雑誌文献を検索します。書籍を検索する際には「書籍検索」を選択してください。
すべて タイトル 著者 特集名 キーワード 検索
書誌情報 このジャーナル すべてのジャーナル 詳細検索 by 医中誌
Clinical Engineering CLINICAL CALCIUM 細胞工学(一部の論文のみ) 臨床栄養 化学療法の領域 薬局 Medical Technology 検査と技術 臨床検査 CANCER BOARD of the BREAST Cancer Board Square 胆膵Oncology Forum Pharma Medica 医学のあゆみ 医薬ジャーナル 診断と治療 生体の科学 総合診療 JIM 感染制御と予防衛生 感染対策ICTジャーナル 公衆衛生 BeyondER medicina 臨床雑誌内科 治療 J. of Clinical Rehabilitation The Japanese Journal ofRehabilitation Medicine 作業療法 作業療法ジャーナル 総合リハビリテーション 地域リハビリテーション 理学療法ジャーナル 理学療法と作業療法 感染と抗菌薬 アレルギー・免疫 JSES 内視鏡外科 関節外科 基礎と臨床 整形・災害外科 臨床雑誌整形外科 臨床整形外科 呼吸器ジャーナル Heart View 循環器ジャーナル 呼吸と循環 血液フロンティア INTESTINE THE GI FOREFRONT 胃と腸 消化器内視鏡 臨牀消化器内科 臨床泌尿器科 腎と骨代謝 腎と透析 臨牀透析 HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY 糖尿病診療マスター Brain and Nerve 脳と神経 神経研究の進歩 BRAIN and NERVE MD Frontier 脊椎脊髄ジャーナル Neurological Surgery 脳神経外科 言語聴覚研究 精神医学 Frontiers in Alcoholism 臨床放射線 画像診断 肝胆膵画像 消化器画像 臨床画像 JOHNS 形成外科 胸部外科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 手術 小児外科 日本内視鏡外科学会雑誌 臨床外科 臨床雑誌外科 LiSA LiSA別冊 麻酔 別冊整形外科 Fetal & Neonatal Medicine 産科と婦人科 産婦人科の実際 臨床婦人科産科 周産期医学 皮膚科の臨床 皮膚病診療 臨床皮膚科 臨床皮膚泌尿器科 チャイルドヘルス 小児科 小児科診療 小児内科 耳鼻咽喉科 Frontiers in Dry Eye Frontiers in Glaucoma 眼科 臨床眼科 Hospitalist 病院 INTENSIVIST エキスパートナース がん看護 コミュニティケア 看護学雑誌 看護管理 看護教育 看護研究 助産雑誌 助産婦雑誌 精神看護 日本看護協会機関誌「看護」 保健師ジャーナル 保健婦雑誌 訪問看護と介護 社会保険旬報 --------------------- 日本がん看護学会誌 日本看護医療学会雑誌 日本看護科学会誌 日本看護診断学会誌(看護診断) 日本看護倫理学会誌 日本災害看護学会誌 日本腎不全看護学会誌 日本糖尿病教育・看護学会誌 日本母子看護学会誌 日本老年看護学会誌(老年看護学) 検索
フリーワード 詳細検索 by 医中誌
・本誌本文中にモノクロ掲載した図表のうち,カラーで掲示すべきものを順に並べた.
〔p.329/図4〕
〔p.333/図1〕
〔p.334/図2〕
〔p.347/図2〕
〔p.348/図3〕
〔p.348/図4〕
〔p.349/図5〕
〔p.354/図〕
〔p.362/図1〕
〔p.364/図1〕
〔p.434/図2〕
〔p.655/図1〕
〔p.656/図3〕
〔p.657/図4〕
〔p.659/図1〕
〔p.659/図2〕
〔p.661/図4〕
〔p.723/図〕
〔p.902/図1〕
〔p.903/図3〕
〔p.932/図1〕
〔p.932/図2〕
〔p.932/図3〕
〔p.933/図4〕
〔p.933/図5〕
〔p.933/図6〕
〔p.935/図2〕
「小児科診療」定番の「小児の治療指針」は,多くの小児科医に受け入れられ,ともに歩みながら,前回の81巻(2018年版)から5年ぶりの改訂となりました.その間,コロナ禍を経験しましたが,小児科の領域においては,目立った診断や治療の遅れは指摘されず,今や立ち直りつつあります.その理由は,当分野の診療の基本がしっかりした定礎の上に立っているからでありましょう.この揺るぎない診療の基本は,誰の目から見ても「わかりやすい」ものであるべきです.本誌の基本コンセプトは「わかりやすさ」であり,10版目となる改訂では,小児診療に携わる医師が実地臨床現場で重症度を考え,患者に適切な治療が実践できるように,かつup to dateな情報も入手できるよう,項目・構成の大幅な見直しをしております.また,専門以外の領域においても,読者が最新レベルの知識をもって診療にあたれるよう,わかりやすく解説されています.
外来でみられる症状・症候のなかで,発熱ほどよく目にするものはない.発熱からの時間経過を意識しながら,問診,身体所見,場合によって各種検査を駆使して,熱源を見極めることが重要である.
かぜの多くはウイルス感染症であり,基本的に抗菌薬投与は不要である.近年の新型コロナウイルス感染症流行を省みて,検査・治療だけでなく,問診・診察・説明といったかぜ診療の「見直し」が,今こそ重要である.
急性咳嗽,遷延性咳嗽,慢性咳嗽および救急医療の必要な咳嗽に分類し,想定すべき病態を考える.急性咳嗽は感染症が原因であることが多く,遷延性,慢性になるにしたがって,感染以外の原因が増加する.また,年齢により鑑別疾患が異なることに注意する.咳嗽疾患の鑑別には,詳細な問診,身体所見,血液・感染検査,生理学的検査,画像検査が有用である.長引く咳嗽疾患の場合,診断的治療が有用であり,各種薬剤の改善効果を主観的評価尺度(VAS)を用いて評価する.最後に咳嗽疾患治療のピットフォールと対策について言及する.
主観である頭痛を客観的に評価することは難しい.丁寧な問診と診察にて二次性頭痛を否定し,片頭痛や緊張型頭痛などを正確に診断する.非薬物療法を軸に薬物療法にて加療し,頭痛との上手な付き合い方を模索したい.
