特集 ここが聞きたい―泌尿器科検査ベストプラクティス
A.一般臨床検査法
■診察法
【直腸診】
8.直腸診で,前立腺癌,前立腺肥大症を鑑別するためのポイントと注意点について教えて下さい。
赤倉 功一郎
1
1東京厚生年金病院泌尿器科
pp.40-43
発行日 2006年4月5日
Published Date 2006/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100055
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1 前立腺癌
前立腺癌のスクリーニングには,血清PSAの測定,直腸診による硬結の触知,経直腸プローベを用いた超音波断層診断(経直腸エコー)が行われる。これらより前立腺癌が疑われた場合に,診断確定のために前立腺針生検が施行される1)。近年,触診や画像診断所見に異常を認めず血清PSA高値のみで検出される早期前立腺癌(臨床病期T1c前立腺癌:1992年のUICCのTNM分類2))の頻度が増加し注目されている。そして,直腸診の所見には主観的要因が含まれるため軽視される傾向にあった。しかし,血清PSA値が4.0ng/ml以下であっても直腸診にて異常を認める場合には比較的高率(1.7~27%)に癌が検出されることが報告されている3)。また,T1c癌の病期診断にも直腸診にて硬結が触れないことが必須条件である。さらに,根治的前立腺摘除術の適応決定においても,実際に手術に当たる泌尿器科医として触診所見は最も重視すべきものの1つである。したがって,直腸診は前立腺癌診断における基本的方法として変わらず重要なものと考えられる。
前立腺癌の直腸診所見の特徴は硬く触れる腫瘤である。軟骨様硬あるいは石様硬(stony hard)と表現される。指を握ったときの拇指の関節の硬さにたとえられる。初期には硬い結節として同定されるが,進行すると前立腺全体が一塊となり表面不整で辺縁不明瞭となり,可動性を消失することもある(表1)。
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