小児科診療 88巻14号 (2025年10月発行)

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特集　こどもの心電図と心エコー図―ファーストタッチから専門診療まで―

序文山岸　敬幸 , 濱田　洋通 88巻14号 , 2025年10月 , pp.i-i

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　小児の循環器疾患を診断・管理するうえで，診察に続く心電図や心エコー図などの検査は欠かせません．小児科の診療現場では，これらの検査をうまく活用することで，重大な心疾患を見逃さず，早期に専門医へつなげることができます．しかし実際は，とくに若手医師や，「こどもの総合医」として一般小児科診療を中心に地域医療を支えていらっしゃる多くの先生方にとって，小児循環器領域の検査・評価は少しハードルが高いかもしれません．胸部X線や心電図は，ほぼすべての医療機関で実施できる基本的な検査ですが，心疾患を正しく診断・管理するための読影・判読には相応の知識と経験が求められます．また，心エコー図検査は超音波機器が普及した現在，最も身近な非侵襲的画像検査になっていますが，小児循環器・先天性心疾患領域においては，複雑な心臓の構造と病態・血行動態に応じた描出技術と診断技能が必要とされ，決して容易とはいえません．

Ⅰ．こどもの心臓の検査：ファーストタッチ編

扉 88巻14号 , 2025年10月 , pp.1-1

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1　胸部X線検査の基本と実際濱田　洋通 88巻14号 , 2025年10月 , pp.2-7

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Summary

■胸部X線は，心疾患のスクリーニングに有用な検査法である．写っているものすべてに目を通す，自分なりの読影手順を習慣づける．

■胸部X線は，被ばく量が少なくくり返し撮影が可能で経過観察に有用であり，胸部X線の読影は今後も小児循環器および成人先天性心疾患の診療に重要な位置を占める．

2　心電図検査の実際―小児科医のための心電図の記録と判読―〈初級編〉鮎澤　衛 88巻14号 , 2025年10月 , pp.8-15

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■心電図は，非侵襲的に多くの心臓の病態を評価できる方法で，ほかの診察や検査では代替できない臨床的意義をもつ，重要かつ基本的な臨床検査である．

■小児では，心疾患以外に，年齢，胸郭の形状，体格，心理状態などによって変化するため，それらの影響も知っておく必要がある．

■突然死の原因疾患の診断が可能であり，そのスクリーニングと予防に重要である一方，安静時心電図のみでは発見できない疾患もある．

3　心電図検査の実際―小児科医のための心電図の記録と判読―〈上級編〉鮎澤　衛 88巻14号 , 2025年10月 , pp.16-22

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Summary

■初級編で述べた小児の心電図の記録と評価によって，循環器疾患の中で特に特徴的で見逃さないよう注意すべき所見を述べる．

■小児の診療では，心臓の位置異常がありえることを念頭において，心電図を記録，評価することが必要である．

■心房，心室の負荷の種類（圧負荷，容量負荷及びその重症度）を心電図から推測できるようにする．

■突然死につながる，致死性不整脈を起こす可能性や，心筋症，虚血性心疾患などの心筋疾患の可能性のある心電図所見を見逃さないようにし，発作時の波形と対応を知っておく．

4　血液生化学検査の基本と実際中川　直美 88巻14号 , 2025年10月 , pp.23-27

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■チアノーゼ性心疾患では二次性赤血球増加症を発症し過粘稠度症候群に陥ることがある．

■慢性心不全では貧血の改善により予後の改善が期待される．

■血清CK-MB値は心筋障害の指標である．

■高感度心筋トロポニンは超急性期の心筋障害検出感度が高い．

■BNP，ANPは心不全の重症度を示唆する．

5　心エコー図検査：形態診断〈初級編〉小柳　喬幸 88巻14号 , 2025年10月 , pp.28-34

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Summary

■診断に至らなくとも「見逃してはいけない緊急疾患」を疑うことができれば十分である

■応用編の「この位置から当ててこの所見が見られたら」をぜひ参考にして頂きたい

■呼吸障害，チアノーゼ，心雑音といった主要症候から，疑うべき疾患を想起しながらプローブを当てると，診断率が高くなる

6　心エコー図検査：基本計測と心機能新居　正基 88巻14号 , 2025年10月 , pp.35-43

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Summary

■心エコー図検査はベッドサイドで病態を把握するのに有用な画像診断ツールである．

■心室容積の評価は先天性心疾患における短絡量評価につながる．

■心構造物の計測には決められた断面とタイミングのルールがある．

■計測のルールを無視すると，誤った計測値が一人歩きすることになる．

■心エコー図検査の特性を理解し，正確な断面で正確な計測を心がける．

Ⅱ．こどもの心臓の検査：専門診療編

扉 88巻14号 , 2025年10月 , pp.45-45

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7　携帯型心電図鈴木　博 88巻14号 , 2025年10月 , pp.46-50