日常診療で遭遇する腹痛の多くは軽症例だが,まれに含まれる重症例を正確に診断し,致死的合併症を防がなければならない.腹痛は問診と診察所見・臨床症状から,背後の原因疾患を推測することがきわめて肝要である.
小児の嘔吐の原因の多くは消化管疾患だが,消化管以外の疾患も常に考える.重症を見逃さないコツは基本的な問診と身体所見に加え保護者や医療従事者が抱いた不安や違和感を放置せず,積極的に介入することである.
下痢は最も多く経験される症状の一つであり,詳細な問診により急性もしくは慢性下痢であるかを判断する.身体所見により脱水・栄養状態の評価を行いつつ,病態の把握・疾患の鑑別を進めていく.脱水の治療においては経口補水療法(ORT)が有用である.
小児の便秘は,“便秘の悪循環” のため,放置しておくと容易に悪化する.日常診療では,まず,問診および身体所見から “便秘症の存在” を疑うことが鍵となる.治療の第一歩は,たまっている便塊除去(disimpaction)にある.
蕁麻疹はかゆみを伴う膨疹である.原因検索には病歴聴取が最も重要であるが,その多くは原因が特定されない特発性のものである.発症6週間未満を急性,6週間以上を慢性に分類する.治療は原因・悪化因子の除去・回避と,抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法である.皮膚以外の臓器にも症状を認める場合は,アナフィラキシーの可能性も考慮に入れ,アドレナリン投与を検討する.
尿排泄の自立は成長とともに獲得されるが,5歳以降も尿失禁や夜尿が続く場合は病的である.尿失禁や夜尿がいったん解消していたものが再発した場合は,脳・脊髄・その他全身疾患の発症の評価が必要で,それらが除外された場合は,心因性の要因などを考慮して対応を行う.基礎疾患として慢性便秘症が重要で,他にADHDの併存の有無にも留意する.
ショックとは,組織の酸素需要と代謝に見合うだけの酸素供給と栄養物質を供給できない循環不全の状態である.単なる低血圧だけがショックでないことに注意し,低血圧を呈する前の代償性ショックの状況で気づき,介入できることが望ましい.
意識障害と失神は,中枢神経系から循環器,代謝・内分泌系などの多様な原因疾患により生じる.緊急性と重症度も様々で,致死的な原因疾患もあるため,初期から原因疾患と病態に応じた適切な対応をする必要がある.
けいれん重積状態はけいれん性てんかん重積状態と同義であり,その原因は多岐にわたる.治療はバイタルサインの安定を優先する.発作停止後の非けいれん性SEの評価には脳波モニタリングの実施が望ましい.
呼吸困難小児の病状は急速に進行し,呼吸不全から心肺停止,死に至る可能性がある.年齢,病歴,症状,身体所見から緊急性を判断し,ベッドサイドで検査を行い,病態に沿った治療を速やかに行う必要がある.
大量の消化管出血は,生命予後にかかわる.循環動態を安定させ,病因に応じた止血処置を行う.出血部位と原因疾患を推定し,緊急内視鏡による内視鏡的止血術の適応となる疾患を適切に診断することが最も重要である.
乏尿とは一般的に尿量0.5mL/kg/時以下をさし,無尿は極端な乏尿と捉えられる.乏尿・無尿のおもな原因は急性腎不全であるが,尿量減少を呈し得るその他の病態や,尿閉の可能性にも留意し鑑別・治療を進める必要がある.
低血糖,糖尿病性ケトアシドーシス,甲状腺クリーゼについて概説する.内分泌疾患は慢性な経過を示すことが多いが,上記病態は初期対応が後遺障害や生命予後に影響し得るため,診療ポイントを十分理解しておく必要がある.
先天代謝異常症を疑う患者をみた際にまずfirst lineとなる検査を提出し検査/治療の方向性をつける.おおまかな病態を判断しつつ初期治療を開始し,同時に確定診断に至るためのsecond lineの検査を提出しつつ治療に臨むことが必要である.
脱水は,小児の日常診療でよく遭遇する病態である.問診と臨床症状,身体所見から脱水の重症度を判断し,軽度~中等度の脱水では経口補水療法,重度の脱水では経静脈輸液療法で,欠乏水分と電解質の補充を行う.
誤飲・中毒の診療はそれを疑うことからはじまる.起因物質・薬剤にかかわらずABCDEアプローチを用いて蘇生を行い,起因物質の同定と,それに応じた除去,除染,解毒・拮抗薬の投与などの根本治療がそのあとに続く.
熱傷も一般的な外傷診療同様,ABCDEアプローチで診療を開始する.虐待にも留意しながら,その他の外傷合併を検索する.補液や入院適応を考えながら,創部の処置を行う.
熱中症は,古典的(非労作性)熱中症と,労作性熱中症に分類され,重症度ではⅠ度からⅢ度に分けられる.治療で重要なのは冷却および水分と塩分の補給である.重症の場合は後遺症や死亡例もあり,予防が重要である.
悪性高熱症はきわめてまれな全身麻酔をかけたときにしか発症しない遺伝性の筋疾患である.発症に速やかに気づき,できるだけ早くアルゴリズムに則った治療を開始できるかどうかが,その後の生命予後に影響する.
溺水の基本病態は低酸素症による組織細胞障害であり,現場での心肺蘇生が予後改善に最も有効である.軽症にみえても時間経過とともに呼吸状態が悪化する例もあるため,6~12時間は病院で経過観察が望ましい.てんかんや不整脈などの背景疾患に留意するとともに,溺水は予後不良だが防げる事故であり,予防啓発が重要である.
小児は身体的・生理的特徴から多臓器の損傷が起こりやすい.PATやprimary surveyによる適切な評価を行い,呼吸・循環の安定確保を優先する.頭部外傷では二次性脳障害の病態を理解して治療を行う.虐待の徴候にも注意を要する.
抗菌薬療法で重要なことは,薬剤耐性対策アクションプランに従い,各種感染症の治療ガイドラインあるいは日本版感染症治療ガイドを参照しながら,各感染病型の主要原因菌,薬剤感受性動向,抗菌薬の薬物動態,適切な抗菌薬の投与期間,抗菌薬の有効性評価を常に意識しながら,抗菌薬の適正使用を心がけることである.
