column
「患者の話をよく聞け」
伊藤 澄信
1
1順天堂大学医学部総合診療科・臨床薬理学
pp.182
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909002
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医者になって数年.三次救急にも不安がなくなった頃.16歳の高校生がお母さんに連れられて総合内科の初診外来を受診.昨日から手が震えるようになり,歩行もしにくいという.診察してみると手がこきざみに震えている.歩行させると少し不安定である.これは,年齢も若いし先天性の神経・筋疾患かもしれないが,脳腫瘍なども見落とすわけにはいかないしと,CPKを含む採血と頭部CTを緊急で撮影し,神経内科医長の外来に診療依頼をした.しばらくして,神経内科医長から電話があり,「おまえ,患者さんから話をちゃんときいてないだろう.昨日,○○病院からプリンペラン®が出ているじゃないか.変な症状が出ているときは薬を疑わなきゃだめじゃないか」と怒られた.セカンドオピニオンとまでいわなくても,他の医師の意見も聞きたいと受診される患者さんも多いが,他院に通院していたことを自己申告してくれる患者さんは少ない.「何か薬を飲んでいますか」と聞くのが患者さんの抵抗が少ないので,成人患者には必ず聞くことにしているが,まさか,元気そうな高校生が薬を飲んでいるとは思っていなかった.その患者さんは,プリンペラン®をやめてすぐに不随意運動は消失した.頭部CTや血液検査などに異常がなかったことはいうまでもない.
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