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Summary

■携帯型心電図は，一過性に出現する不整脈や虚血性変化の検出に優れ，失神や動悸など症状の診断に役立つ．

■Holter心電図は不整脈の診断や定量評価に有用であるが，まれなイベントの検出は困難である．

■近年開発された手操作心電計，貼付型心電計，植込み型ループレコーダは低頻度の不整脈の検出に有用である．

■スマートウォッチを用いた心電図記録と脈波記録は，不整脈診断の補助として活用し，この記録のみで診断してはならない．

8　心肺運動負荷試験古道　一樹 88巻14号 , 2025年10月 , pp.51-57

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■心肺運動負荷試験は小児・青年期の身体機能を非侵襲的かつ動的に評価し，有酸素運動能の客観的程度を明らかにする．

■心肺運動負荷試験は心疾患や呼吸器疾患の重症度や将来の健康リスクを評価する手段として有用である．

■手術や薬物療法，運動リハビリ後の心肺機能の改善を定量的に判断できるため，治療効果の把握に役立つ．

■運動中の心拍や呼吸応答などから得られるデータに基づき，安全で効果的な個別運動療法の設計が可能となる．

9　心エコー図検査：形態診断〈上級編〉前田　潤 88巻14号 , 2025年10月 , pp.58-65

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■胸骨下アプローチの経胸壁心エコー図により，心房，心室，大血管の位置がより明瞭に描出される．

■胸骨下アプローチの経胸壁心エコー図により，心房中隔欠損の下大静脈側の形態診断が可能である．

■経胸壁心エコー図により，僧帽弁逆流の部位，成因をある程度同定することができる．

10　心エコー図検査：3D心エコー図―現状と未来― 瀧聞　浄宏 88巻14号 , 2025年10月 , pp.66-73

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■小児の3D心エコー図は革進的な進歩をとげた．

■先天性心疾患における解剖学的評価と心室容量評価に有用．

■3D経食道心エコー図/3D経心膜心エコー図はともに鮮明な画像を得られる．

11　心エコー図検査：スペックルトラッキング法髙橋　健 88巻14号 , 2025年10月 , pp.74-79

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Summary

■心臓の形態に依存しないストレインは先天性心疾患に適した心機能検査法である．

■近年ストレインに基づく先天性心疾患の予後予測の論文が増加し，臨床的にも有用である．

■経時的に各患者のストレインの推移を評価することが重要である．

12　胎児心エコー検査の基本河津　由紀子 88巻14号 , 2025年10月 , pp.80-85

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Summary

■胎児心エコー検査は，胎児期に重症先天性心疾患を早期に発見・診断するための非侵襲的な検査であり，出生後の予後改善を目的として行われる．

■日本では，レベルⅠ（スクリーニング）をおもに産科医や検査技師が担当し，異常が疑われた症例やハイリスク症例に対しては，レベルⅡ（精査・診断）を小児循環器医やスキルを有する産科医が実施している．

