1 はじめに
触診,血清PSA値ならびに経直腸的超音波断層法(transrectal ultrasonography:TRUS)は前立腺癌の診断に欠くことのできない検査法であり,前立腺癌診断の3つの“gold standard”といっても過言ではない。しかしながら,TRUSで示される低エコー域は癌特異的なものでなく,TRUSの癌正診率は約21%にすぎない1)。また,等エコー域や高エコー域を示す部位にも前立腺癌が存在するとの報告もあり,TRUSの癌診断特異度を減少させている2)。
前立腺癌診断におけるTRUSの役割は病変検索,局所浸潤,病期診断,さらに前立腺生検のTRUS下のガイドがある。1989年,Hodgeら3)により報告されたTRUS下の系統的6か所生検は,長く前立腺生検法のgold standardであった。そののち,系統的6か所生検の限界が叫ばれるようになり,多施設で生検手技の改善が試みられ,現在では10~12か所の多部位生検が標準的な生検法となっている(至適前立腺生検本数については前項を参照されたい)。
このように,前立腺癌検出率を向上させるために多くの試みがなされているが,TRUSにおける前立腺癌診断は残念ながら満足のできるものではなく,TRUSでの最近の試みとしては癌診断率を向上させるために,前立腺内部の血流情報から腫瘍血流を同定するカラードプラ法が応用されるようになった。
本稿では,前立腺癌診断におけるカラードプラ併用TRUSないしカラードプラ併用前立腺生検法の有用性について概説する。