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賠償
伊藤 澄信
1
1順天堂大学医学部総合診療科・臨床薬理学
pp.233
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909023
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免疫抑制剤と散剤のステロイドを内服している天疱瘡をもつ45歳男性.患者さんから「ステロイドの減量時と同じように口腔内病変が悪化したので,薬がおかしいのではないか」と連絡があり,調査の結果,薬剤部がステロイドの量を間違えて1/10量を調剤したことが発覚した.散剤なので見た目や味などではわかるはずがないが,病態の変化で薬剤の投与量の違いを指摘できるほど,患者さんは鋭い.40歳代の働いている方なので,口腔内病変の悪化のために勤務できなくなった分の休業補償と医療費の弁済を申し出られている.
ある病院で1歳の女児で入院中,解熱薬の坐薬を肛門と膣を間違えて挿入.膣からの出血があり,患者さんの家族から高額の賠償と将来問題が生じたときの補償を請求されたという.医療への不信は日増しに強くなっている印象があり,訴訟までは至っていないが,表に出ない事例の示談交渉で病院事務方は頭を抱えている.日本の賠償責任保険費用は米国に比べると著しく低廉であるが,1988(平成元)年に年間300件代後半だった医療訴訟件数が,2000(平成12)年には800件を超え,このままでは保険費用が高騰しかねない.
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