■出生前診断の需要が高まるなか，レベルⅡの検査数も増加しており，小児循環器医にとって必要なスキルの1つである．

■レベルⅡ検査では，心疾患の形態診断に加えて，胎児心機能の評価，疾患重症度の分類，出生前後の治療方針の決定，さらには家族への支援活動が含まれる．

13　コンピュータ断層撮影（CT）―先天性心疾患の診断と小児科医がCTに求めること― 稲毛　章郎 88巻14号 , 2025年10月 , pp.86-100

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Summary

■小児心臓CTの進歩：技術革新により撮影時間短縮・被ばく線量低減を実現し，先天性心疾患診断の重要な検査法として確立された．

■適応の原則：心エコー図やMRIで評価困難な場合に限定し，被ばくリスクと診断利益を慎重に比較検討する必要がある．

■重点疾患：CTが手術計画に不可欠な情報を提供する疾患が明確化された．

■検査の実際: 鎮静は最小限，心電図非同期撮影が基本，造影剤使用時はアレルギー・腎機能に注意する．

■将来展望: AI技術による画像再構成・診断支援，3Dプリンティングによる術前シミュレーションなど，更なる診断精度向上と安全性改善が期待される．

14　磁気共鳴画像（MRI）石川　友一 88巻14号 , 2025年10月 , pp.101-107

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Summary

■心臓MRIは，非侵襲的かつ被ばくなく心大血管構築，心機能，血流，心筋組織性状を包括的に評価できる画像診断装置であり，心エコー図と比較するとその利点は可視性と多能性にある．

■小児心疾患においても心臓MRIの重要性は大きく増大しており，心電図・心エコー図のみでは評価が不十分な場面が増えている．

■循環器を専門としない一般小児科医であっても，心臓MRIの適応と有用性を理解し，適切なタイミングで専門施設へ紹介する判断力を持つことがきわめて重要である．

15　核医学検査白神　一博 88巻14号 , 2025年10月 , pp.108-114

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■小児における心筋血流イメージングは種々の先天性ならびに後天性冠動脈疾患（おもに川崎病），心筋症，心筋障害，右室圧負荷などが適応となる．

■負荷法としては成人と異なり，運動負荷よりも薬剤負荷が適切な場合が多く，その安全性は確立されている．

■小児心筋血流イメージングを実施，判定する際には，その特殊性に留意することが必要である．

■検査に伴う放射線被ばくについても十分な配慮が必要である．

16　心臓カテーテル検査増谷　聡 88巻14号 , 2025年10月 , pp.115-121

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■心臓カテーテル検査は，心血管に細長い管（カテーテル）を挿入して心血管腔内の随所に到達し，各部位で血液を採取して酸素飽和度を求め，圧測定を行い，造影で形態を調べる信頼性は高いが侵襲的な検査である．

■心臓カテーテル検査では形態や血流評価だけでなく，随所の圧を正確・直接に評価できる唯一の検査法である．選択的造影における空間分解能がほかの検査法より優れ，心臓カテーテル治療の前後で治療の効果判定を行うことができる．

■心臓カテーテル検査は，明確な目的のもと十分に事前計画をたて，安全で漏れのない検査を行う必要がある．

Ⅲ．先天性心疾患の心電図と心エコー図

扉 88巻14号 , 2025年10月 , pp.123-123

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17　心室中隔欠損症宗内　淳 88巻14号 , 2025年10月 , pp.124-127

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■先天性心疾患の約40%を占める最頻の疾患で，高圧循環である左室と低圧循環である右室との交通を介して左右短絡を生じる疾患である1）．

■呼吸障害・哺乳不良・体重増加不良等の心不全症状と，聴診におけるⅡ音肺動脈成分亢進の程度，収縮期雑音の位置・強度・音調と心尖部拡張中期雑音（ランブル）の有無から病態診断することを基本とするが，心電図と心エコー図は重症度評価を深める一助となる．

18　心房中隔欠損症藤井　隆成 88巻14号 , 2025年10月 , pp.128-133

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■心房中隔欠損症は先天性心疾患の約1割を占め，心房間の左右短絡により，右心系（右房，右室，肺動脈）に容量負荷，拡大が生じる心疾患である．

■二次孔欠損型，一次孔欠損型，静脈洞型（上位欠損型，下位欠損型），冠静脈洞欠損型に分類される（図1）．

■左右短絡量は欠損孔の大きさに依存し，発育とともに肺血管抵抗が低下することで短絡量は増加する．

■幼少期は多くの症例が無症候性であるが，心電図では容量負荷の程度を推測することが可能であるため，特に学校心臓検診におけるスクリーニングや，血行動態評価の最初のステップとして重要である．

■心エコー図では，診断の確定のための欠損孔描出と治療適応の判断のための右心系拡大と肺動脈圧の評価が重要であり，治療法選択（カテーテル治療の可否）の判断のためのより詳細な欠損孔の解剖学的な評価，併存症の評価が必要である．

19　動脈管開存症阿部　忠朗 88巻14号 , 2025年10月 , pp.134-139

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■動脈管開存症の診断のポイントは聴診と心エコー図である．

