column
思いがけない副作用—“浦島太郎”と“幻覚”
北野 邦孝
1
1松戸神経内科
pp.303
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909050
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50歳,男性・普段は蓼科に住んでいる.とある瀟洒なレストランのシェフである.季節ごとに帰省というか自分の家に帰ってくると,私のところへ訪ねてくる.ある日のこと,いつものように呼び入れて対面したとたん本当に驚いた.彼のフサフサとした黒髪が全く消え失せ,頭は全面的にツルツルである.しかも,蓄えた口髭と顎髭が真っ白ではないか.つい先般まで流行であったスキンヘッドにしてはおかしい.頭髪を剃った感じではない…,抜け落ちたとしか思えない.口髭,顎髭に手を加えて見事に真っ白にしたとも思えない.私は,思わず「どうしたの?!」と口走ってしまった.「先生,実は蓼科の冬は雪が深くて…,屋根から落ちてきた雪の固まりで背中と腕に打撲傷を負ったんです.あまりに痛いものですから近くの病院へ行きましてね…,ボルタレン®(ジクロフェナクナトリウム)という鎮痛剤をもらったんです.飲みましたらね,痛みはほどなく落ち着いたんですが頭の髪がどんどん抜ける,髭は白くなってしまってこんな有様です」,「へー,驚いた…,まるで浦島太郎だね.頭の髪は抜けて,髭は白くなった?…同じ毛でも性質が違うんだ」.それから半年後,彼の頭髪と髭は元の通りに戻っていた.
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