菌血症と敗血症は異なるものである.菌血症は状態であり,敗血症は疾患概念である.菌血症では検出された菌から感染巣や病態を推定することが可能である.敗血症とは,重症感染症を早期に認知し早期に加療するためのツールとしての疾患概念である.そのために定義や診断基準も時代に伴い変遷していく.感染症治療と同じくらい臓器障害の治療が重要である.菌血症でも敗血症でも感染症診療の原則に沿って治療することが大切である.
細菌性髄膜炎の診断においては,髄腋塗抹鏡検や抗原検査により,起炎菌の推定に努めるとともに,治療にあたっては,想定される起炎菌に対して,耐性菌を含めカバーできる抗菌薬を十分量投与する.
外傷や熱傷などで皮膚のバリアが破壊されることにより感染する.皮膚所見から深度を予測し,第1世代セフェム抗菌薬での治療を開始する.重症度が高い,またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を疑う病歴があればより広域抗菌薬を選択する.
クループ症候群,気管支肺感染症患者は,病変の違いにより異なる症状を呈する.しかし,ウイルス,細菌が原因微生物の主体である点は共通している.入院適応や抗菌薬の要否について的確に判断することが重要である.
感染性心内膜炎(IE)は心内腔,弁膜,大血管内膜を主病変とする感染症で,基礎疾患,感染部位,塞栓部位,免疫学的反応により多彩な症状を呈する.死亡率は高く的確な診断と手術治療も考慮に入れた的確な治療を要する.
感染性胃腸炎は嘔吐,下痢,発熱,腹痛,血便などの症状を呈する.病原体はウイルスと細菌が大半で,特にウイルスが多い.食中毒は潜伏期間が短い傾向にある.小児は容易に脱水に陥りやすいため注意が必要である.
小児の発熱では常に尿路感染症の可能性を念頭におく.上部尿路感染症では腎瘢痕をきたす危険性があるため速やかな診断と治療が必要である.確定診断は尿中の細菌検出によるが,尿中白血球増多など検尿異常があれば本疾患を疑い,尿培養を採取し抗菌薬治療を開始する.原因に先天性腎尿路異常や機能性排便排尿障害の合併頻度が高い.
四肢の痛みや,動かさないなどの症状とともに発熱している場合,化膿性骨髄炎や関節炎を疑い,画像検査や血液検査を行う.化膿性関節炎は緊急手術,骨髄炎は腫瘍の鑑別が必要.経静脈的最大量の抗菌薬で治療開始する.
小児の結核は年齢により病気の進行が異なるので,乳幼児では全身播種や髄膜炎合併などの重症化の可能性を念頭に,学童では成人と同様,排菌による周囲への感染に留意して診療を行う必要がある.
非結核性抗酸菌は自然界に広く存在するが感染力は弱く,免疫能低下などに伴う日和見感染症として問題となる.小児では表在性リンパ節炎,皮膚感染症,肺感染症のほか,まれに全身播種性の感染症をみる.
小児の深在性真菌症は,特定のリスクファクターをもった児に起こることが多い.近年,小児に適用が拡大になった抗真菌薬も散見され,本稿ではおもな深在性真菌症に対する小児における治療(抗真菌薬)につき概説する.
本来,小児(8歳未満)へのテトラサイクリン(TC)系抗菌薬の投与は禁忌とされるが,つつが虫病や日本紅斑滅には著効するため,有用性が勝る場合は治療を優先する.日本紅斑熱では,症状によりTC系抗菌薬とニューキノロン(NQ)系抗菌薬の併用も考慮する.TC系抗菌薬にアレルギーがある場合はクロラムフェニコールを用いる.
マラリアは,蚊によって媒介され,突然の発熱で発症する.特に熱帯熱マラリアの感染例では重症化をまねく.診断の基本は,血液塗抹標本によるマラリア原虫の検出である.治療にはリアメット®配合錠などが用いられるが,体重による調整が必要となる.マラリア患者を診断した場合には,診療経験のある医療機関への相談,転院が考慮される.
デング熱は蚊が媒介する感染症であり,熱帯から亜熱帯地域に広く流行している.発熱を主症状とする輸入感染症として頻度の高い疾患である.潜伏期間は短く帰国後まもなく発症することが多く,白血球減少,血小板減少を呈する.診断には迅速診断キットなどが使用可能である.特異的治療はなく,適切な対症療法を実施する.
コレラは,突然出現する大量の水様便を初発症状とし,急速に重度の脱水,腎不全,電解質・酸塩基異常へ進行する.治療は,重症度の評価に基づく水・電解質管理を中心とした全身管理が重要であり,発症早期からの治療介入により予後の改善が得られる.
細菌性赤痢では,腹痛,発熱,血便,テネスムスなどの症状が認められる.赤痢菌はShigella sonnei菌による感染例が多く認められる.赤痢菌は少量でも感染が成立するため,感染力が強く,二次感染,集団発生も報告されている.
新生児の細菌感染症の中で,特に重要なのが,B群溶血性レンサ球菌,大腸菌などによる敗血症や髄膜炎などの重症感染症である.早発型と遅発型に分かれ,その病態と起因菌が異なる.多くの場合,アンピシリンとセフォタキシムで初期治療を開始し,培養検査の結果後,速やかに起因菌に応じた薬剤に変更し,決められた投与期間治療することが重要である.
新生児のウイルス感染症は,TORCHを代表とする胎児期に感染することで先天異常を引き起こすものと,出生前後に母子感染または水平感染によるものとがある.ウイルスの関与を疑い適切な検査を提出し,治療に結びつけることが重要である.
黄色ブドウ球菌による感染症は多岐にわたり,毒素によって引き起こされる疾患も重要である.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に効果的な抗菌薬は限られているため,適切な診断と治療が必要である.
治療の基本は急性症状の改善と続発症の予防,伝播防止である.第1選択薬はペニシリン系抗菌薬であるが,セフェム系抗菌薬なども用いられる.咽頭・扁桃炎以外にも症状は多彩であり,続発症も念頭におく必要がある.
13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)導入後,侵襲性肺炎球菌感染症のみならず,中耳炎や市中肺炎に対する効果が認められている.一方,PCV13非含有血清型の肺炎球菌感染症が相対的に顕在化してきた.