■連続性雑音が聴取される動脈管開存は閉鎖適応である．

■心エコー図では，確定診断に加え，肺高血圧の有無，左心系容量負荷の評価が重要である．

■カテーテル治療前の評価では，各デバイスの留置形態を想定した部位を計測することが重要である．

20　房室中隔欠損症東　浩二 88巻14号 , 2025年10月 , pp.140-145

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■心内膜床の形成癒合不全によって房室中隔欠損と房室弁形態異常を合併した疾患群．

■左右短絡と房室弁逆流の程度により心不全症状は様々だが，原則手術介入が必要．

■左軸偏位，PQ延長，不完全右脚ブロックは診断的価値の高い心電図所見．

■房室中隔欠損，共通房室弁，scooping，左室流出路延長は心エコー図検査での診断ポイント．

■共通房室弁逆流，左室流出路狭窄，両心室のバランスは術式を決定するうえで重要．

■術後左室流入路狭窄のリスク評価のために左側房室弁ならびに乳頭筋の形態を観察．

21　Fallot四徴症，肺動脈閉鎖を伴うFallot四徴症および総動脈幹症山澤　弘州 88巻14号 , 2025年10月 , pp.146-149

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Fallot四徴症（TOF）では

■診断はmonology of Fallotに従い，円錐中隔の前方偏位に注目する．

■心室中隔の部位，肺動脈弁輪径，肺動脈形態などが管理に重要．

■心電図QRS幅，運動負荷心電図，加算平均心電図も管理に有用．

総動脈幹症（TAC）では

■大動脈と肺動脈の共通幹を確認，肺動脈起始形態を確認する．

■総動脈幹弁の形態や大動脈弓離断の様な合併奇形に留意する．

■特に冠動脈形態は心エコー図に拘らず各種modalityで評価を．

22　両大血管右室起始症大木　寛生 88巻14号 , 2025年10月 , pp.150-160

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■両大血管右室起始症は両半月弁断面積の150%以上が右室から起始し，僧帽弁と後方半月弁の線維性連続の欠如（心室漏斗部皺壁の残存）を特徴とする疾患スペクトラムである．

■心エコー図が診断，病型分類，治療方針に最も重要な検査で，左室長軸断面と大血管短軸断面で大血管関係，心室中隔欠損の位置，漏斗部中隔の付着部位により病型分類を行う．

■半月弁下狭窄，大動脈弓異常，房室弁異常，冠動脈異常など様々に合併するので，二心室修復術，心室内血流転換術，右室流出路拡大術，動脈スイッチ術の可能性を評価する．

23　完全大血管転位症・修正大血管転位症西川　浩 , 吉井　公浩 88巻14号 , 2025年10月 , pp.161-169

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■完全大血管転位症・修正大血管転位症はともに心臓大血管の位置と結合の異常を伴う疾患である．

■区分診断法ではいずれも大血管位置関係は大血管転位であるが，前者が心室大血管関係の不一致のまま血行動態的に修正されず「完全」大血管転位とよばれるのに対し，後者は心房心室関係の不一致も加わることで血行動態的に修正されて「修正」大血管転位とよばれる．

24　三尖弁閉鎖症・純型肺動脈閉鎖症田中　敏克 88巻14号 , 2025年10月 , pp.170-173

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■三尖弁閉鎖症はすべての病型分類において最終手術はFontan手術であるが，病型により初期治療のタイミングや術式が異なるため，正確な心エコー図による診断が重要である．

