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ゲノム情報の活用事例
劉 世玉
1
1グラクソ・スミスクライン(株)研究本部
pp.242
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909026
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近年,遺伝子解析技術の飛躍的な進歩を背景に,ヒトをはじめとする各種生物のゲノム解析や新規遺伝子探索研究が急速に進展し,このゲノム情報の活用が多方面にわたって検討されている.このなかで最も重要でニーズが高いと考えられているのが,各人のゲノム情報・遺伝的特徴をもとに,より個人個人に適した医療を提供することであろう.製薬企業は,薬剤の開発時間を短縮するために,ゲノム情報を基にしたゲノム創薬といわれる新しいアプローチを試みようとしている.ここでは,2つの例を紹介することでこのアプローチの有用性を説明したい.
アバカビル(ザイアジェン®)は,ヒト免疫不全ウィルス(HIV)の治療によく使われている薬の一つである.この薬の主な副作用は過敏反応(HSR)である.約4.3%の患者が投与開始後6週以内に発熱,発疹,胃腸および呼吸器不快などの症状を訴える.投与を中止すると,症状は速やかに消失する.そこで,アバカビルで治療した患者中,HSRを発症した人としなかった人を選び,遺伝子解析を行った.2つの遺伝子TNF-α-238とHLA-B 57上の多型の有無に,このHSRとの相関性が認められた.
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