菌検出のため,抗菌薬投与前に臨床材料の採取は必須である.髄膜炎の初期治療薬として,第3世代セフェム系抗菌薬とカルバペネム系抗菌薬の併用が第1選択である.菌血症を伴わない非侵襲(局所)性感染症ではアモキシシリン内服またはアンピシリン静注にて治療開始し,インフルエンザ菌の感受性判明後に適合抗菌薬に変更する治療で対応可能である.
ワクチン未接種の乳児は重症化しやすい.迅速な抗菌薬治療が必要となるため,抗菌薬使用の判断となる抗原検査が重要となる.
マイコプラズマ感染症は,幼・小児期においても決してまれではなく,この場合,上気道感染~気管支炎が主体で,肺炎の病像をとらないことが多い.治療はマクロライド系抗菌薬が有効である.マクロライド系抗菌薬治療で発熱が遷延する場合は,マクロライド耐性マイコプラズマ感染を考慮してテトラサイクリン系またはキノロン系抗菌薬を選択する.
レジオネラ属菌は細胞内寄生菌である.病歴からレジオネラ感染症を想起することで早期診断し,マクロライド系抗菌薬,ニューキノロン系抗菌薬(小児使用制限を考慮)など,細胞内移行の良好な抗菌薬を使用する.
クラミジア感染症はトラコーマクラミジア,肺炎クラミドフィラ,オウム病クラミドフィラの3菌種がかかわる.それぞれ,発症年齢,臨床症状に特徴がある.治療薬の第1選択としてマクロライド系抗菌薬が効果的である.
わが国の細菌性腸炎の原因菌はカンピロバクター属菌と非チフス性サルモネラ属菌の頻度が高い.いずれも多くは対症療法で自然治癒する.サルモネラ腸炎は菌血症に伴う局所感染症を呈する症例もあり重症例や免疫不全者では注意が必要である.
下痢原性大腸菌は食中毒の原因菌で,病原因子の違いにより様々な下痢や腹痛,嘔吐などの症状を示す.治療は補水,食事療法,感染対策で,抗菌薬の必要例は少ない.
急性胃腸炎症状が主体であるが,回盲部病変,川崎病の症状や急性腎不全の合併など,多彩な臨床症状を呈することがある.抗菌薬の適応,内容などは未確立であり,合併症にはそれに応じた迅速で,適切な対応が重要である.
GBSは,新生児では髄膜炎や敗血症などの重篤な感染症の原因菌となり,予後不良のことが多い.現時点では,垂直感染予防として妊娠35~37週に腟入口部ならびに肛門から採取した検体を用いて培養検査を行い,ペニシリン系抗菌薬による母子感染予防を行う.
小児期の感染は髄膜炎が主で,新生児期の感染例では死亡例も多い.セフェム系抗菌薬は無効で,アンピシリンとゲンタマイシンの静注が推奨される.アンピシリン無効と考えられる場合にはカルバペネム系の選択を考慮する.
本症の罹患率は近年増加傾向にある.未受診などから見落とされる可能性がある.診断はSTSとTPHAを組み合わせて行う.ベンジルペニシリンベンザチン水和物(筋注)が薬価収載された.早期かつ的確な治療が重要である.
ネコひっかき病(cat scratch disease:CSD)はひっかきをはじめとするネコなどとの接触によるBartonella henselaeなどのバルトネラ属菌の感染で発症する.典型的な経過では受傷後10~14日に局所リンパ節が腫大し,発熱,全身倦怠感などの症状が数週間持続する.
麻疹は空気感染し,重症化しやすい感染症である.五類感染症の全数把握疾患で,疑った時点で24時間以内に最寄りの保健所に報告する.風疹は胎児に先天性風疹症候群(CRS)を起こす.五類感染症の全数把握疾患で,診断後1週間以内に最寄りの保健所に報告する.
ムンプスの診断には地域の流行や発症者との接触機会の確認が重要である.一般におたふくかぜワクチン歴にかかわらず,ムンプス流行時の急性耳下腺腫脹はムンプスであり,ムンプス非流行時の急性耳下腺腫脹はムンプス以外が原因である.
インフルエンザ症状は非特異的であり,確定診断には迅速抗原検査が必要である.抗インフルエンザ薬(経口,吸入,点滴)は,症状や合併症にあわせて柔軟に選択する.
RSウイルス,ヒトメタニューモウイルス,ヒトボカウイルスによる感染症の初発症状はいずれも普通感冒症状である.入院加療の見極めが重要であり,特にRSウイルス感染症では月齢3か月未満での無呼吸に注意する.
ヒトパレコウイルスの中でも特に3型は新生児や生後3か月未満の乳児に敗血症,髄膜脳炎を起こす.新型コロナウイルス感染症流行後に激減したが2022年には米国で複数発生の報告があり,今後の動向に注意が必要である.
小児科領域における単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症1)~7)は,歯肉口内炎,口唇ヘルペス,Kaposi水痘様発疹症,ひょう疽,角結膜炎,脳炎,新生児ヘルペス,中学・高校生などの性器ヘルペスが含まれる.本稿では,歯肉口内炎,脳炎,新生児ヘルペス,性器ヘルペスについて記載した.
水痘,帯状疱疹に対する有効な抗ウイルス薬があり,免疫不全児では速やかに積極的かつ十分な治療を行う必要がある.2014年10月からわが国でも水痘ワクチンの定期接種が開始された.健常児では,長期的な免疫も視野に入れた適正な治療を心がけたい.
サイトメガロウイルスは先天性感染で,様々な障害を児にもたらす.また代表的な日和見病原体として,免疫不全宿主に多彩な病原性を示す.ガンシクロビルやホスカルネットが奏効するが,確実な制御は困難である.
伝染性単核症は自然治癒する予後良好な疾患である.EBウイルス関連腫瘍性リンパ増殖症では,抗腫瘍薬による化学療法を考慮する.慢性活動性EBウイルス病(旧:慢性活動性EBウイルス感染症)では,早期の造血幹細胞移植を念頭におく必要がある.
