・心筋梗塞・虚血性脳血管障害における血栓・塞栓形成の抑制,冠動脈バイパス術あるいは経皮経管冠動脈形成術施行後における血栓・塞栓形成の抑制.
アリール酢酸系の非ステロイド抗炎症薬(non—steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)は,一般に強力な薬物を多く含む薬物群とされてきた.しかし,近年の研究により,こうした化学構造によるNSAIDsの差別化よりは,シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenage:COX)選択性,血中半減期,プロドラッグといったNSAIDsのもつ機能で分けるほうが実際的であることが明らかとなってきた.そこで,本稿ではアリール酢酸系に含まれる薬物の副作用と相互作用の特徴について,以上の視点からまとめてみたい.なお,本稿で扱うNSAIDsは,ジクロフェナク(ボルタレン®),インドメタシン(インダシン®,インテバンSP®),スリンダク(クリノリル®),インドメタシンファルネシル(インフリー®),エトドラク(ハイペン®,オステラック®),ナブメトン(レリフェン®)である.
1.プロピオン酸系
プロピオン酸系のロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン®),イブプロフェン(ブルフェン®),ナプロキセン(ナイキサン®)などは,消炎,鎮痛,解熱作用を平均的に有し,関節リウマチ(RA)をはじめ,変形性関節症などRA以外の関節炎,腱・腱鞘炎,腰痛症,頸腕症候群,肩関節周囲炎,子宮付属器炎などの炎症性疾患に加え,神経痛,生理痛(月経困難),術後・抜歯後疼痛などの疼痛性疾患,さらにその解熱効果より急性上気道炎などの適応が認められている.
メロキシカム(モービック®),アンピロキシカム(フルカム®),ロルノキシカム(ロルカム®)は,オキシカム系に属する非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal antiinflammatory drugs:NSAID)である.オキシカム系NSAIDは一般に半減期が長いが,ロルノキシカムは半減期が短いのが特徴である.一般にNSAIDの副作用で最も問題となるのは,消化器系副作用であるが,アンピロキシカムはプロドラッグ化により,メロキシカムはCOX2選択性により消化器系副作用が軽減されている.
コルヒチン®(コルヒチン)は痛風発作の予防として,予感期に0.5mg(1錠)使用して発作の進展を防止する.日本医薬品集には痛風発作の寛解に,1日3〜4mg(6〜8錠)を6〜8回に分けて分服すると記載されているが,発作の寛解には非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を使用すべきである.尿酸降下薬の開始後に痛風発作を予防する目的で,1日0.5mgを尿酸降下薬に併用してしばらく連用するコルヒチンカバーと呼ばれる使用法もある.その他,保険適用はないがBehçet病,アミロイドーシス,原発性胆汁性肝硬変などの治療にも使われる.
ヒト成長ホルモン(hGH)は,191個のアミノ酸からなる分子量22Kのポリペプチドホルモンである.成長促進作用だけでなく,種々の代謝をつかさどっている.以前は,ヒト下垂体から抽出した製剤が用いられたが,現在はすべて遺伝子組換えによるhGHが製剤として用いられている.
1.先端巨大症・下垂体性巨人症(GH産生腺腫)
治療の第一選択は手術療法であるが,手術が困難な場合や,手術で効果が不十分な場合(残存腫瘍)に本剤が用いられる1).大きい腺腫の場合,術前に短期間(2週間程度),本剤の投与を行って腫瘍サイズの縮小を図ることが有効な場合がある.
産褥性乳汁分泌抑制,乳汁漏出症,高プロラクチン血性排卵障害,高プロラクチン血性下垂体腺腫,末端肥大症,下垂体性巨人症,Parkinson症候群.
デスモプレシン®(酢酸デスモプレシン:desmopressin acetate)点鼻液・点鼻スプレーは,下垂体後葉ホルモンの一つであるアルギニン・バゾプレシン(arginine vasopressin)の類似体であり,1位のシステインを脱アミノ化し,8位のL-アルギニンをD-アルギニンに置換した合成ペプチド(1-deamino−8-D-arginine vasopressin:dDAVP)である.バゾプレシンの受容体にはV1受容体とV2受容体があり,抗利尿作用にかかわるのはV2受容体で,d DAVPはV2受容体に親和性の高い類似体で,V1受容体を介した血管収縮作用,平滑筋収縮作用などが弱い.ピトレシン®(バゾプレシン:vasopressin)注射液は水溶性のバゾプレシン製剤で,受容体選択性はなく,血管収縮作用,平滑筋収縮作用をもつ.いずれも中枢性尿崩症の治療に用いるが,副作用,持続性,投与の簡便性からデスモプレシン®が主流となっている1).以前にタンニン酸ピトレシンが使われたこともあるが,効果の安定性,副作用,投与の簡便性で劣っており,わが国では販売されていない.
甲状腺機能亢進症.