■心房間および心室間交通の大きさ，肺動脈血流の評価が重要なポイントとなる．

■純型肺動脈閉鎖症は右室・三尖弁の形態や大きさ，閉鎖した右室流出路の状態により，初回介入の方法が異なるため，心エコー図による詳細な評価が重要である．

■心エコー図による類洞交通の有無やその程度の評価，心電図による虚血所見のチェックが重要である．

25　総肺静脈還流異常症・部分肺静脈還流異常症片岡　功一 88巻14号 , 2025年10月 , pp.174-181

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Summary

■総肺静脈還流異常症は肺疾患と誤診されやすく，本症を疑って検査を行うことが重要で，確定診断が難しければ躊躇なく専門医・上級医に相談すべきである．

■肺静脈の還流部位や肺静脈閉塞，心房間交通，動脈管開存，静脈管開存は血行動態と臨床経過に影響し，肺静脈閉塞がある場合，緊急手術を要する．

■より詳細な術前情報を得るため，造影CT検査やMRI検査も考慮される．

■部分肺静脈還流異常症では，心房中隔欠損の合併例が多く，肺静脈閉塞をきたす症例はまれである．

26　大動脈弓の異常藤﨑　拓也 , 石井　陽一郎 88巻14号 , 2025年10月 , pp.182-189

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Summary

■心雑音に加えてSpO2の上下肢差を認めた場合には，大動脈縮窄症や大動脈弓離断症を念頭に心エコー図検査を行う．これらの疾患を疑った場合には速やかにPGE1製剤を開始する．

■大動脈縮窄症や大動脈弓離断症は心内構造異常を伴うことが多く心内の評価もしっかりと行う．特に大動脈弁/弁下狭窄，心室形態のアンバランスを認める場合には術式に影響するため，詳細な評価が重要である．

■遷延する呼吸障害や嚥下障害を認めた際には，血管輪も鑑別にあげ，精査を行う．手術適応の判断には造影CT検査や食道造影検査が有用である．

27　左心低形成症候群倉岡　彩子 88巻14号 , 2025年10月 , pp.190-194

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Summary

■心室バランスの異常は専門施設へ相談する（初級）．

■大動脈弁から大動脈弓部が描出できないことは所見の一つである（初級）．

■新生児期血行動態には，動脈管開存と心房間交通が必須である（共通）．

■病型による特徴と治療の選択肢を理解する（上級）．

■

28　僧帽弁疾患佐藤　智幸 88巻14号 , 2025年10月 , pp.195-200

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Summary

■僧帽弁逆流症を評価する際の，心エコー図の適切な設定を理解する．

■四腔断面像，左室長軸断面像，短軸断面像を合わせて，僧帽弁逆流症の病態を評価する．

■小児では僧帽弁逆流症の直接的な重症度判定は難しく，左室拡大などの間接的な指標を活用する．

■僧帽弁狭窄症の重症度判定は，成人と同様のものを応用できる．

29　Ebstein病・三尖弁異形成吉敷　香菜子 88巻14号 , 2025年10月 , pp.201-207

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Summary

■Ebstein病は三尖弁の形成異常で，右室が「心房化」し三尖弁逆流を高率に伴う．

■心電図ではP波増高，1度房室ブロック，右脚ブロック，WPW症候群など多彩な異常を呈する．

■心エコーは診断と重症度評価に必須で，三尖弁中隔尖の異常偏位と逆流，右室機能を詳細に評価する．

■胎児・新生児期は重症例で集中治療や外科的介入が必要なことも多い．

■二心室修復には形成可能な三尖弁形態，右室機能，肺血流維持が条件となる．

■三尖弁異形成は三尖弁の異常偏位を認めず，三尖弁逆流や右室流入障害を呈する疾患である．

30　肺動脈弁狭窄症・肺動脈弁閉鎖不全症柳　貞光 88巻14号 , 2025年10月 , pp.208-213

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Summary

■肺動脈弁下狭窄症や弁上狭窄症と肺動脈弁狭窄症は治療方針が異なり部位診断は重要である．

■新生児重症肺動脈弁狭窄症は至急専門施設への搬送が必要で早急な判断を要する．

■肺動脈弁閉鎖不全症は連続波ドプラやカラードプラを含めた様々な指標を組み合わせた総合的な評価が必要である．

31　大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症河島　裕樹 , 犬塚　亮 88巻14号 , 2025年10月 , pp.214-217

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Summary

■大動脈弁狭窄症の心エコー図では収縮期に大動脈弁からの血流加速を認める．

■大動脈弁閉鎖不全症の心エコー図では拡張期に大動脈から左心室への逆流血流を認める．

■小児における大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症は弁の形態異常によるものが多い．

■心エコー図などで重症度を判定し，個々の症例に合わせて介入方法や時期を検討する．

■治療介入には心臓カテーテル治療と外科治療とが検討される．

Ⅳ．先天性心疾患の心電図と心エコー図

扉 88巻14号 , 2025年10月 , pp.219-219

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32　心内膜炎・心筋炎・心外膜炎田中　優 , 安田　和志 88巻14号 , 2025年10月 , pp.220-224