HHV-6,HHV-7感染症ともに,基本的にself-limitedな経過をたどる疾患である.immunocompromised host(免疫低下宿主)のウイルス再活性化による重篤な神経合併症には,抗ウイルス薬の効果が期待できる.効果判定には,real-time PCR法による脳脊髄液中のウイルスDNA定量が有用である.
パルボウイルスB19は伝染性紅斑の原因として知られているが,それ以外にも先天性溶血性貧血患者の無形成発作,免疫低下患者の慢性骨髄不全,妊婦への感染による胎児水腫など多彩な疾患に関与している.
HIV感染妊婦への周産期における抗HIV薬治療は,児への垂直感染率を2%未満に低下させた.抗HIV薬の併用療法は,HIV感染児の予後を劇的に改善したが,その管理は複雑であり専門医へのコンサルテーションが必要である.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症である.おもに飛沫感染・エアロゾル感染で伝播し,鼻汁・咽頭痛・咳嗽など呼吸器症状を呈する.
原発性免疫不全症は免疫細胞の分化や機能が障害される疾患群で,原因遺伝子により約500の単一遺伝子疾患が含まれる.免疫の機能不全による易感染性のほか,自己免疫,自己炎症,腫瘍,アレルギーなど様々な免疫の異常に伴う症状をきたす.
食細胞異常症は,食細胞の量的あるいは質的(機能的)異常による先天性免疫異常症である.患者は,細菌,真菌および抗酸菌に対して易感染性を示し,乳幼児期から難治性の感染症をくり返す.
長期管理の基本は抗炎症療法である.吸入ステロイド薬を中心とするが,軽症の乳幼児ではロイコトリエン受容体拮抗薬なども第1選択とできる.アレルゲン回避の環境整備,受動喫煙防止など増悪因子への対応も重要である.
すべてのレベルの喘息発作(急性増悪)に対する第1選択治療はβ2刺激薬吸入である.中発作ではステロイド/アミノフィリン投与を追加する.大発作にはイソプロテレノール持続吸入を追加する.不応例においては同持続吸入増量→人工呼吸管理とステップアップする.
1年間に複数回の喘鳴をくり返す乳幼児では,気管支喘息の家族歴,アトピー性皮膚炎の既往,おもにダニなどの吸入抗原への感作のいずれかを認める場合は,吸入ステロイドを主軸とした抗炎症治療を行う.また,長期管理中は乳幼児用JPACを活用してコントロール状態を評価する.
アトピー性皮膚炎は,皮膚バリア機能異常・アレルギー性炎症・瘙痒を特徴とする,慢性の疾患である.治療の3本柱はスキンケアによる皮膚バリア機能改善,抗炎症治療,悪化因子の除去であるが,それぞれを具体的に指導し,チェックを行いフィードバックすることが特に大切である.
アナフィラキシーは「重篤な全身性の過敏反応であり,通常は急速に発現し,死に至ることもある」と定義され,ショックをきたし得る.治療の第1選択は院内院外ともにアドレナリンの筋肉注射である.
食物アレルギーの診療は,劇的に変化している.必要最小限の除去が基本診療となり,食べられる量を食べはじめることで,生活の質の改善に加え耐性誘導が期待される.一方で指導する医師は,リスクへの理解も重要である.
アレルギー性結膜疾患とアレルギー性鼻炎は,ともにアレルギー検査が診断の根拠となる.両疾患とも重症度に応じて抗アレルギー薬や局所ステロイド薬を用いるが,重症例や治療抵抗性の場合には速やかに眼科医や耳鼻科医への紹介が必要である.
薬剤投与後に皮疹などのアレルギー症状が生じた場合,薬物アレルギーを鑑別にあげ,薬剤の種類を確認する.原因薬剤を特定し,不必要な使用制限が行われないよう薬物誘発試験などの各種検査を行い,確定診断を行う.
花粉に感作された患者が,交差反応するくだものや野菜などを摂取した際に起こるアレルギー症状をさす.生の植物性食品を摂取した際の咽喉頭の違和感が主症状で,加熱をすれば摂食可能であることが多いが,なかには全身症状が誘発される場合もあり注意が必要である.
第1選択薬として,全身型にはグルココルチコイドを,関節型にはメトトレキサートを用いて治療を開始する.効果不十分な場合には早期に生物学的製剤の導入を行い,機能障害を残さないように積極的治療を行う.
全身性エリテマトーデス(SLE)は自己抗体/免疫複合体により臓器障害をきたす慢性炎症性疾患である.重症度に応じ治療を強化し,ステロイドの使用量を減らしつつ再燃を防ぎ,長期的な臓器障害を最小限にする必要がある.
混合性結合組織病(MCTD)は初期にはRaynaud症状や全身性エリテマトーデス(SLE)様症状が多く次第に強皮症様症状が明らかになることが多い.全身性炎症性疾患であることを念頭にそれぞれの病態に応じた治療を行う.
若年性皮膚筋炎(JDM)は,筋炎特異自己抗体によってその経過は異なり,特に急速進行性間質性肺炎を合併した場合,生命予後にかかわる.早期に正確な診断をし,十分に炎症を抑える治療を進めることが必要である.
小児期Sjögren症候群はまれな疾患ではない.経過や重症度は個人差が大きいため,個々の症例の臓器障害の程度にあわせて治療する.腺障害の治療はおもに対症療法で,腺外臓器障害には免疫抑制療法が必要となることが多い.
反応性関節炎・感染症関連関節炎とは,先行する感染症後に発症する関節炎と定義される.急性リウマチ熱と溶血性レンサ球菌感染後反応性関節炎は溶血性レンサ球菌感染後に,それ以外の反応性関節炎は腸管や泌尿生殖器感染症後に発症する.
2019年以降,川崎病の診断,急性期治療,遠隔期管理のガイドラインが相次いで改訂された.本稿ではこれらをふまえて,最大の合併症である冠動脈病変を残さないために,川崎病の診断のポイントとupdateされた急性期治療を中心に解説する.COVID-19時代の川崎病診断にも言及する.
小児の血管炎は急性血管炎である川崎病とIgA血管炎がほとんどを占めるが,慢性血管炎である高安動脈炎,ANCA関連血管炎もまれに経験する.川崎病とIgA血管炎は適切な治療により良好な予後を期待できるが,高安動脈炎,ANCA関連血管炎は,臓器障害や再発の防止のために,早期診断とステロイド薬,免疫抑制薬,生物学的製剤を含む積極的な治療が必要となる.本稿ではIgA血管炎と高安動脈炎について解説する.