粘液水腫,クレチン症,原発性ならびに下垂体性甲状腺機能低下症,甲状腺腫(内因性TSH分泌抑制による甲状腺良性腫瘍・甲状腺癌の縮小を目的とする).
エナルモンデポー®(エナント酸テストステロン)の適応は,男子性腺機能不全症(類宦官症),造精機能障害による男子不妊症,再生不良性貧血,骨髄線維症,腎性貧血である.
1.機能性出血
卵巣機能の低下によりエストロゲン濃度の変動をきたし,結果として少量の子宮出血を認める.
プロゲステロン製剤は,製剤により多少異なるが,以下のような臨床的適応がある.
①無月経,②月経周期異常(希発月経,多発月経),③月経量異常(過少月経,過多月経),④機能性子宮出血,⑤黄体機能不全,⑥切迫流・早産,⑦習慣性流・早産,⑧乳癌,⑨子宮体癌,⑩前立腺癌,⑪前立腺肥大.
以上のようにその多くが産婦人科領域である.しかし,近年では閉経後骨粗穎症に対するホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)として,内科領域などでも処方されることが多い.この場合,プロゲステロン製剤はエストロゲン単独投与による子宮内膜増殖および子宮体癌の発生を抑制する目的で使用するので,子宮を摘出した者に対して併用する必要はない.
エストロゲン・プロゲステロン配合剤には,いわゆる中用量ピルとしても用いられた配合剤と,避妊に用いられる低用量ピルがある1).
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)製剤として現在使用されている酢酸テトラコサクチドは,天然ACTHと同じアミノ酸配列(N末端から24番目)を有する合成ペプチドである(図1).コートロシン®注(静注,筋注)と,その作用を亜鉛懸濁液として持続化したコートロシンZ®注(筋注のみ)の2種類の酢酸テトラコサクチドが発売されている.
鉄は薬物でもあるが,自然界にも豊富に存在する.肉類,レバー,マメ科の植物,ひじき,のりなどに多く含まれ,また鉄製の調理道具からもかなりの鉄が食物中に放出される.しかし果物には鉄分は少なく,アルミやステンレスの調理道具からは鉄分の放出はほとんどみられない.健康成人は毎日平均食物鉄を20〜30mg摂取し,そのうちの5〜10%を主に十二指腸で吸収している.
鉄は人体内に3〜4g存在し,そのうち2〜2.5gはヘモグロビン(Hb)として末梢血赤血球内に,残りは大部分が貯蔵鉄で,ごく一部はチトクローム,ミオグロビンなどに含まれている.貯蔵鉄はフェリチンとヘモジデリンの2つの形で存在している.フェリチンは水溶性の鉄貯蔵蛋白質で,約2,500個のFe分子の格子型配列を核としアポフェリチンと呼ばれる蛋白で包まれている.ヘモジデリンは水に不溶性なフェリチンの重合したもので固定貯蔵鉄とも呼ばれ,肝細胞やマクロファージの中にみられる.鉄の吸収・排泄は成人男性では1mgに過ぎず,閉鎖系の代謝が行われている.
コロニー形成刺激因子(colony-stimulatingfactor:CSF)は,1966年にBradleyら1)が報告して以来,代表的なものとしてgranulocyte—CSF(G-CSF),granulocyte-macrophage-CSF(GM-CSF),macrophage-CSF(M-CSF),interleukin−3(IL−3)などが同定されているが,市販され,汎用されているのは前二者である.本稿では臨床の現場でしばしば用いられるG-CSF製剤の適応,副作用などについて概説したい.G—CSF製剤は,現在でこそ種々の好中球減少時に手軽に使用できる状態であるが,臨床的に使用可能となったのは,わずか10年前,1991年である.他の造血因子と同様,細胞表面の特定の受容体に接着し,好中球への分化および増殖の促進作用を有する糖蛋白である.
ヒトエリスロポエチン(EPO)は赤血球産生を調節する糖蛋白ホルモンとして1977年にMiyakeらによってヒトの尿から分離された1).1985年にはEPO遺伝子がクローニングされ2),rHuEPO(recombinant human erythropoietin)が生産可能となって以来,短期間で世界各地で臨床応用されるに至った.わが国ではエポチンアルファ(エスポー®),エポチンベータ(エポジン®)がよく使用されている.
ポリエチレングリコール処理ヒト免疫グロブリン(ヴェノグロブリン—IH®)の適応疾患は,①低ならびに無ガンマグロブリン血症,②重症感染症における抗生物質との併用,③特発性血小板減少性紫斑病(他剤が無効で,著明な出血傾向があり,外科的処置または出産など一時的止血管理を必要とする場合),④川崎病の急性期(重症であり,冠動脈障害の発生の危険がある場合)である.適応関連の注意として,川崎病に用いる場合は,発症後7日以内に投与を開始することが望ましい.