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■心内膜炎では疣贅の部位，弁逆流・狭窄の有無・程度，左心・右心機能などに留意して心電図・心エコー図所見を解釈し，治療方針を決定する必要がある．

■心筋炎では心電図により房室ブロック，心室頻拍などのリズム不整を，心エコー図により左心・右心機能，心筋浮腫の程度，心囊液貯留の有無などを迅速に評価し，患者の全身状態に留意しながら治療を同時並行で行う必要がある．

■心外膜炎では心電図のST-T部分の経時的変化に注意する．心囊液貯留が高度である場合は緊急でのドレナージが必要となる場合がある．

33　心筋症廣野　恵一 88巻14号 , 2025年10月 , pp.225-231

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肥大型心筋症

1．肥大型心筋症の概要

　肥大型心筋症とは，著明な心筋肥大により心室内腔が狭小化し，拡張障害を呈する疾患である1）2）．特に非対称性中隔肥大（asymmetric septal hypertrophy：ASH）が特徴的であり，心室中隔上部の肥大が著しい場合には左室流出路狭窄（閉塞性肥大型心筋症）をきたすことがある．これにより，心室への流入血液量が減少し，心拍出量の低下や心筋虚血を伴い，息切れ，胸痛，失神，さらには運動中の突然死の原因となる．なお，本疾患は家族性に発症することが多く，常染色体顕性遺伝（優性遺伝）形式をとることが一般的である．治療としては，まず症状の緩和および突然死リスクの低減を目的とする治療が行われる．β遮断薬が基本治療として用いられ，十分な効果が得られない場合はカルシウム拮抗薬の使用や，重症例において外科的介入（左室中隔筋切除術，植込み型除細動器の挿入など）が検討される．

34　心臓腫瘍髙月　晋一 88巻14号 , 2025年10月 , pp.232-235

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■心臓腫瘍は非常にまれな疾患であり，画像上の腫瘍の特徴から診断を行う．

■心エコー図は非侵襲的な組織診断が可能であり，管理や治療判断に有用である．

■横紋筋腫は閉塞症状や不整脈の有無が重要であり，自然縮小が期待される．

■線維腫では縮小する可能性が低く，致死的不整脈の合併が多く重症度が高い．

■各腫瘍の特徴を踏まえた管理を行ううえで，心エコー図検査や心電図による評価が重要である．

35　冠動脈走行異常と川崎病冠動脈瘤寺町　陽三 , 須田　憲治 88巻14号 , 2025年10月 , pp.236-242

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■先天性冠動脈異常は心筋症・致死性不整脈とならび，小児突然死の三大原因に位置づけられる重要疾患である．

■無症候性の例も少なくないが，発見や対応の遅れが重大な結果を招くため，慎重な診断と管理が求められる．

■左冠動脈肺動脈起始では左冠動脈逆流や僧帽弁閉鎖不全が診断の鍵となり，虚血評価を経た早期の外科的介入が不可欠である．

■冠動脈瘻は異常の解剖学的形態やシャント量を正確に把握し，カテーテル治療と外科的治療の適応を見極める必要がある．

■心エコー図検査，CT，MRIなど画像診断技術の進歩により，小児期からの的確な診断と長期的な専門的管理が可能となってきている．

Ⅴ．小児不整脈の心電図

扉 88巻14号 , 2025年10月 , pp.243-243

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36　QT延長症候群（/QT短縮症候群）吉永　正夫 88巻14号 , 2025年10月 , pp.244-248

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Summary

■QT延長症候群の問診では，失神やけいれんの既往歴，家族の突然死歴などを確認し，症状の誘因（Trigger）を詳しく聴取することが重要である．

■心電図診断では，V3・V4誘導のnotched T波の確認やQT間隔の接線法によるマニュアル測定が必要で，Fridericia補正が学童期には適している．

■年齢に応じたQTc基準値を用いてスクリーニングを行い，新生児・乳児期にはBazett補正を使用し，異常があれば専門医に早期相談する．

37　カテコラミン誘発多形性心室頻拍住友　直方 88巻14号 , 2025年10月 , pp.249-254

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■カテコラミン誘発多形性心室頻拍は，運動やストレス時に，多形性心室頻拍，二方向性心室頻拍，心室細動などが誘発される疾患である.