自己炎症性疾患は主として遺伝性で希少疾患である.診断は臨床所見と遺伝子検査で行い,治療は副腎皮質ステロイド,コルヒチン,生物学的製剤,免疫抑制薬を用いる.一部の難治例では造血細胞移植が行われている.
若年性線維筋痛症は,慢性の筋骨格系疼痛に加えて,睡眠障害や疲労などの多彩な筋骨格系外症状を認める.治療の中心は非薬物療法であり,疼痛緩和と機能改善によるQOLの向上と,社会的活動への参加を目指す.
心房中隔欠損は,右房や右室の容量負荷をきたす.まれに乳児期に心不全症状を認めることもあるが,多くの場合は無症状である.小学校就学前に外科治療ないしカテーテル治療をすることが望ましい.カテーテル治療では解剖学的に制限を受ける場合があるが,安全性は確立されている.
心室中隔欠損症は先天性心疾患のうちで最も多い疾患である.大動脈弁輪径と同等またはそれ以上の大欠損では乳児期早期に手術適応となる.それ以下の中等度欠損や小欠損では,欠損孔の位置によっても異なるが,幼児期以降の手術を考慮しつつ,体重増加や心不全に留意し,外来での加療または経過観察でよい.
動脈管開存(PDA)の診断には心臓超音波検査が有用で,造影CT・血管造影の併用で,より詳細な診断が得られる.カテーテル治療は700g以上の新生児から可能となり,ほとんどのPDAはカテーテル治療が可能となった.
心内膜床組織の形成異常および癒合不全により,房室弁の形態異常と房室中隔の形態異常をきたす疾患で,全先天性心疾患の4~5%を占め,心疾患をもつ21トリソミーの40%は本症である1).二心室修復の可否は,房室弁の形態によるので,房室弁の形態評価が重要となる.
Fallot四徴症(TOF)は,右室流出路(肺動脈弁下部)狭窄,心室中隔欠損(VSD),大動脈騎乗,右室肥大を特徴とする代表的なチアノーゼ性心疾患である.無酸素発作を管理し,必要により短絡手術を経て,生後3~6か月以降に修復手術を行う.
両大血管右室起始(DORV)は心室・大血管関係のみで定義され,両側大血管の大部分が右室から起始している疾患をいう.その病態は心室中隔欠損(VSD)類似からFallot四徴症(TOF),完全大血管転位(TGA)類似の血行動態まで幅広く,さらに合併心疾患も多様である.したがって,症例ごとに病態を把握し,治療戦略を検討する必要がある.
右室から大動脈が,左室から肺動脈が起始する疾患で,心室中隔欠損の有無,肺動脈狭窄の有無でⅠからⅣ型まで分類される.Ⅳ型は非常にまれである.典型例では,Ⅰ型は新生児期に大動脈スイッチ手術,Ⅱ型は乳児期早期までに大動脈スイッチ手術+心室中隔欠損閉鎖術を,Ⅲ型は適切な時期にRastelli手術を実施する.
総肺静脈還流異常症(TAPVR)は,肺静脈のすべてが左心房に還流しないことを特徴とするまれではあるが,代表的なチアノーゼ先天性心疾患である.病型は,還流部位別に,上心臓型,心臓型,下心臓型,混合型の4つに分類される.治療は,外科的修復術のみであり,肺静脈狭窄を合併する症例は,新生児早期に緊急手術を必要とする.
純型肺動脈閉鎖(PAIVS)は,心室中隔欠損を合併しない肺動脈閉鎖のことである.肺動脈血流は動脈管に,体静脈還流は卵円孔に依存しており,自然予後はきわめて不良である.病態の本質は右室低形成にあり,その程度によって治療方針が異なる.
三尖弁閉鎖はFontan手術を目標に,段階的に手術を行っていく必要があり,よりよいFontan循環を目指して治療戦略を立てていく.心房間交通の狭小化による循環障害,大血管転位型では大動脈弁下狭窄に注意する必要がある.
僧帽弁の逆流により左房左室の容量負荷が生じ,進行すると心拍出量の低下および肺うっ血をきたす疾患.小児期の病因としては,先天性心疾患にみられる僧帽弁および弁下組織の異常とともに,Marfan症候群などの結合織疾患,僧帽弁逸脱症,感染性心内膜炎,乳児特発性僧帽弁腱索断裂,リウマチ熱,さらには川崎病後や左冠動脈肺動脈起始(BWG)症候群のような冠動脈病変に伴う乳頭筋虚血により発症する1).
わが国における小児期の大動脈弁狭窄(AVS)は先天異常によるものがほとんどであり,二尖弁が多い.新生児期・乳児期早期に発症する重症AVSは,侵襲的治療が行われなければ生命予後は絶対不良である.幼児期以後のAVSでは,圧較差や年齢を考慮して治療方針が決定される.
肺動脈弁狭窄は,極型から軽症まで症状や予後が大きく異なる疾患である.最も多い弁狭窄の治療の第1選択は経皮的肺動脈形成術となっている.病状・重症度を十分に把握し,治療の必要性や時期を決定すべきである.
大動脈縮窄,大動脈弓離断は,大動脈弓部および大動脈峡部の狭窄性/閉塞性病変により体循環の血流障害を生じる疾患である.大動脈峡部から下行大動脈の移行部に狭窄を生じたものを大動脈縮窄(CoA),弓部から大動脈弓峡部までの一部が欠損し,血管の連続性がないものを大動脈弓離断(IAA)という.両疾患ともに動脈管依存性心疾患に分類され,軽症のCoAを除き生命維持には動脈管の開存が必須であり,新生児期に外科的治療が必要となる疾患群である.
左心低形成症候群は,左心構造物の低形成があり,従来の治療法では左心機能不全を救済できない先天性心疾患と定義とされる.胎児診断,内科・外科治療の進歩により治療成績は向上したが,最終的には単心室循環(Fontan術)を目指す最重症疾患である.
