column
お国変われば.
岡田 正人
1
1American Hospital of Paris
pp.59
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908946
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ニューヨークで研修を始めたころは,マークハントのパンチのように早い英語がさっぱりわからず,Yes Noで答える質問ばかりに切り替え何とか診療した記憶がある.夜CNNを見ては,どうしてこういうきれいな英語を話す患者が入院してこないんだと嘆いたものであった.英語だけの問題ではないだろうが,他の研修医の患者で喘息発作時用の気管支拡張薬の効きが悪いというので実際に使ってみてもらったら,消臭スプレーのように空気中に2スプレーしていきなり深呼吸を始めたというのを聞いたことがある.
5年前にフランスに移ってからは,久しぶりに日本人の患者さんを診察することが多くなったが,思わぬ落とし穴によく遭遇する.坐薬だから座って飲んだというのはよく聞く話だが,「よく振ってからあげてください」といったら,お母さんから「薬を飲ませると吐くんですけど」と電話を受けて,よく聞くと赤ちゃんを振ってからシロップを飲ませていたというのには驚いた.「あの薬は飲みにくいので変えて下さい」といわれ,「苦いですか」と聞くと,「口の中がシュワシュワしてあまり好きじゃないです」といわれたのは,水に溶かす錠剤だった.NSAIDなども,「食後に飲んでください」と指導しても,フランスではゆっくり食べて,デザート,コーヒー,そして食後酒まで済んでから飲まれてしまうともう寝る寸前で,胃が痛くなる人が多いため,食事と混ざるように「メインの後に飲んでください」という説明にする必要があった.
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