■安静時心電図では不整脈は認めず，軽度の徐脈のみであり，学校心臓検診でCPVTと診断することは困難である．

■RyR2遺伝子などの変異により，筋小胞体からCa2＋の過剰漏出により発生する遅延後脱分極が不整脈の原因である．

■ナドロール，フレカイニドが有効である．

38　小児不整脈の心電図・Brugada症候群泉田　直己 88巻14号 , 2025年10月 , pp.255-258

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■Brugada症候群は，特異な心電図所見と致死性不整脈をきたす症候群である．

■特異な心電図所見は，type I（coved型），type II/III（saddleback型）とよばれている．

■診断は，特異な心電図所見によりなされる．

■診断後の生活管理指導には，専門医の関与が望ましい．

39　WPW症候群芳本　潤 88巻14号 , 2025年10月 , pp.259-264

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■WPW症候群はデルタ波とよばれる心室早期興奮を心電図学的特徴として有することで知られている．

■WPW症候群は副伝導路による心房心室間の伝導が本態である．

■副伝導路の局在によって様々なデルタ波を生じ，また房室回帰性頻拍においてさまざまな逆行性P波を形成する．

40　上室性頻拍性不整脈岩本　眞理 88巻14号 , 2025年10月 , pp.265-271

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■上室頻拍はWPW症候群，房室結節回帰性頻拍，心房頻拍の順に多い．

■ATP静脈内急速投与はSVTの診断・治療に有用である．

■長期の頻拍持続では，心筋障害を生じて心不全症状を呈し，頻拍誘発性心筋症とよぶ．頻拍治療により心筋障害は改善する．

■心房粗動では交感神経興奮時の1：1AV伝導で，突然死のリスクがある．血行動態不良時は電気的除細動で停止させる．

41　頻脈性心室不整脈加藤　愛章 88巻14号 , 2025年10月 , pp.272-278

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■特発性心室頻拍の起源の多くは①流出路（下方軸＋左脚ブロックパターン），②左脚後枝（上方軸＋右脚ブロックパターン）である．

■遺伝性不整脈，器質的心疾患に伴う心室頻拍は危険である．

■循環動態の不安定な心室頻拍では直ちにカルディオバージョンを行う．

■心室頻拍のメカニズムにより有効な薬物が異なる．

42　房室ブロック住友　直文 88巻14号 , 2025年10月 , pp.279-284

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Summary

■房室ブロックは心房心室間の伝導路障害で1度から3度（完全）に分類される不整脈である．

■重度や完全房室ブロックでは高度徐脈となり，失神や活動耐性低下などの症状を呈することが多い．

■心電図ではP波を見逃さないようにし，QRS波との位置関係を判読する点が重要である．

■日内変動に対して24時間Holter心電図や運動負荷心電図を適宜検討する必要がある．

■有症状の高度・完全房室ブロックでは恒久的ペースメーカ挿入術が必要となる．

43　洞不全症候群宮﨑　文 88巻14号 , 2025年10月 , pp.285-289

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■小児にみられる洞性徐脈の多くは副交感神経賦活化に伴う二次性のものである．

■洞性徐脈により失神や失神の前駆症状を認めるものは，原因検索のうえ治療介入を考慮する．

■一次性洞機能不全の場合，チャネル病，先天性心疾患，心筋症を鑑別する．

■チャネル病を含む遺伝性を疑う場合は，時に致死的であり，遺伝子検査を含めた精査を行う．

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目次 88巻14号 , 2025年10月 , pp.ii-iv

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動画再生方法 88巻14号 , 2025年10月 , pp.v-v

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索引 88巻14号 , 2025年10月 , pp.290-292

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本号掲載広告一覧 88巻14号 , 2025年10月 , pp.296-296

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バックナンバー一覧 88巻14号 , 2025年10月 , pp.297-297

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奥付 88巻14号 , 2025年10月 , pp.298-298

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基本情報

小児科診療
88巻14号
(2025年10月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9806 診断と治療社

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小児科診療 88巻14号 (2025年10月発行)

特集 こどもの心電図と心エコー図―ファーストタッチから専門診療まで―

Ⅰ．こどもの心臓の検査：ファーストタッチ編

Ⅱ．こどもの心臓の検査：専門診療編

Ⅲ．先天性心疾患の心電図と心エコー図

Ⅳ．先天性心疾患の心電図と心エコー図

Ⅴ．小児不整脈の心電図

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