左右軸の発生異常により,胸腹部臓器が身体の左右軸に対して異常な位置関係を示す症候群.左側相同から右側相同まで,幅広い臨床スペクトラムがみられる.複雑な心血管系異常を合併することが多く,症例ごとに単心室あるいは二心室修復を目指して段階的な治療を行う.多様な心外病変にも注意を要する.
肥大型心筋症(HCM)は,著明な心筋肥大により心室内腔が狭小化し,拡張障害をきたしている疾患である.心室への流入血液量が減少し,心拍出量の低下をきたす.小児期では無症状のことが多いが,運動中の失神や突然死が初発症状のことがある.運動制限と,β遮断薬やCa拮抗薬による治療を行う.
拡張型心筋症(DCM)は心筋収縮不全により心拡大をきたし,心不全が進行する予後不良の疾患である.左心不全症状が主体で,乳児では哺乳不良や体重増加不良,年長児では運動時の易疲労性が認められる.急性左心不全にはカテコラミンや利尿薬による集中治療を,慢性期心不全ではアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,β遮断薬,利尿薬を主体とした治療を行う.
急性心筋炎の診断は時に困難なこともある.軽症例から補助循環を必要とする重症例まで病像は様々である.重篤な疾患だが回復する例も多く,循環不全の程度を迅速かつ継続的に評価し,急性期管理を適切に行う必要がある.
心電図を記録し,P波とQRSの関係,QRS波形が幅広いか,狭いかにより診断する.失神,意識消失などがある場合には,心肺蘇生,自動体外式除細動器(AED)などによる除細動を行う.落ち着いた段階で,予防的治療,原因検索,原因に対する治療を行う.
川崎病冠動脈瘤は血栓形成のリスクと,長期にわたり継続する血管リモデリングによる狭窄性病変の出現に留意する必要があり,適切な血栓形成予防治療の継続と狭窄性病変・心筋虚血の早期発見,再灌流療法が需要である.
小児の特発性肺動脈性肺高血圧症への治療薬は,成人と異なり前向き研究やランダム化比較試験が少ないためいまだ承認されているものは少なく,小児への治療戦略においてもいまだ確立されたものはない.
起立性調節障害(OD)は起立後,特に朝起き後,または自分の望まない環境にさらされたときに自律神経がうまく適応できず,頭痛,腹痛,めまいなどを生じる病態である.思春期に多くみられ,様々なストレスが誘因となるため,全人的医療と周囲の理解が必要となる.
肺間質に炎症を主体とする病変を認め,慢性的な呼吸障害を起こすものを間質性肺疾患とよぶ.頻呼吸・低酸素血症があり,びまん性肺病変をきたす他の疾患の除外を経て本疾患の診断に至る.治療はステロイドやヒドロキシクロロキンが基本となり,内科的治療が無効な例では肺移植を検討する.
気管支拡張症は,湿性咳嗽や膿性痰を主症状とした呼吸器感染症をくり返しながら徐々に呼吸機能が低下していく.画像検査で診断は可能であるが,原因疾患を特定することが治療・管理を行っていくうえで重要となる.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により,体外式模型人工肺(ECMO)を含む急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が一般にも知られることとなったが,ARDSは,確立された有効な治療法は少なく,依然として死亡率が高い疾患である.
肺ヘモジデローシスはびまん性に肺出血をくり返す疾患の総称である.感染,心疾患,腫瘍などが原因にあげられるが,原因が明らかでない特発性肺ヘモジデローシスもある.臨床的には血痰・喀血,鉄欠乏性貧血,胸部X線異常を3主徴とし,肺出血をくり返せば肺障害・肺線維化が進行し肺高血圧・右心不全に至る.治療は副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を使用する.
膿胸患者では,適切な抗菌薬療法を行うため,胸水培養のほか,迅速抗原検査,PCR検査を活用し,原因菌同定に努める.ドレナージや線維素溶解療法,胸腔鏡下胸膜剝皮術(VATS)のタイミングを逃さないことも重要である.
気胸は胸腔内臓器からの空気漏れで起こる.年長児ではブラ・ブレブの破綻による自然気胸,新生児・乳児では背景病変とその治療による続発性気胸・気腫が多い.脱気により肺を再膨張させ,原因疾患を治療する.
先天性喘鳴とは出生直後や新生児期から出現する吸気性喘鳴の総称である(通常呼気性喘鳴は含まない).
上気道の狭窄により生じ,原因疾患は多岐にわたる.多くは体格の成長に伴い,自然に軽快するものが多いが,なかには重篤な呼吸障害を呈するものもあり,適切な評価と管理が重要である.
気道異物による窒息や呼吸困難の際は迅速な対応が求められる.また遷延する咳嗽や喘鳴は気道異物も念頭におく必要がある.令和2年度厚生労働省人口動態統計で14歳以下の窒息による死亡は72件あり,気道異物事故を未然に防ぐことは重要である.
窒息患者は数分で低酸素血症による意識消失から心肺停止に至る可能性がある.また救命蘇生処置ができたとしても重篤な神経学的後遺症を残し得るため,事故発生時の緊急度がきわめて高い病態である.
小児囊胞性肺疾患には先天性肺気道奇形,気管支閉鎖症,肺分画症などの先天性のものと,原発性自然気胸の原因になるブラや肺炎後肺囊胞など後天性のものを含む.先天性疾患の根治的治療は手術であり,そのタイミングや術式は診断時期や症状の有無によって決められる.
睡眠中に無呼吸や低呼吸が生じる病態を,睡眠時無呼吸(SA)とよぶ.SAには中枢性睡眠時無呼吸(CSA)と閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)があるが,小児ではアデノイド増殖や口蓋扁桃肥大に起因するOSAが多いため,本稿ではおもにOSAの診断,治療について述べる.
鼻副鼻腔炎は鼻腔へのウイルス感染が先行し,次いで細菌感染が生じて発症する.鼻処置を優先し,急性では重症度に応じ抗菌薬治療を行う.第1選択薬はアモキシシリン(AMPC)である.3か月以上鼻漏や湿性咳嗽などの呼吸器症状が持続する場合は慢性と判断する.
ヘモグロビン(Hb)低下のうち日常診療では鉄欠乏性貧血が最も多い.鉄欠乏性貧血は乳児期後期や思春期,また生後4~5か月の早産児に多くみられる.治療には食事療法や鉄剤治療が行われるが,鉄剤を数か月間内服しても貧血が改善しない場合や,鉄剤中止後しばらくすると再発する場合は,その原因検索を行う必要がある.
