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ビタミンB12の威力
小松 則夫
1
1自治医科大学内科学講座血液学部門
pp.430
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909106
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20歳代の女性.産婦人科に不妊のため通院中,軽度の貧血と浮腫を指摘され,紹介受診した.低蛋白血症と大球性貧血を認めたが,よく聞くと,小さい頃に腸管の切除をしたという.物心ついたころからずっと浮腫があり,便も下痢状で,近所の医者に診てもらったが,原因はよくわからなかったという.さっそくビタミンB12と葉酸を測定した.葉酸値は正常で,血清ビタミンB12値は正常下限であったと記憶しているが,ずいぶん昔の話で記憶が定かでない点をご容赦願いたい.検査結果が出てから,とりあえずビタミンB12製剤を筋注してみた.なんと驚いたことに,貧血の改善とともに低蛋白血症も改善し,浮腫も消失し,そしてついに妊娠したのである.今では2児の母親となっている.現在も3ヵ月に1回の注射に外来を訪れるが,2人の娘を必ず連れてくる.彼女には私が神様にみえるらしい.
さてビタミンB12の欠乏と低蛋白血症との関係がわからぬまま,数年が経った.卒後5年目の血液コンサルト係の大学院生が相談に来た.貧血と難治性の浮腫で外科病棟に入院しているという.1ヵ月間精査したが,原因はわからず,その大学院生がコンサルト係として相談を受けたのである.
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