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leuke—mia:CML)(染色体検査もしくは遺伝子検査にて診断されたもの)
1.結晶ペニシリンGカリウム®(ベンジルペニシリンカリウム:PCG)
主にグラム陽性球菌,特に連鎖球菌に抗菌力を発揮する.βラクタマーゼ,特にペニシリナーゼに加水分解される弱点があり,例えば,黄色ブドウ球菌の大部分は耐性である.
(1)グラム陽性菌のブドウ球菌,連鎖球菌に有効である.ただし,腸球菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)には無効.
(2)大腸菌,プロテウス,クレブシエラなどのグラム陰性菌にも抗菌力を有するが,耐性化は進行しつつある.臨床的にはグラム陰性菌感染症治療の第一選択薬とはしない.
(1)第1世代と比較してグラム陽性菌に対する有効性では劣るが,βラクタマーゼに対する安定性が増強されており,グラム陰性菌であるインフルエンザ菌,バクテロイデス,モラクセラ,髄膜炎菌に対する抗菌力に優れている.広域スペクトラムの抗菌薬として頻用される.緑膿菌には無効.
(2)セフォチアム(CTM:パンスポリン®)は,呼吸器や耳鼻科領域の市中感染によく用いられる.嫌気性菌には全く抗菌作用を有しない.
(1)グラム陰性菌に対して特に強い抗菌作用を有し,院内感染や多剤耐性菌による感染症で用いられる.腸球菌あるいはMRSAには無効である.嫌気性菌には中等度の効果が期待される.しかし,同じ第3世代であっても緑膿菌や腸内細菌科Enterobacteriaceae(大腸菌,クレブシエラ,プロテウス,エンテロバクター,セラチアなど)に対する抗菌力には差がある.感染部位,患者の状況から起因菌を予測し,各施設の起因菌感受性パターンに合わせて適切な抗菌薬を選択する.抗菌薬は,細菌培養・感受性検査結果をみて変更する.
(2)セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン®)を除くと,グラム陽性菌感染症の第一選択薬として使用されることは通常ない.
アザクタム®(アズトレオナム)の適応は,下記適応菌種による下記適応疾患である.
適応菌種:①淋菌,②髄膜炎菌,③大腸菌,④シトロバクター属,⑤クレブシエラ属,⑥エンテロバクター属,⑦セラチア属,⑧プロテウス属,⑨緑膿菌,⑩インフルエンザ菌.
チエナム®(イミペネム・シラスタチンナトリウム)の適応は,下記適応菌種による下記適応疾患である.
適応菌種:①ブドウ球菌属,②レンサ球菌属,③腸球菌,④ペプトコッカス属,⑤ペプトストレプトコッカス属,⑥大腸菌,⑦シトロバクター属,⑧クレブシエラ属,⑨エンテロバクター属,⑩セラチア属,⑪プロテウス属,⑫シュードモナス属,⑬インフルエンザ菌,⑭アシネトバクター属,⑮バクテロイデス属.
1.硫酸アルベカシン(ハベカシン®)
メチシリン,セフェム耐性の黄色ブドウ球菌による敗血症,肺炎(バンコマイシンが使用できない例など).
テトラサイクリン系抗菌薬は,細菌の30Sリボソームに作用して,マクロライド系抗菌薬と同じく細菌の蛋白合成を阻害することにより抗菌力を発揮する.
マクロライド系抗菌薬は微生物の細胞内リボソームに結合し,50Sサブユニットでペプチド転移酵素反応を阻害することでテトラサイクリン系抗菌薬と同様に細菌の蛋白合成を阻害し,抗菌活性を発揮する.
リンコマイシン系抗菌薬は,わが国では塩酸リンコマイシン(リンコシン®,リンタマイシン®)と塩酸クリンダマイシン(ダラシン®)が市販されている.いずれも,ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌属,ペプトストレプトコッカス属,ペプトコッカス属に適応症を有している.ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌属に対する抗菌活性は,現在用いられている他の抗菌薬(セフェム系,カルバペネム系)と比較して強いものではなく,これらの細菌に対して第一選択として用いられることは少ない.リンコマイシン系抗菌薬の優れた特徴は,嫌気性菌に対する強い抗菌活性にある.特に塩酸クリンダマイシンは嫌気性菌感染症に対する第一選択として用いられることが多い.また塩酸クリンダマイシンはマイコプラズマに対しても適応を有している.
ホスホマイシン(FOM)は1969年,アメリカのメルク社とスペインのセパ社によって共同開発されて,日本では1980年より臨床応用されている.ホスホマイシンは図1のようなエポキシ環とC—P結合の両方を併せもつユニークな化学構造で,分子量は138.1と低分子の薬剤である.本物質の遊離酸は不安定であるが,カルシウム塩およびナトリウム塩はそれぞれ安定で,前者は経口薬,後者は注射剤・外用剤として製品化され,使用されている.