治療介入は血小板数だけでなく,病期,出血症状,活動度,社会的要因など多面的に評価し,患者・保護者と十分に相談のうえ決定する.画一的な管理ではなく患者ごとに個別化して考える視点が重要となる.
再生不良性貧血は骨髄での3血球系統が減少し,末梢血での白血球,赤血球および血小板数のすべてが減少する1つの症候群である.やや重症以上の病型においては,HLA一致血縁ドナーが得られれば骨髄移植,得られなければ免疫抑制療法を行う.
凝固因子製剤を補充し出血を抑制する定期補充療法が,血友病の標準的治療として普及した.最近の血友病治療進歩のなかで,血友病Aはnon-factor製剤が市販され新たな治療選択肢となった.血友病Bは,半減期延長製剤が使用可能になり,定期補充療法の施行率が上昇している.
持続する凝固活性化状態がみられ,線溶能の状態により臓器障害や出血症状を呈する.播種性血管内凝固症候群(DIC)の基礎疾患の治療が最優先であり,線溶能の状態に応じて,抗凝固療法,抗線溶療法,補充療法を適切に選択する必要がある.
血球貪食性リンパ組織球症は,様々な原因によって引き起こされる.「免疫系の暴走」が基本病態であり,「高サイトカイン血症の鎮静化」と「過剰に活性化したT細胞やマクロファージの除去」を目的とした治療が有効である.
MRDによる適切な層別化,支持療法の進歩によって急性リンパ性白血病(ALL)の治療成績は向上してきた.CAR-T療法などの免疫療法の実用化によって,さらなる向上が期待される.ALLの診断,治療には高度に専門的な知識,施設などが必要である.
小児急性骨髄性白血病は,近年の細胞遺伝学的異常の解明とそれに基づいたリスク層別化および治療開発の進歩のより長期生存率が60~70%に達している.
治療中の合併症対策と内外の臨床試験の知見に基づいた適切な治療法の選択が重要である.
チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の開始から,各評価時期の達成目標をクリアしていくことが慢性骨髄性白血病(CML)治療の基本となる.“Failure” と判定される場合には別のTKIに変更する.治療目標はMR4以上の深い分子遺伝学的寛解であり,TKI中止を目指す.移植適応は急性転化期と一部の慢性期・移行期の患者に限られる.
小児骨髄異形成症候群(MDS)は芽球の多寡により分類される.芽球増加を伴わないMDSは血球減少の程度,染色体異常の種類などを勘案して方針を決定する.芽球増加を伴うMDSは造血細胞移植の適応である.
様々な血液・腫瘍性疾患の根治療法となりうる造血細胞移の準備と実施,起こりうる合併症とその対策について概説する.
悪性リンパ腫は病型および病期により治療法が大きく異なるため,正確な病理学的診断と病期分類が重要となる.病理学的診断と治療には高い専門性が求められるため,小児がんの専門施設で診療を行うことが原則である.
神経芽腫は,病期,年齢,分子生物学的因子,病理組織診断による,リスク判定に基づいた治療選択が必須である.化学療法,手術,放射線治療を組み合わせた集学的治療が重要である.
横紋筋肉腫は骨格筋の形質を有する肉腫である.CTやMRIなどの画像診断のみでの確定診断は困難であるため,横紋筋肉腫を疑った場合は専門施設での生検や治療の実施を考慮する.
肉眼的に転移がなくても切除のみで治療された症例の再発率が非常に高いことから,骨肉腫,Ewing肉腫に対する治療の基本は抗がん剤による化学療法,外科手術,必要に応じて放射線治療の組合せによる集学的治療である.
現在,腎芽腫には腎ラブドイド腫瘍や腎明細胞肉腫を含めない.一期的切除が可能な片側腎芽腫は,腎摘または化学療法を施行する.一期的切除が不可能な場合は化学療法を施行する.手術では腫瘍進展度を正しく評価する.
肝芽腫は,シスプラチンを含む化学療法と肝切除を行うのが治療の基本である.肝外病変のない切除不能例は生体肝移植の適応となる.遠隔転移例の予後は不良で,強力な化学療法,転移巣に対する外科療法が行われる.
脳腫瘍は小児期において最も高頻度に認められる固形腫瘍である.100種類以上ともいわれる組織学的多様性があるため,正確な診断をつけることが非常に重要であり,また,その治療は手術,放射線治療,化学療法を組み合わせて行われるが,診断により手術の目的,放射線照射野・照射量,化学療法レジメンが大きく異なり,同じ疾患でも発症年齢,発症部位によって治療が異なる場合があるため,その診療にあたっては幅広い知識と経験が必要である.
小児胚細胞性腫瘍の予後は比較的良好で,良性胚細胞性腫瘍の標準的治療は外科的切除である.stage Ⅱ以上の悪性胚細胞性腫瘍に対しては,腫瘍マーカー陰性化後2コースをめやすにプラチナ製剤をベースとした術後化学療法を行う.
緩和ケアの視点は,「Lifeを支えること」にある.症状緩和においては,まず子どもの症状を捉えるために子どもから発せられるメッセージを大切に丁寧な観察,問診を行う.そのうえで診察と画像検査から評価を行うことが重要である.緩和ケアの視点は,「生命の危機に直面する疾患をもつ患者と家族のLifeを支えること」にある.Lifeとは「いのち」「生活」「人生」など様々な要素を含む.小児がんは,診断時から治療中,そして治癒が望めない状況にある場合まで,Lifeが脅かされる状況が続く疾患である.疾患の治療と並行してその子が抱えるつらさの評価とマネージメントを行い,これからの生活・人生を見据えたなかでその子がどのように過ごすことがその子らしいかを一緒に考えることが大切になる.本稿では,特に「症状緩和」について取り上げ概説する.
ゲノム医療の進歩により,小児がんの5~10%は遺伝性腫瘍であることが明らかになった.遺伝学的検査の多くは健康保険未収載であるが,積極的な診断とフォローアップを行う方向に変化しつつある.親,きょうだいを含めた遺伝カウンセリングが重要である.